子どもが授業に参加し考えるるために必要なことを考える

昨日の日記の続きです。

5年生の社会は、貿易摩擦と自動車の現地生産について考えるものでした。
理科の実験の演示のように、後ろの子どもたちを前に出させますが、移動を待っている間に他の子どもの落ち着きがなくなりテンションが上がります。A4の紙に印刷した、自動車の生産台数、輸出台数のグラフをもとに日本の自動車産業の輸出が増えたことを確認する場面でした。授業者は資料を持って動きながら話しますが、小さい紙なので子どもたちはよく見えません。授業者が窓側に移動すると、廊下側の子どもは体を伸ばしても見えないので、あきらめて参加しなくなりました。小さな紙で見せる意味がわかりません。せっかく実物投影機もあるのですから、積極的に使いたいところです。せめて拡大コピーした紙を黒板に貼って授業を進めたいところでした。
授業者は資料をもとに、次々質問をしますが、一人がつぶやくとすぐに拾って説明を始めます。子どもたちが立ち止まって考える時間がありません。授業が流れていってしまいます。

日本の自動車会社が海外で生産している理由を考えることが課題です。教科書や資料を見て考えるのですが、子どもたちは教科書の説明をすぐに写します。「日本車がたくさん輸出されたので、その国の自動車産業に打撃を与えた」といった記述ではなく、そのことを裏付けるような資料を探し、その事実を根拠とすることが大切です。子どもたちは、教科書や資料に書かれている中から答探しをしています。そうではなく、資料をもとに考えさせる必要があります。そのためには、資料を絞ることが大切です。これぞという資料をじっくり見させて、それをもとに考えさせるのです。たとえ教科書の説明を写すのであっても、ただそのまま写すといったことがないように、箇条書きにしていくつ理由があったか発表させるといった工夫が必要です。

インパクトのある資料として、日本車が壊されている写真が用意されていました。この資料をきちんと読み解くことで貿易摩擦がどういうことかわかってきます。「車を壊している人はだれだろう?」「日本車は安くて性能がいいのでよく売れたのに、何で日本車に対する抗議運動が起こったのだろう?」と考えさせることで、何が問題なのかがわかってきます。「では、どうすればこの問題を解決できるだろう?」と問いかけることで、現地生産がその解決策の一つだったことに気づけると思います。この資料一つで考えさせてもよかったかもしれません。

こういった資料を根拠によい意見を言う子どもがいるのですが、その意見をもとに、すぐに授業者が説明し次の質問をします。気づいた子どもと授業者だけでどんどん話が進んでいきます。その根拠となる資料の内容をきちんと全員で確認して共有する場面がありません。よい意見や根拠となる資料が発表されたら、その資料を全体で読み取り、それをもとにもう一度考える時間をつくって全員が参加できるようにする必要があります。最初は友だちの話を聞いていた子どもたちも、次第についていけなくなり、手遊びが増えていきました。
しかし、授業者は発言者しか見ていないので、そのことに気づけていなかったかもしれません。

授業者は、現地生産すれば、早く安くつくれるということを利点としてまとめました。しかし、そうであれば、貿易摩擦が起こる前から現地生産に移行していたはずです。こういった揺さぶりもなく、貿易摩擦の問題との関連もきちんと整理されずに授業は終わってしまいました。この授業の展開であれば、貿易摩擦の原因を整理し、現地生産によってその中の何が解決するのかを明確にすることが必要です。また、現地生産に移行する前と移行後の統計資料をもとに、現地生産によって何が変わったか、新たな問題が起こらなかったのかを考えることも必要でしょう。現在の海外(現地)生産は貿易摩擦の時とは事情が違ってきています。直接触れるかどうかは別にして、相手国によって賃金水準や部品調達コストが異なることに気づかせることも、現在グローバリゼーションが進んでいることへの理解のためには必要だったかもしれません。

授業者は、子どもの言葉で授業をつくりたいと願っていますが、結局最後は自分の言葉でまとめてしまいました。子どもたちの考えを広げ、深めるためにどのように授業者がかかわればよいかが、まだよくわかっていないようでした。「根拠となる資料を全員でしっかりと読み取る」「問題点を整理する」「因果関係を明確にする」「視点を明確にする」といったことを意識して、子どもに言葉を返していくとよいでしょう。
また、資料を読み込むためには時間が必要です。そのことを考えると、資料はある程度絞った方がよいと思います。教えることと考えさせることをはっきりと分け、考えさせるために必要な資料に絞り込むのです。こうすることで、密度の高い授業になると思います。
そして、授業者のもう一つの課題がしゃべりすぎる、間がないということです。子どもたち全員が参加し考えるためには、たとえ授業者が説明して教える場面でも、ちょっと立ち止まって子どもたちが考えるための間をつくることが必要です。このことも強くお願いしました。
授業改善に対して前向きな方なので、きっと自分なりにアドバイスを消化して、よい方向に変わっていくと思います。

この続きは明日の日記で。
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