私立の中学校高等学校の授業公開3日目(長文)

前回の日記の続きです。

授業公開の最終日です。この日は授業後、教科ごとに公開授業の振り返りと全体での発表が行われました。

高校1年生の現代文の授業は、短い話をもとに物語の読み方を学習する授業でした。
以前に学習した羅生門の構成を復習してからこの話の読み取りをおこなっていきます。物語の構成がクライマックスに向かって盛り上がりエピローグにつながることを山形の線で表現し、物語全体の構造を視覚化します。
話の筋を追いながら授業者が問いかけ、子どもの発言に対して、「どこに書いてある」と本文と関連づけて根拠を確認し、黒板に書き込んでいきました。根拠をもって考えることを意識させているのはとてもよいことです。ただ、常に授業者主導で問いかけ、望む答が出てくれば「そうなんです」というように判定を下します。ここに時間をあまりかけたくないのでテンポよく進めたいのでしょうが、子どもたちに判断させる場面がもう少しあればよかったと思います。よく反応する子どもたちでしたが、それでも一部の子どもとのやり取りで進んで行きました。
続いて、登場人物の心情を確認します。黒板を横線で区切った下の段に、先ほど書き込んだ事実と時系列で対応付けて整理していきます。この場面でも授業者からの質問で進んでいきます。子どもの反応や発言をしっかりと受容できるのですが、「心細い」という発言に対して「いいですねえ」というような対応をします。自分の求める答に誘導しすぎのように見えました。
話全体で、事実と心情が整理できた後で、どこがクライマックスかを問いかけます。要素をもとに、構成を考えるという流れです。子どもたちはここで一段と集中力が上がりました。過去の経験から、この問いが大切な問いだと感じたのかもしれませんし、ひょっとすると考えるための手掛かりが板書に整理されているのでやる気がアップしたのかもしれません。
この話で重要な役割をしているのは誰かについて、考えをiPadで書かせてそれをグループウエアで共有しました。この後の展開に興味がありましたが時間の関係で見ることができなかったのが残念でした。
昨年と比べて授業が大きく変化していました。いろいろと勉強されているようです。今までと異なったスタイルに挑戦しているので、こなれていないところもありますが、どのような文章でも読み取れる力をつけようとしていることはよく伝わりました。
今は教師主導で物語を読み取る手順を体験させていますが、子どもたちの力がついてくれば、「読み取るために何をする?」「どこに着目する?」といった発問をすることで、見方・考え方を身につけさせてほしいと思います。
これからの変化がとても楽しみになる授業でした。

高校1年生の現代社会の授業の前半は、総合的な学習の時間のキャリア教育と関連づけて、産業構造について考える場面でした。
授業者は1人1台のiPad環境を活かすことで子どもたちが考える力をつけることを目指ししています。
ワークシートをもとに授業を進めますが、説明の時に子どもたちが手元を見てしまいます。せっかくICT環境が整っているのですから、ワークシートをスクリーンに映すことで子どもたちの顔を上げさせるとよいと思いました。また、グループで活動するのですが、男子が多いグループもあれば女子が多いグループもあります。できるだけ男女比が同じになるように調整するとよいでしょう。
第n次産業について確認をします。子どもに発言させるのですが、それに続いてすぐに授業者が説明してしまいます。他の子どもにつないで全員を参加させることを意識してほしいと思いました。
自分が将来就きたい職業は第何次産業であるかとその職業を選んだ理由を共有分析ツールのAIAIモンキーに書き込みませます。この時、IDがわからない子どもやログインに手間取る子どもが思いの他多いことが気になりました。この学校ではシングルサインオンを進めているのですが、まだすべてのソフトに対応できていないようでした。
自分の就きたい職業が第何次産業かを授業者にたずねる子どもがいましたが、授業者は考えるように促すだけで答えません。自分で調べたり考えたりさせようとするよい対応です。ただ、そこで子どもの動きが止まってしまう場合もありますので、様子を見て、困っているようであれば、友だちに相談したりネットで調べたりすることを促すとよいでしょう。
書き終った子どもたちがまわりの友だちと雑談をしています。そのため雰囲気が落ち着かなくなってきました。次の指示を予めしておくことが必要です。
子どもたちの書きこみをAIAIモンキーで処理して、就きたい産業はどのように分布しているかを共有します。以前に学習した、経済が発展していくと産業構造において高次のものが多くなっていくことを思い出させ、子どもたちの選択が第3次産業に集中していることとうまく結びつけました。実際の自分たちの状況と学習内容をうまく結びつけることで学んだことのリアリティが増します。誰が言った法則であるかを問いかけ、子どもたちにワークシートを見るように促します。続いて全員に声をそろえて「ペティクラーク」と言わせましたが、一方的に授業者が説明するのではなく、子どもたち思い出させる場面を作ったのはよいと思いました。ただ、ワークシートを見るように指示をするよりは、「誰だっけ」と問いかけた後、子どもたちの様子を見て、教科書やワークシートを調べる子どもの行動を価値付けしていった方が、自ら判断して行動する習慣がつくと思います。
ネット上にあげられた仕事に就きたい理由を、授業者が読み上げます。「なるほどね」「素敵だね」といった受容の言葉をはさみながらよいところを評価していきます。こうすることで授業者と子どもたちの関係もよくなりますし、子どもたちの書くことへの意欲も高まると思います。今後は授業者ではなく子ども同士が互いに評価し合う場面を作れるとよいと思います。
最初に理由がいくつあるかを記述し、続いて1つ目、2つ目と整理している子どもがいました。以前学習した考えを伝えるための表現技法を使っているねと評価して確認します。こういった技術を意識して価値付けしていることもとてもよいと思いますが、これは1学期に学習したことなので子どもたち自身に気づいてほしいところでした。「どんな技法を使っている?」と問いかけ子どもたちに言わせるようにするとよいでしょう。
授業の後半は1学期に学習した、死刑制度についての学習の続きです。
以前に、「胸の中の鈍いおもり」というオウム事件の死刑囚の刑の執行についての村上春樹の毎日新聞への寄稿を読ませています。それを踏まえて、死刑制度に賛成か反対かを書かせたものをもとに授業を進めます。学校で新聞のネット購読を契約していることを上手く活用しています。
友だちの意見を見たり聞いたりし、他の国々の制度などをもとに、再度ネット上に自分の考えを書き込みます。子どもたちはiPad上で情報を見ることができるので、せっかくグループになっていても直接にかわることはほとんどしません。iPad上の情報だけでなくリアルに友だちと意見交換することも大切です。意図的にそのような活動時間を組み込むことも必要でしょう。
自分の考えがまとまるとAIAIモンキーにアップします。アップされたものに、どのような言葉が使われ、どの言葉と関連付けられているのかをソフトが視覚化してくれます。前回との意見の違いを比較して、その変化の理由を考えることを促します。言葉と意見をリンクして見ることもでき、その考えをどう思うかと問いかけます。意見は違っていいが、相手に自分の考えをわかってもらうことが大切である。そのためには根拠が重要だと説明します。ここでも伝えるための技術が意識されています。ただ、授業者による口頭での説明が多いので、頭の中に残らない心配もあります。考えを整理するための視点や伝え方の技術といったポイントを黒板に書いて置くなどして、常に意識できるようにしておくとよいでしょう。
最後に、全体で自分たちの考えにどのような傾向があるかを簡単に確認し、次回、個々の意見をもとにより深く考えることを伝えて終わりました。
子どもたちは意見をよく書けるようになっています。書く力は、経験を積むことで身についてきます。いろいろな教科で子どもたちが文章を書く機会があるからこそでしょう。今の子どもたちは、ICT機器を使うことで書くことへの抵抗が減る傾向があります。ICT機器が書く力をつけることに大きく役立っていることを感じました。

数学科は、3つの授業が公開されましたが、どの授業もグラフィックカリキュレーターというグラフソフトを使うものでした。
高校2年生の数学は三角不等式の場面でした。
三角不等式を解くのに三角方程式の復習から入ります。気になったのが、問題を解くためのコツのようなものをもとに授業が進むことです。例えばsinは第1象限、第2象限で+だからxの値は…といった説明です。この後不等式に進むことを考えれば、単位円上で定義にもとづいてy座標の値がどうであるかを意識させることの方が本質です。三角不等式では定義をもとに単位円上を移動する点のy座標がどう変化するかに注目することでその意味が理解しやすいからです。解くためのテクニックに終始するのではなく、根拠となるもの(一番は定義)をまず意識させたいところです。
この授業でグラフソフトを使う場面を見ることができませんでしたが、sin 2xなどのグラフをソフトにかかせることで、不等式で考える範囲がどう変わるかを視覚的にとらえさせようとしたようです。ここで注意しなければいけないのは、ソフトがかいたグラフを根拠に考えさせて終わらせないことです。sin 2xとsin xのグラフの違いと式の関係を意識させ、周期が式の何で決定するのかといったことを考えることで、式とグラフを自由に行き来できる力をつけさせたいのです。「グラフソフトを使わないでもグラフがイメージできる力をつけるためにグラフソフトを使う」ことを意識できるとよいでしょう。
数学で子どもたちにつけたい力は解法を覚えることで身につくことではありません。関数を式で表わしたり、グラフで表わしたりすることで多面的に見ることができるようにしてほしいと思います。

高校3年生の数学は、微分を応用してグラフをかく場面でした。
この授業も機械的に問題を解く方法を教えるものでした。
y=x3(x-1)3のように(累乗の)積で表わされている関数は展開せずに微分すると教えますが、その意味を考えさせることはしません。累乗の積の形の多項式であれば、必ず累乗されている因数が導関数の因数となるからですが、そのことを押さえずに呪文のように教えます。これでは数学的な力はつきません。
グラフソフトでかいたグラフを参考に、増減表をつくってグラフをかきます。グラフソフトを使うのであれば、グラフを見てどんな特徴があるのかを見つけさせるとよいでしょう。それは式のどのようなところに表れているのかを考えさせることが大切です。少なくともy=0とした方程式が、x=0とx=3で3重解を持つことからx軸と接するが変曲点であることや、x=1/2で対称となること、したがってx=1/2で極値を持つことなど、このグラフの特徴は式を見ただけでわからなければいけません。その上で増減表を作ってみることでその意味がより分かりやすくなると思います。式やグラフ、微分や増減表と対話できる力が数学的な力であることを意識してほしいと思います。

高校3年生の他の数学の授業は積分の学習でした。
「微分すると何がわかる」「積分で何がわかる」といった問いかけから授業は始まりました。「傾き」「面積」というある意味結果の確認で過ぎていきます。そもそも微分係数や積分(定積分?)の定義・本質からわかることをきちんと押さえていないので、知識として結論を覚えるだけになります。ですから、2回微分は何を表わすといったことも覚えなければいけなくなります。きちんと定義を押さえて、そこを根拠に考えないと、物理等で利用することもできなくなります。
面積の求め方をパターンに分けて教えますが、本質的には面積は長さ(距離)をもとに考えることを押さえれば十分です。長さは必ず0以上であることを意識すれば、いくつものパターンをまる覚えする必要などないのです。また、面積を考えるためには高校の範囲では連続性が必要になりますが、そういった基本的なところを押さえていないことも気になりました。
どうしても、問題の解き方を教える、覚えさせることから脱却できていません。このことは授業者個人の問題ではなく、数学科全体で考えてほしい課題だと思います。
対称性のある関数とx軸とで囲まれた部分の面積を求める問題では、すぐに積分の式から始めます。置換積分を使って計算すればよいだけの簡単なものですが、だからこそまずは方針を立てることから始めてほしいと思います。グラフの様子や関数の性質から多様な解き方が考えられますが、とりあえず答が出てしまえば多くの子どもたちはそれ以上のことを考えようとしません。簡単な問題だからこそ、色々な視点で問題をみる練習をしたいところです。グラフの特徴と積分の式の関係に注目することで、色々なことが見えてきます。1次式で置換することは平行移動して考えることと同じであるといった感覚を持たせたいところです。そういったことを視覚的に理解するのにグラフツールを利用するとよいでしょう。
√x+√y=1のグラフと軸とで囲まれた面積を求める問題を解くのに、グラフツールを活用させようとしますが、子どもたちは自分のワークシートにはグラフをかきません。なぜそうなるのかを式を見ながらポイントを押さえて自分でグラフをかくことが必要です。根拠をもって論理的に解くということが意識されていないのが残念です。「y=の形に直さなければいけない」と説明しますが、グラフの概観をまず押さえなければいけません。x=の形に直した方がよい場合もあります(x、yについて対称ですからこの方程式では考えることに意味はありませんが)。本質はy=と直すことにあるのではなく、x、yどちらを細分化して(ΔxかΔy)考えるか(横に見るか、縦に見るか)なのです。
数学的な見方・考え方を子どもたちにどうやって身につけさせるか意識した授業展開を考えてほしいと思います。

公開授業の振り返りでは、短い時間の中でしたが、公開された授業のよさを見つけたり、各教科で大切にしたいことが整理されたりしていました。互いに授業を見あうことで学ぶ姿勢が定着してきたように思います。
私からは、子どもたちの様子と授業の今後の方向性、ICT機器の活用についてお話をさせていただきました。
中学校では、子どもの姿が昨年度の途中から大きく変化しました。教師との人間関係もよくなってきたと思います。授業中に笑顔もたくさん見られるようになってきました。教師の話を聞くようになり、ICT機器の活用が日常化するとともに書く力もついてきているように思います。これに満足せずに次のステージを目指してほしいと思います。子ども同士がかかわる場面を増やして、他者とかかわりながら学ぶ力をつけること。そして、子どもたちに学力(広い意味で)をつけるためにどのような活動が必要なのかを考えて授業を組み立てることを意識してほしいと思います。簡単なことではありませんが、きっとこれからもよい変化を見られることと期待します。
高等学校では、授業が3層に分かれてきたように思います。
1つ目は、子ども同士がかかわる活動を積極的に取り入れているものです。ただ子どもたちがかかわれば深い学びが生まれるわけではありません。どんな力をつけたいのか、そのためにはどのような活動をすればよいのかを意識して授業を組み立ててほしいと思います。
2つ目は、教師と子どもとの関係ができていて、教師と子どもとのかかわりもあり、子どもたちが授業にちゃんと参加しているものです。しかし、基本的には従来型の教師主導で問題の答を教えていることが中心なので、子どもたちを受け身の状況から能動的、主体的にどう変えるかが課題です。この授業で何を考えさせたいのかを明確にし、そのために子どもが興味を持つような発問を工夫することが必要になります。
3つ目は一方的に教師がしゃべり続けるものです。子どもは話を聞かずに、定期試験対策でノートを写すことだけをしています。そのような授業では、教師は子どもの様子を見る余裕もありません。まずは、常に笑顔を意識し、子どもを受容しながらコミュニケーションをとることから始めてほしいと思います。
ICT機器については、3つの使い方がこの学校では行われています。
1つは昔からあるCAIと呼ばれた、個別に問題を提示し正誤をソフトが判断するものです。こういったドリルを自作されている方もいます。決して悪い使い方ではありませんが、ドリルは子どもの意欲が無ければ効果はありません。ポイントは子どもの個別の状況にどれだけ対応できるかです。力に応じていくつかのレベルを用意することも必要ですし、ソフトまかせにせずに、子どもの状況に応じで教師が上手にかかわることも大切になります。
2つ目はツールとしての活用です。考えを整理したり、まとめたりするためには紙よりも優れたところがたくさんあります。またグラフソフトのように、簡単にはかけないグラフもすぐに見える形にして、思考を助けてくれるものもあります。問題はその道具を使うことで本来やりたいこと、考えたいことに集中できたか、より質の高い活動になったかどうかです。例えばグラフツールの活用であれば、グラフの形がわかったからそれでよいというわけではありません。そこから何を考えさせるのか、どう次の活動に活かすのかが問われるのです。
3つ目は、ネットワークを活用しての意見や思考の共有化、見える化です。これは環境を整えたからといって、それだけで成り立つ活動ではありません。子どもたちが自分の考えを持つことができ、表現する力をつけてきたからこそできる活用です。しかし、ただ共有化、見える化すれば力がつくわけではありません。子どもたちの考えを価値付けしながら整理、焦点化して考えをより深めることが必要です。このことはそれほど簡単なことではありません。教師の力量が問われます。このことを意識して授業に取り組み続けることで、教師も子どもも力をつけていくことと思います。

この3日間で多くのことに気づけ、学ぶことができました。特にICTについては1人1台のiPadの環境になったことで、先生方が意欲的に取り組んでいることわかりました。授業についても、様々な工夫が見られます。新しいことに取り組み、工夫することで新たな課題が今まで以上に浮かび上がってきます。互いに課題を共有しながら、学校全体で取り組むことで授業改善が進んで行くことが期待できます。今後学校がどのような方向に変わっていくのかとても楽しみです。

「第9回 教育笑いの会」申込み受付中

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名古屋で開催の「第9回 教育と笑いの会」の申込みが受付中です。

午前中には同じ会場で「出張授業深掘りセミナー」も開催されます。
野口芳宏先生の授業を堪能していただけます。

満席になることも予想されますので、申込みはお早目に!!

●期 日
平成30年12月1日(土)

●時 間
13時30分〜16時35分 (受付開始 13時00分)

●場 所
東建ホール・丸の内
名古屋市中区丸の内2-1-33
※地下鉄桜通線・鶴舞線「丸の内」駅下車1番出口より徒歩1分

●参加費
3,000円 ※同日午前開催の「授業深掘りセミナー」(参加費2,000円)とのセット券4,000円もあります。
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●定 員
200名 ※定員になり次第締め切らせていただきます。

●主 催
教育と笑いの会 / 授業と学び研究所

●協 賛
EDUCOM

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