終日特定の学級を見る
先週末に、中学校の授業アドバイスをおこないました。今回は、終日2つの学級を中心に授業を見学し、その学級にかかわっている先生方に対してまとめてアドバイスをさせていただきました。
今回の子どもたちの様子を見て感じたことは、授業の雰囲気をつくっているのは授業者の個性や進め方よりも、学級集団の特性のようでした。 1つの学級は、子どもたちと教師との信頼関係がうまくできていないようでした。過去に友だちの発言をからかうようなことがあったようです。子どもたちが安心して発言できる状況を教師が保証できなかったので、信頼関係も崩れてしまったのです。先生方に次のようなことをお願いしました。 ・「わかった人」と正解を求めるような問いかけをしないこと ・どんな発言も「なるほど」とまず教師がきちんと受容すること ・その発言をポジティブに評価すること ・「同じ考えの人」「説明に納得した人」と問いかけることで、他の子どもとつなぐこと 残された時間はあまりありませんが、教師が子どもを認める、子ども同士が互いを認め合う雰囲気をつくることからやり直すのです。 もう1つの学級は、明るく元気な子どもが多いのですが、ちょっと落ち着きがありませんでした。どの時間でも共通していたのは、やるべきことが明確に指示されると取り組む姿勢を見せるのですが、集中力がすぐになくなり、同性間ですぐにおしゃべりを始めてしまうことです。学力的には2極化が進んでいるようです。できる子は終わってしまうとすることがない、できない子は途中で手が止まって集中力をなくす。そのために、ざわついてしまうようです。 ・課題に対して答えだけではなく理由の説明をきちんと求めること ・わからなければ友だちと相談できるようにすること ・課題をスモールステップに分けて、わからない子がつまずいたままになる時間を減らすこと ・座席を男女市松模様にすること このようなことをお願いしました。 できる子には説明などの高度な課題を与える。できない子どもには、わからない状態、手つかずの状態でいる時間を減らすことで、集中力を切らさないようにするわけです。また、同性間で相談すると無駄話になりやすいので、座席の工夫もします。 今回のような授業アドバイスのやり方は初めてでしたが、1つの学級にかかわる先生方が一緒に話をすることで、自分の抱えている問題が個人の問題ではないことに気づき、気持ちも楽になったようです。互いの授業の様子を共有化することで、注意すべき点も明確になり、共通の対応をとれるためにその効果もより期待できます。学級づくりを担任だけの問題ととらえるのではなく、かかわる先生方全員の問題ととらえることが大切だとあらためて思いました。 ネット時代の変化の速さ
昨日は、中学校で新1年生の保護者対象にお話しをさせていただきました。
皆さんには次のようなことをお願いしました。 ・子どもを無条件に愛する(よい子だから愛するのではない) ・子どもに家族としての役割を持たせる ・家庭の中で「ありがとう」のことばを大切にする ・子どもには職業観を話す ・学校も保護者も子どもの幸せを1番に考えている。互いに話を聞く姿勢を持つ 最後に携帯電話との付き合い方を話しました。 昨年はプロフという言葉を知らない保護者がかなりいたのですが、今年はほとんどいません。この変化の速さには驚きました。 昨年は、メール依存症やプロフの危険性を話していたのですが、今年は携帯ゲームについての話も付け加えました。1年前は携帯ゲームがこれほど問題になってくるとは思ってもいませんでした。子どもたちを取り巻く環境の変化がこれほど早いと、どうしても大人の対応が後手に回ってしまいます。新しいサービスや環境が出てきても変わらない、ネット時代を生きる基本を子どもたちにしっかり身につけさせることが大切だとあらためて思いました。 授業づくりの過程をみせる
昨日は、4月から活動予定の授業づくりプロジェクトについて、その進め方を仕掛け人と相談しました。
授業を発表することを目的とするのではなく、その授業がつくられていく過程を伝えることを大切にしたいと考えています。 ・どんな子どもの姿を目指したのか ・そのためにどんな手立てを考えたのか ・実際の子どもの姿はどうだったのか ・どのように修正したのか このような試行錯誤の上で、授業はつくられていきます。その過程をしっかり見せることで、授業づくりの視点が明確になり、よい授業の構成要素が明確になると思います。 公開授業ですばらしい授業をみて自分もまねしようとしたがうまくいかなかった。うちの子どもではダメだ。こんな言葉を聞くことがよくあります。 単に授業の流れや発問をまねてもうまくかないのは当然です。それまでにどう子どもたちを育ててきたかによって授業の姿は変わってくるからです。 1時間の授業は、それまでの積み重ねの上に成立しています。点でとらえるのではなく、そこに至る過程に注目することで初めて授業は理解でき、また再現できるのだと思います。 授業づくりの過程を明確することで、多くの先生方の参考になるプロジェクトにしたいと思っています。 グループ活動と全体指導
グループ活動やペア活動を取り入れる授業が増えてきます。友だちと学び合う楽しさを知る子どもたちが増えるのはとてもよいことです。このような授業を見ていておもしろいことに気づきました。グループ活動に入るときの子どもの様子の違いです。
ホッとした表情をして一瞬ざわつくときと、素早く机を移動して、うれしそうに活動を始めるときがあるのです。前者の場合もしばらくすれば子どもたちは落ち着き、グループ活動はきちんと成立するので、決して悪い状態ではないのですが、注意して観察してみると、グループ活動に入る前の状況に違いがあるようです。 子どもがホッとした表情をするのは、教師の一方的な説明が多く、ただ聞いているだけ、ノートを写しているだけの受け身の時間が続いていたときです。グループやペアで能動的に活動する楽しさを知っているので、よけいにつらいのです。グループ活動のよさを経験すると受け身の時間の集中力が以前と比べて落ちる傾向にあります。受け身の時間からやっと解放されたとホッとした表情になるのです。 一方、素早くグループ活動に取り組むときは、自分の考えを早く話したい、友だちの考えを聞きたいと、課題に主体的取り組む状態ができているときです。 「○○ってどういうことだと思う」 「△△じゃないですか」 「今の意見どう思う。なるほどと思った人手を挙げて。どこでそう思ったか教えてもらおうか」 ・・・ 「手を挙げていない人の考えも聞いてみようか」 「□□だと思います」 「違った意見が出てきたね。みんなどう思う。じゃあグループで相談してみようか」 このように、教師が問いかけて子どもの考えを発表させるなど、子どもが課題に入り込むための時間をとっているのです。グループ活動に慣れていると、友だちの話を聞く姿勢が育っているので能動的に聞くことができます。聞いたことをもとにしっかりと考えるのです。自分の考えを持てているので、友だちと早く意見を交換したいのです。 グループ活動や、ペア活動が子どもたちにとって充実したものであれば、全体指導でも子ども同士がかかわり、学び合うといった能動的になる場面をつくりやすくなります。反対に受け身の場面での集中力は落ちていきます。 グループ活動を取り入れるということは、全体指導の場面でも子どもたちが能動的になるような工夫が教師に要求されるということなのです。 ICT活用研究校訪問
先週、来年度ICT活用研究のお手伝いをする学校と打合せを行いました。私の方から無理を言って、授業の様子も見せていただきました。この子どもたちの様子であれば、ICTを工夫して使うことで、授業での関わり合いや集中度を高めることができると思いました。
ICTの活用研究というと、まず利用することが第一歩ととらえがちなのですが、この学校ではICTの活用以前にどのような授業を目指すかを明確にすることから始めていました。その上で、どのような場面でICTの出番があるかを考えるのです。そして、ただ使ってみるのではなく、きちんと従来の方法と比較して、どちらがより効果的かを検証しようとしています。このような視点を意識することで、ICTを使う、使わないにかかわらない、基本となる授業力の底上げを図ろうとしていることをしっかり感じました。 目指す授業像も「伝え合う、学び合う」ことをベースとしたしっかりものでした 目指す授業像、子どもの姿を明確にし、それに向かってどのような工夫をするかが、授業をよくしていくための基本です。ICTは黒板やプリントなどと同様に、ツールの一つにしか過ぎません。そのことをわかった上でそのよさを活かす場面を工夫することが大切です。このポイントしっかり押さえている学校です。足が地に着いた研究になることと、今後が楽しみになりました。 |
|