教科書の課題を楽しむことも教材研究

教科書を読み込むと言う話を最近よくします。自分自身、仕事の関係で教科書をよく読むのですが、楽しいと思うこともよくあります。

たとえば、小学校6年生の国語のある教科書では、似た意味を持つ言葉を調べたり考えたりする課題で、その例として、「余る・残る」「ねじる・ひねる」「うれしい・楽しい」などがあげられています。どうでしょう、すぐに違いを明確にできますか。もちろん調べるのは子どもですから、教師が答える必要はないかもしれません。しかし、子どもが行き詰ったとき、どんな働きかけをすればよいかすぐに思いつきますか。調べる辞書によっては、ほとんど違いがわからないこともあります。最近は「語感の辞典」がありますが、ご存知ですか。子どもと同じ視点に立って、どれか一つの例を調べてみてください。そうすることで初めて見えることがあります。実際に調べてみて、難しいものもたくさんありましたが、無意識に自分が使い分けていた部分が「なるほど」と明確になったときなど、とてもおもしろいと感じました。きっと子どもたちも同じ感覚を味わうのだろうと思いました。教科書を表面的に見ていては決してわからなかったことです。

私が調べてみて、なかなかおもしろかったものに「にげる(逃げる)・のがれる(逃れる)」があります。どうです、この2つの違いが明確になる文をつくれますか。教えるということを少し離れて、教科書の課題を純粋に楽しむこともよいことです。きっと、授業のヒントになるものが見つかると思います。これも、また一つの教材研究だと思います。

音楽で大切にしたい問いかけ

音楽では、歌ったり、演奏したりと表現活動がたくさんあります。逆に鑑賞も大切な活動です。これらの活動ではどのようなことを意識すればよいのでしょうか。

表現活動では、自分の表現したいことを意識することが大切です。
合唱であれば、「歌詞を読んでどんなことを感じた」「どんな風に歌いたい」と目標とする表現を明確にします。最初は全体の印象から言葉が出てきますが、「どこでそう感じた、思った」「詞のこの部分はどんな感じ」と子どもの発達段階に応じてだんだん細かく聞いていきます。子どもたちは、どのように表現するかを自分たちの日常の言葉で話しますが、それを具体的どのように歌うか、音楽の技術や用語で示していく必要があります。

「この部分は元気な感じで歌いたい」
「どうすればいいのかな?」
「大きな声で歌う」
「強く歌う」
「いいね。ここだけ強く歌えばいい」
「その前を少し弱く歌って、それから強く歌えばいい」
「それってどういうこと」
「その方が強くなったことがよくわかる」
「なるほど」
「その前を少し弱く歌ってからだんだん強くすればいい」
「それってどういうこと」
「楽譜にクレッシェンドがある」
「どういう意味だっけ」
・・・
「作者もきっとここを元気な感じで歌ってほしいからクレッシェンドをつけたんだね。みんなと同じように詞を感じ取ったのかもしれないね」

たとえば、このようにして明確にしていきます。

また、表現活動ですから必ず受け手が必要です。グループに分けて聞き合ったり、録音して聞かせたりするのもいいでしょう。自分たちの目指した表現になっているか感想を聞き合ったり、技術がきちんとできているかチェックしたりすることで、表現力がついてきます。受け手の立場を意識することは鑑賞にもつながることです。
感想と技術や音楽用語と結びつけることは、鑑賞でも同じです。曲を聞いてどのように感じたか、それはどのような技術や技法によるものかを問いかけることが大切です。

音楽を鑑賞して感じたことが、音楽の用語や技術と関連して語られる。その経験を活かして、目指す表現を音楽の技術や用語を介して実現していく。これを繰り返していくことで、子どもたちの表現力や鑑賞能力が高まっていきます。子どもたちの感性と音楽の技術、音楽用語をつなぐような問いかけを大切にしてほしいと思います。
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