授業の方向性がそろっている学校

昨日は、小学校で授業アドバイスと授業解説をさせていただきました。すべて算数の授業です。この学校の努力目標の一つに算数が取り上げられているからです。1日算数の授業にかかわることはめったにないので、とても楽しい時間を過ごすことができました。

授業解説のたたき台となってくれた授業は、さすがベテランというべきものでした。子どもがよく育っていたので、聞く姿勢もできていました。しかし、机が横並びのために、後ろの方の子どもの発言を聞くときに、前の座席の子どもが聞きづらかったり、前を向いたままになっていたのがとても気になりました。基本的に聞く姿勢ができているので、座席をコの字型にするといった工夫が必要でしょう。

この授業でおもしろかったのが、子どもの発言が教師の予想を超えていたことです。
速さの導入の授業なのですが、最初に「速さ」について子どもに自由に意見を言わせたところ、すぐに「時間」がかかわること、「1秒で、1時間で」、「同じ距離を」といった基準を意識した言葉、キーワードが出てきました。
授業者は笑顔で子どもたちをとてもよくほめます。そのおかげで子どもたちは安心して意見を言ってくれます。このように子どもが育ったからこそ、教師の予想を超える発言をしてくれたのです。

しかし、研究授業ということもあり授業者は指導案の流れにこだわって、時間と道のりだけに焦点を当てて進めようとしました。しかし、たとえば「同じ距離」という子どもの言葉から「距離」に焦点化しようとしても、子どもは「同じ」に意識がいきます。速さに関して、当然のように関係する「距離」よりも「同じ」が子どもにとってはより注目すべきことだと考えたからです。
このように子どもからよい考えが出たときは、その場で他の子どもも土俵に上がれそうであれば、教師もそこに乗っかればいいのです。
この授業がうまくいかなかったわけではないのですが、同じ時間、同じ距離に注目して、どうすれば速さを比べられるかを先にやってから、練習をすればすっきりと進んだと思います。

授業アドバイスは、若手の先生を中心に6人の方の授業を見せていただきました。
授業後、どんな授業を心掛けているかを聞いたところ、「子どもたちが楽しいと感じる、思う授業」ということをどなたも言われました。この学校の目指すところが先生方に共有されているということです。ちょっと意地悪く、「楽しいとはどういうこと」と聞き返すと、「できる、わかること」とすぐに答えが返ってきました。このことにも感心しました。
ならばアドバイスは簡単です。何ができればよいのか、何がわかればよいのか、教師にとっても、子どもにとってもそのことが明確になるようにすることです。授業の最後にできた、わかったと感じるだけでなく、ステップごとにできた、わかったと子どもに実感させることがポイントです。

授業の場面ごとの目標をはっきりさせること
子どもたちにできた、分かったと実感させる場面を明確にしておくこと
そして、教師できれば友だちがポジティブに評価すること

このようなことを意識して授業をすることをお願いしました。

先生方が、一つの方向を向いて授業研究に取り組んでいることがとてもよくわかる学校でした。管理職、リーダーの先生がしっかり機能している学校です。今年度もう一度おじゃまする機会があります。そのときに、どのように授業が進化しているか今からとても楽しみです。

教材開発の会議に参加

昨日は教材開発に関する会議に参加しました。

授業や教材に関して、知識をいかに効率的に伝えるか、獲得させるかという視点が重視されていることが多いように最近感じます。

子どもの説明は不明確だからと、教師が無駄のない説明をする。
たとえよい考えや意見でも、教師が予定した説明につながらないものは取り上げない。
身につけるべき知識を効率的に習得することを意識して、きれいにまとめた教材。

子どもは、考えることは与えられた問題を教えられた手順に従って解くこと、知識を獲得するとは教師が指示したことを無駄なく覚えることと思ってしまうのではないでしょうか。そうならないために、問題を自ら気づく、発見する、解決する。そして、経験を通じて知識を獲得していく。こういうことを大切にしてほしいと思います。

自分たちで意見をつなぎながら結論を導く。
友だちのいろいろな考えに触れて視野を広げる経験を積ませる。
何が大切な知識か自分で考え、整理する。

学校での学びはこのようなことを大切にしなければ、質の悪い塾のようになってしまいます。逆にこのような学びは個人ではとても難しいことです。残念ながら、学校でこのような学びを経験できていない子どももある程度存在するのではないでしょうか。いろいろな考えに触れることなく、結論だけを示され、それを覚える。このような毎日を学校で送っている子どもたちに、少しでもいろいろな考えに触れ、自ら考える経験を積ませるような教材をつくることができないか。そんなことを考えながら会議に参加していました。何とか形にしたいものです。

子どもの姿を想像してワクワクする指導案検討

昨日は指導案作成のアドバイスをおこないました。前回(数学の課題のアイデア検討)のアイデアをもとに、授業者が用意した指導案を具体的に検討しました。

課題は教科書の姉が駅に向かう弟を追いかける問題に、電車の発車時刻を条件に加え、追いつく時刻と駅までの距離をもとに方程式の解を吟味させるものでした。数値の設定をどうするか、何をもとに解を吟味させるか、時間をかけて考えて来たことがよくわかるものでした。

話をしたのは、大きくは2つの点です。
1つは、問題を把握して式を立てるための手立てを子どもたちに考えさせる場面の進め方です。
授業者は線分図を使って自分で説明するつもりでした。文章題でつまずく子どもは、最初の一手がわかりません。何をすればよいかを、子どもたちの口から引き出すことをお願いしました。

そのためには、

「線分図に何を書き込む」「弟はどこにいる」「姉はどこにいる」といった問いかけを活用する。
一つの線分図に無駄なく書き込もうとするのではなく、出発後何分たったかわからないと位置を図に書けないことに気づかせる。
時間の要素を意識することで、時刻ごとの線分図を書いてみる。
追いついたときは短絡的に姉と弟の「距離」が等しいとするのではなく、まず「位置」が等しいことを押さえる。
位置を指定するのに「家から」何メートルと「起点」を問う。
2人とも家を起点にして位置が考えられるので、追いつた時は「家からの距離」が等しいことを利用する。

このようなことを話し合いました。

2つ目は課題で何を問うかです。
授業者は、何分後に追いつけるかを問い、姉の出発時間を5分後、10分後、15分後、20分後と4つ用意し、グループで分担して解かせるつもりでした。
しかし、塾等で解の吟味を経験していない子どもには、吟味する必然性はありません。また、弟は駅につけば発車まで電車を待っているということにも、意識が向きにくい問いかけです。何分後に追いつくかは、方程式の未知数を何にするかわかりやすくするためのこちら側の意図であり、現実にはあまり意味のある問いかけではないのです。
教師の多くは、「知りたいもの、求める物をxとおく」と教えますが、その前にもう一つ大切なことがあるのです。「何が分かれば、問題が解決するのか」です。この発想が実はもっと大切なのです。

この課題では、本来の目的である、「忘れ物を渡せるか」が問いであるべきです。解決するためには何分後に追いつくのか知ればわかりそうだ。そして、その結果をもとに渡せたかどうかを判断する。こういうプロセスをたどることで、方程式を利用して問題を解決するには、解の吟味が必要なことに子どもたち自身で気づきやすくなります。

姉の出発時刻も、教師が用意するのではなく、子どもたちに考えさせる方法もあります。「いつまでに出発すれば忘れ物を渡せる」という発問にすれば、子どもが出発時刻を変化させながら方程式を解くはずです。
電車の発車時刻より後の出発では間に合わないことにもすぐに気づくはずです。自然に解の吟味を意識するでしょう。
また、正確にいつまでに出発すれば間に合うかどうかを意識した子どもは、時刻を細かく変化させるはずです。そうすることで、関数としての視点も生まれてくるはずです。

同じ課題でも、どう問いかけるかで子どもの動きが大きく変わってきます。授業者そのことに気づいてくれたようです。どのような問いかけにするか、もう一度考えるようです。話し合っていて、子どもがどんな活動をするだろうか、どんな考えが出るだろうか、ワクワクしてきました。10月の授業がますます楽しみになってきました。

ベテランも若手も楽しめた研究会

先週末に参加した愛される学校づくり研究会は、来年東京でおこなうフォーラムのための授業検討の会でした。

教科に分かれて、具体的な指導案をもとに、参加者がいろいろな意見を自由な立場で発言します。

「子どもが自分のこととして考えるための手立てが必要なのでは」
「この場面は何のためにあるの」
「子どもには、その発想はないのでは」
「子どもからどんな言葉が出てくるだろうか」
・・・

子ども目線での発言がとても多いのが印象的でした。話を聞いていて、授業での子どもの姿がどんどん浮かんできます。参加した若い先生が、「冷房が利いているのに体が熱くなってきました」と言われたのが印象的でした。教員になってからこのような指導案の検討会を経験したことがなかったそうです。何としてもこの授業を見てみたいと思ったようです。

検討終了後、模擬授業をやってくださいと指名されたのは授業者ではなく、なんと検討会をとり仕切ってくれた司会の先生。突然のことにどうなるかと思いましたが、検討会で授業イメージができていたのでしょう、ためらいもなく模擬授業に入っていかれました。本番の授業者でもなく、専門教科も違っても、その場で対応できるのはさすがです。子ども役の発言を見事に切り返し、つないでいきます。参加した若手の先生方が一生懸命メモをとっています。緊張感のある、学び合える会となりました。

研究会の終了後、教科のまとめ役の校長先生が、「長らく授業をやっていないが、自分もこの単元の授業をやってみたくなった。自分だったら導入は、・・・」と本当に楽しそうに話をしてくださいました。
ベテランも若手も楽しめたとても充実した研究会でした。

子ども役が話したくなる模擬授業

先週末は模擬授業の解説と講演を研修で行ってきました。私がアドバイザーをしている学校の中堅の先生に授業をお願いしました。

社会科の雨温図の模擬授業でしたが、発問や課題が子どもたちにどのような活動を引き起こすか、子ども役になることで先生方によくわかったのではないかと思います。
雨温図がどの都市のものか根拠を持って考えるという課題は、資料集から答を探すのと違って子ども役の教師にとっても難しいものです。授業者の指示がなくても、子ども役の先生方は自然にまわりと相談をし始めました。特に同じ学校からの参加者のように人間関係が既にできているときは、その傾向が顕著です。子ども役の先生から「不安だとまわりを見たくなる、聞きたくなる」といった言葉が出てきました。
実際の子どもたちと違って、答があまり分かれなかったので、根拠をもとに全体で意見を聞きあう場面の緊張感はあまりありませんでした。しかし、「北海道の釧路だと思う雨温図は冬の雨量が少ないので、不安」という意見をうまく取り上げることができたり、子ども役の言葉から授業を進めることができました。
子どもの言葉を否定しない、わかった人と聞かない、わからない子どもが話せる、わからないことを友だち聞ける雰囲気をつくる。授業者はこの1年余りこのようなことを意識して授業をおこなってきました。ところが、私が具体的な場面で何を意識しているか尋ねても、すぐに答えが返ってきません。授業者にとっては、もう当り前のことになって意識しなくても自然にできるようになっていたのです。
教師にとって授業は毎日のことです。意識して授業をおこなえば、進歩は驚くほど早いものです。授業者もこの1年で本当に力をつけてきたのだと思いました。

今回の研修は昨年度と同じテーマで、2年続けて参加してくださった方も何名かいらっしゃいました。昨年より深いことも伝えたい、しかし初めての方に伝えておきたいこともある。そんなことを思ったため、情報量が多く、一方通行の度合いが高い講演になってしまいました。そのことを最後に授業者から、「今回の模擬授業のような双方向の活動のあるのと、講演のような一方通行とどちらがいいですか」とちょっぴり皮肉られました。自分の授業の方向性に確かなものを感じている証拠だと思います。
授業者の成長を素直に喜ぶと同時に、もっと質の高い話をしなければと反省しました。

模擬授業から学ぶ

昨日は、授業力アップの研修会でコーディネータを務めました。11月に行う授業研究のための模擬授業です。

小学校2年生の国語の読み取りの問題です。授業者は、日ごろの授業と異なる進め方にチャレンジしてみました。主人公の行動の理由を問う場面でしたが、授業者の想像以上に自分に引き付けて想像した答えが多く出ました。本文に基づいた根拠のある発言にならない理由は、子ども役が大人だったせいでしょうか。

模擬授業後、子ども役の先生方にグループで話し合ったことを発表してもらいました。教師の指示や課題を子どもの立場で聞くことでいろいろなことに気づきます。低学年では、子どもが感情移入しやすい作品が取り上げられます。そのため、教師が意図的に本文の表現とつなぐことをしないと、本文と離れていくことがわかりました。
また、子どもたちに役割を決めてグループでの話し合いをさせたのですが、発表者の言葉をオウム返しに言う役割が有効であるとの声が出ました。復唱してもらうことで、聞いてもらえたという安心感が起こるようです。このような、形から入る話し合いで、基本的なスキルを身につけさせ、学年が上がるに従って自分たちで自由に話し合って考えを深めるものに昇華させたいと授業者の学年は考えて取り組んでいるそうです。

いつもと違う進め方は、実際の授業では不安があるためなかなか挑戦できません。失敗を気にせずに挑戦できるのが模擬授業のよさです。挑戦したやり方のよい点、難しい点に気づくことができ授業者にとって学びが多かったと思います。また、他の参加者も子どもの視点で考えることで、授業者の意図と子どもの受け止め方の違いに気づき、たくさんのことを学んだと思います。
次回の授業でどのように指導案が変化するか、それに対して子どもたちがどのような反応をするか、私も含め参加者全員がとても楽しみになりました。

元気をもらえた研修会

昨日は、終日研修会の講師を務めました。8月の上旬におこなった研修会の続きです。(学びの多い研修会参照)

3つの模擬授業を参加者におこなってもらいました。授業者が準備した指導案をもとに事前にリハーサルをしながら指導案の検討をおこないます。発問や指示が子ども役にきちんと伝わらなかった。子どもになったつもりで話し合ったら答が分かれた。どのチームもよい雰囲気でそれぞれの授業について話し合っています。事前に検討することで、指導案が大きく変わったグループもありました。

1つ目の模擬授業は、小学校の国語の説明文の読み取りでした。1つの段落の文の内容にそって、教師が用意した絵を正しい順番に並べ替えることをグループでおこなう授業です。この授業のために絵を何セットも用意してくれました。
5つの文に対して、絵は7枚あります。ダミーが混ざることで子どもたちの話し合いの視点を増やそうという仕掛けです。
模擬授業はドラマの連続でした。授業者は文中の「ちりぢり」の意味にこだわりました。この文章を私たちが読んだとき、「ちりぢり」という言葉はそのまま読み流してしまうような表現でした。しかし、この言葉が2つの異なった答えに対して、判断を下す決め手になりました。この表現にこだわって絵を見れば、答が明確になったのです。授業者がこの言葉にこだわったのは、自分で絵を描いたからです。絵を描く手掛かりになった言葉だったのです。判断のキーワードとなることを意図して取り上げたわけではなかったのですが、結果として素晴らしい一手となりました。筆者は状況を説明する言葉として、「ちりぢり」という言葉を明確に選んでいたことがよくわかりました。国語は本文の表現にこだわることが大切であることを再認識させられました。

2つ目の模擬授業は、中学校の理科の月の満ち欠けです。空間の位置関係を相対的に理解しなければいけない難しい教材です。授業者は同僚に手伝ってもらって、ピンポン球を黄色と黒の2色に塗り分けて串を刺した教具を準備してくれました。このピンポン球を渡して、課題の説明をしたのですが、子ども役になりきった先生は、ピンポン球を回して遊びました。子どもは物をもらえばそれが気になるものです。道具を渡したらすぐに活動させる。そのためには、説明は道具を渡す前にすることが大切であることに気づかせてくれました。
月の公転に従って月がどう見えるか、太陽の方向に注意してピンポン球をモデルに観察することが課題です。子ども役の先生は、自然に隣同士で相談したり、確かめあったりしています。難しい課題は自然に相談したくなるのです。実際の子どもたちの場合は、まわりとかかわり合うことを普段からしていないと、なかなか相談できないこともあります。この課題は、ペアやグループで取り組んだ方がいい課題なのかもしれません。
授業者は2学期にこの授業を実際にやるのですが、本番では大きく変わっていると思うと言っていました。たくさんのことを学んでくれたようです。

3つ目の模擬授業は、小学校の体育でした。背中合わせで座った状態から立ち上がる、ペアでの活動を通じて、互いに協力し合う、コツを伝え合うものです。言語活動を意識して伝え合うことに重点を置いた授業です。子ども役の中にはなかなかうまくできずに、みんなのアドバイスをもらってやっとできたペアもありました。本当の子どもたちと同じように嬉しそうにしていました。体育のような実技教科はどうしてもうまい子どもにスポットがあたりがちですが、最初からできた子どもよりできるようになった子どもの方が感動は大きいはずです。こういった子どもたちに語らせることが、言語活動では大切であることに気づかされました。

2日間の研修の最後に、参加者全員に一言ずつ感想や学んだことを話していただきました。多くの先生が、この研修を通じて気づいたいろいろなことを2学期から実践したいと、前向きな気持ちを語ってくれました。コーディネートした私にとってこれほどうれしい言葉ありません。私にとっても大きな学びと元気をもらえた研修会でした。ありがとうございました。

小学校の現職教育

昨日は小学校の現職教育で、「子どもの言葉を生かした授業つくり」についてお話をさせていただきました。

子どもの言葉を生かすということはよく言われますが、それが果たしてどういうことなのか意外にはっきりとはしていないような気がします。子どもの言葉を生かすことのイメージがあるかどうか挙手してもらいましたが、それほど多くの方の手が挙がりませんでした。実際のところ、私も今回このテーマをいただくことで、あらためて整理し直して、やっと皆さんの前でお話ができる状態になったというところです。

教師の説明でわかるのではなく、子どもが子どもの言葉を聞いてわかっていく。教師は子どもの言葉をしっかり聞いて、子ども同士がつながるような働きかけをすることにエネルギーを使う。言葉にすれば簡単なことですが、現実にはとても難しいことです。
私の話に先生方が納得して、すぐにできるようになるなどと大それたことは思いません。先生方に、「子どもの言葉をしっかり聞こう」「子どもの言葉を子どもに返そう」「子どもの言葉、他の子につなごう」、そんな気持ちなっていただければと思っています。

今回、子どもの言葉を生かす授業をするとどんな子どもが育つかを、ある先生の授業ビデオで見ていただきました。どの先生も真剣に見てくださいました。子どもの言葉は拙く、不完全で言葉足らずです。そのため、子どもの言葉で授業を進めると時間がかかってしょうがないと思う方が多いように思います。しかし、この授業では通常だとまとめる直前の状態まで、授業時間の半分で進んでいます。教師のしゃべる時間が少なくなれば、子どもが話す時間を驚くほどたくさんとれるのです。

先生方が大変熱心に話を聞いてくださり、私も楽しい時間を過ごすことができました。また、よいテーマをいただいたことで、子どもの言葉生かすことに関して、いろいろと考え直したり整理することができました。ありがとうございます。
秋には先生方の授業を見せていただく機会を設けていただけそうです。とはいえ、先生方に授業を見てほしいといっていただけなければ、見ることはできません。今回の話を聞いて先生方は手を挙げてくださるでしょうか? ちょっとドキドキしています。たくさんの先生方に手を挙げていただけることを期待しています。

ICT関係の会議に出席

先週末に、ある市のICT情報教育推進の会議に委員として参加しました。

今回のテーマの1つに、数年先の学校のICT環境を考えることがありました。先進的な取り組みで知られる市ですが、決して目新しいことにすぐに跳びつくわけでありません。子どもたちにとって、教師にとってどんな環境が必要なのかをしっかりと考えています。「教師が日々の授業の中でやりたいと思ったことがすぐに実現できる環境を整えることが大切」と言った委員の言葉に大きくうなずきました。こういう先生方がICT活用を支えていることがこの市の強さです。

私にとって大いに勉強になったと感じたのが、中学校のPC教室の今後のあり方についてです。今の子どもたちは、小学生のうちからパソコンを普通に活用しています。もはや中学校でコンピュータリテラシーは必要ありません。パソコンを学ぶ教室から活用する教室への転換が求められます。ネットワークも無線LANが当り前になり、机やパソコン、ICT機器の配置の自由度もずいぶん高くなりました。固定したレイアウトでなく、用途に応じて自在に変化する多目的な教室に変わっていくだろうと会議を通じて確信を持つことができました。

また、小学校では今後、子どもたちの個人の学習の成果物やいろいろな活動の結果をデジタル化して校内のサーバに保存することができる環境になるそうです。これは単に記録が残るということではありません。自分の過去を振り返って成長を実感できるポートフォリオとして活用できることをはじめ、先輩たちの過去の学習の結果を共有したり、他の学級や学校での学習の結果を共有することで時間と空間を越えた学びを生み出す可能性もあります。しかし、環境をつくったからといって実現するわけではありません。このことを実現するためには、教師がそれを意図した授業をデザインする必要があります。チャレンジ精神にあふれたこの市のことです。数年後にはきっと素晴らしい実践が生まれていることと思います。この会議に出席する楽しみが、また一つ増えました。

この会議に参加することで、私自身も事前に勉強したり、いろいろな視点での意見に出会え、たくさんのことを学ぶことができます。こういう機会を与えていただいていることに、あらためて感謝いたします。

数学の課題のアイデア検討

昨日は指導案作成のアドバイスをおこないました。中学校1年生の数学、1次方程式の利用です。今回は、指導案作成に向けて、どんな子どもの姿を目指すか、どんな教材がよいのかについていろいろと話をさせていただきました。

授業者は、子ども同士が互いに相談して問題に取り組むような授業を目指しています。できる子がさっさと問題を解いてしまう、わからない子が手も足も出ない。そういう授業にはしたくない。
となると、塾で予習しているような問題では一部の子がすぐに解いてしまいます。子どもたちの興味を引き出し、みんなで知恵を絞らなければ解けないような問題を用意する必要があります。子どもたちに身近で、かつ方程式を利用することで解決されるような課題のアイデアを出し合いました。

通販で、購入金額が一定額を越すと送料が無料になることを使った問題
トライアスロンを舞台にした追いかけの問題
異なった道を通る追いかけの問題
金券キャッシュバックと割引クーポンの違いを意識した問題
・・・
いろいろと考えてみました。

また、こういう課題をおもしろくするための視点として、明確に書いていないが、解の吟味で必要となる条件をいれておく。情報が過多である、足りない。こんな仕掛けをするとよいことも伝えました。

次回は具体的に課題を決めて指導案にしてきてくれます。どんな指導案になるかとても楽しみです。

最後に、今回の指導案作成とは直接関係ありませんが、教科書の記述から何を読み取るか、実際に教科書を見ながら話をさせていただきました。意外に教科書は軽く読み飛ばしているようです。数学は、問題を見て解き方がわかっていればなんとなく授業ができてしまいます。このことが原因の一つかもしれません。これを機会に教科書の記述からも指導のポイントについて考えるようになってほしいと思います。数学の教材についてたっぷり浸れた、楽しい時間でした。

学びの多い研修会

昨日は、終日研修会で講師を務めました。昨年より始まった、参加者による模擬授業を中心としたものです。午前と午後にそれぞれ1回ずつの模擬授業と言語活動について講演をさせていただきました。

講演は、言語活動という視点から授業で大切にしてほしいことをテーマに、実は言語活動を意識するということは特別なことではなく、普段の授業でコミュニケーションを充実することに他ならないということを話させていただきました。参加した先生方が真剣に聞いてくださったので、ついつい予定よりも深いところまで話をしたり、わき道にそれたりしてしまいましたが、楽しく話をすることができました。

模擬授業を前に、2つのグループに分かれてリハーサルをしていただきました。この時間が、参加者同士が打ち解けるいい機会になったようです。スタートの講演のときにはちょっと硬かった表情がずいぶん柔らかくなっていました。参加者が互いにかかわる時間を持つことのよさがよくわかります。

1つ目の授業は、中学校の英語でした。シチュエーションを意識して組み立てることを目指した授業です。テンポのよい笑顔あふれる授業で、英語が嫌いな生徒でも引き込まれてしまうような、とても素敵なものでした。発言に対して"Good!"、"Good job!"と称賛の言葉をきちんとかけていました。笑顔とほめることの大切さ参加者が実感してくれたと思います。シチュエーションとそれに対応する英文とを明確にして進めるとよいのではとアドバイスさせていただきました。

2つ目の授業は、小学校3年の国語の話し合いの指導でした。授業者は、グループでの話し合いの場面で、全員が発表し終わるとその後意見が出なくて停滞してしまうのを課題と感じていました。子どもたちはメモもなかとれないため、次々に発表されると整理できなくなってしまいます。そこで、自分の話の内容をあらかじめ付箋紙に書いて貼ることで整理するという方法を考えました。こうすることで話を整理して意見が言いやすくなると考えたからです。授業者もこのやり方はまだ試したことはないそうです。この機会にうまくいくか、問題点は何かを参加者と一緒に考えようというわけです。模擬授業をすることを前向きにとらえていただけたことを大変うれしく思いました。司会の進め方と発表のポイントを両面に印刷した厚紙を用意するなど、実際の授業と同じようにしっかりと準備もしてくれました。

授業者にとっても初めての試みということなので、話し合いの場面は結論が出るまでじっくり時間をかけてもらいました。3つのグループで話し合ったのですが、それぞれで様子は異なっていました。全員が付箋紙に書き込んでから話しあうグループ。次々に意見を交換し、平行して付箋紙を書いているグループ。付箋紙を貼って賛成や質問もしっかりでたあとで、動きが止まってしまったグループ。三者三様でした。模擬授業の後で、生徒役、参観していた先生方に感想を聞きましたが、それぞれの立場で実に貴重なことが語られました。

次々に意見を交換できたグループでは、実は話を聞いているときに自分の発表のメモを付箋紙に書いていた。
話し合いが止まっていたグループでは、意見はあったのだが、またメモをしなくてはいけないのか、そのまま話していいのかどうしていいかわからなかった。
参観者からは、意見を聞きながら付箋紙を書いているのはとてもすごいのだが、小学3年生には無理ではないだろうか。
・・・

付箋紙は「書く」「読む」。話し合いは「話す」「聞く」。要素がたくさんあるために、どこで何をするかがグループによって異なっていたようです。授業者にとっても、参加者にとってもたくさんの学びがあったように思います。授業者は今回の模擬授業を参考にして、9月に自分の学級で実際にやってみるそうです。ぜひ報告をしてくださいとお願いをしました。

いつも思うことですが、参加者が学べる研修は、講師の私もたくさんのことが学べるものです。今回も素晴らしい参加者のおかげで多くのことを考え、皆さんの気づきにハッとさせられ、とてもよい学びをさせていただきました。ありがとうございました。次回は3人の方に模擬授業をしていただきます。今からとても楽しみです。

充実した研修会

昨日は市主催の授業改善研修会で授業解説をおこなってきました。打合せの時点から楽しみにしていましたが(研修の打ち合わせ参照)、期待以上に内容の濃いものになりました。

授業者はこの1週間、ずいぶん内容を検討してきたようです。細かいところまでよく練られていました。また、このブログも参考にしていただいたそうです。たしかに私が日ごろ意識していることが、随所に見られました。とてもうれしく思いました。この日の模擬授業は、一つひとつの発問や子どもとのやり取りの意図がはっきりとしていたので、とても解説がしやすいものでした。
たとえば、子どもの発言をつなぐかつながないか、評価するかしないかはその後で取り上げたいことを反映していました。授業者の意図がよくわかるのです。しかし、子どもからすれば、なぜ自分の意見は評価されないのだろうか、きっと教師の期待したものではなかったのだと思ってしまいます。一つひとつの意見はどれも素晴らしいものです。取り上げる、取り上げないは教師の都合なのです。取り上げなかった意見と同じ考えの子どももいるはずです。今日は取り上げなくても、きちんと評価しつなげる必要があります。これはきちんと評価したりつなぐ場面があったからこそ、見えてくることです。
よい点がたくさんあるからこそ、うっかり見落としてしまうこと、改善点がはっきり見えてくるのです。

また、今回の生徒役は他の研修会の参加者にお願いしましたが、実に素晴らしいものでした。教師の指示が不明確であれば、素直に生徒になりきって態度に表してくれます。不安な時は、友だちの書き込みを覗いたりもしてくれます。実際の授業と同じように、子ども役の動きからいろいろなことが見えてきます。気になる動きをした生徒役にインタービューすることで、何が起こっていたのかが明らかになります。それは、誰もが納得できることでした。
授業者はその指摘を素直に認める度量がありました。生徒役の様子を見ていなかったときも言い訳せず、どうすべきだったか考えてくれました。また、その場で予定を変更して進め方を変えたりもしてくれました。これが模擬授業のよさです。その場で修正しながら授業をみんなでつくっていくことができるのです。

十分な時間があったはずなのですが、解説したいことがたくさん出てきたため、授業の一部をはしょらなければいけなくなりました。また最後に授業者や生徒役の先生から感想をうかがう時間もなくなってしまいました。申し訳ないことです。
とはいえ、私自身は、見るべきものがたくさんあり、一瞬たりとも気を抜けない緊張感あふれる模擬授業を本当に楽しませていただきました。得るべきものがたくさんありました。参加された200人近い先生方はどのような感想を持たれたでしょうか? 会場が大きな舞台であったこともあり、参加者と直接かかわることができなかったのが残念です。来年はもう少しコンパクトでフラットな会場をお願いできましたので、参加者とのやり取りも楽しめると思います。今から来年が楽しみです。
授業者、生徒役の先生、また早くから準備やお手伝いをしていただいた先生方、本当にありがとうございました。おかげでとても充実した時間を過ごせました。

授業の感想に課題や意識が見える

昨日は、アドバイザーとしてお手伝いしている中学校の現職教育に参加してきました。7月に撮影した国語の授業ビデオを見て学び合うというものでした。

先生方はとても熱心に授業を見た感想をまわりと話し合っていました。だれしもが授業を大切に思っている証拠です。
話し合ったことを全体で聞き合う場面で気づくことは、授業を見る視点が、自分が課題としていること、意識していることと関連しているということです。
言葉のつなぎを課題にしている先生は、言葉づかいが丁寧であることや、考えを発表させた後に同じ意見の生徒に確認をしていることに気づきます。
子どもの考えで授業を進めたいと考えている先生は、子どもの動きが止まっているときの支援についてどうであったかと意見を言ってくれます。
授業者が子どもの発言に対して、意見を聞かせてくれて「ありがとう」と言っているのに気づく先生は、自分も意識して「ありがとう」を言っている先生です。
授業について感想や気づいたことをみんなで共有するということは、互いの課題や大切にしていることを共有することでもあります。授業者からだけでなく、互いに多くのことを学び合えるのです。

この学校では、現職教育といった特別のときだけでなく、日ごろから授業について教師同士が語り合うことが増えてきています。それに伴って課題意識も明確になっているように思います。学校がどのように変わっていくか、これからも楽しみです。

大学生に講演

昨日は大学で学生対象の講演をおこないました。聴講者の大半は小学校教員志望の学生ということです。主催者からのリクエストは、「元気が出る話」です。教員志望者の心得のようなことを厳しく話せば、「そんなの無理!」とやる気をなくしてしまうかもしれません。できるだけ現場のことを話しながら、何が教師にとって大切なのか理解してもらい、その上で頑張ろうという気持ちになってもらいたい。大学生相手の経験が少ないこともあり、通常の講演より準備に時間を掛けることになりました。

以前見た大学の授業の様子が頭に強く残っていて、学生は反応してくれないのではないかと不安に思っていました。反応が悪いときの対策をいろいろと考えていたのですが、想像以上によく反応してくれました。
問いかけに対しては素直に考え、まわりともちゃんと関わり、聞き合ってくれます。納得したときはよくうなずいてくれます。後から試験があるわけでもないのに、メモもしっかりととってくれました。特に、実際に教壇に立った時に役立ちそうなスキルなどは、ほとんどの学生がメモをとっていました。先生になりたいと思っていることがよく伝わります。

・教師が目指す姿と子どもが願う教師の姿のズレ
・教師という職業の難しさと素晴らしさ
・子どもを見るということ
・教師がわかっていることと子どもがわかることの違い
・教師に求められる資質と能力

このようなことを話しましたが、反応のよさについつい余計な話もしてしまい、質問を受ける時間がなくなってしまいました。申し訳ないことをしたとちょっと落ち込んだのですが、退室するときのたくさんの笑顔に救われました。ありがとうございました。皆さん、元気が出たでしょうか? 私はたくさんの元気を皆さんからいただきました。どこかの現場でまた会えることを楽しみにしています。また、このような機会を与えてくれた先生方に深く感謝します。

若手教師との勉強会

昨日は小学校で若手教師5人と勉強会をおこないました。3年生の算数「何倍でしょう」を題材にして全員で教材研究をおこないました。3倍の2倍は6倍になる。結合法則につながる教材です。

最初に、この教材のねらいは何かについて話し合いました。小学校6年間のかけ算の学習の流れをつかんでいれば位置づけやねらいがよくわかるのですが、経験が少ないためなかなかシャープになりません。そこで、教科書をしっかり読みこむことをしました。
なぜ最初の例は連続量なのに、次の問題は離散量なのか?
なぜ左のページでは解き方のヒントとなる図が書いていないのに、右のページでは書いてあるのか?
左のページの例題と右のページの例題では何が変わっているのか?
・・・
たくさんの疑問や、気づきがありました。教科書を読みこむことで、この教材のねらいが次第にはっきりとしてきました。

続いてどんな流れ・説明であれば子どもがわかるのか、教師の視点から考えてみました。教師にとっては当り前すぎて、意外とポイントがわかりません。ここでも、教科書が教えてくれます。
教科書の左側も例題は3倍、2倍という表現ですが、右側のページでは4はい分、2はい分となっていますが、図では倍となっています。何はい分も倍であることは子どもにとってそんなに簡単ではない。最初に倍の意味の確認がいる。何はい分をかけ算の定義の「いくつ分」にもどって、倍につなげる。いろいろなことに気づきました。

ここで先生方から、教師が主導して説明するとどうしても一部の子どもしかわからない。多くの子は手順を覚えるだけで、自分で納得して説明できるようにならない。子ども同士で説明し合うような活動をすればいいと思うが、子どもたちが話せない。こんな言葉が出てきました。とても素晴らしい悩みです。ならば、どうすれば子どもたちが話してくれるようになるのか。教材研究からは外れますが、ひとしきりその話題で話しました。

子どもたちが話せるようになるには、毎日の授業の積み重ねです。すぐにできるようになはなりません。子どもたちが自分で理解できるような課題、活動が必要です。どんな活動をさせるか5人で考えてもらいました。
おもしろいアイデアがでてきました。
「赤の車は2m走る。青の車は赤の3倍、黄の車は青の2倍。黄の走った長さは?」
この問題で、ノートに赤、青、黄の走った長さを順番に図で書かせることで長さを求めさせる。こうすることで問題を把握しやすくなるし、図に長さを書きこむことで答えもでる。でも、そうすると黄は赤の「何倍」と問いかけたとき6倍がダイレクトに出てくる。3×2倍がでてこない。どうしよう。先生方にとってとてもよい学び合いです。赤と黄だけを図に書かせる。どうやって黄の図を書いたと問いかける。そうすれば、3×2に気づいてくれる。こういう修正になりました。これが正解ということでありません。いろいろと考えることで先生方の懐が広がります。

半日、一つの教材にどっぷりとつかりました。教科書としっかり向き合うことで、読みこむポイントが見えてきます。普段は忙しくて一つの教材にこんな時間を割くことはできませんが、ポイントを押さえて教科書を読み込むことで、効率的に教材研究ができるはずです。このことに気づいてくれたと思います。
また、5人はとても楽しそうに授業について話し合っていました。子どもの固有名詞も出てきます。子どもの姿を浮かべながら教材研究をしていました。これをきっかけに互いに学び合う雰囲気が広がることを期待します。
若い先生と一緒に教材研究する機会は私にとってもそれほど頻繁ではありません。私にとっても多くの学びと刺激のあった時間でした。ありがとうございました。

研修の打ち合わせ

昨日は、来週おこなう研修の打合せをしてきました。市が主催する研修会で、200名ほどの参加者です。舞台で模擬授業をおこなっていただき、それを私が適宜解説するかたちでおこなわれます。その授業者との打合せです。

模擬授業は中学校1年生の国語の単元「古典との出会い」でおこないます。授業者は言語活動を「新しい言葉を獲得する」「自分の言葉で語り合う」ことを両輪と考えて、この授業を構想されました。ここが明確なので、視点をはっきりさせて検討することができました。

現代語訳があると子どもたちは、それを頼りに原文の言葉の意味を考えようとしません。そこで、原文だけのワークシートを準備し、言葉をコンテキストに理解させたいというのが、「新しい言葉を獲得する」という視点での授業者の思いでした。私からは、この流れを活かしながら、子どもたちがわからない語句にもレベルがある。考えることで類推できそうなものとそうでないものを仕分けする必要があること。子どもたちがこの語句の意味を知りたいと思うための工夫や、塾等で学習して語句の意味を知っている子だけが活躍するようにならないための工夫が必要であることをアドバイスさせていただきました。
また、音読を大切にしたいということだったので、古文の文節を意識して読めるようにするために、ワークシートから読点を除き、自分の手で書きこむ活動を加えることにしました。

同じ市の先生方の前で模擬授業をおこない、その場でコメントされるというのは想像以上にプレッシャーのかかることです。それを快く受け、自分が学ぶチャンスととらえて真剣に取り組んでいただけていることには、本当に頭が下がります。授業について深く考える濃密な時間を過ごさせていただきました。私も中学校の古典の授業について新たな視点を得ることができました。

当日は、国語の視点だけでなく、多くの教科で役に立つ気づきを参加者にしてもらえるよう、工夫したいと思います。本番までにどのように授業がブラッシュアップされるかとても楽しみに思うと同時に、その授業をうまく解説しなければいけないという、心地よいプレッシャーを感じています。

先生の意欲と子どもの気持ちのズレ

昨日は私立の中高一貫校を訪問し、高等学校の授業をいくつか参観させていただきました。

先生からは教えよう、わからせたいという意欲が、子どもたちからはわかりたい、できるようになりたいという気持ちがそれぞれ感じられるのですが、うまくかみ合っていないと感じる部分もありました。
先生の意欲は、説明や板書へのエネルギーへと転換されていきます。いきおい先生のしゃべる量はどんどん増えていきます。一方子どもたちは、先生から発する情報が多くなるので理解して整理する余裕がありません。結局、理解することより発信された情報をノートに書き留めることに専念してしまいます。先生は、子どもたちが手を動かすことで授業に参加していると判断して、問題と感じていません。しかし、子どもたちは黙々と作業をしているだけで、わかりたいという気持ちはしだいに下がっていきます。

教師はこれを教えたい、わからせたいという意欲をしゃべることで満たしてしまう傾向があります。そうではなく、どういう活動をすればわかったと感じるのか、どうすればそのことを知ることができるのか、子どもの側に寄り添って授業をつくる必要があります。教師の望む自分の姿は感じられたのですが、どういう子どもの姿を見たいのかをあまり感じることができませんでした。
校長先生はこのことを十分理解されていました。この状態を改善するには、いろいろなアプローチがあると思います。この学校がどのようなアプローチを選ぶのか大変興味のあるところです。わたしもよい形でお手伝いができればと思っています。

研究発表が終わっても進化する

中学校の授業アドバイスをおこなってきました。

最初に見た授業は講師の先生の美術の授業でした。体調を崩されて休職されている方の代わりの先生です。この暑い中、子どもたちはどんな様子だろうかと心配だったのですが、どの子も驚くほど集中していました。講師の方の力もありますが、子どもたちが育っていることが何よりの理由でしょう。休職された先生が担任をしていた学級ですが、学級経営もしっかりできていたことがうかがえます。
この後見たどの学級のどの授業でも、子どもたちはしっかりと集中していました。授業の内容については気になる点もあるのですが、「どんな先生でも崩れない子ども」に育っていました。

研究発表が終わった翌年で緊張感が薄れる時期です。また、中心だった先生の何人かが異動になったこともあり、昨年のよい状態を維持できるか心配していましたが、この時期にこれだけよい状態であるということは、杞憂だったようです。
校長先生に、「昨年のよい状況を維持していますね」とお話ししたところ、「昨年より進化していると思っています」と笑顔でお答えいただきました。校長先生は日ごろから子どもたちの様子や先生方の頑張りを見ているからこそ、このように答えられるのでしょう。今後この学校がどのように進化していくか、ますます楽しみになってきました。

若手への授業アドバイス

昨日は、小学校で若手の先生への授業アドバイスをおこなってきました。
互いの授業を見合い、最後に全員で授業についていろいろ話をしました。

ほぼ全員に共通した悩みは、子どもが積極的に活動する、参加するにはどうしたらよいかでした。作業や知識を聞く場面ではそうでもないのですが、資料から気づいたことを発表する、算数の考え方を発表するような場面では、なかなか友だちの発表を聞こうとしないのです。

この状態をつくり出しているのにはいくつかの要素があります。

1つは、参加しなくても子どもたちが困らないことです。教師の説明やまとめを聞くことで理解できるのであれば、真剣に聞く必要はありません。下手に手を挙げて指名されて間違えるよりは、じっとしている方が安全なのです。いつも教師がまとめたり説明するのではなく、子どもたちの言葉で授業を進めることが大切です。

もう1つは、課題に手がつかないために、参加意欲をなくしていることです。自分の考えを持てているときは、参加できるので積極的になります。課題を解決するための足場をしっかりつくってから取り組ませるようにする必要があります。
また、友だちの考えを理解できたかを聞いてあげたりすることで、自分の考えを持てなくても授業に参加できるようにすることも効果的です。

このような話を皆さんとしました。

どの先生も自分の授業の課題を意識していて、少しずつですがクリアしてきています。
これから授業をするたびに、今まで以上に多くの課題が見つかっていくことと思います。しかし、それこそが成長の証です。最後にこのことをお話しました。彼らの今後の成長がとても楽しみです。

進歩する条件

昨日は中学校で授業アドバイスをおこなってきました。

昨年小学校から中学校へ異動してきた先生の授業を、久しぶりにまとまった時間見ました。
子どもがミスしやすいところをきちんと押さえていました。この時間のねらいやポイントが明確です。きちんと教材研究をしていることがよくわかります。
子どもから出たつぶやきも拾って、授業にきちんと活かしていました。これも、子どもからこんな言葉が出るといいと教材研究の段階で意識しているからできることだと思います。
また、ポイントを子どもたちがちゃんと理解しているか、机間指導で○つけをすることでしっかりチェックしていました。子どもたちがミスしやすそうな問題に絞って○つけをしていることからもよくわかります。
教師が板書をしているときは、全員がしっかりと写していました。板書を説明しているときは、集中して聞いています。教師が指示しなくても子どもたちは自分たちでちゃんと場面を判断していました。きちんと指導されていることがよくわかります。
子どもたちは、柔らかい雰囲気の中で集中して授業に参加していました。先生のやさしい笑顔が印象的でした。

昨年は初めての中学校ということもあり、戸惑いが表情にでて、重い雰囲気の授業が多かったのですが、格段の進歩です。しかし、その進歩は突然のジャンプではなく、課題を一つずつゆっくりとクリアしていった結果です。
この先生は、私が学校を訪問するたびに、アドバイスを求めてくれます。授業をたった2、3分眺めただけのときや、まったく見なかったときでも。今の状態から少しでもよくしようと授業を見た感想を聞く。わからないことや課題、悩みに対して積極的にアドバイスを求める。そこに向上しようとする姿勢があらわれています。そして、一番素晴らしいことは、アドバイスを素直に受け入れてくれることです。最初のうちはなかなか進歩が見えませんでしたが、それでも地道にやり続けてくれました。基本的なことが一つずつできるようになり、それにつれて進歩の度合いも大きくなってきました。基本的なことができるようになるとともに、より高度な課題がたくさん見えてきます。自分でも気づくことが増えてきます。授業がうまくいくようになってそこで止まる先生も多いのですが、この先生はずっと課題を持って授業に取り組んでくれました。

自分に欠けていることを素直に認める勇気を持ち、すぐにうまくできなくてあきらめずにやりつづけることが進歩するための条件です。このことをこの先生の姿からあらためて学ばせていただきました。まだまだ課題はたくさんあります。だからこそ、より大きな進歩が望めるのだと思います。
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29