元PTA会長の斎藤さんとのコラボ研修第2弾

先月、市のボランティア研修で講師を務めました。漫才の相方で元PTA会長の斎藤早苗さんとのコラボによる研修第2弾です。今回は前回とは異なる市での、「みんなの力で学校を楽しくしよう」というテーマの研修です。参加者は、見守り指導や学習補助、図書館などのボランティア、学校運営協議会の委員など、学校を支えてくれる外部の方です。斎藤さんの、外部から学校にかかわってきた視点でのアドバイスに助けていただきながら準備をしてきました。

全体を三部構成としました。第一部は私の担当です。新学習指導要領の内容を解説しながら、これからの学校に求められることをお話ししました。想定外の時代を生き抜ける子どもたちに育てるためには、学校での授業や活動のあり方も大きく変わっていくはずです。先生方も答えを知らないことに挑戦していかなければなりません。そのためにも地域と学校が対等の関係で子どもたちにどのような力をつけていくのかを考え、共有していくことが必要です。このようなことをお伝えしました。
このセクションを考えるにあたって、斎藤さんに保護者の視点からどこに焦点を当てるとよいかアドバイスをいただきました。おかげで、話の流れと落としどころがすっきりし、説明中心にもかかわらず、最後まで皆さんに集中していただけました。

かたい話の後は、学校RR(斎藤さんと私のコンビ)の教育漫才です。皆さんとても楽しそうに聞いてくださったのはうれしいことです。教育漫才ですので、学校に関するちょっとした知識もネタとして入っています。そういった情報に敏感に反応してメモを取られる方がいたのには驚きました。まじめで前向きな方が多いのですね。

この日のメインは、ワークショップを取り入れた、斎藤さんと私の対談です。学校との付き合い方を考えることがテーマです。学校とのかかわりで困ったことをグループで話し合い、そこでの話をもとに私たちが対談するというものでした。
参加者が多いので、すべてのグループでの話し合いの内容を共有することはできませんでしたが、指名させていただいた方の話は多くの方と共通したものでした。皆さんからの意見を斎藤さんがリアルタイムでホワイトボードに整理してくれます。それをもとにどのようすればよいかを二人で話しました。斎藤さんは、自分はどのように対応してきたか、どのように考えるとよいのかを経験をもとに、具体的にわかりやすく伝えてくださいます。私がそこに足すことはほとんどなく、それではと、私からは外部の人には見えない学校独特の事情についてお話させていただきました。ボランティアの方々からすれば、学校は自分たちの意見を聞いてくれない、新しいことをやろうとしないと感じることが多いようですが、外部の方が思う以上に学校の自由度は低いのです。特に予算は流用が難しいので、お金が必要なことはそう簡単に新規に取り組むことはできません。学校はこういった細かい事情を外部の方に説明することはあまりしないので、この機会に知っていただけたのはよかったようです。互いに事情がわかった上で、意見を交換できるようになってくれるとうれしいです。

今回、研修の参加者が多かったのには驚きました。早くからコミュニティ・スクールに取り組んできた市なので、学校運営にかかわる意識の高い方が多いのだと思います。また、教育長が忙しい中、研修にずっと参加してくださいました。特にボランティアの皆さんが意見を発表する時には、その思いをしっかり受け止めようと真摯に耳を傾けていらっしゃいました。教育長がこういう姿勢だからこそ、このボランティアの姿があるのだと思います。私自身、よい学びの機会をいただけました。

担当者は準備から終わった後までとても精力的に動かれる、エネルギーにあふれる方でした。こちらも頑張ろうという気持ちにさせられます。また、他市からもわざわざ参加して下さる方もいらっしゃいました。ありがたいことです。元気とやる気をいただきました。
後日、お送りいただいたアンケートのまとめを見ると、思った以上によい評価をいただけたようで、とてもうれしく思いました。斎藤さんとのコラボだったからこその評価でしょう。
このような形の研修の需要があるという手ごたえを感じています。是非、他の市町からもお声がけをいただけきたらと思っています。

体育大会で元気をいただく

今年は毎度の週末台風の影響で、運動会や体育大会の開催に苦労された学校がたくさんありました。朝から職員総出でグランドの水を雑巾で吸い取って実施にこぎつけた学校。2回に分けて実施せざるを得なかった学校。延期延期で予備日がなくなり、それでも中止にせずに雨の隙間を縫って実施した学校。校長は難しい判断を迫られ、本当に大変だったと思います。校長を退職された方は、「ああ、退職していてよかった」としみじみ思われたことと思います(笑)。

そんな中、私が学校運営協議会の委員をしている中学校では、時々小雨がぱらつく状態でしたが、朝からグランドを整備し、開始を1時間以上遅らせてなんとか開催にこぎつけました。いつもならグランドに整列して行うセレモニーやストレッチですが、セレモニーは観覧席で、ストレッチは予め教室内で行うという状況でした。
この日目についたのは各学年の観覧席に設営されたテントです。熱中症対策にと町内会にお願いしてお借りしたものですが、雨除けという思わぬ形で役に立っていました。学年ごとに同じ町内会の物を使い、町内会の名前が書きこまれた面を正面にして張っていました。校長は名前を見せることで学年の固まりがよくわかるようにしたと話されましたが、他にも思いがあるように感じました。
それは会場に来られた保護者の方に、学校は地域の方に支えられていることを感じてほしいということです。ともすると、保護者は学校を支えているのは行政と先生、保護者だけだと考えがちです。仕事や子育てに追われている時期ですので、地域とのかかわりが薄く、意識されづらいのはしかたありません。だからこそ、こういった形で自分たちの子どもが地域に支えられていることを知ってもらうことは大切だと思います。

もう一つ、今回は大きな変化がありました。例年、来賓の方は1つ目か2つ目の競技が終わるとほとんどの方が退席されますが、この日は多くの方が午前中の競技が終わるまで残っておられたことです。競技に見入っていたのでしょうか、コーナーがどうとか、どっちが速いとかといった言葉が耳に入ります。こんなことは今までありませんでした。今年はすべての競技のスタートかゴールのどちらかを来賓がいる本部席の正面にもってきましたが、どうやらその効果が表れたようです。昨年度のアンケートに、本部席でもゴールシーンが見られるとよいと書かれたことを受けて、試行したそうです。いただいた意見を素直に受け止める姿勢は素晴らしいと思います。私としては子どもたちがゴールシーンを間近で見られなくなったことに後ろめたさを感じたのですが、子どもたちはそんなことは微塵も気にしていないのでしょう、素晴らしい声援を送っていました。

子どもたちのために頑張ろう、少しでもよいものにしていこうとする先生方の姿勢と子どもたちのエネルギーに元気をいただきました。

ワークシートの功罪を考える

中学校で授業アドバイスを行ってきました。この日は2、3年生の授業での子どもたちの様子を1時間ずつ見ることと、道徳の授業のアドバイスを行いました。

子どもたちはとても落ち着いていて、教師との人間関係も悪くないと思います。しかし、授業は基本的に教師の説明が中心で進んで行きます。大切なところだからマークするようにといった指示が目立ちます。教師が子どもに問いかける場面も見受けられるのですが、一部の反応する子どもとのやり取りだけで、他の子どもは結論を教師が説明するのを待っています。そのため結論やポイントが板書されると話を聞くよりもすぐに写そうとします。一部の例外はありますが、教師に全員参加をさせようという意識が低いように思われました。また、教師の説明は覚えることや答の解説が中心で、考え方や思考の過程を共有する場面はほとんど見られませんでした。
この状況を作っている要因としては、ワークシートの利用があると思います。どの授業も必ずと言っていいほど穴埋めのワークシートを使って進めていきます。子どもたちは、穴が空いていると埋めなくてはいけないと考えます。試験対策のこともあって、穴を埋めることを第一の目的にします。そのため、穴埋めが目的化して、結論に至る思考の過程を意識しなかったり、そもそも自分で考えようとせずに結論だけを得ようとしたりします。一方、教師からすると、穴埋めすることで子どもたちは最低限の参加はしてくれますし、ノートを忘れた子どもがいても、ワークシートはその場で配るので叱らずに授業を進められます。何かと都合がよいのです。子どもが荒れていて授業になかなか参加しないような学校や地区では、このような理由でワークシートが多用される傾向があります。この学校のまわりでは、荒れ気味な学校が多いのかもしれません。
しかし、少なくともこの学校では子どもたちは落ち着いていて、授業に対する姿勢は前向きなのですから、ワークシートに頼る必要性は感じません。子どもたちは、教師が求めればもっと積極的に参加しますし(一部の授業ではそういう姿が見られました)、子どもの考えをつなぐことで(かかわることを求めれば、ちゃんとかかわれていました)より深い学びが実現できるはずです。今の状況で先生方が満足してしまっているように見えることが一番の課題のように思いました。

1年生の道徳の授業は読み物教材を活用するものでした。
授業者は、来年度の道徳の教科化を見据えて、教科書を活用することを意識した授業に挑戦してくれました。今回は教科書の活用を想定して副読本をもとにした授業構成でした。
授業者の範読後、読み物の内容の確認を行います。この授業でもワークシートが登場します。子どもたちはテキストを見ながら穴を埋めます。授業者は「時間がほしい人」と全員に穴埋めを完成させようとしますが、資料の読み取りのために時間をつかうのはムダです。道徳ではできるだけ短い時間で読み取らせる、理解させることが大切です。内容を理解してからが勝負なのです。こういう場面こそ、教師が一方的に説明してほしいと思います。結局、読み取りだけで15分ほども時間を使ってしまいました。
授業者は日ごろ道徳の授業を、自分で資料を探してオリジナルの教材でおこなっています。この日はふだんの道徳の授業と様子が違うので子どもたちが戸惑っていたのでしょうか、積極的に手を挙げて答えてくれる子どもがほとんどいませんでした。また、読み取りの場面などは正解がありそうなので余計に答えにくかったのかもしれません。授業者が整理して板書したことは写す必要がないのにワークシートに書き込みます。ここにもワークシートの弊害が表れているように思いました。
教材は相田みつをさんの息子さんの話で、相田さんが同じことでも異なった見方をする人であったことを子どものころの思い出とともにつづったものです。最後に相田みつをさんの矛盾するかのような2つの言葉が示されます。
授業者は「人の夢をつぶす」「暴力をふるう」人をどう思うと問いかけてから、実はこれはアンパンマンのバイキンマンに対する行為であると、視点の違いを考えさせます。とても面白いのですが、わざわざ読み物と同じ内容の話をもう一度することに意味があるかは疑問でした。また、授業者は「何が大切?どっち?」「共通のキーワードを探して?」といった言葉を発しますが、一つ間違えると正解探しにつながる言葉です。これも、子どもたちの積極的な挙手が少なかった一員でないかと思います。
発言に対して「いいですねー」と反応する場面も目につきました。行動や態度をほめるのならよいのですが、考えや意見に対してこのような言葉を使うと価値の押しつけにつながります。道徳では気を付けたいところです。
グループで考えを聞き合う場面がありましたが、最後にグループで発表させました。グループでの発表にするとどうしても一つにまとめようとする力が働くので、特に道徳では避けたほうがよいでしょう。「どんな考えがでてきた?」「他のグループでは同じような意見はあった?」「あなたはそれをどう思った?」というように、個人の考えを聞き、他とつなぐことを意識するとよいと思います。
また、発表されたことを授業者が板書しましたが、そうすると意見を聞くことよりもワークシートに写すことを優先する子どもが出てきます。こういう場面でもワークシートのありようを考える必要がありそうです。
教科書を想定しなければ、授業者は読み物を使わずに最初からアンパンマンを使って授業を進めたのではないかと思います。教科書を意識することで授業の自由度が狭められてしまったように感じました。教科書を使うと、教科書の内容を教えなければいけないような気持ちになってしまい、その結果、無意識に正解探し、価値観の誘導につながるような展開に陥ってしまうようです。教科書に縛られすぎず、目の前の子どもの状況に応じて、どうやって考えさせる、気づかせるかを考えてほしいと思います。
この授業は教科書を意識すると授業が窮屈なものになる可能性に気づかせてくれました。私にとってもよい学びとなりました。今回授業者が気づいたことを学校全体で共有して、今後の参考にしてほしいと思いました。

この日の見た道徳以外の授業については個別に先生方とはお話ししませんでした。その代りに、ずっと同行して下さった教務主任に時間をかけて私の考えを伝えました。教務主任は私の話を受けて自分の言葉で先生方に伝えようとして下さいました。教務主任が自ら動いて授業を変えていこうとする姿勢は素晴らしいと思います。私が年に数回訪問するだけで学校がよくなるということはまずあり得ません。よい方向に変わっていく学校は、必ず教務主任や教頭などが日常的に先生方にかかわっています。私がこの学校とかかわる機会はあと少しですが、どのように変化していくのか楽しみにしたいと思っています。

私立の中学校高等学校の授業公開3日目(長文)

前回の日記の続きです。

授業公開の最終日です。この日は授業後、教科ごとに公開授業の振り返りと全体での発表が行われました。

高校1年生の現代文の授業は、短い話をもとに物語の読み方を学習する授業でした。
以前に学習した羅生門の構成を復習してからこの話の読み取りをおこなっていきます。物語の構成がクライマックスに向かって盛り上がりエピローグにつながることを山形の線で表現し、物語全体の構造を視覚化します。
話の筋を追いながら授業者が問いかけ、子どもの発言に対して、「どこに書いてある」と本文と関連づけて根拠を確認し、黒板に書き込んでいきました。根拠をもって考えることを意識させているのはとてもよいことです。ただ、常に授業者主導で問いかけ、望む答が出てくれば「そうなんです」というように判定を下します。ここに時間をあまりかけたくないのでテンポよく進めたいのでしょうが、子どもたちに判断させる場面がもう少しあればよかったと思います。よく反応する子どもたちでしたが、それでも一部の子どもとのやり取りで進んで行きました。
続いて、登場人物の心情を確認します。黒板を横線で区切った下の段に、先ほど書き込んだ事実と時系列で対応付けて整理していきます。この場面でも授業者からの質問で進んでいきます。子どもの反応や発言をしっかりと受容できるのですが、「心細い」という発言に対して「いいですねえ」というような対応をします。自分の求める答に誘導しすぎのように見えました。
話全体で、事実と心情が整理できた後で、どこがクライマックスかを問いかけます。要素をもとに、構成を考えるという流れです。子どもたちはここで一段と集中力が上がりました。過去の経験から、この問いが大切な問いだと感じたのかもしれませんし、ひょっとすると考えるための手掛かりが板書に整理されているのでやる気がアップしたのかもしれません。
この話で重要な役割をしているのは誰かについて、考えをiPadで書かせてそれをグループウエアで共有しました。この後の展開に興味がありましたが時間の関係で見ることができなかったのが残念でした。
昨年と比べて授業が大きく変化していました。いろいろと勉強されているようです。今までと異なったスタイルに挑戦しているので、こなれていないところもありますが、どのような文章でも読み取れる力をつけようとしていることはよく伝わりました。
今は教師主導で物語を読み取る手順を体験させていますが、子どもたちの力がついてくれば、「読み取るために何をする?」「どこに着目する?」といった発問をすることで、見方・考え方を身につけさせてほしいと思います。
これからの変化がとても楽しみになる授業でした。

高校1年生の現代社会の授業の前半は、総合的な学習の時間のキャリア教育と関連づけて、産業構造について考える場面でした。
授業者は1人1台のiPad環境を活かすことで子どもたちが考える力をつけることを目指ししています。
ワークシートをもとに授業を進めますが、説明の時に子どもたちが手元を見てしまいます。せっかくICT環境が整っているのですから、ワークシートをスクリーンに映すことで子どもたちの顔を上げさせるとよいと思いました。また、グループで活動するのですが、男子が多いグループもあれば女子が多いグループもあります。できるだけ男女比が同じになるように調整するとよいでしょう。
第n次産業について確認をします。子どもに発言させるのですが、それに続いてすぐに授業者が説明してしまいます。他の子どもにつないで全員を参加させることを意識してほしいと思いました。
自分が将来就きたい職業は第何次産業であるかとその職業を選んだ理由を共有分析ツールのAIAIモンキーに書き込みませます。この時、IDがわからない子どもやログインに手間取る子どもが思いの他多いことが気になりました。この学校ではシングルサインオンを進めているのですが、まだすべてのソフトに対応できていないようでした。
自分の就きたい職業が第何次産業かを授業者にたずねる子どもがいましたが、授業者は考えるように促すだけで答えません。自分で調べたり考えたりさせようとするよい対応です。ただ、そこで子どもの動きが止まってしまう場合もありますので、様子を見て、困っているようであれば、友だちに相談したりネットで調べたりすることを促すとよいでしょう。
書き終った子どもたちがまわりの友だちと雑談をしています。そのため雰囲気が落ち着かなくなってきました。次の指示を予めしておくことが必要です。
子どもたちの書きこみをAIAIモンキーで処理して、就きたい産業はどのように分布しているかを共有します。以前に学習した、経済が発展していくと産業構造において高次のものが多くなっていくことを思い出させ、子どもたちの選択が第3次産業に集中していることとうまく結びつけました。実際の自分たちの状況と学習内容をうまく結びつけることで学んだことのリアリティが増します。誰が言った法則であるかを問いかけ、子どもたちにワークシートを見るように促します。続いて全員に声をそろえて「ペティクラーク」と言わせましたが、一方的に授業者が説明するのではなく、子どもたち思い出させる場面を作ったのはよいと思いました。ただ、ワークシートを見るように指示をするよりは、「誰だっけ」と問いかけた後、子どもたちの様子を見て、教科書やワークシートを調べる子どもの行動を価値付けしていった方が、自ら判断して行動する習慣がつくと思います。
ネット上にあげられた仕事に就きたい理由を、授業者が読み上げます。「なるほどね」「素敵だね」といった受容の言葉をはさみながらよいところを評価していきます。こうすることで授業者と子どもたちの関係もよくなりますし、子どもたちの書くことへの意欲も高まると思います。今後は授業者ではなく子ども同士が互いに評価し合う場面を作れるとよいと思います。
最初に理由がいくつあるかを記述し、続いて1つ目、2つ目と整理している子どもがいました。以前学習した考えを伝えるための表現技法を使っているねと評価して確認します。こういった技術を意識して価値付けしていることもとてもよいと思いますが、これは1学期に学習したことなので子どもたち自身に気づいてほしいところでした。「どんな技法を使っている?」と問いかけ子どもたちに言わせるようにするとよいでしょう。
授業の後半は1学期に学習した、死刑制度についての学習の続きです。
以前に、「胸の中の鈍いおもり」というオウム事件の死刑囚の刑の執行についての村上春樹の毎日新聞への寄稿を読ませています。それを踏まえて、死刑制度に賛成か反対かを書かせたものをもとに授業を進めます。学校で新聞のネット購読を契約していることを上手く活用しています。
友だちの意見を見たり聞いたりし、他の国々の制度などをもとに、再度ネット上に自分の考えを書き込みます。子どもたちはiPad上で情報を見ることができるので、せっかくグループになっていても直接にかわることはほとんどしません。iPad上の情報だけでなくリアルに友だちと意見交換することも大切です。意図的にそのような活動時間を組み込むことも必要でしょう。
自分の考えがまとまるとAIAIモンキーにアップします。アップされたものに、どのような言葉が使われ、どの言葉と関連付けられているのかをソフトが視覚化してくれます。前回との意見の違いを比較して、その変化の理由を考えることを促します。言葉と意見をリンクして見ることもでき、その考えをどう思うかと問いかけます。意見は違っていいが、相手に自分の考えをわかってもらうことが大切である。そのためには根拠が重要だと説明します。ここでも伝えるための技術が意識されています。ただ、授業者による口頭での説明が多いので、頭の中に残らない心配もあります。考えを整理するための視点や伝え方の技術といったポイントを黒板に書いて置くなどして、常に意識できるようにしておくとよいでしょう。
最後に、全体で自分たちの考えにどのような傾向があるかを簡単に確認し、次回、個々の意見をもとにより深く考えることを伝えて終わりました。
子どもたちは意見をよく書けるようになっています。書く力は、経験を積むことで身についてきます。いろいろな教科で子どもたちが文章を書く機会があるからこそでしょう。今の子どもたちは、ICT機器を使うことで書くことへの抵抗が減る傾向があります。ICT機器が書く力をつけることに大きく役立っていることを感じました。

数学科は、3つの授業が公開されましたが、どの授業もグラフィックカリキュレーターというグラフソフトを使うものでした。
高校2年生の数学は三角不等式の場面でした。
三角不等式を解くのに三角方程式の復習から入ります。気になったのが、問題を解くためのコツのようなものをもとに授業が進むことです。例えばsinは第1象限、第2象限で+だからxの値は…といった説明です。この後不等式に進むことを考えれば、単位円上で定義にもとづいてy座標の値がどうであるかを意識させることの方が本質です。三角不等式では定義をもとに単位円上を移動する点のy座標がどう変化するかに注目することでその意味が理解しやすいからです。解くためのテクニックに終始するのではなく、根拠となるもの(一番は定義)をまず意識させたいところです。
この授業でグラフソフトを使う場面を見ることができませんでしたが、sin 2xなどのグラフをソフトにかかせることで、不等式で考える範囲がどう変わるかを視覚的にとらえさせようとしたようです。ここで注意しなければいけないのは、ソフトがかいたグラフを根拠に考えさせて終わらせないことです。sin 2xとsin xのグラフの違いと式の関係を意識させ、周期が式の何で決定するのかといったことを考えることで、式とグラフを自由に行き来できる力をつけさせたいのです。「グラフソフトを使わないでもグラフがイメージできる力をつけるためにグラフソフトを使う」ことを意識できるとよいでしょう。
数学で子どもたちにつけたい力は解法を覚えることで身につくことではありません。関数を式で表わしたり、グラフで表わしたりすることで多面的に見ることができるようにしてほしいと思います。

高校3年生の数学は、微分を応用してグラフをかく場面でした。
この授業も機械的に問題を解く方法を教えるものでした。
y=x3(x-1)3のように(累乗の)積で表わされている関数は展開せずに微分すると教えますが、その意味を考えさせることはしません。累乗の積の形の多項式であれば、必ず累乗されている因数が導関数の因数となるからですが、そのことを押さえずに呪文のように教えます。これでは数学的な力はつきません。
グラフソフトでかいたグラフを参考に、増減表をつくってグラフをかきます。グラフソフトを使うのであれば、グラフを見てどんな特徴があるのかを見つけさせるとよいでしょう。それは式のどのようなところに表れているのかを考えさせることが大切です。少なくともy=0とした方程式が、x=0とx=3で3重解を持つことからx軸と接するが変曲点であることや、x=1/2で対称となること、したがってx=1/2で極値を持つことなど、このグラフの特徴は式を見ただけでわからなければいけません。その上で増減表を作ってみることでその意味がより分かりやすくなると思います。式やグラフ、微分や増減表と対話できる力が数学的な力であることを意識してほしいと思います。

高校3年生の他の数学の授業は積分の学習でした。
「微分すると何がわかる」「積分で何がわかる」といった問いかけから授業は始まりました。「傾き」「面積」というある意味結果の確認で過ぎていきます。そもそも微分係数や積分(定積分?)の定義・本質からわかることをきちんと押さえていないので、知識として結論を覚えるだけになります。ですから、2回微分は何を表わすといったことも覚えなければいけなくなります。きちんと定義を押さえて、そこを根拠に考えないと、物理等で利用することもできなくなります。
面積の求め方をパターンに分けて教えますが、本質的には面積は長さ(距離)をもとに考えることを押さえれば十分です。長さは必ず0以上であることを意識すれば、いくつものパターンをまる覚えする必要などないのです。また、面積を考えるためには高校の範囲では連続性が必要になりますが、そういった基本的なところを押さえていないことも気になりました。
どうしても、問題の解き方を教える、覚えさせることから脱却できていません。このことは授業者個人の問題ではなく、数学科全体で考えてほしい課題だと思います。
対称性のある関数とx軸とで囲まれた部分の面積を求める問題では、すぐに積分の式から始めます。置換積分を使って計算すればよいだけの簡単なものですが、だからこそまずは方針を立てることから始めてほしいと思います。グラフの様子や関数の性質から多様な解き方が考えられますが、とりあえず答が出てしまえば多くの子どもたちはそれ以上のことを考えようとしません。簡単な問題だからこそ、色々な視点で問題をみる練習をしたいところです。グラフの特徴と積分の式の関係に注目することで、色々なことが見えてきます。1次式で置換することは平行移動して考えることと同じであるといった感覚を持たせたいところです。そういったことを視覚的に理解するのにグラフツールを利用するとよいでしょう。
√x+√y=1のグラフと軸とで囲まれた面積を求める問題を解くのに、グラフツールを活用させようとしますが、子どもたちは自分のワークシートにはグラフをかきません。なぜそうなるのかを式を見ながらポイントを押さえて自分でグラフをかくことが必要です。根拠をもって論理的に解くということが意識されていないのが残念です。「y=の形に直さなければいけない」と説明しますが、グラフの概観をまず押さえなければいけません。x=の形に直した方がよい場合もあります(x、yについて対称ですからこの方程式では考えることに意味はありませんが)。本質はy=と直すことにあるのではなく、x、yどちらを細分化して(ΔxかΔy)考えるか(横に見るか、縦に見るか)なのです。
数学的な見方・考え方を子どもたちにどうやって身につけさせるか意識した授業展開を考えてほしいと思います。

公開授業の振り返りでは、短い時間の中でしたが、公開された授業のよさを見つけたり、各教科で大切にしたいことが整理されたりしていました。互いに授業を見あうことで学ぶ姿勢が定着してきたように思います。
私からは、子どもたちの様子と授業の今後の方向性、ICT機器の活用についてお話をさせていただきました。
中学校では、子どもの姿が昨年度の途中から大きく変化しました。教師との人間関係もよくなってきたと思います。授業中に笑顔もたくさん見られるようになってきました。教師の話を聞くようになり、ICT機器の活用が日常化するとともに書く力もついてきているように思います。これに満足せずに次のステージを目指してほしいと思います。子ども同士がかかわる場面を増やして、他者とかかわりながら学ぶ力をつけること。そして、子どもたちに学力(広い意味で)をつけるためにどのような活動が必要なのかを考えて授業を組み立てることを意識してほしいと思います。簡単なことではありませんが、きっとこれからもよい変化を見られることと期待します。
高等学校では、授業が3層に分かれてきたように思います。
1つ目は、子ども同士がかかわる活動を積極的に取り入れているものです。ただ子どもたちがかかわれば深い学びが生まれるわけではありません。どんな力をつけたいのか、そのためにはどのような活動をすればよいのかを意識して授業を組み立ててほしいと思います。
2つ目は、教師と子どもとの関係ができていて、教師と子どもとのかかわりもあり、子どもたちが授業にちゃんと参加しているものです。しかし、基本的には従来型の教師主導で問題の答を教えていることが中心なので、子どもたちを受け身の状況から能動的、主体的にどう変えるかが課題です。この授業で何を考えさせたいのかを明確にし、そのために子どもが興味を持つような発問を工夫することが必要になります。
3つ目は一方的に教師がしゃべり続けるものです。子どもは話を聞かずに、定期試験対策でノートを写すことだけをしています。そのような授業では、教師は子どもの様子を見る余裕もありません。まずは、常に笑顔を意識し、子どもを受容しながらコミュニケーションをとることから始めてほしいと思います。
ICT機器については、3つの使い方がこの学校では行われています。
1つは昔からあるCAIと呼ばれた、個別に問題を提示し正誤をソフトが判断するものです。こういったドリルを自作されている方もいます。決して悪い使い方ではありませんが、ドリルは子どもの意欲が無ければ効果はありません。ポイントは子どもの個別の状況にどれだけ対応できるかです。力に応じていくつかのレベルを用意することも必要ですし、ソフトまかせにせずに、子どもの状況に応じで教師が上手にかかわることも大切になります。
2つ目はツールとしての活用です。考えを整理したり、まとめたりするためには紙よりも優れたところがたくさんあります。またグラフソフトのように、簡単にはかけないグラフもすぐに見える形にして、思考を助けてくれるものもあります。問題はその道具を使うことで本来やりたいこと、考えたいことに集中できたか、より質の高い活動になったかどうかです。例えばグラフツールの活用であれば、グラフの形がわかったからそれでよいというわけではありません。そこから何を考えさせるのか、どう次の活動に活かすのかが問われるのです。
3つ目は、ネットワークを活用しての意見や思考の共有化、見える化です。これは環境を整えたからといって、それだけで成り立つ活動ではありません。子どもたちが自分の考えを持つことができ、表現する力をつけてきたからこそできる活用です。しかし、ただ共有化、見える化すれば力がつくわけではありません。子どもたちの考えを価値付けしながら整理、焦点化して考えをより深めることが必要です。このことはそれほど簡単なことではありません。教師の力量が問われます。このことを意識して授業に取り組み続けることで、教師も子どもも力をつけていくことと思います。

この3日間で多くのことに気づけ、学ぶことができました。特にICTについては1人1台のiPadの環境になったことで、先生方が意欲的に取り組んでいることわかりました。授業についても、様々な工夫が見られます。新しいことに取り組み、工夫することで新たな課題が今まで以上に浮かび上がってきます。互いに課題を共有しながら、学校全体で取り組むことで授業改善が進んで行くことが期待できます。今後学校がどのような方向に変わっていくのかとても楽しみです。

「第9回 教育笑いの会」申込み受付中

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名古屋で開催の「第9回 教育と笑いの会」の申込みが受付中です。

午前中には同じ会場で「出張授業深掘りセミナー」も開催されます。
野口芳宏先生の授業を堪能していただけます。

満席になることも予想されますので、申込みはお早目に!!

●期 日
平成30年12月1日(土)

●時 間
13時30分〜16時35分 (受付開始 13時00分)

●場 所
東建ホール・丸の内
名古屋市中区丸の内2-1-33
※地下鉄桜通線・鶴舞線「丸の内」駅下車1番出口より徒歩1分

●参加費
3,000円 ※同日午前開催の「授業深掘りセミナー」(参加費2,000円)とのセット券4,000円もあります。
⇒ 深掘りセミナー 詳細へ

●定 員
200名 ※定員になり次第締め切らせていただきます。

●主 催
教育と笑いの会 / 授業と学び研究所

●協 賛
EDUCOM

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