愛される学校づくり研究会

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授業検討法に関するQ&A

「3シーン授業検討法」やグループを活用した「3+1授業検討法」を活用されている学校から、疑問や質問が寄せられることがあります。ここでは、それらのいくつかを取り上げて、お答えしたいと思います。また、「愛される学校づくりフォーラム2014 in京都」で公開されたICTを活用した「授業検討ツール」に関連して想定される質問にもお答えしたいと思います。

Q. なぜ、「3シーン授業検討法」やグループを活用した「3+1授業検討法」といった授業検討法を提案したのですか?従来の授業検討のやり方では何か問題があるのでしょうか?
A. まず初めに断っておきたいことは、どの学校でもこの検討法を勧めるわけではありません。授業研究がよい形で進んでいるのであれば、あえてやり方を変える必要はないと思います。しかし、実際には、「ほとんど意見がでずに、司会者が順番に指名して無理やり発言させる」「発言がつながらず、一向に議論が深まらない」「授業者に対する質問ばかり続き、それに対して『私ならこうする』と持論ばかりが主張される」「一部の力のある教師が場を仕切り、他の意見を押さえてしまう」「若手が意見を言うと否定されてしまい、発言意欲を失くしてしまう」「発言しようにも、何を言っていいかわからない」……。こんな学校がたくさんあるのではないでしょうか。

Q. 「3シーン授業検討法」やグループを活用した「3+1授業検討法」を試してみたいと思いますが、どの授業検討法を選べばいいのでしょうか?
A. 明確な基準があるわけではありませんが、授業検討会で「意見が出ない」「一部の意見だけで進んでいく」「質問や感想ばかりで、研究テーマに関連した議論が深まらない」といった学校には、「3シーン授業検討法」をお勧めします。参加者の多くが関心を持った場面を扱うので意見が出やすくなり、司会者が研究テーマと関連付けることで議論を深めやすくなります。
 「若手が多く、授業を見る視点が育っていない」「提案授業に対して否定的な意見が多い」「自分ならこうするといった持論の発言が続く」「授業について気軽に話し合う雰囲気がない」といった学校では、グループを活用した「3+1授業検討法」をお勧めします。小集団での話し合いなので、気軽に話し合うことができます。多くの意見に触れることができるので経験の少ない教師の視点が広がります。意見の多くがよい点になるので、雰囲気もよくなります。

Q. 「3シーン授業検討法」では司会者の役割が大切に思います。どのようなことに注意したらよいでしょうか?
A. 「3シーン授業検討法」に限らず、授業検討会では司会者の役割が重要になります。単に順番に指名して意見を発表してもらうだけでは授業からの学びは深まっていきません。「出された意見を整理し話題を焦点化する」「意見が分かれた時に、論点を整理する」「研究テーマや授業者からの提案と、出された意見を関連づける」といったことが求められます。 「3シーン授業検討法」では、検討場面は絞られているので、出された意見を整理し、研究テーマと結びつけることを特に強く意識するとよいでしょう。司会に不安があるのなら、グループを活用した「3+1授業検討法」を勧めます。各グループで意見が整理されるので、司会者の負担は軽くなります。

Q. 「3シーン授業検討法」では、多数意見を取り上げることになりますが、少数意見にも貴重な意見があるはずです。そのような意見の発表の機会をつぶしてしまうことになりませんか?
A. 「3シーン授業検討法」では、参加者の多くが興味を持ったところを議論することで、参加意識を高め、多くの意見を引き出そうとしています。授業検討の活性化を一番のねらいとしているので、このような手法を取っています。3シーンにこだわらず、少数意見を聞く時間をあらかじめつくっておいてもいいでしょう。この時、司会者がテーマや議論されてきたことと関連があると判断すれば、全体で取り上げて深めていけばよいと思います。今回のフォーラムで紹介する「授業検討ツール」には、興味を持ったところだけでなく、その理由をコメントすることも可能です。このような機能を使うことで、少数意見をより拾いやすくすることもできます。あくまでも1つの方法ですから、学校の実態に応じて工夫していただきたいと思います。

Q. 「3シーン授業検討法」では、ある場面だけを取り上げるので、授業の組み立てやテーマなどの授業全体にかかわることが話題にならないように思いますが、どうすればいいのでしょうか?
A. あらかじめ話題にしたいテーマなどが決まっていれば、「テーマと関連して、心が動いたところ」といった条件をつけることで、意図したことと関連した意見を引き出すことができます。また、ある場面に関する意見に対して、授業全体との関連性を問いかけることで議論を広げることもできます。司会者が検討会の方向性を意識的にコントロールすることも時には必要だと思います。

Q. 「3シーン授業検討法」で、検討する場面に挙手した人を順番に指名して意見を言ってもらうのですが、似たような意見が続きそれ以上に深まらないように感じます。どうすればいいのでしょうか?
A. 議論を深めるためには、焦点化が必要です。このような場合は司会者が出された意見を一度整理し、よい点であれ課題であれ、いったんまとめることが必要です。順番に指名するのではなく、同じ意見の人をつなぎながら進めると整理がしやすくなります。 その上で、よい点であれば、「それは他の場面でも起こり得るのか」「再現性のあるものにするにはどうすればいいのか」といったことを、課題であれば「どのようにすれば、解決するのか」「他にどのような方法があるのか」といったことを話題にすれば、議論は深まっていくはずです。

Q. グループを活用した「3+1授業検討法」で、グループ内で意見を順番に言って、最後にどれにするかを簡単に話し合うか、時には多数決で決めて終わってしまいます。これでは、意見を言うだけで、授業について検討したとは言えないように思うのですが、どう考えればいいでしょうか?
A. このような状態であれば、深く検討できているとは言えないかもしれません。しかし、自分の考えを言葉にして伝える、他者の考えに触れることが授業検討の第1歩だと思います。学校によっては若い教師がなかなか意見を言い難い雰囲気もあります。そのような場合でも、このやり方であれば必ず参加できます。また、他の人の意見を聞くだけでも、授業を見る視点が増え、視野が広がります。このことも狙いの1つです。まず、ここからスタートしてください。その上で、付箋紙と模造紙といったものを活用して、でてきた意見を「3+1」にまとめる作業を互いにかかわりながら進めるようにすると、より深い検討となります。まとめ方も、いろいろと考えられます。グループごとに自由に取り組んでもいいですし、学校でスタイルを決めているところもあります。それぞれの学校で、ぜひ工夫して取り組んでほしいと思います。

Q. グループを活用した「3+1授業検討法」で、検討するのが若手の授業だったりすると、課題ばかりが目について、よいところを見つけることができません。よいところをたくさん取り上げるという「3+1授業検討法」が成り立たないのですが、どう考えればよいのでしょうか?
A. どのような授業でも、よいところ、参考にできることは必ずあるはずです。それが見つけられないということは、見つけようとする姿勢を持てていないということです。職場の人間関係があまりよくないのかもしれません。逆に、授業のよいところを見つけようとする雰囲気を醸成することで、職場の人間関係もよくなっていくはずです。この授業検討法の目的の1つが、誰もが気軽に授業を話題できるような雰囲気を学校につくることにあります。「よいところがない」ではなく、「よいところを見つける力がない」ととらえ、よいところを見つけようとする姿勢を育ててください。また、教師の動きばかりを見るのでなく、子どものよいところを見つけようとすることも大切です。話題にするのは、教師のよいところではなく、授業のよいところです。子どものよいところを話題にするだけで、検討会の雰囲気もよいものに変わっていくはずです。

Q. 今回紹介されたICTを活用した「授業検討ツール」を使って見たいと思うのですが、どのようにすれば利用できるのでしょうか?
A. 今回紹介した「授業検討ツール」は研究のために開発したプロトタイプです。今後、研究会と開発会社(株式会社EDUCOM)が協力して、よりブラッシュアップしていく予定です。ご関心のある方は、開発会社にお問い合わせください。

(2014年3月24日)

大西貞憲

●大西 貞憲
(おおにし・さだのり)

愛知県で公立中学・高校教諭を経て、民間企業で学校向けソフト開発に携わる。2000年教育コンサルタントとして独立。現場に出掛けての学校経営や授業へのアドバイスには「明日からの元気が出る」との定評があり、愛知県を中心として、全国の小中学校や自治体から応援を求められている。また、NPO法人「元気な学校を支援し創る会」理事として「教師力アップセミナー」「愛される学校づくりフォーラム」を通して実践に役立つ情報の共有化・見える化に注力している。