小学校で、いろいろな課題と出会う(その2)

昨日の日記の続きです。

4年生の1つ目の学級は、算数の授業でした。
授業規律がしっかりしています。授業者の問いかけに子どもたちは反応してくれます。しかし、決して全員ではありません。この反応だけを受けて授業を進めてしまうと、反応できない子どもが参加できません。反応できない子どもにつなぐことを意識してほしいと思います。
指示をして課題に取り組ませるとすぐに机間指導を始めました。最初に指導しておかなければいけない子どもがいる場合は別として、まず全体の様子を見てからにするべきです。子どもたちが課題を把握できているか、見通しを持てているか様子を見る必要があるのです。すぐに鉛筆を持てれば、課題は把握できています。鉛筆を持ったまま手が動かない時は見通しが持てていない可能性があります。子どもたちの状況によっては、作業を止めて全体で課題を確認したり、個別に対応したりするといった判断をするのです。
この方に限りませんが、子どもが作業中に指示を出す先生が目立ちました。必要な指示は作業をいったん止めないと徹底できません。また、課題が終わった子どもへの指示もはっきりしないことも多くの学級で見られました。課題に取り掛かる前に指示をしておくか、黒板の決められた場所に次の課題を書くといったことを習慣づける必要があります。教科によっては、ワークブックをやると決めておいてもよいでしょう。
割り算の筆算の途中でいったん活動を止めて、子どもたちに注意と確認をしました。最初に筆算の横線をきちんと端まで引くことを注意しました。机間指導で書けていない子どもが多かったのでしょう。しかし、全体で注意をした後に修正させず、すぐ次の説明に移りました。2つのことを続けて説明すると、どうしても最初の方が意識から薄れてしまいます。できていなかった子どもに修正させる時間を少し取りたいところでした。次の説明は筆算の手順の確認でした。「753÷3で、7を3で割ると2が立つので2を書いて、3と2を掛けて6を7の下に書いて・・・」というものです。確かにこの手順で計算はできるのですが、7を3で割って2が立つということは3と2を掛けた6を使っているのです。「7を3で割ると3×2が6で2が立つから、2を書いて、7の下に6を書いて・・・」としたいところです。手順を分けた方が確かにわかりやすいのかもしれませんが、論理的には気になる所でした。

4年生のもう1つの学級は、国語の授業でした。
この学級も授業規律がしっかりとしていました。指示が徹底されるまで子どもたちを見守っています。作業を止めて姿勢を正す場面です。子どもたちが全員よい姿勢になるまで待ってから授業者は話し始めました。ところが、話し始めると子どもたちのよい姿勢が崩れてしまいます。このことは、この日見た多くの授業に共通していました。子どもたちは求められたことしかやりません。いい姿勢が話を聞くための姿勢だとは思っていなかったのです。「いい姿勢だね、ありがとう。じゃあ今から説明するからしっかりと聞いてね」というように、しっかり聞くという次の行動を指示する必要があったようです。もちろん、作業を止める時に「作業を止めて、話を聞く姿勢をとって」というような指示をすると言うやり方もあります。いずれにしても、子どもたちの様子を見て指示に修正を加えることが必要になるのです。
この学級で素晴らしかったのが、子どもたちの発言後の表情です。どの学級でも、子どもは指名された時はよい表情になります。しかし、着席すると「終わった」といった弛緩した表情になることが多いのです。これは、指名されることが目的化しているので、指名された瞬間は「やった、指名された」となるのですが、発言の内容に対する評価がないので、それでもうエネルギーが切れてしまうからです。発言をポジティブに評価することが大切です。しかし、この学級ではそういった教師の評価がなくても、発言後もよい表情が続くのです。その秘密は発言者に対する他の子どもたちの姿勢にあります。どの子どもも素早く発言者の方を見てしっかりと反応しながら聞いているのです。仲間が自分の発言をしっかりと聞いてくれるので、自己有用感を感じることができるのです。よい学級がつくれていると思いました。
ペアで役割を決めて音読する場面がありました。子どもたちのテンションが上がっていきます。この活動の目標と評価がはっきりしていないので無責任取り組めるからです。授業者は途中でそのことに気づいて、いったん活動を止めて目標を設定しました。しかし、残念ながら一部の子どもを除いて、テンションは落ち着きませんでした。一度上がってしまうと下げることはなかなか難しいことがわかります。

5年生の1つ目の授業は国語の授業でした。
動きの遅い子どもに対して「待っている人がいるよ」と声をかけました。ちょっとしたことなのですが、聞きようによっては責めているようにも取れます。まわりの子どもたちに「待っててくれてありがとう」、遅い子どもに「待っててくれているよ」といった声かけにするとニュアンスが変わるかもしれません。最後は、「待っててもらえてよかったね」と笑顔で声かけできるとよいでしょう。
指示の徹底が少し甘いように感じました。子どもたちがまだ聞く態勢になっていないのにしゃべり始めてしまう場面があります。今は特に授業がほころぶということはないのですが、こういったことが続くと次第に規律が緩んでくるので注意が必要です。
漢字の小テストの採点が終わったあと、満点の子どもと間違えた子どもに分けて、前にノートを持って来させて確認します。間違えた子どもはやり直しをするルールなのかもしれませんが、手持ち無沙汰にしているように見えました。並んでいる子どもも待っている間落ち着きません。授業者はハンコを押しながら子どもに声をかけていますが、全体を見ることはできません。ハンコをもらった子どもはすることがありません。前に持って来させるというやり方は、どうもうまくいかないことが多いようです。
その場でハンコを押して声をかけたいのであれば、採点した後の作業を全員に指示をして、教師がハンコとスタンプ台を持って子どもの間を回るとよいでしょう。慣れればそれほど手間はかからないはずです。できるだけ子どもの集中を切らさないような工夫が必要だと思います。

5年生のもう1つの学級は、算数の授業でした。
この先生は最初に訪問した時と比べて大きく変化しました。子どもたちをとてもよく見て授業をしています。教師の言葉もずいぶん減りました。
子どもは先生が受け止めてくれるので、よくつぶやきます。授業者はそれを受け止めることができます。今回の授業は、ピラミッド型に組んだ板?の数え方を考えるものでしたが、子どもからでてきた、「普通に数える」「1枚ずつ」「2枚ずつ」といった言葉を受け止めてすぐに課題の説明に入りました。できるだけ早く課題に入りたかったのでしょう。できれば、全員に対してきちんと発言させて共有することをしたいところではありました。公的に発言することを意識させたいからです。
子どもたちに色々なやり方を考えさせる場面なのですが、一つやり方を見つけて止まっている子どももいます。課題を「たくさん見つける」といった目標を与えた方がよかったでしょう。見つけたやり方を説明することを次の課題として提示します。この時、まだ手が止まっていない子どもがいました。「見てください」ともうひと押しすることで全員がきちんと授業者に集中しました。落ち着いて子どもたちをよく見ています。ここで、説明の方法を整理します。今までやってきていることなのでしょう、子どもから「図」「式」「言葉」と3つの要素が上がってきます。メタな考えをきちんと身につけさせようとしています。板書すると写す子どもが少なからずいました。授業者としては写させるつもりはなかったようなので、それよりも最初に出た「2枚ずつ」を例に、3つの要素を確認してもよかったかもしれません。
子どもたちはとても集中して説明を考えています。なかなかのものです。授業者は教室の前方でずっと子どもを見守っています。笑顔を崩しません。子どもたちにとって安心できる教室になっています。終わってしまっているのか、手が止まっている子どもがいます。そういった子どもに気づくとそれとなく移動して、対応しています。終われば、また元の位置に戻ります。見守ることがちゃんとできています。
作業を終ったあと、グループで互いの考えを聞き合います。友だちの説明を聞いて感想を書くのですが、その視点を子どもたちに確認します。ここでもメタな考えを意識しています。自分の考えと「違うところ」「同じところ」といった声が上がります。ちょっと気になるのが、こういった場面が発言する子どもだけで進んでいくことです。発言しない子どもに確認することや、何回か経験があるのであれば隣同士で確認するなどすればよいでしょう。「いくつあった?」と数を聞くことで確認は十分でしょう。
子どもたちは、驚くほど速くグループの隊形をつくります。どのグループもすぐに説明を始めます。こういったグループ活動に慣れているだけでなく、楽しんでいるようです。どのグループもよい表情で額を寄せ合っていることでわかります。
直接見ることはできませんでしたが、発表は友だちのよいところを共有していたようです。活動のポイントをよく押さえていることに感心しました。目標をもう少し明確にするとより子どもたちの活動がシャープになると思いました。
「図」「式」「言葉」のどれか1つの要素だけの発表を聞いて、他の要素を書くといった活動も面白いかもしれません。図での説明を見て式や言葉の説明を考えることや、式を見て説明の図を考えるといったことをすると、発表者とは異なった説明や図が出てきて発想が広がります。こういったやり方もありそうだと伝えました。
授業者はとても素直に指摘を受け止めます。次回どのような授業を見せてくれるか楽しみです。

6年生はベテランがT1の算数のTTの授業でした。
文字式の導入の場面です。実物投影機を積極的に使っていました。3年の時に学習した内容とのつながりを意識しています。過去の学習とつなげることは大切なことです。しかし、なかなか思い出せない子どももいます。こういった時に当時の教科書を実物投影機で大きく映すとよかったでしょう。
3年生と6年生の内容の違いは、文字を使うことだけではありません。6年生では関数を意識して、一方の値を変化させることで結果が変化することを押さえます。変化するものを文字で表すという発想です。このことをもう少し押さえておくとよかったと思います。
教科書を広げさせてから、該当箇所を大きく映してxとyの書き方を説明しました。定番の使い方ですが、手元の教科書を使う必要のない場面ですから、教科書はここでは開かなくてもよかったと思います。
途中でICT機器の操作で戸惑う場面がありました。幸いT2はこういった操作に詳しそうです。機器の操作や板書といったことをT2にお願いして、T1は子どもとのやり取りに専念するという分担もあるでしょう。
T1は子どもからつぶやきを引き出そうとしています。外化を求めるのはとてもいいことです。かなりの子どもがつぶやくようになっていますが、もちろん全員というわけではありません。どうしても、反応する子どもとだけで授業が進んでしまいます。反応しない子どもが受け身になりやすくなります。「今○○さんが言ってくれたことどう思う?」「なるほど思う?」「納得する?」と他の子どもにつなげていくことを意識してほしいと思います。

学校全体として共通の課題も含め、いろいろな課題に出会いました。先生方が今後この課題をどうクリアしていくか、次回の訪問がとても楽しみです。
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