若い先生の可能性を感じる

昨日は私立の中高等学校で授業アドバイスを行ってきました。

中学校は、全体的に板書を写す以外の子どもの活動量が少ないように感じました。1年生は小学校の時のよい学習習慣がまだ残っています。作業が終わってよい姿勢で待つといったことができる子どももいます。しかし、先生方がそのことを評価していません。せっかく身についているよい習慣も先生が認めて強化しなければ次第に消えていきます。子どもたちのよいところを見つけて評価することを忘れないでほしいと思います。
2年生、3年生に強く感じるのは子どもたちが板書を写してそれを覚えるのが勉強だと思っていることです。授業者が話しをしていてもほとんどの子どもが板書を写すことを優先します。写し終れば、集中が落ちてしまいます。どうやら授業時間中に身につけようとするのではなく、試験前にまとめて覚えようとしているようです。今覚えても試験までに忘れるからムダのように思っているのでしょう。また、外化する場面がほとんどないことも課題です。知識は覚えるのではなく、使って身につけるということを子どもたちに伝えてほしいと思います。
子どものつぶやきを拾う場面を目にするのですが、発言者と授業者の2人だけの世界に入っていることが気になります。他の子どもはそこに全くかかわりません。授業で子ども同士の人間関係をつくることを意識することが必要です。
試験前なので、「試験に出しますよ」という言葉も聞こえてきます。これは利益誘導の発想です。子どもたちを消費者的行動に駆り立てます。学習や学びとはそういうものではありません。「何が大切か、何が役に立つか自分で判断する」「面白い、成長を感じるから学ぼうとする」といった視点を大切にして授業を組み立ててほしいと思います。

新しく採用された体育の先生の中1の授業を参観しました。つねに笑顔を絶やさない先生です。指示も大きな声で伝えます。ダンスの場面では「楽しく」「美しく」といった目標を明確にしています。子どもたちもとてもよい表情を見せています。しかし、全員前を向いて踊っているので、互いの表情は見えません。列やペアで向き合って踊るといった場面もほしいと思います。また、せっかく目標を明確にしているので、その評価がほしいところです。「ダンス中に子どもたちのよいところを名指しでほめる」「ペアで向き合って、終わったあとに互いのよいところをほめる」といったことも取り入れるとよいでしょう。
活動で使うマットを子どもたちに準備させる場面で、「力のある人」と子どもたち声をかけて運ばせます。人数が余るようなときに、こういった声かけをすることで積極性を引き出すのはよい方法だと思います。すばやく運んだ子どもたちは、とてもよい表情をしていました。残念なのは、そういう子どもたちに対して「ありがとう」の声かけがなかったことです。子どもたちのよい行動はできるだけ評価して学級全体に広げることが大切です。
マットに寝そべる時に頭を打たないように何度も注意します。事故につながることなので繰り返したのでしょう。解散してマットをはさんでペアをつくりました。子どもたちは素早く動くのですが、待機する姿勢がバラバラです。その指示がなかったからです。待機の時はいつもどうするかを4月の段階で徹底しておくか、今回の一連の指示の中に入れ込んでおくことが必要です。
子どもを一人選んで授業者がペアになって、今から行う運動について説明します。子どもたちがマット沿って広がった状態で行ったため、授業者の死角ができました。そこの子どもたちの集中度が低かったのが残念です。授業者の位置を変えるか、子ども同士のペアを使って説明するとよかったと思います。
運動を始める直前にも、もう一度頭を打たないように注意をします。しかし、何度も聞いているので聞き流している子どももいます。それよりも早く始めたいのです。指示ばかりをするとこういうことが起こります。ここは指示ではなく確認の場面です。子どもを指名して「何に注意をする?」と問いかけるのです。ペアで確認し合ってもいいでしょう。
腹筋の回数をペアが数えます。ペアの役割は足を押さえることとこれだけです。腹筋運動のポイントを明確にして、そのことをチェックさせたりするとよいでしょう。
目標や指示を明確に伝えることができる方なので、評価や確認を意識すると授業がぐっと締まると思います。また、体育はどうしても運動の得意な子どもが活躍して評価されることが多くなりがちです。できなかった子どもができるようになったという伸び代を評価することを忘れないでほしいと伝えました。若くてやる気のある方なので、変化が楽しみです。

若手の中1の数学の授業を参観しました。式の値の場面です。
すぐにしゃべる、多動気味の子どもがいます。授業者は子どもを否定せずに受け止めようとしています。しかし、他の子どもがその子どもの言動に対して過敏に反応します。否定的な言葉をかける子どももいます。子どもたちの言動は教師の子どもへの対応をなぞっている可能性があります。これは想像ですが、教師が否定的な言葉を使っているのかもしれません。教師が否定的な言葉を使わず、明確な基準を持ってその子どもに対応する必要があります。この授業者のように受容する態度は大切です。しかし、授業に関係ない言動までを受け止めてしまってはいけません。逆に、叱ってもあまり意味はありません。叱られても教師の関心を引ければそれでよいからです。授業に関係ない話は原則として無視をする。または、指を口持って行って声に出さずに「しーっ」と口を閉じるように伝えます。しゃべるのを止めたら、笑顔でうなずいてほめます。望ましい行動を強化するペアレントトレーニングの発想です。授業に関係のあることであれば、対応は大きく2つです。今全体で取り上げるべきことであれば、「よいことを言ってくれた」と全体に対してもう一度発言させて、公の舞台にのせます。もし、全体で扱うべきことでなければ、「あとでね」と発言を受け止めるだけにして、作業の時に個別に対応します。こういう対応は、どの子どもに対しても同じようにできますから、その子どもだけの特別な対応になりません。このような対応方法をお伝えしました。
上空3kmの気温は地上よりも18°C低いということをa-18と式で表わし、代入と式の値について説明します。授業者は地上の気温が24°Cの時の上空3kmの気温が何度になるかをたずねます。答を何人にも聞きいていきます。間違えた子どもがいても、その答を受け止めます。同じ答の子どもがいれば「同じだね」と正の字をつけていきます。なかなかよい対応だと思います。続いて、理由を聞きます。指名された子どもは、上空の気温は18°C低いからと説明します。授業者は24-18の式を子どもから引き出し、他の子どもも同じ式なったことを確認しました。間違えた子どもは計算を間違えたのか式を間違えたのかはわかりません。ここは、その子どもにも発言させたいところです。
さて、ここで、24-18という式は、最初に説明した子どものように式の意味から考えた子どもと、aが24だからと、代入の発想でやった子どもがいるはずです。それを同じとひとくくりにしてしまうと、子どもの思考は混乱します。ここは、式の値である6ではなく、代入を理解するための式にこだわるべきだったでしょう。平地の気温が24°Cだったら、どんな式になる。10°Cだったら、0°Cだったら、−3°Cだったらと次々に聞きます。最初の式と、これらの式を並べて気づくことを言わせます。aの代わりに、その時の気温の値を入れればいいことを押さえて、代入をまず定義します。ここでaを□で囲み、□の中に値を入れるイメージをつけます。この□が()と同じであることを確認しておくとよいでしょう。その上で、式を計算させて式の値を定義するのです。
授業者は、先に式の値を計算させたため、代入の押さえが弱くなってしまいました。そして、すぐに4xといった×が省略された式の値の計算に移りました。ここで4xを4×xと直して計算をすぐに始めましたが、まず代入することだけを押さえたいところです。X=2の代入であれば、xの代わりに2を入れると、42となってしまいます。ここで先ほどの箱のイメージを活かして、4(2)とします。これが代入のイメージなのです。「こんな式はおかしいね。どうして?」と子どもに問いかけ、文字の場合×は省略されていることを子どもから引き出し、文字に数を代入すると省略できなくなるから×が復活することを押さえるのです。4×(2)としてから、この()は省略できることを確認します。こうしておけば、負の数だけ()をつける。累乗の時に()をつけるといったイレギュラーな対応は無くなるのです。
-xにx=-3を代入する問題でも、-x=-1×xを先に押さえました。代入すると-(-3)としてから進めたいところでした。教科書はこの問題の横に「-(-3)=3となるね」と注を入れています。授業者はここ無視してしまいました。
子どもたちは、式の値を求めるところではなく、代入で混乱していました。授業者は問題練習の場面で、そのことに気づいていましたが、その修正はできませんでした。
机間指導中に、「いいよ」と声をかけていきます。声をかけられた子どもはうれしそうです。子どもをほめようという姿勢はとてもよいと思います。しかし、全員に声をかけているわけではありません、具体的にどこがよいかも明確ではありません。中途半端に声かけするのではなく、赤ペンを持って全員に○をつけてほしいと思います。「○付け法」です。学級は比較的少人数ですので、それ程無理なくできると思います。「○つけ法」に関する本もたくさん出ているので、是非勉強してほしいと思います。
子どもを認めよう、活躍させようという意識を感じます。あとは具体化と教科書の読み込みです。やる気と素直さを感じる先生なので、次回は一歩進んだ姿を見せてくれることと思います。

高等学校の様子は、明日の日記で。
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