総合的な学習の時間について考える

中学校の学校公開日で、授業を参観してきました。

子どもたちは落ち着いているのですが、若手の授業で集中力が感じられません。顔を上げているのですが、視線が先生に向かっていません。授業者も全体を見てはいるのですが、子どもたち一人ひとりに視線を送っていません。形だけの授業規律に終わっています。
子ども同士の関係はよいので、グループにすればかかわり合うこともできるのですが、理解したい、解決したいというエネルギーを感じません。取り敢えず相談しているという印象をぬぐえませんでした。

1、2年生の総合的な学習の時間の発表がありました。
1年生は、職業について自分たちが調べたことを学級全体に対してグループごとに発表します。子どもたちは、取り敢えず前を向いているのですが、友だちの発表を理解しようという感じではありません。ここでも視線が上がらない子どもが目立つのです。発表者も用意した原稿を読んでいるだけなので、顔が上がりません。この発表会の目的や目標が子どもたちに意識されていないことが気になりました。
発表者は、誰に何を伝えるのかを明確に意識しなければいけません。同じように活動した学級の仲間なのか、この日来られた参観者の方なのかがよくわかりません。また、発表は原稿を読むことではありません。例え原稿を見ながらでも、口を開く時は聞き手と目を合わせることが大切です。こういった指導がされていませんでした。対象が参観者であっても、そこにいる子どもたちが聞く意味がなければ、ただ何も考えずに座っているだけになります。自分たちがそこに存在する意味を明確にすることが大切です。
仲間に伝えるのであれば、仲間が知らなかった情報を提供する、自分たちと一緒に考えてもらうといった目標が必要です。聞き手もそのことを意識することで、仲間の発表を評価できます。参観者を対象とするのであれば、発表者以外の子どもたちの役割が不明確です。こういう場合は、参観者の立場で聞き合う発表練習を事前に行い、互いの発表をブラッシュアップするとよいでしょう。どうすればよくなるかを伝え合って、本番までに発表をバージョンアップするのです。本番では、自分たちが意見を言ったので、発表がどのように変わったかが気になるはずです。よくなったことを見つけるという目標が生まれます。

2年生は、職場体験をもとに、「なんのために働くのか」というテーマで、学級の代表者によるパネルディスカッションを子どもの司会で行いました。お世話になった職場の方もお呼びして最後にコメントをいただくというものです。
子どもたちは自分の考えを発表します。中学生らしい意見が発表されます。発表後、相手の意見に対して質問をしていきます。上げ足の取り合いに見えるものもあります。わからないことを質問するのはよいのですが、ディスカッションはディベートではないので相手の考えを否定して自説を通すことが目的ではありません。意見を交換することを通じて課題を解決したり、考えを深めたりすることが目的です。その方向性がはっきりしていないことが気になりました。ディスカッションでは司会の役目が大切です。パネラー同士で勝手に話が進んでいたのですが、話の要点をまとめながら話題を焦点化することが必要でした。中学2年生にこれを求めるのはかなり無理があります。1回や2回リハーサルしたくらいではできるものではありません。日常的に経験を積ませることが必要です。司会だけは教師がするという選択もあるかもしれません。
参観している保護者に意見を求めることで盛り上がりますが、それと子どもたちの意見をつなぐことはできませんでした。授業と同じく、つなぐということは難しいと改めて実感しました。
最後に職場体験の企業の方が自分の考えを含めてコメントしてくださいました。子どもたちの議論を深めるように意識されています。子どもたちは大人のすごさを感じてくれたと思います。ディスカッションの途中で一度コメントいただいて、それをもとにしてディスカッションを続けても面白かったと思います。

総合的な学習の時間でどのような力をつけるのかの議論をあまり聞かなくなりました、活動することで取り敢えずよしとする学校が多いような気がします。子どもたちにつけたい力を意識することで、今回の活動でも違った形になったはずです。総合的な学習の時間が始まってかなりの時間が経ちました。もう一度原点に立ち返る時が来ているのかもしれません。

この日見せていただいた授業について、旧知の社会科の先生とお話ししました。授業アドバイスというよりも授業談義です。この単元をどのように進めていくとよいのかを一緒に考えました。とても楽しい時間でした。
GDMに取り組んでいる若手の先生から、質問を受けました。許可を求める”Can you 〜?”をどのようにして教えればいいのか悩んでいました。”can”の”root sense”から許可の意味を気づかせる”situation”が思い浮かばないようです。一緒に考えているうちに、カップラーメンは使うことを思いつきました。カップラーメンをつくる場面で、タイマーをセットしておいて、”Can I eat?”と聞くことで、3分経たなければ”No, you can’t.”、3分経てば”Yes, you can.”です。こうすることで、「できる、できない」から「許可」へとつながっていくと思います。授業のヒントになったようでした。うれしいことです。
こういった時間は私にとってもとても楽しいものでした。しかし、先生同士でこういう時間が日常的に取れていないように感じました。忙しいこともあるのでしょうが、授業について気軽に相談し合ってほしいと思います。

この日は行事が盛りだくさんな1日で、教務主任や管理職の方とゆっくり話をする時間をあまり取れませんでした。次回訪問時に、学校の課題について相談したいと思います。
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