有田和正先生から元気をいただく

教師力アップセミナーで授業名人有田和正先生からたくさんのことを学ばせていただきました。

今回は、防災を意識した社会科のお話を聞かせていただきました。元の襲来に備えた防塁、防人などの歴史から備えるということを考える模擬授業でした。そのこととつなげて、東日本大震災での釜石の奇跡とその奇跡を起こした釜石市の防災教育について語られました。教育の持つ力と素晴らしさを「奇跡を起こせるのは教育だけだ」という言葉に込め、何度も口にされました。いつも以上に熱いメッセージから、私だけでなく会場の多くの方が元気をいただいたことと思います。

教師が何でも教えるのではなく子どもが調べることが大切だと強調され、自身もそのことを裏付けるように、必ず現地まで出向いて調べたことをもとに授業をつくられます。今年も新しいお話をたくさん聞くことができました。いくつになっても、追究し続ける有田先生の姿勢に、このような年の重ね方が自分にできるだろうかと問いかけた一日でした。

講演前に時間をいただいて、愛される学校づくり研究会の代表が、「愛される学校づくりフォーラム2012 in東京」について、当日の諸連絡をおこないました。有田先生の「バスのうんてんしゅ」の展開をとりいれたコンビニの授業を見ていただくことをお話すると、「それはおもしろそうだ」とおっしゃっていただけました。当日有田先生のセッションを担当する私も、どんなお話が聞けるかとても楽しみです。少しでも多くおもしろい話を引き出せるように、精一杯頑張りたいと思います。

昨年末は一時体調を崩されていたようですが、例年以上に熱の入った講演でした。有田先生から多くの元気をいただきました。本当にありがとうございました。

教師の人間関係をよくする

教師の人間関係がよい、悪いという言葉を聞くことがよくあります。授業研究を通じて互いに学び合おうとするときに問題となることが多いようです。人間関係が悪いので、活発な議論にならない、学び合おうとしない。こういう形で耳にします。人間関係が悪いのでこの学校はよくならない、指導はしたくないとおっしゃるアドバイザーもいらっしゃいます。私も、先生方が互いに学び合うためには、人間関係が大きな要素であることは否定しません。そこに問題があるのなら、何とかしたいとも思います。私なりに先生方の人間関係をよくするために気をつけていることをまとめてみます。

人間関係が問題点として語られる学校にはいくつかの特徴があるように思います。

学級経営や授業がうまくいかないときに、担任の問題として指摘する。
特定の人同士、小グループでは話をするが、全体としてはあまり会話しない。
授業を見られることに抵抗感が強い。
授業検討会などで、あまり意見が出ない。
一部のベテランが意見を言うと、他の先生の意見が出にくくなる。

人間関係が悪いからこうなるのか、こういう傾向があるから人間関係が悪くなるかはわかりませんが、ここにヒントがあるような気がします。

・困っている先生を助ける雰囲気をつくる
たしかにこの先生のやり方ではうまくいかないと思うことがあります。しかし、多くの場合本人も気づいて苦しんでいます。あまり責めても追い詰めるだけです。もちろん個別にアドバイスも必要ですが、まわりの方に助けてもらえるようにします。同じ学年の先生や、その学級とかかわる先生方に「大変でしょうが、先生ならできると思うので」と子どもへの指導を通じて助けてくれるように頼みます。助けてもらった先生がまわりの助けに気づくのを待って、「みんなが助けてくれてよかったですね」とコメントし、「ありがとう」を伝えるようにアドバイスします。もちろん私も助けてくれた先生方に、「感謝されていましたよ。ありがとうございました」と個別に伝えます。
また。研究授業の担当になったときなどは、有志による模擬授業や検討会への参加をまわりの先生にお願いします。事前のアドバイスを受けて授業がよくなると、かかわった先生がその先生の進歩認めるとともに自己有用感を持ちます。
助けあうことで自己有用感を持ち、互いにかかわることに前向きになっていきます。

・ネガティブな言葉を封印する
授業検討会などでは、よかったこと、参考になったことを中心に話すルールにすることで、話し合いの雰囲気がよくなります。批判的なことばかり言われると他者とかかわるのが嫌になります。逆にほめられると相手に対してポジティブな気持ちになります。授業を見られるとほめられるということが常態化すると、見られることへの抵抗感も薄れます。

・小グループで活動をさせる
検討会では、ベテランと若手を組み合わせるなどふだんあまり交流がない先生同士を小グループにして話し合わせることで、きっかけをつくります。ポジティブなことを中心に話し合うようにすることで、楽しいものになります。また、授業アドバイスを小グループでおこなうことも有効です。よい意見を大いにほめたうえで、感想を他の先生に聞くことで仲間からもほめられるようにします。自分がこの先生方に認められた感じることでよい関係になっていきます。

・意図的につなげる
ベテランや力のある先生のよいところを大いにほめ、「他の先生に教えてもらうように伝えますので、そのときはよろしくお願いします」と伝えます。若手に対しては、「○○先生はとても上手だから教えてもらったら。頼んでおいたからだいじょうぶだよ」と声をかけます。力のない先生に批判的な方でも自分に教えを乞う人に対しては寛容になります。助けてあげようという気持ちになっていきます。

これをやれば人間関係が必ずよくなるというわけではありません。しかし、昔のようにノミ(飲み)ニケーションに頼るわけにもいきませんし、ほっておいても人間関係はよくなりません。管理職やリーダーの方が、教師の人間関係をよくするために必要なことを意識してほしいと思います。

学校の役割を考える

学校教育の目的は何だろうと考え直すことがあります。
子どもたちが学校で勉強するのは何のため、誰のためなのか。先生方はこのことを明確に意識しているのでしょうか。少なくとも義務教育である小中学校では、「本人のため」だけではないことを明確にしてほしい気がします。どうも「社会のため」という視点が子どもたちからも先生からも抜け落ちているように思います。先生方はよりよい社会の担い手になるということはどういうことなのか、子どもたちに伝えているのでしょうか。

「この問題は試験(入試)に出るから覚えておきなさい」といった言葉が学習の動機づけに使われる場面に出会うことがありますが、何か違う気がします。確かに個人の自己実現の手段という側面が教育にあることは否定しません、しかしそれだけではないはずです。自分たちが学ぶことはよりよい社会の実現のためであるという意識と実感を持たせてほしいのです。

子どもたちにこのことを伝えるのは簡単だとは思いません。口で言えば伝わるわけではないでしょう。学校、教室という小さな社会で他者とかかわり合いながら学ぶことで少しずつわかってくることだと思います。そのためには、自分の存在が他者にとって価値あるものだと実感する場面を意図的につくることが大切だと思います。学習場面では、自分がわかればいいのではなく、友だちがわかるためにどうかかわるか、自分の意見や考えがどうまわりに認められるか。特別活動では、それぞれが役目を果たすことで何ができるのかといったことを子どもたちが意識するようにしてほしいのです。

学校は塾とは違います。子どもたちに自分たちがこれからの社会を担うのだ。そのために学んでいるのだということをしっかり伝え、一人ひとりに自己有用感を持って学校生活を送らせることで、よりよき社会の担い手に育てることも学校の大切な役割なのです。
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