ちょっと早めに4月の学級づくりを考える

今日が今年度の修了式という学校も多いと思います。1年の区切りがつきホッと一息を入れる日だと思います。短い春休みがやってきます。指導要録の作成や新年度への準備、中には異動となってそれこそ大変な毎日を過ごす方もいらっしゃることと思います。ここで、少し時間を取ってほしいことがあります。それは、来年度の学級づくりをどうするかということです。

経験の多い方であれば、例年通りでいいという発想もあるかもしれません。しかし、子どもたちは毎年変わります。同じようにやっているつもりでも、学級は同じようにはなりません。毎年棚卸をして、微調整する必要があります。
逆に、子どもたちを見てからでないとどうするか決まらないという考えもあります。けれど、子どもたちの特性を把握するには時間がかかります。それまで、何もしないわけにはいきません。何を大切にするか、どういう方針で行くかはあらかじめ考えておく必要があります。

まずこの1年の子どもたちの姿を振り返って欲しいと思います。よかったなと思う子どもの姿はどのようなものだったでしょうか。それが目指す学級の姿だと思います。逆によくなかったなと思う姿も思いだしてください。目指す姿に対する裏返しの姿です。こうして、自分が目指す子どもの姿を具体的に明確にしていくのです。そして、その姿をつくるためにどのようにしてきたのか、何がきっかけでうまくいったのか、いかなったのかを振り返ってみてください。自分の学級でなければ、想像してみてください。必ず何か思い当たることがあるはずです。こうすることで、目指す子どもの姿、学級づくりのポイントが整理されていくはずです。

次に、その中で何が自分の学級づくりの基本なのかを考えます。そして、そのために必要なことをピックアップします。もし何年生を担当するかあらかじめわかっている場合は、その学年に応じたやり方を考えます。わかるまでは、何年生だったらとシミュレーションをしてみます。無駄に思えるかもしれませんが、いろいろな学年を考えることは、子どもたちの成長の度合いに対応するための引き出しを増やしてくれます。こうして、少し早めに4月の学級づくりについて考えておくのです。

担任や分掌が決まって新学期を迎えるころは、一気に仕事に追われる状態になります。こうなると、ますます余裕がなくなり、落ち着いて考えることもできなくなってしまいます。少しは精神的に余裕のあるこの時期に、この1年を振り返り、4月からの学級づくりを考えてほしいと思います。

行事が終わった後に意識すること

秋は行事の多い時期です。どの学級も一生懸命行事に取り組むことと思います。意外と意識されていないのが、行事が終わった後のことです。行事が終わった後、どのようなことに気をつければよいか考えてみましょう。

行事が終わった後の子どもの状態はどうでしょか。みんなが力を出し切った、結果を出せたときは満足感が学級に広がっています。このよい状態を明日からの授業に活かしたいと思います。そのためには、終わった行事を引きずらないようにすることが大切です。楽しかった行事の高揚感が教室のテンションをあげてしまうことが多いからです。テンションが上がりすぎると教室の落ち着きがなくなり、集中力が落ちてきます。高揚感を適度に抑え、気持ちを授業に集中させるためには、行事のことは一度忘れることが必要です。
もし、よい結果を残せたり、賞状をもらえたりしたのではあればそのことを子どもたちと一緒に喜びます。その上で、明日からの学級の目標を子どもたちに示します。今回の行事で達成したことの上に何を上積みするかです。
そして、できればその日のうちに、遅くても翌日には行事の名残となるもの(賞状のようなものは別ですが)をすべて片付けます。翌日以降、教室に行事で使ったものが残っていたり、行事関係の掲示物がまだ貼ってあったりすると、どうしても行事を引きずってしまうからです。

では、今一つうまくいかなかったと感じるときはどうでしょう。反省会のようなものを開くこともありますが、終わった行事のことを引きずるのはあまり得策とは思えません。それよりも行事を通じて「できたこと」「やれたこと」を探し、そのことをきちんと評価しておくことです。次の行事ではそこを出発点として、目標を考えればいいのです。また、結果が出なかったときリーダー役の子どもや行事に入れ込んでいた子どもはがっかりします。自分のせいだと思ったり、逆に協力的でなかった仲間のせいだと考えたりします。全体で取り上げる必要はありませんが、そういう子には個別に時間をつくって話を聞いてあげることが必要になります。

いずれにしても、行事を通じて新しい人間関係ができてきます。新しく友だちができることで、授業中の無駄なおしゃべりも増えたりします。逆に集団行動が苦手な子どもの中には学級の中に居場所がなくなることもあります。子どもの人間関係の変化に注意をすることが大切です。また、行事でエネルギーを使い体調を崩したり、授業中に集中力をなくす子どももでてきます。子どもたちの体調にも注意をすると同時に、授業での子どもの活動量を意識する必要があります。活動量を増やすことで授業に集中させることは大切ですが、グループ活動などが逆に無駄なおしゃべりを誘発することもあります。いつも以上に子どもの様子を注意深く観察する必要があります。

行事は子どもも教師もエネルギーを使うものです。終わるとホッと一息つきたくなります。しかし、そこで気を抜かず、子どもたちがきちんと気持ちを切り替えて次の目標に向かって活動するために教師がすべきことは何かを見極めてほしいと思います。

行事の時期は教室のエネルギーに注意

夏休みも明けて、運動会や文化祭などの行事で教師も子どもたちも忙しい季節です。この時期に授業を見せていただくときに気になるのは教室のエネルギーです。子どもたちのテンションは上がりすぎていないか、低くなっていないか、ちゃんと授業に集中しているか、寝ている子はいないか。この時期をうまく乗り切ることが1年の後半を乗り切る大きな分かれ目です。

行事で学級がうまくまとまっていくと、子どもたちのエネルギーは高まります。人間関係が円滑になると、いろいろなことにやる気が高まります。朝のあいさつも大きな声でしっかりできます。しかし、テンションが上がりすぎて、実は授業に集中できていないこともよくあります。元気はあるがじっくり課題に取り組めていない、忘れ物が増えているといった兆候があるときは、テンションを落とすことを意識する必要があります。挙手をさせずに指名する。指名と指名の間に間をとる。友だちの意見と関連して発言を求める。こういうことが大切になります。

一方行事で子どもたちが体力を使って疲れてくると、授業に対するエネルギーが下がってきます。板書は写すが、意見の発表が減ってくる。騒いだり、よそ事をしたりするわけではないが、何か集中していない。居眠りしたり、ふせっている子どもが出てくる。こういう状態は要注意です。
学級がこういう状態のときは、実は教師のエネルギーも落ちていることが多いのです。子どもたちのエネルギーを高めるためには、教師が積極的に子どもたちとかかわることが必要です。また、課題や発問に工夫も必要です。しかし、行事で疲れるのは教師も同じです。授業にエネルギーを集中できていないのです。
また、行事で授業は遅れがちなるので、教師が一方的に説明をすることで、少しでも先に進めたくなります。子どものエネルギーが落ちているので、騒ぐわけでもなく表面上は無事に進んでいきます。子どもも疲れているから、ちょっと様子を見よう。こんな気持ちで、この状態を放置してしまうと、行事も終わりいざ学級の雰囲気を切り替えようとしても、簡単には戻らなくなってしまいます。子どもも楽をすることに慣れてしまうのです。

子どもたちの集中力ややる気を起こさせるためには、受け身の時間を減らすことが必要です。とはいえ、このような状態では、思考的な活動にはすぐに入れません。物理的な活動を伴うような課題を与えるとよいでしょう。ペアでの活動、グループでの作業。物に触れたり、教具を使うような活動。教師も忙しくて大変でしょうが、ちょっとした工夫をすることが大切になります。

行事で頑張り、授業にもきちんと集中して参加する。この時期をしっかりと乗り切ることで、子どもたちは大きく成長するのです。そのためには、教師はいつも以上に授業での子どもの様子を観察し、教室のエネルギーがほどよい状態になるように注意してほしいと思います。

一人ひとりのほめる観点を意識する

子どもを一人ひとり見ることは大切だとよく言われます。また、子どもはほめて伸ばすということもよく言われます。ところが、通知表の所見を書くとなると、なかなか言葉が浮かんでこなかったり、悪いところしか思い出せなかったりすることがあります。意識的に一人ひとりのよいところを見つけようとする姿勢を持たないと、全員をきちんと見て、ほめることはできないのです。

教師は学習や生活態度に問題があると、それを直そうと注意をします。よい行動があるとそれをほめるようにします。ところがこの絶対的な基準をそのまま学級に当てはめると、ある子どもは教師から注意をされてばかり、ほめられるのは特定の子どもだけで、大多数の子どもは、ほめられることも注意されることもほとんどない。このようなことになってしまいます。こういう学級経営をしていると、所見で書くことが思い浮かばなかったり、悪いことしか思い出せなかったりするのです。

大切なのは絶対的な基準ではなく、個人内での相対評価を意識することです。一人ひとりを思い浮かべ、この子がこんな行動をとったらほめてあげようという、ほめる観点を個人別に作るのです。
大したことでなくてもよいのです。宿題をよく忘れる子は、「宿題をやってくる」、いつも授業に遅れる子は、「授業に遅れない」。おとなしくて積極的に発言しない子は、「授業中に発言する」。学習のよくできる子は、「友だちに聞かれたらきちんと教える」。このようなものでよいのです。
宿題をやってくるのは当たり前のことです。だからそんなことはほめてはいけないと考える方もいるかもしれません。大切なことは、子ども一人ひとりが成長することです。できないことを指摘するのではなく、その子にとっては進歩であればそのことをほめるのです。

ほめる観点を教師が意識すると、その場面を見ようとします。自然に一人ひとりを見る機会が増えていきます。また、なかなかほめる場面に出会わなければ、そういった場面をつくろうとします。自然に子どもの成長を促すための働きかけを教師がすることになるのです。

一人ひとりの「ほめたいことリスト」をつくってみませんか。そして、学期末などの節目にどれだけほめることができたかチェックします。できた子には次のほめたいことを考え、できなかった子には次の働きかけを考えたり、ほめたいことをもう少し達成しやすそうなものに変えたりして、リストを更新します。
子どもの足りないところを指摘するのではなく、できたことをほめる発想をしてほしいと思います。

学習計画を考える

長期休業などで、子どもたちに学習計画を立てさせることがあると思います。なかには学習計画を立てて満足してしまう子もいます。子どもたちにとって意味のある学習計画とはどのようなものなのでしょうか。

子どもたちの学習計画は、何時から何時まで勉強するといったものがどうしても多くなります。時間が来たから勉強するぞと机に向かい、それから何をするか考え始めます。これではなかなか取り組めませんし、すぐにやる気をなくします。
計画はできるだけ具体的にするように指導します。国語をやる、漢字の練習をする、漢字の練習帳の何ページをやる。後にいくほど具体的になっています。具体的であればあるほど、それだけ実行できる可能性は高くなります。
何をどれだけやるかが明確であれば、机の前で時計を見て時間がたつのを待っているのではなく、早く終わらせて次の行動に移ろうとするとして集中力が生まれます。早く終われば遊んでもいいのです。

ここで、もう一つ注意してほしいのは、やったことで満足するのではなくその結果どのような力がついたか、何ができるようになったかという成果を意識することです。そのためには具体的に何ができればよいのかの目標と成果を明確にする必要があります。漢字の練習であれば、練習帳の何ページの漢字が全部きちんと書けるようになるといった成果を明確にすることです。

この目標と成果を明確にするためには、学習計画全体を通じての目標、成果を具体的にすることが大切になります。休みを通じてどんな力をつけたいのか、その成果をどんな形ではかるのかです。目標は漢字力をつける。その成果は、問題集のテストで何点とれたかで確認する。そのために、練習帳を毎日何ページやる。こういう発想です。
子どもたちが自分でこの目標と成果をつくれないようであれば、教師の側で最低限のものを用意することが必要かもしれません。休み中の課題と連動してもよいですが、その場合、成果を具体的にチェックする方法をプラスする工夫がほしいと思います。

また、子どもたちが立てる計画は、気合を入れすぎて無理をしたり、確実にできることを意識して押さえ目になったりします。そのために、チェックポイントを設けるようにします。たとえば1週間ごとにチェックし、うまくいっているなら上方修正、うまくいっていないなら、目標達成のために計画を立て直すのか、目標自体を修正するのか考えます。

とはいえ、なかなか計画通りに実行できないのも子どもたちの常です。子どもたちのやる気を持続させるためにはいくつかの工夫が必要です。
目標に対してどこまで進んだかを視覚的にわかるようにすることも一つの方法です。予定をこなせたら、マスをぬりつぶしていく、シールを貼るといったやり方です。こうすることで、達成感を味わうことができます。
また、いつも目標をクリアできないとやる気がなくなりますが、最低限でもここまではというラインを設定することで、達成感を味わいやすくするという方法もあります。たとえば、目標10ページに対して6ページを最低ラインに設定します。集中力が切れかかっても、6ページはクリアしようという気持ちが働きます。6ページできれば、とりあえず最低ラインをクリアした達成観が得られるので、あと1ページくらいはと意欲が戻ってきます。

これらのことすべてを子どもたちに求めることは難しいと思います。しかし、子どもたちの発達段階に合わせてできること、やれそうなことにチャレンジさせてください。とりあえず、学習を時間ではなく、具体的に何をするかでとらえさせることで、子どもたちの学習に対する取り組み方が変わっていくと思います。

悩み事の相談

若い先生は子どもから悩み事を相談されたときに、どうしても気負いすぎる傾向があるように感じます。解決を焦りすぎるあまり、子どもの気持ちにきちんと寄り添うことを忘れて、子どもとの関係を崩してしまうこともあります。どのようなことに注意をすればよいのでしょうか。

子どもから、悩み事や相談事が出たときに大切なのは、すぐに答えを出そうとしないことです。悩み事があるときは、基本的に子どもの中に負の感情があります。大切なことは子どもが感じている負の感情をきちんと受け止め、共有することです。
いきなり「もっと詳しく」「なぜ」と矢継ぎ早に質問をすると、子どもには問い詰められているように感じてしまいます。また、「こうしたらどう」とすぐに教師がアドバイスをはじめても、自分のことをしっかり理解してくれていると感じていなければ、なかなか素直に聞けません。
深刻な話であればあるほど、柔らかい笑顔で、「それってどういうことかな。もう少し聞かせてくれる」と余裕を持って聞くようにします。子どもから自分を否定するような言葉がでてきても、まず受け止め、「話してくれてありがとう」「気づかなくてごめんね」と子どもに対して教師が寄り添う姿勢を見せます。

「最近みんなとうまくいっていないんです」
「それってどういうこと」
「なにか、みんなが私のこと無視しているように感じるんです」
「そうか、みんなが無視しているように感じるんだ。それはつらいね。話してくれてありがとう。気づかなくてごめんね」

このように、子どもの言葉をしっかり復唱して子どものつらい気持ちを共感してあげるのです。ここで、「そんなことないよ。みんなあなたのことを無視なんかしていないよ。気にしすぎだよ」と励ますつもりで子どもの負の感情を否定しまうと、自分の言葉を否定されたと感じ、わかってくれないと心を閉ざしてしまいます。

子ども気持ちをしっかり共有した上で、解決に向かって進むのですが、ここで注意してほしいのは、教師が一方的にアドバイスしないことです。子どもに寄り添って、一緒に解決するという姿勢が大切です。

「どうすればよいか一緒に考えようね。みんなと言ったけど、全員かな」
「○○さんは、ときどき声をかけてくれる」
「そうか、全員じゃないね。よかったね」
「じゃあ、どうなれば、あなたの悩みは解決するのかな」
「みんなが声をかけてくれる」
「なるほど、みんなが声をかけてくれるようになるとうれしいね。みんなってどのくらいだろう」
「うーん、1人だけはいやだけれど、何人かいればいい」
「そうか、1人はいやだけれど、何人かいればいいんだね。あなたにできそうなことはない」
「無視されるのは怖いけど、声をかけてみる」
「そうか、声をかけてみるといいね。それじゃ思い切ってやってみようよ」
・・・・

子どもの状況が完全にネガティブなことは稀です。その中でポジティブなものを探すことが、気持ちを切り替えるきっかけになります。できないことではなく、できていることを探すのです。その上で、自分がどうなりたいかを子どもに気づかせます。ゴールをイメージして、そこに至るスモールステップを意識させます。この例の場合は、「みんな」というゴールの途中に「何人か」というスモールステップを設定させています。そして、そのために何をすればよいかを考えさせます。

悩み事の相談は、子どもに寄り添い、一緒に考える姿勢が大切です。子どもが「どうなりたい」「どうする」のかを自分の口で言えるようにサポートすることを第一に考えてほしいと思います。

個人の気になる点をどう直させるか

どの子に対しても、気になる点があります。ここを直してほしい、もう少しこういうところに気をつけてくれたらもっとよくなるのに。こういったことを伝えるには、面接などの一対一の場面が有効です。とはいえ、ストレートに直しなさいと言ったからといって、なかなか治るものではありません。反発する子もいるかもしれません。どのようにすればよいのでしょう。

基本は子ども自身にそのことを認めさせ、どうするかを言わせることです。
宿題をよく忘れる子どもの場合を考えてみましょう。子どもがそのことを問題と自覚しているのなら、自分から「困っている」と言ってくれるでしょう。もし、そうでないならばその指摘から始める必要があります。

「そういえば、国語の宿題を2回続けて忘れたね。それってどういうことなのかな」
「うーん。忘れないようにしようと思っていたんだけど・・・」
「忘れないようにしようとは思っていたんだ。えらいね。それで」
「家へ帰ってマンガを読んだり、ゲームをしていて忘れちゃった」
「そうか、忘れちゃったのか。やろうとは思っていたけど忘れちゃったんだね」

いきなり宿題をやらなければダメと注意するのではなく、まず、事実をきちんと伝えてその理由を考えさせます。原因がわかれば、どうすればよいか考えさせればいいのです。この場合は忘れないようにするにはどうすればよいかを考えさせるのです。

「じゃあ、忘れないようにすればいいんだ。どうすればいいかな」
「うーん。ちゃんとノートには書いているんだけど、見るのを忘れちゃう」
「そうか、見るのを忘れちゃうのか。どうすれば見るのを忘れないんだろう」
「忘れないように気をつける」
「なるほど、気をつけるのか、えらいね。ところで、気をつけるってどうすることか、教えてくれる」

子どもは「頑張る」「努力する」といった漠然とした言葉で対応を答えがちです。なかなかきちんと具体的なことを考えません。こういった言葉に対しては、「どうすること」「どういうこと」と問い返し、具体的にしていく必要があります。

「うーん。家に帰ったら必ずノートを確認する」
「なるほど、家に帰ったら必ずノートを確認するんだ。いいね。それで、いつも宿題はいつやるの」
「日によって違う。遊んでからやったり、晩ご飯のあと」
「そうか、日によって違うんだ。遊んでいたら忘れたりしない」
「忘れることもあるかもしれない」
「せっかく確認しても、忘れたら困っちゃうね。何かいい方法はないかな」
「忘れないうちに、早くやる」
「早くやるんだ。いつやるの」
「帰ったらすぐにやる」
「そうか、帰ったらすぐにやるんだ。帰ったらノートを確認して、すぐに宿題をやるんだね。ちゃんとやれるといいね」
「うん、やる」

子どもはどうしても安直な方向に流れていきます。なかなかきちんとしたことを約束しようとはしません。時間はかかりますが根気よく子どもの口からよい答えが出てくるのを待つ姿勢が大切です。どうしても出てこないときいは、「こんなやり方はどう」と提案してもよいでしょう。しかし、無理やり従わせようとはしないようにします。あくまでも子どもが自分で決めることが大切です。
このあと、しばらくしてから、実行できているかどうかを必ず聞くようにします。きちんとやれていればほめてあげ。うまくいっていなければ、またその理由から聞いてあげるのです。そのままにしていると、教師との約束をいい加減にするようになってしまいます。
子どもの行動を変えることは時間がかかります。根気よくつきあってあげる姿勢を大切にしてください。

面接の基本は聞くこと

1年間のうちに何度か子どもたちと個別に面接する機会があると思います。時期によってもねらうところは違ってきますが、基本となることを整理しておきたいと思います。

基本は、聞く姿勢を大切にすることです。
一人ひとりに対して、こうしてほしい、ここを直してほしいということはあるかもしれませんが、教師の側からこうしなさいと押し付けないようにしましょう。まず情報を集めることから始めます。

最近はどんな調子?
どんな生活している?
前にこんなこと話していたけど、その後どう?

漠然とたずねることで、自分が生活のなかで気にかけていることを話してくれることが多いようです。また、以前の面接時に話してくれたことなどをきっかけにするのもよいでしょう。
これでいろいろ話してくれるときは、聞き手になればいいのですが、言葉がなかなか出てこないこともあります。こういうときは、なにか話しづらいことがあるのかもしれません。

楽しかったことは何?
何か困ったことある?

少し具体的に聞くことにします。話しやすいように「楽しかったこと」から始めるとよいでしょう。この話題があまり弾まないようであれば要注意です。また、教師に思い当たることがあってもストレートにそのことを聞かないようにします。「困ったこと」と聞くと話しやすくなります。話してくれないけど、何かあると感じたなら、「最近元気ないように感じるときがあるんだけど、私の思いすごしかな? 思いすごしならごめんなさいね」というように、教師が気にかけていることを伝えてください。それでも、話してくれなければ、一旦引いてください。まずは、あなたのことを教師は見守っているというメッセージを伝えることまでにしておき、次の機会を待ちます。

面接で子どもからでた相談や悩み事はその場で解決できることもあれば、時間をかけなければならないこともあります。多くの子どもから同じようなことが出てきたら、学級全体で取り上げる必要があるでしょう。のんびりと構えてはいけませんが、過剰に反応して拙速になってはいけません。落ち着いて対応するようにしましょう。

面接は個々の子どもの状況や学級の状態を知ると同時に子どもとの人間関係をつくることも大きな目的です。受容的に聞く姿勢を大切にし、子どもの話をたくさん聞くことを目標にしてください。

家庭訪問

家庭訪問は保護者も教師も気を使うものです。学校によっては廃止するところもあるようですが、子どもたちが普段生活している環境を知ることはとても意味のあることです。せっかく時間を使って実施するのですから、形式的なもので終わらず学級経営に役立つものにしましょう。

家庭訪問は、子どもの生活環境を知ることが大きな目的の一つです。
家だけでなく、そのまわりの環境もしっかり観察することが大切です。遊び場が近くにある。コンビニが近くにある。そういったことも子どもの生活に影響を与えます。また、最近は玄関先で話をすますことも多いと思いますが、花が飾ってある、靴が揃えられているといったちょっとしたことからでも家庭の雰囲気をつかむことができます。きょろきょろしてはいけませんが、しっかりと観察することが大切です。
許されるのであれば、子どもが勉強している場所を見せていただくことはとても有益な情報を得られます。もし見せていただくのであれば、事前にその旨を保護者に伝えておくことが必要です。その場で突然お願いしても困ってしまわれます。ときにはなぜ部屋を見せたと親子でトラブルになることもあります。家庭訪問でお願いすることがあれば、必ず事前に伝えておくようにします。

保護者との話ですが、基本は聞き手にまわることです。保護者と担任の信頼関係を互いに築くチャンスです。今度の担任は話をしっかり聞いてくれると思ってもらえることが大切です。笑顔でしっかりとうなずき、受容的な態度で接することを心がけます。
また、相手のホームグランドですので、学校で話すのとはまた違ったことを聞くことができます。子どもの家庭での様子を中心に聞きましょう。家へ帰ったら最初に何をしているか、どこで遊んでいるか、どこで勉強しているか、など項目は事前に整理しておきます。保護者同士で何を聞かれたか情報交換されたりもしますので、共通のものを決めておくとよいでしょう。
こちらから話すのは学校での子どもの様子です。ポイントを押さえてよいところを中心に伝えるようにします。これも事前に整理しておくとスムーズに進みます。
最後に要望等を聞くことになると思いますが、その場では答えづらい質問や要望が出てくることがあります。そのような質問にはその場で答えることはせずに、持ち帰って検討すると伝えましょう。その際回答の方法を確認しておきます。電話でよいのか、文書がよいのか、後日訪問がよいのかをきちんとしておかないと対応が悪いとトラブルになることもあります。そして、学校に戻ったらすぐに上司に報告し、翌日にはいつまでに回答するかだけでも伝えましょう。ここでの対応をしっかりすることが信頼につながります。
また、時には質問や要望というより学校や同僚への批判を聞かされることもあります。言いたいだけであって何か対応を期待しているのではありません。「なるほど、そのように感じられているのですね」としっかり受容だけはして、こちらの意見等は差し控えておきましょう。同調するのも、逆にそんなことはないと説得するのも意味のある行動ではありません。このようなことで保護者と仲良くなったり、議論して関係を悪くしたりしてもしょうがありません。

家庭訪問には地域の事情が色濃く反映されます。お茶やお菓子はいただいた方がいいのか手をつけない方がいいのか。座敷に上がった方がいいのか、玄関先で済ますのか。その学校固有の暗黙のルールがあることもあります。わからないことや気になることは先輩や同僚にきちんと確認しておくことが大切です。
訪問時間は長くはとれません。個人の情報をメモするカルテ作り、聞くこと話すことなど事前に整理して臨んでください。このカルテは家庭訪問以外にも面接や生活指導時にも活用できます。

家庭訪問は感度を高くして、子どもたちの家庭生活に関する情報をできるだけたくさん集めることと、保護者との関係づくりのためによい聞き手になることを意識して臨んでください。

特定の子にとらわれすぎない

学級にはいろいろな子がいます。落ち着かなかったり、ルールを守れなかったりして教師が注意をしなければいけないこともあります。こういった、いわゆる気になる子にかかわる時間はどうしても他の子より多くなりがちです。注意してほしいのは、全体の場で彼らにかかわる時間をとられすぎないようにすることです。

彼らとかかわっているとき、他の子どもたちが自分と関係ないと感じていれば、それは空白の時間です。子どもたちは勝手なことをしたりして、集中力をなくしてしまいます。また、特定の子にいつも時間をとられていると、「あの子のせいで、また」とその子に対して悪い感情を持ってしまいます。

ではどうすればいいのでしょう。状況にもよりますが、基本は全体の場ではあまりかかわりすぎないことです。たとえば、まわりの子にちょっかいをかける子であれば、口頭で軽く注意をする。何度も繰り返すようであれば、そのそばに立ってけん制する。1回あたりの時間はできるだけ少なくして、できれば目や動作で注意をうながすようにする。子どもたちがその時間を意識しないように、簡潔に済ますのです。
一人ひとりを大切にしなければいけませんが、そのために大多数の子どもにマイナスあたえていけません。
全体の場でどうしても時間をかけなければいけない状況であれば、個人の問題ではなく必ず学級全体の問題として扱います。一人ひとりが自分の問題としてとらえなければ貴重な時間を使ってはいけないのです。(学級全体の問題か個別の問題か参照)

特定の子にとらわれすぎて、学級全体の集中力をなくしたり、雰囲気を壊さないように気をつけてほしいと思います。

連休前後に学級の状態をチェック

春の大型連休が近づいてきました。新学年がスタートして子どもたちの緊張も取れてくる頃です。よそいきの仮面をはずして、本音の部分も見せるようになってきます。そして、連休になれば、子どもたちにいろいろなことが起こります。
新しい友だちとの交友関係が深まる。家族でのいろいろな行楽で気が緩む。学外の友だちと久しぶりに会う。中学・高校の新入生であれば、部活動で先輩後輩のつながりができてくる。受験生であれば、勉強に意欲的に取り組む。・・・
うまくリフレッシュし連休明けに元気な顔を見せてくれればいいのですが、気が緩みすぎて、なかなか元に戻らない。4月にうまく学級になじめていなかった子が学校に来られなくなる。・・・
連休明けは、いろいろな問題がでてくる時期でもあります。
この時期の子どもの様子をしっかり観察し、学級の状態をチェックしてみましょう。

・4月スタート時に子どもたちに示したルールはきちんと守られているか。
守られてはいない。守られてはいるが緩んできた。
→連休明けがリスタートするチャンスです。もう1度4月のスタート時のつもりで、きちんとルールを確認し、守れるように指導しましょう。

・子どもたちの人間関係はどうなっているか。
小グループ化が進んでいる。
→小グループができること自体が悪いことではありません。連休の前後でグループの変化を見てください。変化があった時は、グループから離れた子を観察してください。人間関係がうまくいかない前兆かもしれません。

グループには入れない子がいる。いつも孤立している子がいる。
→一人でいることが多いからといって、すぐにそれが問題というわけではありません。まず、声をかけて状況を聞いてください。その際、連休中の予定も確認してください。そして、「連休が明けたらその話を聞かせてね」と結びます。もし学校に行きたくないような状況になっても、こうして子どもとのつながりを作っておくことが、よい方向に作用することがあります。

・学習意欲が高まっているか。
学級全体でやる気が高まっている。
→やる気が高まるのはいいことですが、予定通りできずに落ち込んでしまうこともあります。最低限これだけはやるという目標と、ここまでやりたいという目標の2つをもつように、事前に指導しておくとよいでしょう。連休明けには、目標を達成できたかどうかを確認してください。達成できていない子には、個別に話を聞いて、アドバイスをしましょう。

やる気があまり感じられない。
→まず最低限の目標を持たせるようにしましょう。教師から具体的にこれだけはやっておくということを指示することもときには必要です。連休明けは、目標を達成できた子を大いにほめて、学級全体にやる気を広げるようにします。

連休は教師にとってもちょっと一息入れたい時でもあります。その前に、今年の学級経営で大事にしていることを思い出し、チェックしてみてください。小中高、学年によっても視点は異なります。ここに挙げたものは例に過ぎません。チェックの結果、気になることがあればそれに応じて、全体に話をする、個別に話を聞くなどの対応をしてください。そして、担任も上手にリフレッシュして(部活動などで忙しい方も多いとは思いますが)、連休明け、子どもたちの様子の変化をしっかりと見てください。子どもの変化に応じて子どもへの指導・対応を修正していくことで、この後、学級経営が軌道に乗っていきます。

係活動の指導

学級ではいろいろな係が決められていると思います。学校全体で決められているものもあれば学級独自に決めたものもあると思います。係活動は子どもが、学級・学校という小さな社会の中で自分の役割を果たすことで自己有用感を持ち、互いに役割を果たすことの大切さを実感し、責任感を持ってくれるようになることを狙っています。
では、担任として子どもたちの係活動をどのように指導していけばよいのでしょうか。

一つは、係の仕事をできるだけ具体的にすることです。口頭で簡単に説明して済まさずに、きちんと文書で明確にしておくとよいと思います。子どもたちは自分で何をすべきかの判断はなかなかできません。こちらの期待した動きができなくて、つい注意してしまうことになってしまいます。子どもにとってみれば、「そんなの知らない」「言われていない」のに何で注意されるのとなってしまいます。わかりやすく箇条書きで指示して、チェックしやすいようにするとよいでしょう。
また、することだけでなく、この係に対する教師の思い、願いを書いておくのもよいと思います。教科の連絡係であれば、「学級の全員にきちんと伝わり、誰も忘れ物をしないようにしてほしい」などと伝えます。こうすることで、「自分はちゃんと黒板に書いた。見ない人が悪い。自分の仕事は果たした」から、「どうしたら、みんな見てくれるか。忘れないでくれるか」へと子どもの意識を変えていけるようになります。

もう一つは、評価です。自分のしている仕事が認められたいのは子どもも同じです。目立たない仕事でもきちんと見ていると子どもに伝えることです。教科の準備をだれも忘れなければ、全員をほめるだけでなく、「教科係がしっかり連絡してくれているからみんな忘れなかったんだね。ありがとう。みんなも『ありがとう』と言おう」と感謝することです。仕事をきちんとしただけで評価されたのではなく、それに友だちが応えてくれたからこそほめられたことをしっかり伝えてください。こうすることで、役割を果たすとは、その仕事をすることではなく、その仕事を通じてみんなの役に立つこと、自分がやればいいだけでなく、みんなとのかかわりが大切なことをわかるようになります。

最後の一つは、過度の責任追及が起こらないようにすることです。子どものことです。係の仕事を忘れたり、ミスしたりします。そのために他の子どもたちに迷惑がかかることもあります。そのとき、子どもたちが「係が悪い」と一方的に非難することのないように気をつけることが大切です。係の仕事を明確にすれば、その責任も明確になります。係が機能するようになればなるほど、ミスも明確になり、責任追及も起きやすくなります。ミスした本人には、係の仕事がみんなに影響する大切な仕事であることを改めて伝え、「だからこそしっかりお願いね」と励ますことです。個人の責任を果たせと迫るのではなく、みんなのための大切な役割だからしっかりやらなければという意識を持たせるのです。
また他の子どもにも、ミスを非難するのではなく、忘れているのに気づいたら声をかけるといったサポートする姿勢を持つことの大切さを伝えてください。

子どもによっては、負担になったり、積極的に取り組めないこともある係活動ですが、一人ひとりの仕事に対して感謝し、助け合う雰囲気を作ることで、前向きに取り組んでくれるようになります。係活動を通じて子どもたちの社会性をうまく育てたいものです。

どの子にも声をかける

子どもたちに声をかけることは、担任が常に意識していることだと思います。学級全体に対してはもちろん、日ごろから子どもたち一人ひとりとコミュニケーションをとることは学級経営を円滑におこなうために大切なことです。学級で何か問題が起こったとき、担任と子どもの間によい関係が築けていることが、指導力を発揮するための大前提です。そのためにも、どの子ともきちんとコミュニケーションをとることが大切です。

ところが、担任としては平等に声をかけているつもりなのですが、実際には偏りが出てきます。良くも悪くも目立つ子、気になる子に集中してしまうのです。比較的おとなしく問題行動の少ない子にはどうしても声をかける機会が少なくなります。こういった子どもたちが教師とのコミュニケーションを必要としていないわけではありません。日ごろ目立たないからこそ、積極的に声をかけることが大切なのです。

そこで、お勧めしたいのが名簿を見ながらの振り返りです。1日の終わりや週の終わりに、名簿を見ながら一人ひとりにどんな声掛けをしたか、どんなかかわりを持ったか思い出すのです。できればその内容をメモしておくと面接や所見を書くときにも役に立ちます。
実際に振り返ってみると、全員とはコミュニケーションが取れていないことに気づくと思います。そのことに気づけば、翌日は意識的にコミュニケーションをとれていなかった子に声をかければいいのです。こうすることで、きちんと学級の全員とコミュニケーションをとれるようになります。

一人ひとりを大切にしよう、全員に声をかけようと思うだけではできません。チェックする工夫をすることで、はじめてきちんとできるようになるのです。

情報交換の勧め

子どものいろいろな姿を知るためには情報収集が大切です。(子どもの姿を知る参照)
そのため方法の一つとして、日ごろから同僚の教師と情報交換をすることを意識してほしいと思います。

大切なことは、情報をもらうことばかりに気をとられて、こちらから提供することを忘れないことです。
たとえば、掃除区域の担当の教師には、当番のメンバーが変われば、そのことをきちんと伝える。担当の子どもに関して気になることがあれば、事前に伝えて、掃除の様子を観察してもらう。こちらから情報を提供するとより意識して子どもたちを見てくれます。
教科担任や部活動の顧問に対しても、同様です。学級で起こっていること、個別の子どもの情報をできるだけ積極的に伝えます。

「最近学級が落ち着かないのだけれど、先生の授業ではどうですか」
「○○さん、友だち関係がうまくいっていなくて元気がないので、気にかけてもらえますか」
「△△君、この間の試験で失敗して落ち込んでいます。部活動は元気にやっていますか」
・・・

自分の学級経営がうまくいってないことなどは、担任として言いづらいときもありますが、きちんと伝えることで、サポートしてもらえたり、よいアドバイスをもらえたりもします。他の教師に見せる姿から問題解決のヒントが得られたりします。

また、逆の立場になってみれば当然ですが、自分の学級以外の子どもたちの姿もよく観察して、気づいたことがあれば担任に伝えることを意識してください。
些細なことでもいいのです。気になることだけでなく、「元気よく挨拶してくれた」といったよいことも伝えるようにします。自分の学級の子がほめられるのは担任としてうれしいことです。「○○先生がほめてくれたよ。先生もうれしかった」。こういう言葉かけができることは、学級経営上非常に大きなメリットがあります。この先生もあなたの学級の子どもを意識して見てくれるようになるでしょう。

積極的に情報交換をすることで、より多くの視線が学級の子どもにそそがれ、より多くの姿が伝わってくるようになります。自分では見ることのできない姿を知ることが、子どもたちをより深く理解することにつながり、きめ細かな学級経営を可能にしてくれます。

家庭での子どもたちの生活を把握する

担任は子どもの学校での様子は把握していますが、家庭での生活はなかなか把握することはできません。そこで、定期的にアンケート等による実態調査をすることを勧めます。(子どもの姿を知る参照)
最近は学校評価が定着してきたので、学校全体で定期的に調査していることも多いと思います。重複する必要はありませんが、担任としての学級経営上の重点項目に関連した項目を加えたり、時期を工夫して、必要な情報を適宜収集するようにしてほしいと思います。

質問項目は、基本的生活習慣にかかわること、学習面にかかわること、家族やまわりとのかかわりなどを、子どもたちの発達段階や学級経営の観点から絞ってくことになります。

基本的生活習慣であれば、「起床・就寝時刻」「歯磨きの習慣」「朝食をとるか」「誰といつ、どこで、何をして遊んでいるか」「テレビの視聴時間」「読書習慣(時間・ジャンル)」「ケータイメールの利用状況」・・・

学習面であれば、「家庭での学習時間」「家庭での学習内容(予習・復習・教科)」「わからないときどうしているか」「通塾状況」・・・

家族やまわりとのかかわりであれば、「食事はだれと一緒にとっているか」「誰とよく話すか」「困ったとき誰に相談するか」「家の手伝いはしているか」

その他、「小遣いに関して(金額・もらい方・使い方)」・・・

これらすべてをたずねる必要はありませんが、子どもに意識してほしい項目を意図的入れておくとよいでしょう。
たとえば、お手伝いをしてほしいと思うのなら、ただ「やっているか」だけをたずねるのではなく、「頻度」「内容」「満足感」など、より詳しくたずねると、やっていない子どももやろうかなと思うようになります。
また、一人ひとりの様子を把握するためにも記名でおこなうべきでしょう。指導すべきことが見つかったとき、学級全体に対して働きかけるのか、個別に働きかけるのか。子どもに直接働きかけるのか、保護者に働きかけるのかの判断もしやすくなります。

表計算ソフトなどをうまく活用すると、いろいろな項目の相関を簡単に調べることができます。学習時間とゲーム時間に負の相関があれば、家庭学習の大切さを強調するだけでなく、ゲーム時間を減らすことを意識するといった、指導の方向性も見えてきます。

早い時期に調査をおこなって学級の特性を知ることは、1年間の学級経営の方向性を決めるにも役立ちます。また、何度か実施することで、子どもたちの変化の様子や指導の結果を知ることもできます。普段担任が見ることのない家庭での子どもたちの生活の様子を把握することは、学級経営にとってとても意味のあることです。

早い時期に個別に話をする

新学年が始まった4月は、とてもあわただしい時期です。とても忙しいのですが、できるだけ早い時期に子どもと個別に面接をおこなうことを勧めています。

まだ子どもたちのことをよくわかっていないのに何を話せばいいのか。子どもたちも学級に慣れていないこの時期に「なぜ?」と思うかもしれません。
環境が大きく変わるこの時期は、どうしても子どもたちは不安定になりやすいときです。いつも以上に緊張して学校生活を送っています。子どもの今の状況を的確につかむために、個別に話すことはとても意味のあることです。
教師が何か話そうとする必要はありません。ほんの4、5分でいいのです。子どもの話を聞いてください。このとき、「学級には慣れた」といった具体的な質問ではなく、「どんな調子」といった、あいまいな軽い問いかけをしてください。何気なく出てくる答の中に、気になっていること、意識していることが隠れています。「まあまあ」といったあいまいな答であっても、「それってどういうこと」と問いかけることで具体的なことを聞き出せます。

「絶好調!」
「それってどういうこと」
「仲のいいやつと一緒のクラスになったし、勉強も頑張っている」
・・・

新しい学年になって頑張ろうとしている。
この学級は楽しい。
仲のよい子がいなくて、さびしい。
雰囲気になじめない。
よくわからない。
・・・

子どもたちは、思った以上にいろいろなことを話してくれます。簡単でよいので、一人ひとりメモしておいてください。この時期の話と次の面接での話を比較することで、子どもがこの学級の中でよい状態になっているのか、それともよくない方向に変化しているのかをつかむことができます。
また、ここで教師が話を聞く姿勢を見せることで、子どもとの人間関係をはやくつくることができます。「話を聞けてよかった。ありがとう」とIメッセージで終わることを忘れないでください。

5月病という言葉があります。ゴールデンウィークが明けた頃が不適応の子どもが出始める時期です。この面接で予防できるとは思いません。しかし、面接で「頑張っている」と話したのであれば、どこか無理をしていたのではないかと判断の手助けにはなります。また、初めて1対1で話すのが不適応を起こしてからでは、コミュニケーションもうまくとれません。このようなとき、面接で教師が聞く姿勢を見せていたと子どもが感じていれば、話もずいぶん違ったものになります。

この時期に全体の場で見せる子どもの姿は、よそゆきであったり、様子見であったりします。仰々しくする必要はありません。立ち話のようなものでもけっこうです。彼らの緊張をほぐし、殻を破りやすくするためにも、早い時期に学級の全員と個別に話をしてみてください。

学級全体の問題か個別の問題か

学級の中ではいろいろな問題が起こります。担任は一つひとつきちんと解決していく必要があります。このとき意識してほしいことが、その問題が学級全体にかかわる問題か、個別(個人)の問題かです。

「体調が悪い」と訴える子がいた。これは、個人の問題です。個別に判断し、保健室に行かせる等の対応をとります。では、「苦手な食べ物があるので給食を残したい」と訴えた場合はどうでしょうか。一見個別の問題のように感じますが、これは学級全体の問題です。「給食は残さず食べる」という全体のルールに影響するからです。ルールはみんなが守るべきことです。教師が守らせるのではなく、自分たちの問題として考えさせるべきです。教師が判断するのではなく、「みんなはどう思う」と子どもたちに問いかけます。子どもたちと一緒になって考えるのです。

授業を始めようとしたら泣いている子がいる。教師が「どうしたの」と聞いても、泣くばかりである。そこで、事情を知っている子がいないか聞く。そばにいた何人かが事情を話す。そうこうしているうちにどんどん授業時間に食い込んでいく。
これは、個別の問題を全体の問題にしてしまった例です。子どもが泣いている時点では、これは個別の問題です。話もできない状態であれば、ここで時間を使ってはいけません。「休み時間に話聞かせて」と切り上げて、授業に入るべきです。話を聞いて、学級全体で考えるべき問題とわかれば、あらためて取り上げればいいのです。

全体で考えるべき問題を教師が判断してしまうと、自分たちで考えずに教師の顔色をうかがうようになります。個別に対応すべき問題を学級全体に投げかけたり、全員の時間を使ってしまうと、その問題にかかわれない、参加できない子がでてきます。全員で考えるべき場面でも参加しくなってしまいます。
今起こっている問題は学級全体で考えるべき問題か、個別に対応すべき問題か、きちんと判断して対処することが大切です。

わかりやすい担任になる

子どもたちが安心して学級で暮らせる条件の一つに、学級担任がわかりやすいということがあります。行動や反応を予測しやすいと言い換えてもいいでしょう。

例えば、子どもが花瓶を割った時、今度から気をつけるようにやさしく諭すのでしょうか、それとも厳しく叱るのでしょうか。状況によって違うかもしれません。いろいろな考え方があるでしょう。どちらであるかは問題ではありません。大切なのは、子どもから見て同じような状況では、同じ対応をすることなのです。物を壊したらやさしく諭す先生なのか、厳しく叱る先生なのか。このような時はこのように行動すると子どもに予測できることが大切なのです。
花瓶を割った時にはやさしかったのに、ガラスを割った時には厳しければ子どもは戸惑ってしまいます。担任としては、ガラスを割った時はふざけていたので厳しく接したのかもしれません。しかし、それが子どもたちにきちんと伝わっていないと、担任の行動の基準がよくわからないと不安に思ったり、ひいきしていると非難したりします。
このことは、学級経営のあらゆる場面で言えます。特にどんな時にほめるのか、どんな時に喜ぶのかがはっきりしていると、どうすれば担任に認めてもらえるのかよくわかります。認められたいと思った行動は、ちゃんと認めてもらえるので、安心して学校生活を送れます。

子どもにとって担任がわかりやすいということは、好きとか嫌いとかという以前の問題です。たとえ納得していなくても、担任の行動にぶれがなければ子どもなりに対応できます。納得はしなくても理解してくれます。好きにならなくても、担任として認めてくれるのです。
好かれる担任になろうとする前に、子どもたちにわかりやすい担任になることが大切です。

学級懇談会

学級懇談会は、担任が学級での子どもたちの日ごろの様子を伝えたり、自分の学級経営に対する考え方を理解いただき、協力を求めたりするチャンスです。一方保護者の側からすると、子どもを預けている担任の人となりを知って安心したい。子どもたちに関する情報知りたい。よそのお子さんと比べて自分の子はどうなのか。そのようなことを知りたいと思っています。担任と保護者とでは求めるものが微妙にずれているように感じます。このずれを意識して、互いにとって有意義な時間となるようにすることが大切です。

学級懇談会では、教師が伝えることは資料等を使ってできるだけ整理し、コンパクトにまとめることで、保護者からの質問や意見を聞く時間をできるだけとるようにします。もし質問等がでなければ、子どもたち様子を紹介したり、予想していた質問を自分の方から「・・・のようにお感じになっている方はいませんか」とふってみることで、口を開いていただけると思います。
保護者同士の関係をつくるためにも、質問に対してすぐに教師が答えるのではなく、同じように思っている人がいないか確認したり、「○○さんの質問のような場合、どうされていますか」と他の保護者にも聞いてみたりするようにします。互いの顔が見えるように座席をコの字型にするなど、保護者同士のかかわりをつくる工夫をするとよいでしょう。

また、自分の子どもは他の子どもと比べてどうなのだろうと気になる保護者も多いはずです。起床・就寝時刻、学習時間、読書量、おこづかいの額など、保護者が知りたいと思うデータを事前に調査し、資料として提供することで、保護者との話し合いのきっかけもつくれます。ここで、資料をただ提供するだけではデータが独り歩きしてしまいます。担任として個々の結果をどうとらえているか、きちんとコメントすることが大切です。

学級懇談会は教師と保護者が情報を交換し、信頼関係をつくる場です。教師の一方的な説明で終わらないようにすることが大切です。

子どもとの距離感

学級経営で大切になることの一つに子どもとの距離があります。必要以上に子どもに近すぎても、また離れすぎてもうまくいきません。この加減が難しいのです。

一般的に若い教師は子どもとの距離が近すぎる傾向にあります。いわゆる友だち先生です。歳が近いので子どもも自分たちを理解してくれる存在として期待します。しかし、距離が近ければ近いほど、甘えも出やすくなります。自分たちの考えが通らないと友だちと同じような感覚で反発します。子どもたちに反発されると、学級経営は成り立ちません。そこで、教師が子どもたちに迎合すると、学級の規律はなし崩しになっていきます。逆に強く出れば、今まで近い存在であったために猛烈に反発します。

教師は子どもたちを指導する立場です。子どもたちよりも立場的に上であることを崩しては、指導は成り立ちません。しかし、立場が上だからといって高圧的ではいけません。一方的に子どもたちに指示してもついてきてはくれません。子どもたちを統率する存在ではありますが、決して支配する存在ではないのです。子どもたちに問いかけ、考えさせる場面をつくることが大切です。子どもたちの目線に立ち、気持ちを理解した上で、どう方向づけるかを考える必要があります。子どもたちが「先生は自分たちの話を聞いてくれる。受け止めてくれる」と信頼してくれることが指導の大前提なのです。

子どもたちの中に入ってぐいぐいと引っぱっていく。あまり口出しせず、学級のリーダーを中心に動かしていく。年齢や集団の特性によって適切な距離は変わってきます。子どもたちとしっかりコミュニケーションをとりながら、自分の学級における適切な距離を見つけるようにしてほしいと思います。
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