中学校区の研修の打ち合わせと授業参観

夏休みに中学校区の小中学校合同の研修の講師を引き受けるにあたり、事前に子どもたちのようすを見せていただきました。私の無理なお願いにもかかわらず小学校2校、中学校1校で授業を見せていただき、研修内容の打ち合わせをおこないました。

最初の小学校で感じたのは、先生方が子どもを見ていないことです。子どもが顔を上げていなくても話す。子どもが板書を写しても気にせずにしゃべり続けます。子どもの発言場面がとても少なかったのも気になります。たまたまかもしれませんが、子ども同士のかかわり合いもほとんど見ることがありませんでした。一部のわかった子ども、発言する子どもだけで授業が進んでいきます。子どもの発言をすぐに板書することも問題です。子どもが友だちの発言を聞かなくても困らないからです。
また、子どもの外化を評価する場面もほとんど見ることがありませんでした。発言した子どもの表情もあまりよくありません。教師も子どもも笑顔が少なかったことが気になります。このことを話したところ、教務主任からは学校訪問の資料の表紙を見せていただきました。そこには、友だちの発言をしっかり聞いている子どもの写真がありました。伝え合うことを大切にしているという説明でしたが、短い時間だったこともあり、残念ながらこの日はそのような場面も姿も見ることはできませんでした。先生方にとっては、伝え合う活動はまだ特別な場面でのことのようです。この学校の課題が見えたように思いました。
お一人、子どもたちを受容し、とてもよくほめる先生がいらっしゃいました。子どもたちは集中しているのですが、先生が黒板を向いて板書をするととたんに集中力が落ちるのです。しかし、当然先生はそのことに気づきません。意図的に力を抜かせているのかもしれませんが、ここはそのような場面ではないように思いました。

中学校は、子どもたちの状況と関係なしに、教師が一方的にしゃべっている授業が目立ちました。教師がしゃべれば、その内容を子どもが理解する。そのように信じているように見えます。試験が終わったあと、「あれだけ説明したのにできていなかった」と子どもを非難するのではないかと心配になりました。教師のいいわけ、アリバイ作りの授業のように見えました。
教師が教科書を見続けて、顔を上げない場面を何度も見ました。教師が自分の世界に入って授業を進めている。そこには子どもの存在がありません。
とても話し方が上手な数学の先生がいました。笑顔も素敵で子どもを惹きつけています。しかし、解き方のポイントを説明するだけで、そこには数学的なものの見方・考え方がありません。こうすれば問題が解ける、利益誘導型の授業です。早く、手間をかけずに、試験の点数という結果を得ようとする子どもの消費者的行動を教師がうながしています。数学ですら解き方を「覚えるもの」と子どもは思ってしまいます。塾と変わらないのです。
子どもに反応を求める教師もいるのですが、なかなか反応しません。最後には教師が負けて自分で説明しはじめます。子どもにとって、発言することに価値がないのです。うなずく、首をかしげる、そういった外化を求め、ポジティブに評価することから始める必要があります。

2つ目の小学校でも他の学校と似た傾向にありました。話し合い活動を大切にしようとしているとのことでしたが、その場面を実際にはなかなか見ることができませんでした。
子どもに注目させて教師がほめる場面がありました。よい場面です。続けて子どもに本読みをさせます。ところが、子どもが読んでいる間に教師は黒板を拭きはじめました。これでは、子どもたちは集中しません。自ら子どもたちの集中力を乱す残念な行為です。
子どもたちが勝手にしゃべっても、教師がそれに反応して話す場面を多く目にしました。きちんと全体に向けて話し直させるか、いったん口を閉じせなければ、学習規律が壊れていきます。多くの授業が、発言者と教師の1対1で授業が進みます。子どもたちは友だちの発言を聞こうとはしません。指名された者と教師だけの問題で自分には関係ないという態度です。発言が終わればすぐに教師が板書します。これでは聞く必要はありません。板書を見て、写せば済むからです。
授業の中で、拍手が時々起ります。一見よい場面に見えますが、形式的に流れています。一部の子どもはまわりにつられて拍手をしています。何を評価しての拍手なのでしょうか。私にはよくわかりませんでした。中には教師自ら拍手をしている学級もあります。具体的に何がよかったのかを伝えなければ、本当によい行動があったとしても広がりません。

参観後、教頭、現職教育担当者とまとまった時間を話すことができました。この学校の課題をよく認識されていますが、ではどのようにして解決していくかについてはいろいろと悩んでおられるようでした。夏休みの研修がよいきっかけになればと思います。

研修のテーマは、「学習規律を整え、子どもの力を引き出す授業づくり」となりました。全体では100名を超える参加者です。一方的な講演になりやすい人数ですが、グループでの活動を盛り込むことをお願いされました。せっかくですので、ただグループで話し合うだけなく、より先生方に積極的に参加していただけるような、今までやったことがない形式に挑戦してみたいと思います。よい機会をいただけたと思います。研修まで1月足らずですが、できるだけの準備をして臨みたいと思います。
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