愛される学校づくり研究会

玉置流・教師論

★ありがたいことに再び「愛される学校づくり研究会」のコラムに連載させていただく機会を得た。教育学部の教員となったこともあって、36年間の公立校教諭と管理職の経験を踏まえて、自分なりの「教師論」を書かせていただくことにした。話題があちこちに飛ぶコラムとなるが、月1回おつきあいをいただければ幸いである。

【 第6回 】教育実習での悩み(2)集中力に欠ける子どもへの対応

第1期ゼミ生(4年生)から届いた「小・中学校の教育実習中、授業で困ったこと」に応えるシリーズの2回目です。

大澤彩佳さんからは、次の困りごとが届きました。
 「クラスの中にどうしても集中力の続かない子がいました。授業を開始して10分程経つと、鉛筆をたてはじめたり、まるで上の空だったりになるのです。私の力不足で全員参加型授業を実現することが難しく感じていました」
 この困りごとは、大澤さんだけではなく、多くの教育実習生が経験することでしょう。中には、「そのような子どもはいなくて助かりました」という実習生や現役教員に出合ったことがありますが、単に気づいていないだけという幸せな方(笑)もいます。
 その点では、大澤さんは気づいています。子ども全体を見て、全員参加型授業を実現しようと挑戦したわけで、実習生としては立派です。
 一番知りたいのは、指導をされた先生が、この困りごとに対して、どのように話をされたかということです。その子どものことを一番知っているのは、その先生ですから、ぜひとも聞きたいことですが、おそらくこの場では書けないその子どもの背景などが話されることでしょう。

ここでは一般論で書いておきたいと思います。私自身は、「子どもの集中力は長くは続かない」ということを前提にして授業を組み立てます。
 かなり若いときに言われたことがあります。大澤さんと同様な困りごとを感じていたころです。
 「玉置さん、テレビを見てごらんよ。30分番組といってもね、30分間ずっと続くものはないよ。15分も経つ前にコマーシャルが入るでしょ。子どもたちはこのことに慣れてしまっているので、15分以内に授業に変化をつけることだよ」
 なるほど!と納得しました。もっとも、30分間くらいじっとして話を聞いている集中力も育てなくては!とも思いましたが、1日6時間の授業を受ける子どもたちのことを考えると、集中力を持続させることは大変なことです。
 そこで5分から10分くらいを一つの単位として授業構成をすることが一つの方法です。例えば、導入を5分とすると、導入が終わった段階で、子どもたちに何かしらのアクションを指示することになるのではないでしょうか。
 「では、教科書を開いて」
 この指示は、全員の動きを確認する指示ともいえます。動きを作ることで、子どもたちを集中させることができます。仮にこの指示が通っていない子どもを見つけたら、名前を呼ぶのです。多くの子どもは、名前だけを呼ぶだけで気づくことでしょう。

野口芳宏先生が推奨されている「小刻みな評価活動」を取り入れてもいいでしょう。
 「今の友達の読み方がうまいなあ、と思った人は〇、もっとうまく読めるはずだと思った人は×」
 などと、野口先生はだれもが動かなくてはいけない指示を出して、全員を授業に参加させるようにされています。語りの名手、授業名人と言われる野口先生でさえ、こうした授業技術を使われています。真似をしてみることです。

(2016年10月5日)

準備中

●玉置 崇
(たまおき・たかし)

1956年生まれ。1979年教員スタート。小学校、中学校教諭を経て、1998年教頭、2004年校長に就任。2007年より愛知県教育委員会主査、海部教育事務所長を経て、2012年に小牧市立小牧中学校長となる。2015年に早期退職をして、岐阜聖徳学園大学教育学部教授に就任。「書くことによって学ぶ」をコンセプトにゼミ生とともに創る「玉置研究室HP」発信中。著書には、「玉置流・学校が元気になるICT活用術―ICTは学校力向上ツール 」(プラネクサス)「学校を応援する人のための学校がよくわかる本(1)(2)」(プラネクサス)「「愛される学校」の作り方 −悩める校長をPTAを救う!実践とノウハウ」(プラネクサス)「スペシャリスト直伝!中学校数学授業成功の極意」(明治図書)など多数。
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