社会で資料を見る力を育てる

社会の授業で資料を見て「気づいたこと」を発表させる場面よくあります。子どもからできるだけ多様な考えを引き出そうとしてよく使われる言葉です。しかし、「何でもいいから」と言ったのに、子どもから期待したものが出てこないと、「他には」と無視をしてしまうような場面もよく見ます。このようなことを避けるためにも、資料の見方をきちんと教えておく必要があります。

基本は「比較」することです。比較して、違うところ、同じところを見ることが大切です。資料が1つしかなければ、比較の対象を考えさせることも必要になります。明治時代の資料であれば、その前後の時代「江戸時代」「大正・昭和時代」と比較するのです。地理的なものであれば、他の地域と比較します。
1つの資料を与えて、「他にどのような資料がほしい」というような問いかけも比較を意識させるのに有効です。黙っていても、比較する資料を探すようになるのが理想です。

もう一つのキーワードは「変化」です。グラフであれば、大きく変化しているところを見ます。逆に「変化しない」というのも大切な視点です。歴史的な事件や出来事であれば、その前後で「何」が「どう変化した」というビフォア―・アフターです。公民分野の制度に関する資料であれば、その制度によって「社会の何」が「どう変化した」かです。
「変化」という「結果」とその「原因」や「要因」を常に結びつけるような姿勢を育てる必要があります。

複数の資料を活用する時の視点の1つは並べ替えです。時間軸で並べ替えるのか、位置や場所を軸にして並べ替えるのか。そういう視点が大切になります。表もどの項目を基準にして並べ替えるかで見えてくるものが違います。

子どもが気づいた結果だけを取り上げるのではなく、どこに注目した、どんな視点で見ているかといったことをきちんと評価・価値づけして、資料を見る力を育てることが大切になります。そのためには、まず教師がそのことをきちんと整理できていることが必要になります。そのことを意識してほしいと思います。

課題を解決するために必用な視点や考え方を明確にする

子どもに課題を与えて個人で追究させる場面がよくあります。この時、この課題を解決するために必用な視点や考え方を教師が明確にして授業を組み立てることが大切です。

国語の例で考えてみます。「登場人物の気持ちを本文から読み取ろう」という課題を与えて、子どもに取り組ませるとしましょう。「気持ちを本文から読み取る方法・手段」を子どもたちがわかっていれば、問題がありません。しかし、子どもたちの動きが止まってしまう可能性があります。それは具体的にどのようにすればいいかわかっていない時です(指示の後の子どもの動き参照)。この場合、いったん作業を止めて、全体で説明するにしても、個別にアドバイスするにしても、その伝えるべき内容が明確になっていなければいけません。本文の「この部分に注目しなさい」といった説明や指示では力はつきません。この部分を見つけることができなかったから手がつかないのですから。では、「気持ちがわかる部分に注目しなさい」はどうでしょうか。今度は抽象的すぎて、具体的にどうすれば見つかるかわかりません。この2つの間を埋めるための視点や考え方を明確にしておくことが必要なのです。この場合であれば、「登場人物の気持ちはどのようにして表現されるか」ということが教師の中で明確になっていることです。
「・・・と思った」と「直接」的に表わされる。「表情や態度」など「人物の行動」で表わされる。「天候や音、色」など「情景描写」で間接的に表わされる。特に情景描写は、同じもの、似たものの変化で表わされることが多いので、何度も描写されるものはチェックしておく必要がある。こういったことが明確になっている必要があるのです。
このことは、何も国語に限ったことではありません。算数の計算方法、社会科の資料の見方など、どの教科でも必要なことです。

では、こういったことは、いつ、どのようにして子どもたち提示すればいいのでしょうか。これは、今までどのような学習をしてきたかで違ってきます。
先ほどの国語の例で考えてみましょう。今まで、「人物の行動」や「情景描写」などから読み取る経験をしているのであれば、課題に取り組む前に復習として思い出させればいいでしょう。見通しを持って課題に取り組めるはずです。
今回初めて「人物の行動」から読み取るのであればどうでしょうか。
人物に注目させて、どんなことが書かれているかを取り上げる。そこから、課題に取り組ませて、「人物の行動」から気持ちが読み取れることを子どもたちの言葉でまとめていく。
まず、課題に取り組ませる。気づいている子どもが何人かでてきた時点で止めて、どの部分に注目してか発表させる。そこで、「人物の行動」から気持ちが読み取れることを学級で共有して、もう一度課題に取り組ませる。
このような方法が考えられます。

どの方法がよいというのではありません。子どもたちの実態に応じて考えればいいのです(課題解決の手段を考える参照)。大切なのは課題を解決するために何が子どもに必要なのか、教師がしっかりと理解して提示できることなのです。授業の課題を考える時には、子どもたちがその課題を解決するために必用な視点や考え方を明確にしておくようにしてください。
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