短い期間で成長していた講師

昨日の日記の続きです。

今年初めて教壇に立った4年生の担任の講師の授業は、国語の漢字しりとりでした。授業者は1学期と比べると、雰囲気がずいぶん変わっていました。緊張気味ではありましたが、笑顔がたくさん見られます。何より子どもたちをよく見ていたのが印象的でした。前回の訪問からそれほど時間が経ったわけではありませんが、意識して授業をしていたことがよくわかります。子どもたちをよく見ているので、子どものよいところをほめることもできます。

授業の始めに、ウォーミングアップで普通のしりとりをしました。答えた子どもに次の子どもを指名させます。男の子に指名が偏りだしたのですが、授業者は「次は女の子」とタイミングよく指示を出しました。こういうことができるようになったのは、少し余裕を持って子どもたちを見られるようになったということです。以前と比べて、子どもたちへの指示も通るようになっています。後から授業者に聞いたところ、子どもたちがよい行動をとった時にほめることで授業規律がよくなったということです。授業規律をつくる時の基本ですが、それを忠実に実行した結果というわけです。

漢字しりとりのルールを伝えます。熟語の最後の漢字と同じ読みの漢字を先頭として熟語を考えます。練習で子どもを指名して次につながる熟語を答えさせます。授業者はすぐに板書しましたが、どんな漢字を使うのかを他の子どもに考えさせてもよかったでしょう。この漢字しりとりにはその読みの漢字を使った熟語に気づくことと、漢字を正しく書けることの2つのステップがあります。そのことを意識させたいところです。「事件」に対して、「ん」がついていることに反応する子どもがいしました。授業者は「続かないかな?」と返したのですが、すぐに自分で「続けることができる」と説明しました。こういったところでも、「いいことに気づいたね。んがついたから終わりだね?」とぼけて、子どもたちから続けられるということを引き出してやりたいところです。もちろん時間とのせめぎあいがあるので、常にこのように子どもに返すことは難しいのですが……。
子どもが「4文字でもいいの?」とつぶやきました。授業者は「よく気づいたね」とほめて、4文字でもよいことを全体に伝えます。ほめることを意識していることがよくわかります。できればここは、「いいことに気づいたね。みんなにあなたが気づいたことを教えて。みんな○○さんの話を聞こう」と本人から全体に対して発表させたいところです。私的な発言を公的な発言にしてあげるのです。

漢字しりとりのお助けとして、国語辞典を配ります。ここは天下りで与えるのではなく、必要性を子どもたちに感じさせてから与えたいところです。練習の時に、ちょっと子どもたちを困らせる問題を出して、言葉が思いつかない場合に何かいい方法がないかを考えさせるのです。
辞書を配ってから練習問題のワークシートの説明をします。あらかじめ用意した一連の漢字しりとりの一部に穴が空いているものです。この穴に入る漢字を用意された漢字群から選ぶのです。先に辞書を配ってしまったので辞書に気を取られて説明を聞くことに集中しない子どもが目立ちます。授業者はワークシートをかざして説明しますが、小さすぎて見えません。先に配られたワークシートから子どもの視線が離れません。拡大コピーか実物投影機を使って、ワークシートを配る前に説明したいところでした。
この練習問題は、お尻と頭に同じ音の漢字を入れるわけですから、一方の読みがわかればもう一方と同じ読みの漢字を用意された漢字群の中から探すだけです。自分で同じ読みの漢字を使った熟語を考えるのではなく、単に漢字の読みの練習問題になっています。この時間のねらいとずれています。せめて、選択する漢字をなくせば、漢字がわからない子どもは国語辞典を使わなければいけないので、練習になったと思います。また、同じ読みの漢字をたくさん漢字群に入れておいても、辞書を引く必然性があったと思います。
できた子どもは、その続きの漢字しりとりをやってよいという指示でしたので、中には手早く穴埋めを終わって一生懸命に漢字しりとりをやっている子どももいました。しかし、練習問題を終えて手持ち無沙汰にしている子どもも目立ちました。注意したいのは読みのわからない子どもがいることです。授業者は困ったらふりがなを振るとよいとヒントを言いますが、漢字を読めない子どもには無意味なアドバイスです。漢和辞典があれば読みを調べることもできるのですが、今回は漢字しりとりに有効な国語辞典しか準備していません。この点でも、この練習問題がねらいとずれているのです。
答を挙手指名によって発表しますが、子どもたちの挙手の仕方がよくなっているのを感じました。ここでも、改善の後が見えます。「回答」という熟語が答に出てきますが、「解答」しか知らない子どもたちにはよくわかりません。「回答」と「解答」の違いを辞書で調べさせることも必要だったでしょう。

続いて、グループで漢字しりとりをします。用意された紙に順番に熟語を書き込んで、後で発表します。作業の指示の後、子どもたちは素早く活動を開始しました。問題はこのグループ活動のゴールです。授業者が明確に示さないので、子どもたちのエネルギーはどれだけたくさん漢字しりとりを続けられるかに注がれます。ここで子どもたちは国語辞典を活かします。国語辞典と首っ引きで熟語探します。辞書の早引きの練習ならばよいのですが、できれば意味に注目させたいところでした。子どもたちが思考する要素が少ないので、テンションが上がっていきました。中には漢字練習帳を開いている子どもがいました。これまでの学習を活かそうとするよい姿勢です。こういう子どもは評価したいところです。国語辞典に頼らず考えさせることをもう少し意識させると必要があるでしょう。
グループの発表で、書かれたものを読んでいきますが、聞いている子どもの参加度を高めるためにも、個人を指名して読ませるといった変化があってもよかったでしょう。まだ習っていない漢字を使ったらあらかじめその意味を調べておくというルールにしたり、全体の場で意味を調べる時間を取ったりすることも必要でしょう。子どもたちは意欲的に活動しましたが、国語の学習としてどのような力がついたのかは疑問が残りました。これまで学習した漢字を使い、使ったことのない熟語は必ず意味を調べる。発表では、読みや意味を聞いている人に質問するといったルールや縛りをつけるといった工夫がほしいところでした。

最後に、子どもたちが辞書をかたづけて前に持って来たのですが、とても素早く動いていたことが印象的でした。これに限らず、授業規律がきちんとしている場面をたくさん見ることができました。伸びという意味では、今回授業を見せていただいた先生方の中でも一番だったと思います。その成長の陰には校長の働きかけもあります。若手を集めて勉強会を行っていたそうです。若手の成長にはこういったサポートが必要なのです。

若い先生はちょっとしたきっかけで大きく伸びることがあります。また、努力をしてもすぐに結果が出ないこともあります。直線的ではなく、いくつもの壁を乗り越えながら段階的に成長していくものです。この日見た若い先生方からはそのことを強く感じました。短い期間で大きく成長できた方も、壁にぶつかっている方も、今続けている工夫や努力をこれからも続けてほしいと思います。その先にしかよい結果は生まれないと思います。
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