イベントの目指すべき姿

昨日は、私が関わっている中学校で行われた地域ふれあい学びフェスティバルを見学してきました。地域の方と学校が一体となって、イベントや体験講座、模擬店を運営し、多くの方に楽しんで参加しながら、学んでいただきたいというものです。

私が見学し始めてから8年目ですが、来場者数も増え、地域にしっかりと根付いたと実感しました。小学生の参加が多いのもうれしいことです。廊下に貼られている中学生の美術の作品を見て「すっげえー」という声も聞こえてきます。中学生がすごいと思えることは、自分が中学生になることに期待を持つことです。小学生にとってはよい刺激になっています。また、卒業生も何人も見ることができました。旧友に出会う、恩師に出会う、後輩に出会う。母校とつながりを保つよい機会になっています。

今年度は実行委員の希望者も増えたと聞いています。昨年と比べてよい表情の生徒がたくさん見られます。逆に、積極的にかかわる生徒が増えたためか、受け身的に仕事をこなしている生徒との温度差も顕著になってきたような気がします。同じことが地域の支援者にも感じられます。いろいろと規模が大きくなってきたため支援者の数も増えているようです。頼まれたので、手伝っているという方も増えたのか、やはり表情に差があります。先生方も皆さんしっかり働かれているのですが、同じく表情に差があるように感じました。このイベントの目指すものが何かをもう一度明確にする必要を感じました。

子どもたちはどれだけ人が集まった、どれだけ売り上げがあったという表面的なことに目がいきます。与えられた仕事を決められた時間勤めれば自分の役割は終わりという、義務でやらされている感覚の子どもも目立ちます。積極的な子どもたちも、自分が頑張り、充足感を得ることだけでなく、まわりの友だちを巻き込んでいくことにもっと意識を向けてほしいと思います。
教師もこのイベントを子どもたちの成長にどうつなげるという視点を再度しっかりと意識して事前にかかわる必要があるように感じました。

子どもたちは自分たちの活動が地域の方に喜ばれ、感謝されることを、地域の方は自分たちが子どもたちの成長を手助けすることを、教師はこのイベントを子どもたちの成長につなげることを目指す。そして、各々がそのことを実感できるように見える化していくことが大切です。
特に地域の協力者にとっては、自分たちが手伝ったことが子どもの成長につながったかどうかは見えにくいものです。このことを伝える努力が主催者側に求められます。

そんなことを考えなら様子を観察していると、焼きそばの模擬店の子どもたちがとてもきびきびと集中して仕事に取り組んでいることに気づきました。たまたま、やる気のある子が集まっているのか、焼きそばを焼くのが楽しいのかと思っていると、教頭からこんな話を聞くことができました。実は、前日の設営準備のときに、この焼きそば担当の地域の方が子どもたちの取り組む態度について厳しく注意をされたそうです。その結果、当日は見違えるような姿を見せてくれたのです。このイベントの目指すべき姿を教えてくれたような気がしました。

生徒全員参加の学校行事となって3年目です。一定の成果は出せたと思います。だからこそ原点に戻って、地域とかかわることで子どもたちが成長するという本来の目的達成のために、それぞれが何をすべきかをもう一度考える必要があると思います。そのためのヒントも見つけられたような気がします。
来年のレベルアップへの期待が高まった1日でした。

野口芳宏先生から学ぶ

教師力アップセミナーで授業名人野口芳宏先生からたくさんのことを学ばせていただきました。

この日のセミナーは3部構成で、第1部は野口先生による道徳の模擬授業「なぜ学校に来るのか」でした。「学校に来るのは自分のためということばかりが強調されて立派な社会の一員となるためということが忘れられている」という野口先生の主張には大賛成。最後に、社会性を身につけることが自分の幸せにつながるということで締めくくられました。その通りなのですが、中学生ぐらいになるとこのことを素直に受け止めてくれない子どももいたりします。この部分については課題をいただいたような気がしました。ここに焦点を当てた授業を考えてみたいと思います。野口先生のこの授業を、学校公開日に全員で実施して、どの保護者にも子どもが学校に通う意味を考えてもらうという校長が出てくることを期待してしまいました。

第2部は先日撮影した、若手の国語の授業について、野口先生に公開でアドバイスをいただくものでした。さすがは野口先生、授業者が苦しんでいた部分に対して、ズバリと明快な答えを出していただきました。この会のためにわざわざ授業をおこなってくれた先生にはその苦労も吹き飛ぶくらいの大きな学びがあったと思います。教師の指導のあり方、課題のあり方について、私もたくさんのヒントをいただきました。

第3部は「体験的実践論」と題した講演です。野口先生の今までの教育に対する主張が整理されより明確になったように感じました。いつ話をうかがってもぶれのない1本筋の通った主張に、野口先生のすごさを感じました。自分の幹は何だろうかとあらためて問いなおす機会となりました。また、自分と主張の違う方に対しても、堂々と主張はされますが、悪く言われることはありません。人間としての器の大きさを感じます。野口先生とお会いすると自分の至らなさを思い知らされます。

夜は野口先生を囲んでの懇親会が催されました。お酒が入るとますますパワーアップして、ここには書けないような話もたくさん聞かせていただきました。後期高齢者になったことを笑いのネタにしながら、私たちではとてもこなしきれないほどの仕事に精力的に取り組まれている姿にはただただ脱帽。こんな歳の取り方をしたいと思える方の一人が野口先生です。野口先生からたくさんの元気をいただいた1日でした。

ICTの活用について考える

この1月ほど、ICTの活用について考える機会が増えています。授業での活用を考えるときに、自分がどんなことを意識しているのか少し整理してみたいと思います。

・子どものどんな姿が見たいのか?
見たい子どもの姿をつくりだすのに活用できないのかを考えます。
典型的なものが、子どもの顔を上げたい。スクリーンに映っているものを見ようとすれば、顔は上がります。これだって立派な活用です。
子ども同士が額を寄せて考えるのであれば、グループに1台タブレット用意して利用する。覗き込むことで自然に額が寄ってきます。

・何をねらっている場面なのか?
ねらいに迫るのに活用できないのかを考えます。
興味関心を持たせる場面であれば、動画やきれいなグラフィックは有効です。
情報をもとに考えさせたい場面であれば、コンピュータで情報を提示するというのもありです。

・問題点は何か?
問題を解決するのに活用できないかを考えます。
黒板に子どもが書くと時間がかかるのなら、ノートやワークシートを実物投影機で映せば解決です。
教科書の本文を板書するのが大変ならば、デジタル教科書は強い味方です。

・つなげるものが何か?
つなげることに活用できないかを考えます。
以前に学習したことを復習するのであれば、ノートを確認させるのもいいですが、記録しておいた板書を映すというのも有効です。
他の学級の発表や、先輩、自分たちの過去の記録を提示することで、より多くのものとつなげることもできます。

・これ以外の指導法はないのか?
今までの枠にとらわれずに、一から考え直すことも大切です。
比較するのに、コンピュータや実物投影機を使って重ねてみることで違いがはっきりすることもあります。
こうやって教えるという思い込みに縛られずに、こんなことができたらいいなと考えたとき、ICTは大きな可能性を秘めています。

他にも色々とあるのですが、すべてICTに限らず、授業を考えるときにチェックすることばかりです。当り前のことですが、ICTの活用を考える視点は、授業をつくる視点と同じなのです。ICTは、資料を拡大コピーして提示するのか印刷して配るのか、説明を板書するのかノートに書かせるのかといった、授業の組み立てを考えるときの選択肢の一つにすぎないのです。こう考えることで、ICTは教師にとって身近で有効な道具になっていくのだと思います。
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31