愛される学校づくり研究会

★日々行われている授業には、私たち教師に「元気」や「気づき」を与えてくれるすばらしい風景がたくさんあります。そんな風景を体全体で感じる時、そこには必ず素敵なほほえましい子どもの姿があります。大成功を収めた授業、大失敗に終わった授業、意外な展開に胸が高鳴った授業など、それぞれの教師が伝えたい心に残る授業の一コマや、授業があることで輝く学校現場の風景などを紹介します。

【 第15回 】心に残る中学時代の授業
〜新城市立連谷小学校 岡山 雅仁〜

一応数学教師である。「わかる・できる・おもしろい数学の授業」をテーマとして授業実践に取り組んできた。こう考えるようになったルーツはどこにあったかと振り返ると、自分が中学校の時であると思う。

私が中学生の時の数学授業で、記憶に残っている場面が3つある。

中学1年生の空間図形の学習で、「2直線の位置関係は『平行』と『交わる』の2つである」とまとめられた後に、『ねじれ』の関係があるということを先生に言いに行った。それを先生が取り上げてくれて、みんなの前で説明した。担当の先生が意図的にそんな場面を作ったのかどうかは定かではないが、まとめを覆す説明をしたことで得意げになったことは覚えている。

中学2年生になって、1年生の時とは違う先生が数学担当かつ学級担任となった。場合の数の学習だったと思うが、友達が黒板に樹形図を描いて説明している場面が印象に残っている。そんなに数学が得意な子ではなかったようだが、上手に説明していて、しかも説明慣れしているという感じを受けた。私が1年生の時に受けていた数学の授業とは、学び方が明らかに違っていた。その先生は、1年生の時は5クラス中1クラスしか数学を受け持っておらず、説明した生徒はそのクラスに所属していた。自分で考え、説明しあうという授業スタイルを当然のように身につけていた。

中学3年生でも同じ先生が学級担任となった。平方根の単元で「ルート・ルート2(つまり2の4乗根)」という数は存在するか?」が学級で問題になり、討論したことを覚えている。私は、「ルート2が1.41421356…という無限に続く小数で末尾の数が無いわけだから、2乗して末尾の無い数は決まらないだろう」という感覚的な理由で、存在しないという多数派だった。議論は白熱し、次の時間に持ち越しとなった。翌日の授業で一人の女生徒が、「正方形の1辺の長さを少しずつ変えていくと、どこかで面積がルート2になることがある。そういう正方形が存在するということは、その正方形の1辺の長さとしてルート・ルート2も存在する。」という説明をした。存在しないという多数派もその説明を聞いてどよめき、存在を素直に認めることができた。中学校の数学の授業で最も印象に残っている場面である。

3つの場面に共通しているのは、先生から教えられた場面ではなく、自分が説明した場面、または友達の説明を聞く場面、自分の考えを友達の説明により見事に覆された場面であった。つまり、生徒自らが能動的に活動していた場面である。今叫ばれているアクティブ・ラーニングの重要性は、自分の体験を振り返ってもその通りであると思う。

(2016年2月22日)

準備中

●岡山雅仁
(おかやま・まさひと)

初任地は豊田市、その後は故郷の新城市において、中学校勤務27年、小学校勤務3年、東三河教育事務所新城設楽支所勤務1年を経て、新城市立連谷小学校に勤務して2年目である。連谷小学校は全校児童3名の愛知県下最小規模校で、平成27年度をもって閉校となる。2月7日には、144年の歴史に幕を閉じる閉校記念式典を挙行した。「わかる・できる・おもしろい」をテーマとした数学指導と、生涯スポーツの楽しさを教えるためのソフトテニス指導に力を入れてきた。