久々の対面研修

私立の中学校高等学校で教員研修を行ってきました。新型コロナウイルスの影響でこの2年間はオンラインでの実施でしたが、久々に対面で行うことができました。定期試験の期間中でしたが、新型コロナによる学級閉鎖があり、教務担当者は対応に悩まされていたようです。まだまだ新型コロナウイルス感染の収束には程遠い状況でしたが、対面での研修はとても有意義なものになったと思います。

事前に行われた世界史の提案授業をもとにした研修でした。リアルタイムに参観できなかった方も、前後2方向からの授業の様子とスクリーンに映した画像資料を合成した動画を見ることができ、クラウド上のアンケートフォームを使うことで事前に感想を共有することができました。クラウドを活用するよさを体感できるような仕掛けをいれることがこれからの研修では大切になると思います。
授業は、簡潔にまとめたスライドを生徒の端末に配信することで板書とノート記入の時間を節約し、知識を効率よく伝えています。ICTは効率化だけでなく、資料を映すと同時にワーグナーやベルディの音楽を聴かせて五感に訴えるなど、生徒の興味関心を引き出すことにもいかされていました。情熱溢れる語り口もあって、多くの生徒を惹きつけています。
この授業のよさを多くの先生が共通して感じられていることは、アンケートからもよくわかりました。ICTを生かすことでより多くの情報を効率的に伝えている授業でした。
授業者は生徒に対して時々問いかけをするのですが、それに反応するのはどうしても一部の生徒に偏りがちで、授業者が求める答に誘導していると感じられる場面もありました。深く教材研究をしているがゆえに伝えたいことがたくさんあるのでしょう、どうしても授業者がしゃべりすべりすぎる傾向があります。悩ましいところです。

研修の最初に、令和7年度共通テスト試作問題から見えることを新聞記事なども紹介しながら解説しました。傾向として次のようなことがあると伝えました。

・知識そのものを問う問題は少なく、知識をどう活用するかを問う問題
   知識そのものを問う問題は少ない
   知識をつなげることが求められる
   現実の問題解決に知識を適用する
   初めての資料や事実をもとに考え、答を導き出す力が求められる
・探求を意識した問題
   探求の課程を問う
     対話からその先の結論がどうなるかを問う
     多面的・多角的な視点から見る
   他者の考えを理解する力を問う
     これからの受験では、伝える力、聞く力が評価される

最後に、今回の授業のよさを活かしつつ今後どのような方向に授業を進化させていくとよいのかを皆さんに考えていただきました。
・これからの時代を生きるためにどのような力をつけることを目指す?
・素晴らしい話をより活かす方法はないか?
・知識を何にどう活用する?
・多面的・多角的な視点をどう育てる?
・全員参加をどう実現していく?
といった視点を参考にして提示しましたが、これにこだわらず自由にグループで考えていただきました。今回はグループ毎にGoogle Jamboardを使って意見交流を行っていただきました。使い慣れていない先生もけっこういますが、詳しい先生に操作をたずねながら積極的に取り組んでくださいます。最初10分くらいはなかなか書き込みが増えませんでしたが、操作に慣れてくると次第に書き込みが増えてきます。使う必要があれば基本的な操作はそれほどハードルが高くないことがわかります。
課題に関しては、グループごとに視点も異なり、多様な考えがあることがわかります。先生方は他のグループの書き込みを見る余裕まではありませんでした。ICTの一番の強みである即時共有を経験してもらうために、他のグループの書き込みを見る時間を設けました。するとそれまで直接のかかわりが少なかったのですが、あちらこちらで声に出して感想や意見交流が自然に始まりました。生徒たちと同じく自分の考えを出力すると、他者の考えが気になるようです。ICTが他者とかかわりながら考えを深めることのきっかけになることに気づいてくれたと思います。

研修では、ダイレクトに授業での使い方を教えるのではなく、自分たちの課題解決の道具として使ってそのよさを知ってもらうことが有効です。自分で体験することで授業での活用イメージと意欲が湧くのです。研修終了後、ICTを使ったことを「面白かった」と言ってくださる先生がいたことをとてもうれしく思いました。
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