企業との勉強会で、よいものを開発し普及させる難しさを感じる

授業と学び研究所と企業とで、これからの学校におけるICT活用に合同勉強会が行われました。前回の続きで、その際に話し合えなかったことが話題の中心でした。

今回は学校と家庭をICTでどのように結ぶのかが主な話題となりました。学校にICT活用サービスを提供している企業の多くは、「こんなことができます」と一見するとなかなかよさそうで使えそうに見える機能を提唱します。しかし、多くの場合、それらは学校のかけるコストに見合うだけのものを得られていないように思います。中には、それを実行することで、かえってマイナス面が増えるようなものもたくさんあります。家庭向けサービスについて言えば、一部の特別な学校や家庭でしか望まれていないものや、既存のものと置き換えることや並行して提供することで家庭の利便性が見込めるがそのサービスを提供することが本来の学校のねらいとずれてしまうようなものがたくさんあるということです。

話し合いでは、企業の方からいろいろなサービスの可能性を提案していただきましたが、私たちから見るとそのようなあまり意味のないものが多いように感じました。しかし、よく聞いて見ると、彼らもそのサービスがよいと感じているのではないというのです。それらはほとんどがライバル企業の提案しようとしているものなのです。ならばそれらの企業のサービスが学校現場に導入されないだけで問題がないように見えるのですが、それほど単純ではないのです。機能がたくさんあって、なんとなくよさそうであれば、いやそうであるほど導入される率が高いというのです。機能がないよりあった方がよいと考えたり、ちょっと見であると便利そうと思えたりすることが重要で、本当に使われるかどうか、そのサービスを提供することが本当に意味のあることなのかの検討は真剣になされないようです。理由の一つに、導入の決定が学校現場のことがよくわからない行政の担当者によって進められることがありそうです。彼らが決していい加減というわけでなく、どうしても行政サービスと同じような感覚で学校を見てしまうからです。提供を受ける家庭が満足すればいいのではなく、最終的に子どもたちの教育にとってそれがどれだけ良い効果をもたらすかが問題なのです。現場からの意見も大切にされますが、現場でICTに詳しい方と学校の経営にたけた方が一致しないことも多く、なかなかよい方向に議論が進んでいかないことも目にします。

企業の方は、「このサービスは意味がない、いやない方がいい」と考えても、その機能がないことが導入の障壁になってしまうのは避けたいと思っています。それは企業として当然です。だからこそ、それらの機能やサービスを学校現場にとって意味のあるものにしたい。本当に必要なものを学校に提案したいと真摯に考えて、私たち授業と学び研究所のフェローに相談してくださっているのです。私たちは純粋に学校にとって必要なこと、意味のあると思えることを提案しますが、企業はそれを単純に形にすればいいというわけではないのです。

この勉強会を通じていくつかの方向性が見えてきたように感じます。それが具体的にどのような製品サービスとなっていくのかとても楽しみです。学校現場にとって意味のあるものが提供され、普及していくことに私たちが少しでも役に立てればこれほどうれしいことはありません。
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