暑さに負けない子どもたちの集中力に驚く

先週末に中学校で授業アドバイスをしてきました。とても暑い日が続いていました。学期末の校務処理に追われ、部活動の地区大会直前であることも重なり先生方の疲労もピークに達していたのでしょう。何人もの先生が体調を崩されていました。もちろん子どもたちも同様でしょう。教室で熱中症になって保健室で休養を取る生徒もかなりいたようです。子どもたちの集中力もかなり落ちているのではないかと心配して教室に出かけました。

ところが予想に反して、どの学年も、どの教室もとても集中して授業に参加していました。6月の訪問時と比べても遜色ありません。いやそれ以上です。それだけではありません。子どもたちが集中力とともによい表情を見せてくれる授業が特に3年生に多く見られました。
ベテランの数学の授業では、問題を解いた後、子ども同士で確認し合うことをしていました。子どもを惹きつける授業展開、話術に優れた方ですが、最近は子ども同士のかかわりもうまく取り入れているようです。授業者は常に笑顔を絶やしませんが、子どもたちも集中して問題を解いた後、笑顔で友だちと確認し合っていました。授業者も子どもたちも楽しんで授業に参加しています。暑さを感じさせない授業でした。
社会の授業も授業者と子どもたちの笑顔が絶えない授業でした。授業者の柔らかい雰囲気から発せられる問いに子どもたちは真剣に考えているのがわかります。この状態であれば、どのような課題であっても子どもたちは真剣に取り組むはずです。教科力を磨いていくことで、素晴らしい授業を展開できるようになるはずです。
2年生もよい状態です。個人作業も集中しています。教師の話もよく聞いていますが、さすがに受け身の状態が長く続くと集中力が切れます。教師が話しながら机の間を歩いている授業では、子どもたちの姿勢はバラバラでした。授業者が子どもを見ていないからです。逆に教師がしっかり子どもを見ている授業では、子どもの集中力は切れません。
この傾向は1年生により顕著です。子どもが集中している授業は以前と比べて増えています。中には3年生に負けないほど集中している授業もあります。その一方で、子どもたちが集中していない授業との差がより目立ってきました。絶対的には多いわけではありません。よい場面が増えているために、余計に目立つのでしょう。
暑さのせいか、ちょっと無責任に活動できる場面ではテンションが上がってしまう姿も目にします。しかし、多くの場合子どもではなく、教師の側に問題があるように思いました。子どもを見ずに一方的にしゃべる授業では、他の時間では集中していた学級でも集中力がまったくありません。このような場面もありました。何人もの子どもが黙って手を挙げて教師が気づくのを待っています。作業中には他の子どもの集中を乱さないために黙って挙手をして、教師が来るのを待つというルールなのでしょうか。しかし、授業者は教室の前の隅で何か自分の作業をしていて、子どもをまったく見ようとしません。何分も子どもは待たされています。中には、あきらめて手をおろす子どももいます。黙って挙手をすることを子どもたちに強いるのであれば、教師はしっかりと子どもを見る義務があります。自ら子どもの信頼を失くすような行動を取っています。

1年生の学年集会での各学級の様子が印象的でした。個々に作業しているのですが、子どもたちの姿勢がそろっていると感じる学級とそうでない学級があります。たまたまなのかもしれませんが、そうでない学級はこの日担任が休んでいた学級でした。もちろん代わりの方がちゃんとついているのですが、担任の目とは違いがあるということなのでしょう。担任の力が大きい、担任がしっかりと学級経営できていることの証とも言えますが、相手を見透かして態度を変えている可能性もあります。3年生になった時には、どんな先生が来ても変わらない子どもに育っていてほしいと思います。

今回、何人かの先生の授業の変化が印象的でした。
子どもの意見を引き出そうとするのですが、最後は自分でまとめを説明していた数学の先生の授業です。この日は、柔らかい表情で子どもの意見をじっくりと聞いています。子どもも一生懸命に説明しようとしています。結論を出すことを焦らずに、さり気なくヒントを与えたり、わざとぼけてみせて焦点化したりしています。授業スタイルを変えようとしていることがわかります。子どもたちも友だちの発言を聞こうとする姿勢を見せています。今後大きく伸びることが期待できます。

理科の初任者の授業は、子どもたちがとても集中して話を聞いていました。本人とお話したところ、できるだけ笑顔をつくり、子どもたちを見るように意識しているとのことでした。それだけで子どもたちがこれだけ集中するのですから見事です。落ち着いて、間もしっかり取って話しているので、子どもたちが聞きやすいこともよく集中している理由でしょう。私が進歩をほめたところ、「これだけのことで子どもたちが集中できるのに、今までできていなかったことが申し訳ない」と答えてくれました。とても謙虚な姿勢に感心しました。次の課題として、たとえ説明の場面でも、子どもに問いかける、子どもが理解したり考えたりする場面を意識的に設けることを示しました。次回の訪問時には、きっと進歩した姿を見せてくれると思います。

国語の初任者の授業は、子どもたちへの指示が明確なことが印象に残りました。課題が明確なので、子どもたちが集中して取り組んでいます。参加度が高いので、全体で答を確認してもよく反応してくれます。子どもたちの活動量が増えてきています。ただ、全員が答えているわけではないので、何人かを指名して確認したり、まわりと確認したりする場面と組み合わせるとよいでしょう。
また、子どもたちが寝ている友だちを起こそうとする場面がありました。教師が起こすのではなく、子どもたちに声をかけてもらおうというわけです。ところがなかなか起きないために、多くの子どもが声をかけ始めました。あまりよい状態ではありません。案の定、一部の子どもから揶揄するような、ネガティブな言葉が出されました。授業者は、すかさずそれを優しくたしなめました。なかなか見事な対応でした。育てようという目で子どもを見ていることに感心しました。

数学の初任者は、以前より子どもをよく見るようになったと思います。話す場面、書く場面を意識して区別しているようです。表情もまだ硬いものの、以前よりは柔らかくなってきたように思います。先輩たちの授業にはまだかないませんが、それでも子どもたちはよく話を聞いていました。できることが着実に増えていると思います。

暑い日でしたが、それにも負けず集中する子どもたちの素晴らしい授業態度がまぶたに焼き付いています。子どもたちがこれだけの集中力を見せる学校にはなかなか出会えません。4月の段階で戸惑いを感じていた先生方のかなりの方が、よい状態で授業をされていることも印象的です。子どもも教師も成長していることを実感しました。夏休み明けに子どもたちがどのような姿を見せてくれるのか、次回の訪問が今から楽しみです。
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