第1回は、5月11日10時〜12時です。講師は『田中博史先生』です。田中先生は算数科教育の第一人者です。算数の授業を通して、学級経営や子どもとの接し方を学びます。ふるってご参加ください。

2/14 吉永幸司先生2

 国語は、言葉である。言葉で話す。言葉で考える。言葉を使う。その言葉を一生懸命に繰り返し使っているうちに、学校の日常で子どもたちの言葉が育つ。「おはよう」と声をかけても知らん顔。友達が「ごめんね。」と謝っても「なに?」と言うよう学校や学級では国語の力は不十分と捉え、日常とつなげる国語科の授業を目指していきたい。
 言葉の力は生きる力と感じた事例がある。6月の初め、1年生の保護者から「うちの子どもがいじめられて帰ってきました。」と連絡が入った。詳しく話を聞いた。6年生の子がドッチボールの遊びで「あっちいけ」と言って1年生の背中を押して追い返したということであった。保護者と私たちの前で、6年生が最初に言ったことが、「今日は、ぼくのためにお忙しい中、来てくださってありがとうございます。」という保護者への感謝の言葉だった。その後、「ボールに当たると危なかったので押しました。その時に気が付いて、担任の先生に『ごめんなさい』と言えばよかったけど、言えませんでした。ご迷惑かけました。」と、お詫びの言葉だった。1年生の保護者も事情を理解し、子どもの話を聞くと、自分に都合がいいように伝えていたという説明だった。6年生がこのように適切に話せなかったら、1年生の子の話が正論になっていた。必要な時に必要な言葉で話せることが大切。学校でのトラブルは、学校から伝えるのではなく、子どもが自分で伝えること。そして、学校が親に確認し、子どもの説明の不十分さは「ここのところ抜けているでしょう。」と子どもに伝え、再度、正しく保護者に説明するよう指導する。正しく伝えると理解を得、深まるような力を国語の時間につけたい。
国語の授業を変え、学校を変えるには、国語の授業の質をよくすることが大事だと考えた。国語は、教材をもとにして、教材の勉強をする。教えたいことがたくさんあり、教師が考えた答えに導きたいと思う。そのため、教師がいっぱい喋る。話して理解をさせようとすると、子どもは、自分で考えようとしなくなる。そうならないために取り組んだのが、板書とノートを一体化することや効果的な言語活動の開発であった。手始めに国語の指導が好きな先生で国語プロジェクトを立ち上げた。プロジェクトで考えた初めは、「さん」付けで呼ぶ。「はい。」で答えることからであった。特に名前を呼ばれたら返事することを徹底した。この取り組みを全校で行った。そして、キーワードは「丁寧」にした。「丁寧にお話しましょう。」「丁寧に聞きましょう。」を合い言葉にした。そのことで何が変わったか、教師の言葉遣いが変わった。また、主語に「さん」をつけると述語を明確にして伝えるようになった。
次に、ノート指導に力を注いだ。授業では勉強した証拠が必要だと考えると、子どものノートは勉強した証になる。教師は授業準備で板書をノートに書く。そのノートの通りにきれいな板書をする。初めの段階は、子どもが板書をノートに丁寧に写す時間を大事にした。ノートは、学習の記録になる。だから、日付を書く。先生の板書を丁寧に写していくと、勉強の仕方がわかる。学習の記録として残るから意欲が湧くということで、学校が変わっていった。
授業の始めに音読をすることも取り入れた。音読には詩が良い。古典は、特に、音読にふさわしい。
授業だけでなく、学校生活全体でも、国語力を育てることに力を注いだ。保健室の取り組みでは、子どもが来室したら、先生から、話すのではなく、聞き出すことを大事にしてもらった。取り組んで2年、保健室を訪れた子どもは、「失礼します。今、お時間よろしいですか。2時間目の時に鉄棒から落ちました。その時は、大丈夫だったけど、3時間目に痛くなってきました。担任の先生に聞いたら、心配なので保健室に来ました。水で洗ったけど、先生どうすればいいですか。」と言えるようになった。
国語力が育つと怪我が少なくなるというのは、できすぎた話のように聞こえるが、言葉が少ないと、手が出るという実態から考えると、言葉で問題を解決する力が育ったというように考えることができる。
丁寧に相手の話を聴くということで育つ子どももいる。聞き出すことに重点を置くと、「どうしたの?」と問う。「それで?」「それで?」で、話をつなぐ。そうすると考える力が育つ。聞く力が育つ始まりは、指示をしっかり聞くことである。ノート指導でも、点やはね、マス目からはみ出さない等の指示を聞いて書くと美しいノートができるという経験が聞く力を育てる。
画像1
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31