楽しい忘年会

先日、学校評議員をしている中学校のおやじの会の忘年会に参加させていただきました。

この日もいつものように楽しいお酒でした。自分たちの子育ては終わっても、地域の児童館の運営にかかわったりしている方々です。自然に最近の子どもたちや施設の運営、イベントの話に花が咲きます。口先だけの批評家ではなく、子どもたちと実際に触れ合っている方が感じることですから、説得力が違います。私は地域の視点で子どもたちを見ることがほとんどありません。そんな私では気づけないことをたくさん教えていただけます。
お酒も入っているので、議論になったりもします。それがまた楽しいのです。意見がぶつかっても、お互いに子どもたちのことを第一に考えていますので、その一点で必ず認め合えます。何の利害関係もなく、地域の大人として子どもたちに何ができるか、その思いでつながっているのです。認め合えている方々だから、忌憚のないことが言い合えるのです。とても素敵なことです。

私にとって、たくさんのことが学べる場です。しかし、それよりも何よりも、皆さんと一緒にお酒を飲み、お話しできることが楽しいのです。このような会に毎回お誘いいただけることをとてもうれしく思っています。楽しい時間ありがとうございました。また、誘ってくださいね。

佐藤正寿先生からたくさんの刺激と視点をいただく

先日行われた、三重県教育工学研究会の冬季セミナーの第1部「学力向上に活かすICT活用」に参加してきました。奥州市立常盤小学校副校長の佐藤正寿先生による「学力向上に活かすICT活用模擬授業」と「ICT活用のヒントをさぐる」という講演でした。

「学力向上に活かすICT活用模擬授業」の前半は、まずは拡大して見せることのよさを全員に対しての模擬授業で伝えます。「百聞は一見に如かず」というように、言葉での説明ではわかりにくいこともスクリーンに映して見せればすぐに伝わります。
資料を見て「気づいたこと」という発問がよくありますが、これで答えられる子どもはよくできる子どもだけだと佐藤先生はおっしゃいます。私も同感です。「気づいたこと」では何を答えていいかよくわかりません。こういう時に佐藤先生は「何が見えますか」と答えやすい発問をします。目に入っても意識して見ていないものに目を向けさせる発問です。また、必要に応じて、「どのくらいある?」「どちら側にある?」といった切り返しを行います。ちょっとしたことに思えますが、この切り返しで子どもたちの考えを深めます。何をどのように切り返すかは、授業者がその資料で何をねらっているのかと直結する部分です。授業者の教材研究が見えてくるところです。
社会科では資料で気づいた事実をもとに、解釈することが大切になります。しかし、「解釈しなさい」では、それこそ「気づいたこと」以上に子どもたちとって答えにくい発問になります。「○○がある(のは)、」「○○だから」といった話型を使うことで「事実」を「解釈」することがどういうことかを伝えます。抽象的な用語を教える時に大切な発想です。ICTの活用を例にして、大切なことをさりげなく伝えてくださいます。
佐藤先生はフラッシュ型教材を使ったクイズも上手に利用されます。私はクイズを行うことをあまり勧めません。多くの場合、知らない知識を問うことになるので、考えても答えが出ません。単にテンションが上がるだけになるからです。佐藤先生の場合は、利用シーンが非常に明快です。一つは知識を定着させる復習の場面、もう一つは解釈を考えさせる場面です。前者はその有効性がすぐに理解できると思います。後者は事実に対していくつかの解釈を選択肢として与えるものです。解釈と言ってもなかなか考えることができません。子どもから出てきた解釈は的外れなこともあります。「それって本当?」とゆさぶり、いくつかの選択肢と共にクイズにすることで、手がかりが全くつかめない子どもにも、それなりに根拠を考え(想像)させることができます。また、答を選ぶことで立場が明確になります。正解したかどうかにかかわらず、真剣に聞くことになり知識として印象にも残り、定着します。このようなクイズを行う時に佐藤先生は考える時間をあまり与えません。子どもたちの手持ちの知識から論理的に正解が出るようなものであれば時間をかける意味もありますが、そうでなければ時間のムダです。このあたりは実に明快です。この他にも、簡単なクイズを授業の課題につなげるといった使い方もされますが、いずれにしてもシンプルで時間をかけないことが大切です。その点でICTはとても有効な道具となります。
今回面白いと思った発問に、数を想像する問の答をペアで聞きあわせたあとで「同じくらい?」「違う?」と聞くものがありました。根拠を持って考えることができるものでないので、話し合っても意味がありません。しかし、このように問いかけることで他者とかかわることをより意識するようになります。「同じ」ということで子ども同士がつながったり、「違う」ということでどちらが正しいのかより興味を持って説明を聞こうとしたりするでしょう。単純なクイズでも、ちょっとした工夫でいろいろな効果が期待できます。私なりにクイズの活用方法を整理することができたのは大きな収穫でした。
資料の見せ方で、「隠す」ことも佐藤先生はよくされます。故有田和正先生がよく使われていた手法です。資料の一部隠すことは、ICTでは簡単にできます。忙しい先生方にとってありがたいことです。隠すから知りたくなります。ここで、隠したものを実はこうだったと見せることもできますが、答をその場で教えないという方法もあります。答を知りたいと思った子どもは、自分で調べようとします。身の回りのことであれば、実際に足を運んで調べることでしょう。ただ調べなさいでは意欲はわきませんが、隠すことで子どもたちの意欲を引き出し活動につなげることができます。いつものことですが、佐藤先生のお話はICTをテーマにしても常に授業の本質的な部分を外しません。

続いて、12人の子ども役を相手に壇上で1単位時間の模擬授業です。5年生の社会科「災害の起こりやすい国土」でした。
佐藤先生のいつもの進め方ですが、最初にICTを活用してテンポよく復習し、短時間でウォーミングアップを行います。
津波の写真をもとに、何が見えるかを問いかけて興味づけを行います。子ども役の発言のよさをきちんと評価します。発言の内容だけでなく、発表の仕方もほめています。授業規律が意識されています。
「日本ではどのような自然災害が起きているのか」という課題と、この日のゴール「ノートにまとめること」を最初に提示します。最近よく言われるユニバーサルデザインの視点でも、活動のゴール(目標)を提示することは大切なことです。見通しを持って活動することができます。目標を明確にすることは、評価の基準を明確にすることにもつながります。活動と評価は常にペアで考えることが必要です。
子ども役に自然災害の種類を書き出させ、情報交換させます。ペアやグループの活動では、かかわり合うことがよかったと思えるようなものにすることが大切です。佐藤先生は「数が増えます」とかかわり合うことのよさを言葉にして伝えます。子どもたちによさを明確に意識させることで、積極的にかかわれる姿勢を育てようとしているのでしょう。
子ども役の発表を一つひとつ聞き終ってから板書をします。子どもの発言をしっかりと受け止めることが意識されています。災害に対して子どもの知っている例やその被害を聞き返して、単なる用語からより現実感のある生きた言葉に変えていきます。こういった切り返しも大切です。
全員の考え引き出すために、まだ発表されていないものを書いてある人を起立させて順番に聞いていきます。自分と同じ考えが発表されて座った人をすかさずほめます。授業規律のつくり方の基本も外しません。
災害種類を左右に分けて板書していました。日ごろからこのような板書を心がけていると、子どもたちがどこに書くかを意識して見るようになります。「どっちに書くと思う?」「どっちに書けばいい?」と聞きながら書いてもいいでしょう。「地殻変動」と「気象」に分けていたのですが、この「分類」は社会科では大切な視点です。佐藤先生の授業では、こういった社会科を貫くメタな視点が大切にされています。
続いて、「どこで」「どんな」災害が起きているかを問います。資料の必然性がある問いです。可能であれば子どもたちに地図帳などを使って探させることも大切な活動です。資料は「探す」「読み取る」「(もとにして)考える」という3つのステップが大切ですが、「読み取る」活動しかない授業も多く見ます。佐藤先生は子ども役に探させることをしました。あらかじめ配られていた資料があったというか、それしかないので、あまり意味がある活動ではないのですが、子どもに資料を探させることを参加者にあえて意識させたかったのでしょう。
続いて4人グループで「3つの資料から言えることは何か?」を考えます。何を答えていいかわかりにくい課題です。ここでも、発表の形式を指定することで、思考の方向を明確にしています。「例えば○○、だから○○」という話型使います。そして、発表には白地図を使うように指示します。白地図を使うことで自然に地理的な条件を意識させることができます。視覚化は重要な表現方法であり、広い意味で言語活動の一つだと私は考えています。教科を超えた子どもたちに身につけさせたいスキルです。
グループの発表を必ずポジティブに評価します。発表の内容そのものをほめるのでなく、「指定したキーワードが入っている」「習ったことを使っている」「理科の知識を使った」といったメタな視点で評価していました。この課題だけでなく他の課題でも活用できる再現性のあるものです。こういう評価をすることで、見方・考え方が身についていくと思います。
結論は、「日本はすべての自然災害が起こりやすい。だから防災が大切」というものなのですが、それで終わりません。災害をもたらす日本の国土のプラス面を聞くのです。「火山があるから温泉がある」「雪によって米も育つ」というように別の視点で見ることで子どもたちの視野を広げることができます。佐藤先生が子どもたちにつけたい学力が非常に明確に伝わる模擬授業でした。ICT活用を超えて、多くの学びがありました。

「ICT活用のヒントをさぐる」という講演は、「定義」と「分類」をすることでデータが意味あるものになるというドラッカーの話をベースに、分類という視点でICT活用や授業技術をとらえるものでした。
特に社会科の資料の型を「解説型」「追究型」「視覚型」「整理型」と分類し、それぞれの活用方法の違いを整理した話は大変参考になりました。資料だけでなく、授業のいろいろな予想を私なりの視点で分類してみようという気持ちになりました。とてもよい刺激を受けました。

私にとって実に刺激と学びの多いでセミナーでした。このようなセミナーを参加費無料で行うというのはとても大変なことです。多くのスタッフが手弁当できびきびと働かれていることに感激します。佐藤先生の素晴らしい模擬授業と講演、そしてセミナーを企画しスタッフとして支えられた三重県教育工学研究会の皆さんに心から感謝します。本当にありがとうございました。

北原延晃先生から学ぶ

先日、英語の授業実践で定評のある東京都港区立赤坂中学校の北原延晃先生の研修会に出かけました。3回シリーズの第3回目でやっと時間を取って参加することができました。

今回は、今までの研修をもとに若手が行った実践発表とそれを受けての北原先生の指導と講演でした。
3名の方の授業実践を見て感じたのが、北原先生の授業を参考にしたかどうかは置いておいて、子どもを見ていない、活動の目標が明確でないというように、授業の基本に関してできていないことが多かったことです。また、”situation”で理解させるのではなく、英語を日本語に対応させて教えていることも気になりました。子どもが英文をオウム返しで覚える活動が中心では、英語を使えるようにはなりません。自分の伝えたい”situation”を英語にすることが大切です。
北原先生は私が感じたことと近い視点で指導され、私にとってとても納得できるものでした。ということは、北原先生は活動の目標を明確にして、”situation”で理解させようとしているということです。前2回の研修で彼らは北原先生からそういったことを学べていなかったのです。話を聞いたり、実践を見たりしても、そこから何を学ぶかは人によって違います。表面的な技術ではなく、本質をつかみ取ることはそう簡単ではないようです。このことは私も授業アドバイスをする上で、心しておかなければいけないことです。

講演では、文法の導入と練習の授業をどうつくるかということを具体的に教えていただきました。
北原先生の授業では、子どもたちは英文を読みながらジェスチャをします。基本的に英単語とジェスチャは1対1です。こうすることで英語の構造が身につきます。田尻悟郎先生の単語と絵を対応させた英作文練習やGDMのライブに通じるものがあります。
また、次にどのような文の練習をするか予想させます。過去の学習内容から予想させるというのは、「次に先生は何て言うと思う?」といった子どもたちを能動的にするためによく使われる発問と似た発想です。教科を越えて使えるやり方がたくさんあることを実感します。また、復習している内容をどこで学習したかを意識させることもしています。これも、大切な発想です。答を聞くだけでは、「ああそうだった」と一瞬思い出すだけですぐに記憶から消えていきます。どこで学習したかを意識させそこに戻ることで、その文という点ではなく、そこで学習した一連のことを思いださせることができます。これも教科を越えてよく使われるやり方です。
“I ○ dinner every Sunday.”という文の○にあてはまる単語を考えさせます。”have”では日曜日にしか夕食を取らないことになりますから、ちょっと変です。”situation”を考えると、”cook”が答だとわかります。食事当番の表を与えて、文を作らせます。単に覚えさせる英語ではなく、”situation”と連動させています。基本的に優れた英語の授業に共通する考え方です。
考えてもわからないと時には、”Hint please.”と子どもに言わせ、わからなければ聞くという姿勢を身につけさせようとしています。これも、教科を越えて子どもたちに教えたいことです。また、できる子どもを活かしながら、最後の一人ができるまで待つという、全員参加の姿勢も素晴らしいと思います。

北原先生の授業は英語という教科面の工夫に目を奪われそうになりますが、教科を超えた基本的な姿勢にその本質があるように思いました。英語の授業としてだけでなく、子どもが全員参加し、考える授業はどうやってつくるのかという点でも大いに学ぶことができました。よい学びの機会を持てたことを感謝します。
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