LINEでのいじめが減少する!?

川崎の中学生殺害事件でLINEが事件解明の手掛かりになったことが盛んに報道されました。こういった事件では、情報サービスの固有名詞は出されないことが多いのですが、今回ははっきりと示されました。深読みすると、LINEでのやりとりは、タイムラインを削除したり、端末を処分したりしても、サーバーにデータが残っているので消すことができず、運営会社が警察に協力すればすべて明らかになることを知らせようとしているように見えます。
LINEでのやり取りは、そのグループに属していない人には見えないので、いじめが起きやすいと言われています。実際に、小中学校で子どもたちのLINE上のトラブルをよく耳にします。そういったいじめに対して、何か起こればすぐに証拠として明らかになることを周知することで、抑制しようという意図を感じたのです。
今回の報道でこのことに気づいた子どもは、LINEでの書き込みに注意を払うようになると思いますが、多くの子どもはそのことにまだ気づいてないでしょう。この事件を抑止力とするためには、そのことを積極的に子どもに伝える必要がありますが、その判断は学校によって分かれると思います。LINE上でのいじめを抑制したからといって、いじめ問題の根本的な解決にはなりません。しかし、LINEという環境があるからいじめが起やすいという考えに立てば、LINEでいじめをすれば最後にはわかってしまうことを子どもたちに伝えることは意味のあることのようにも思えます。問題はその伝え方でしょう。ストレートに言えば、子どもたちがいじめをしていることを疑っているように伝わってしまいます。情報教育の中で機会を見て、メディアの特性として伝えることが妥当のように思います。

今回の事件をLINEの活用の側面からとらえた時、学校関係者はどのように考えられたでしょうか。実際にLINEでのやりとりを開示してもらうのは、今回のような刑事事件でなければ難しいと思いますが、その可能性が明らかになっただけでLINEでの問題への対応に新たな切り口が生まれてきたように思います。
実際に各学校がどんな対応をするのかはわかりませんが、ひょっとすると今回の事件がLINE上でのいじめの減少につながるのかもしれません。

おやじの会の皆さんに還暦を祝っていただく

昨日は、私が学校評議員をしている中学校のおやじの会の皆さんが、私の還暦を祝ってくれました。個人的には還暦になったことを素直に喜べないのですが、こうして縁のある方が祝ってくださることはとてもうれしいことです。

このおやじの会の皆さんと知り合って11年になります。当時の校長と一緒に懇親会に誘われるようになってからも、ずいぶん時間が経ちました。
学校と地域が協力する関係が大切だと言われます。しかし、その実態は、学校が地域の力を一方的に借りようとするものであったり、地域が学校に対して自分たちの要求を強く主張するものだったりすることが珍しくありません。協議会を作って一緒に学校を運営しているように見えても、形式的でだれが責任を持ってことにあたっているのだろうと疑問を持たざるを得ないような事例を目にすることもよくあります。学校と地域がどうすればよい形でかかわれるのか悩んでいました。そんな中で出会ったのがこのおやじの会です。
子どもたちを育てるために自分たちは何ができるだろうと、地域の住民の視点で真剣に考えています。学校と考えがぶつかる時もあります。そのことを恐れずに自分たちの考えをまっすぐに伝えます。子どもたちのためという点では、学校と一致していることがわかっているからです。学校と地域の協同のイベントに地域フェスティバルがあります。この変遷を10年以上にわたって間近で見ることができました。そこにあったのは、学校と地域が共に歩んでいくということは、単に仲良くやることでも対立することでもなく、互いに子どものために何ができるかを真剣に考え、相手に要求することより自分たちにできることを大切にすることだという姿勢です。その時々のフェスティバルには、形は違っても、その時点で子どもたちを育てるために何をしようとしているのかが伝わってくるものでした。学校と地域のかかわり方の答の一つをこの会の皆さんから教えてもらえたように思います。
また、この会の方々はこの中学校区のことだけではなく、市の児童館の運営など、市民として子どもたちの教育に積極的にかかわっておられます。地域が子どもたちを育てることにかかわるとはどういうことかを身を以て示していただいています。

このような方々と出会えた幸運に改めて感謝しています。そして、こんな皆さんに自身のことを祝っていただける幸せを心からかみしめた時間でした。本当にありがとうございました。

吉永幸司先生から学ぶ

今年度最後の教師力アップセミナーは元京都女子大学附属小学校長の吉永幸司先生の「国語力は人間力−言葉で考える子どもを育てる国語指導」というタイトルの講演でした。

国語の教科指導の話というよりは、国語指導を通じて子どもたちの人間関係をつくったお話しでした。吉永先生が校長に就任するまでは、「のびのび」をキーワードとしていたそうです。そのマイナス面として、まわりとの関係を考えずに好き勝手な態度をとるため、子どもたちの人間関係が悪かったようです。また、私立の小学校ということで、子どもたちは放課後住んでいる地域で他の子どもとの関係がありません。エネルギーの発散場所が学校に限定されていることが、子ども同士のトラブルを誘発しているようでした。吉永先生は、子どもたちが伝えるべきことをきちんと伝えることができていないことが、いろいろなトラブルの根底にあるとが感じられたようです。保護者とのトラブル一つとっても、子どもが保護者に状況を正しく伝えていないために行き違いが起こっているのです。そこで、子どもに「必要な時に必要なことを伝える力」をつけることに力を注がれました。
その第一歩は、日常の言葉をきちんとすることでした。まずは、教師が子どもをきちんと「さんづけ」で呼び、名前を呼ばれたら子どもが「はい」と返事をすることからです。「ていねい」をキーワードにすることで、まず先生の言葉づかいが変わりました。主語が「○○さん」に変わるとそれに伴って述語もていねいに変わっていきます。こうして、子どもにていねいな言葉で話をさせ、続いて正しく伝えることを徹底させました。保健室でも、きちんと伝えなければ利用させません。保健室をよく利用する子どもが、他の子どもに伝え方を教えるようになったそうです。子ども同士のけんかの聞き取りも、ていねいな言葉を使うように指導します。「○○が・・・」と言えば、「○○さんが・・・」と言い直させます。単文しか話さなければ、一つひとつ聞き返し、最後にそれをつなげて言い直させます。こうして、伝える力をつけていきました。
ノート指導も大切にされました。先生は子どものノートと同じように板書し、子どもがそれを同じように書くことを徹底しました。教師と同じということは、教師の指示を聞くことにつながります。ちゃんと聞けば上手くできる。そういう経験を積ませることで、達成感を持たせ、自己有用感につなげていったのです。
こうして子どもの伝える力をあげ、自己有用感を持たせることができるようになって、当然のことながらトラブルは減り、学校が変わっていったそうです。

吉永先生が最初にされたことは、コミュニケーションに関する基本的なことと、指示を聞かせるために具体的な活動と評価を意識することでした。こういった根っこの部分をまず徹底できでれば、その上に多くのものを見上げることができます。この後の京都女子大学附属小学校でのいろいろな取り組みは、まさにそのようなものであったと思います。
吉永先生の語り口は、「ていねい」をキーワードに学校の改革を進めたことがなるほど思えるものでした。この柔らかさで職員にも接したからこそ、学校を変えることができたのだと思います。吉永先生の姿から、学校を変えていくために大切なことをまた一つ教わったように思います。吉永先生ありがとうございました。
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