養護教諭研修会

一昨日は、市の養護教諭研修会で講師を務めました。この市では原則3年以上勤務した養護教諭は兼職発令されているということでした。まだ担任とのTTが多いということでしたが、授業をする機会も増えているようです。そこで今回、「養護教諭がおこなう授業へのアドバイス」をテーマにお話をさせていただくことになりました。

まず授業を考える時の基本は、子どもにどうなってほしいか、どのような向上的変容を期待するのかを明確にすることです。子どもを中心に考えると言い変えてもいいでしょう。養護教諭の場合、年に何度も授業をするわけでないので、どうしても子どもに伝えたいことが多くなり、そのことを伝えたいという思いが強くなってしまうと思います。結果、子どもに対して情報を与えるばかりで、子どもが活動し考える場面が少なってしまうのです。教師が言いたいことを子ども自身の口から出てくることを目指してほしいと思います。
そのためには、まず伝えたいことを絞ることです。できるだけシンプルな言葉で言えるようにしてほしいと思います。シンプルであればあるほど、それだけ明確になっているということです。その上で、どのような活動をすればよいのかを考えるのです。必要な活動は、資料を自分で整理するといった作業なのか、それとも資料もとに考えることなのか。考えるためには足場となる知識(情報)が必要です。知識は教えるか調べるかです。このことをきちんと整理しておくことが必要です。

保健で扱う領域は幅広いものがあります。肉体の健康から心の健康まで、性の問題や薬物の問題など多様です。課題は子どもたちの興味・関心を引くことが大切です。また、子どもたちにとってリアリティがなければ他人事になってします。このことを意識することが大切なのですが、一つ間違えると興味本位になってしまいます。この課題に取り組ませることが、目指す子どもの姿に結び付くかどうかを常に気をつけなければいけません。
興味・関心ということでは、クイズがよく使われます。しかし、根拠を求められないようなものであれば、テンションが上がってしまいます。テンションが上がることは決してよいことではないということもお話ししました。

養護教諭の方はカウンセリングマインドをお持ちの方が多いので、子どもたちの言葉に耳を傾けることの大切さはよくご存知です。ただ、日ごろは1対1の関係が多いので、教室で多人数を相手する時にはどのようなことに気をつけるといいのか、具体的な言葉の使い方を中心に説明しました。
また、日ごろは保健室という特別な場所で子どもと接しています。子どもの姿は学校と家庭とでは違います。もちろん、教室と保健室とでも異なります。このことを意識するようにお願いしました。教室で授業をする時、すでに一部の子どもとは人間関係ができていることもあります。しかし、安直にその関係で接することは危険です。保健室では教室とは違う姿で養護教諭と接している子どももいるからです。教室での接し方によっては、せっかく作った人間関係を壊してしまうことがあることを注意してほしいと思います。

このようなことをできるだけ具体的な場面を例にしてお話しさせていただきました。

質問の時間では、とてもよい質問が2つ出ました。
1つは、TTでの担任との打ち合わせのポイントです。担任も忙しいのでポイント絞りたいということです。講演の中ではどのような子どもの姿を目指すのかを伝えてほしいということはお話しましたが、それに加えて、予定している課題や活動でその学級の子どもたちがどのように動きそうかを教えてもらうとよいと伝えました。子どもたちの実態を1番知っているのは担任です。担任の目から見て、課題や活動が目指す姿に結びつくかを聞くのです。「子どもたちにこのような活動をしてほしいのですが、どのような課題にすればいいでしょうか」と担任の意見を求めるのもよいと思います。TTなのですから、一緒に考えてもらうことも大切です。

2つ目の質問は、グループ活動についてのものです。時間の関係でグループ活動についての説明は省略したのですが、資料にあった記述がその学校の活動とは違っていたのです。その学校では、司会者を決めて話し合いを進めるやり方を取っているのですが、私の資料には司会者は必要ないと書いてあったので、どういうことか質問されたのです。子ども一人ひとりが考えるためにグループを使うのであって、グループでの行動を決めるために話し合っているのではないことを、グループ活動と班活動の違いとして説明しました(グループ活動では意見を1つにまとめない参照)。

養護教諭の方を対象としたお話は私にとっても初めての経験だったのですが、みなさんが自分のこととして聞いていただけたことが、聞く姿勢から伝わってきました。とてもうれしく思いました。研修会前後に世話役の方々とお話をさせていただきましたが、養護教諭が授業をすることに対して皆さんが前向きに接していることがよくわかりました。次の予定があったため早々に失礼しましたが、温かい接待と楽しいお話に離れがたい思いでした。次回は、実際の授業研究に参加させていただきます。とても楽しみです。このようなよい学びの機会をいただけたことを感謝します。
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