美術で大切にしたい問いかけ

美術で作品をつくるとき、個性を大切にします。しかし、好き勝手に作業をしてもよい作品とはなりません。どのように指導すればいいのでしょうか。

まずは、作品をつくるときに、参考となるものを必ず準備することです。過去の先輩の作品はとても参考になります。どのようなものをつくるかイメージすることはとても大切です。問題はただ漫然と見ても、実際の作品作りにはなかなか活かされないということです。

「この作品を見てどんな印象をもった」「どんな感じがする」と感覚的に答えさせたうえで、「どこが好き」「どこで、そのように感じたのだろうか」「どんな工夫をしているのだろう」と深めていきます。大切なのは具体的にどのような工夫がされているか、その工夫に気づき、自分のものとして利用することです。このとき、「ていねいに色を塗る」といった言葉に対して「どうすればいいの」と問いかけて「先に、下絵の輪郭にそってきちんと縁を塗り、それから中を塗る」と具体的にする。「明るい色で塗る」であれば、「明るい色ってどんな色、どうすれば作れる」というように問い返してより明確にしていくことが必要です。誰でも実現できるレベルまで工夫を具体化するのです。

作品つくりにとりかかる前に、どんな工夫をするかあらかじめ書かせることも大切です。完成後に互いに作品を見あう時にもどんな工夫をしたか伝えたり、作品から見つけたりすることも技術を身につけるために必要なことです。
また、作品つくりの段階ごと一旦作業を止めることも大切です。たとえば下絵を描き終わったら続けて色塗りに入るのではなく、一旦止めて、参考となる作品をじっくり見させます。これから色を塗ろうとするときだからこそ、塗り方の工夫をしっかり見つけようとしますし、集中力もアップします。

作品つくりを感覚的にとらえずに、技術や工夫を具体的なものとして意識し共有化することを大切にしてほしいと思います。

体育で大切にしたい問いかけ

体育のような実技教科では他の教科では活躍できなかった子どもが活躍できるチャンスです。「見本を見せて」「コツを教えて」といったことで、指名されることも多いと思います。一方、できるできないがはっきりするため、苦手な子は活躍するチャンスが少なくなり、自己有用感を持ちにくくなります。もちろん悪い見本にするわけにもいきません。

そこで、大切にしたいのは、できない子どもができるようになった過程です。
たとえば跳び箱を互いにアドバイスしながら跳べるようにする場面であれば、跳べるようになった子どもに、「だれのアドバイスが役に立った」「どんなアドバイスで跳べるようになった」と聞くのです。こうすることで、他のできない子どもとコツを共有化できますし、アドバイスした子もほめることで自己有用感を与えることができます。
もちろん、自力でできるようになった子どもに、そのコツを聞くこともよいことです。

授業の途中や最後に、

「できるようになった人手を挙げて? たくさんいるね」
「○○さん、どんなことに気をつけたらできるようになった」
「・・・」
「同じようなことを気をつけた人いる。△△さん」
「・・・」
「なるほど、・・・に気をつけるとよさそうだね。よいヒントがもらえたね。他にもこんなコツもあるという人いるかな」
・・・

このような問いかけをすることで、あまり得意でない子どもも活躍できますし、できる子もコツや工夫を伝えることを意識するようになります。できるようになった過程を問いかけながら、できる子どもを増やし、その子にまた問いかける。全員ができるようになれば、全員が活躍できます。過程を意識した問いかけを大切にしてください。
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