第1回授業深掘りセミナー(その3)

昨日の日記の続きです。

第1回の「教育情報知っ得コーナー」は授業と学び研究所フェローの後藤真一さんの「アクティブ・ラーニング」についての情報提供でした。このコーナーは10分ほどで簡単に最近の教育に関する情報を提供し、その後皆さんから質問を受け付けるというものです。

「アクティブ・ラーニング」は、もともとは大学の授業改革から出てきたもので、当初の定義では、「発見学習、問題解決学習、体験学習、調査学習等が含まれるが、教室内でのグループ・ディスカッション、ディベート、グループ・ワーク等も有効なアクティブ・ラーニングの方法である」と学習者が活動していれば何でも「アクティブ・ラーニング」という広いとらえ方でした。
ところがこれが、次期学習指導要領の改訂では小中高大共通のキーワードとなるとともに、その意味するところが変わりそうです。中教審教育課程部会資料「初等中等教育における教育課程の基準等の在り方について」諮問の概要では、次のように示されています。
「子どもたちが厳しい挑戦の時代を乗りこえるために(少子高齢化・グローバル化・技術革新)」は「新しい時代に必要な力(資質・能力)を育てる(自立・協働・創造)」が必要となります。そのために、「新しい教科の設立」「目標・内容の見直し」と共に学び方の転換が求められます。それが「アクティブ・ラーニング」(課題の発見・解決に向けた主体的・協働的な学び)です。
ここで注目してほしいことは、「アクティブ・ラーニング」が「課題の発見・解決に向けた主体的・協働的な学び」とされていることです。先ほどの定義とはかなり変わってきているということです。
「中教審教育課程企画特別部会 資料1 論点整理(案)」では、いわゆる「アクティブ・ラーニング」として、「創造」「協働」「自立」というキーワードに対応させ、次のように説明されています。

1.習得・活用・探究という学習プロセスの中で、問題発見・解決を念頭に置いた深い学びの過程が実現できているかどうか。
2.他者との協働や外界との相互作用を通じて、自らの考えを広げ深める、対話的な学びの過程が実現できているかどうか。
3.子供たちが見通しを持って粘り強く取り組み、自らの学習活動を振り返って次につなげる、主体的な学びの過程が実現できているかどうか。

また、「小学校・中学校の『優れた実践』を、高校につなぐ」として、「一斉授業」ではなく「ペア活動」「ホワイトボードを使って話し合う」「付箋を使って話し合う」、「先生が説明する」のではなく「生徒が説明する」「ポスターなどを作成して発表する」「立場を決めて議論する」といった例が挙げられています。
高等学校の授業改革を意識しているようにもうかがえます。

「アクティブ・ラーニング」をどのようなものとしてとらえていいのか、今一つよくわかりませんね。「教育課程企画特別部会(第13回、平成27年8月5日)における主な意見」によれば、専門家の見方もいろいろであることがわかります。

【ゆるい・広い定義】
一斉講義式の授業や生徒が黙々と問題演習をするというような授業でないもの、能動的な活動が入っているものは全てアクティブ・ラーニング

【厳しい・狭い定義】
協働学習や問題解決を行う、しかも高次の問題解決を行うという相当厳しい条件がついたもの、これをアクティブ・ラーニング

ちょっと混とんとしてきますが、「アクティブ・ラーニング」で大切になってくるのは、学習指導の「型」でなく、実践のプロセスを伝えることです。「中教審教育課程企画特別部会 資料1 論点整理(案)」では、次のように言っています。

○こうした指導方法を焦点の一つとすること〜狭い意味での授業の方法や技術の改善に終始する〜本来の目的を見失い、特定の学習や指導の「型」に拘泥(こうでい)する事態を招きかねない〜

○ 「〜めざすのは、特定の型を普及させることではなく、〜下記のような視点で学び全体を改善し、〜指導や学習環境を設定すること〜、教員一人一人一人が〜研究を重ね〜工夫して実践できる〜」

現在学習指導要領の改訂に向けて論点整理がされていますが、おそらく1〜2年でどのようなものになるかがはっきりしてくるでしょう。最後に鍵を握るのは、「課題の発見・解決に向けて」「主体的・協働的に学ぶ」「アクティブ・ティーチャー」だと思われます。

このように「アクティブ・ラーニング」にかかわる論点を、「中教審教育課程企画特別部会」の資料を中心にわかりやすく伝えてくれました。見たことがある資料でも、こうして整理しまとまった形で提示・解説してもらえると、とてもよく理解できると思います。「アクティブ・ラーニング」といっても、「何をすればいいのかよくわからない」「今までやってきたことと何が違うのか?」といった疑問を持たれている方も会場にはたくさんいらっしゃったと思いますが、かなり理解が進んだのではないでしょうか。

次回は私が「教育情報知っ得コーナー」の担当ですが、かなりハードルが上がった気がします。「反転授業」についてお話しするつもりです。興味のある方はぜひご参加ください。

第1回授業深掘りセミナーは、非常に密度の濃いものになりました。授業と学び研究所のフェロー、レギュラー講師陣共に、次回以降さらに内容の濃いものを目指していきたいと思っています。ご期待ください。
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