伸びる先生の条件

学校に出かけてたくさんの先生とお会いしてアドバイスをします。短い間にみるみるよい方向変わっていく方もいれば、なかなか変わらない方もいます。どこにその違いがあるのでしょうか。経験年数なのか、性格なのか。一概には言えませんが、一定の傾向があるように思えます。

まず、だれしもが言うことですが、「素直」ということがあります。アドバイスに対して、あまり難しく考えずに、「やってみよう」と思える人は、やらない人より間違いなく変わる率が高くなります。若い方に多いタイプです。うまくいくと、また次のアドバイスを求めます。他から学ぼうとする意識も高くなっていくように思います。いい循環に入るとどんどんよい方向に変化していきます。しかし、とりあえずやってみてうまくいかなければ、すぐにやめてしまう方も多いように思います。

一方、経験を積んできた方にとっては、他者からのアドバイスは自身が培ってきたものと相反することがあります。ここで、素直に「なるほど」と試してみる方は、若手以上に大きく変わる可能性があります。もともと経験もあり、基礎となる技術があるのですからうまくいく確率が高いのは当然です。ベテランの女性に多いように思います。

問題は納得できないときにどうするかです。このとき多くの方は、当然自分のスタイルを変えません。ところが、中には納得できないが、それほど言うのだから何か自分には気づかない要素や理由があるかもしれないと、挑戦してみる方がいます。こういう方は、はたからどう見えようが実は「謙虚」な方です。実際に挑戦してうまくいかなくても子どもやアドバイスのせいにはしません。自身の問題として、やり方がどこか悪いのではないか、何か欠けているのではないかと修正したり工夫をし、すぐにあきらめません。結果として実に大きく変化し、素晴らしい授業をされるようになります。

中には、直接アドバイスをしなくても変わっていく方があります。他の方の授業を見たり、自分で勉強している方です。先輩や仲間から盗むことができるので、直接のアドバイスは必要としません。こういう方は、まわりの先生の授業が変わっていくと素早くそのよさに気づき、吸収し自分の授業に取り入れていきます。進歩したいという「向上心」の強い方です。

「素直」「謙虚」「向上心」が伸びる先生の条件のように思います。特にベテランでこの条件を満たす方は、ちょっとしたきっかけで間違いなく素晴らしい授業をされるようになっていきます。
ここまで書いていてふと自分を振り返ると、「向上心」はあったように思いますが、「素直」「謙虚」については心もとないものを感じます。そんな私が、「素直」「謙虚」な先生方にアドバイスをしているのもおもしろいことです。
多くの先生方が変化していく場面に立ち会っていますが、それは「素直」「謙虚」「向上心」といった資質を持ち合わせている方に私がたくさん出会えたということに他なりません。そんな機会を得ていることにあらためて感謝します。

会議の雰囲気をつくる

愛される学校づくり研究会が主催するフォーラムのための指導案検討会が何度か開かれています。この検討会の特徴は、参加者が自分の意見をどんどん発表し合い、指導案の内容がどんどん高まってくことです。当り前のことのようですが、どうやらこれがなかなか難しいことのようです。というのが、参加された複数の方から、「こういう会議は初めてだ」「参加者がいろいろな視点で自分の考えを述べるのが新鮮だった」「刺激的な意見が多かった」といったコメントをいただいたからです。

地区にもよるのでしょうが、立場によって意見が言いづらい、言ってはいけないといった雰囲気のある会議があるようです。少なくとも指導案の検討や授業の検討は、いろいろな考えが出ることがとても大切なはずです。ある方が意見を出すと他の方は意見を言いづらい。それでは、意味がありません。しかし、現実にはそのようなことはよくあることのようです。

では、どうすればこの雰囲気を変えることができるのでしょうか。互いに自由に意見を言い合うことで学べることが増えることをみんなが経験していくこと、他者の意見を聞く姿勢を見せ合うこと(特にベテランが)が大切です。そのためには司会者が、意見が持っていそうだが発言できていない人に意図的に指名するといったことも必要ですし、「どんなことを感じたか聞かせてください」と答えやすく問いかけをしたり、「この点についてはどう考えられますか」と焦点化することも有効です。
また、小グループにすることでだれもが意見が言いやすくなり、その結果、全体でも活発に意見が出るようになることもあります。

このことは、実は教室の雰囲気づくりと一緒です。会議も授業も根っこのところは一緒なのです。子どもたちに質の高い学び合いを保障するためにも、教師同士が質の高い、学び合える会議を経験していてほしいと思います。

盛山隆雄先生から学ぶ

教師力アップセミナーで盛山隆雄(筑波大学附属小学校教諭) のお話を伺いました。

まだ40歳と、このセミナーの今までの講師の中では一番の若手の方です。どのようなお話が聞けるかとても楽しみにして参加しました。とにかく感心したのは、授業の基礎基本に非常に忠実ということです。2つの事例を紹介されましたが、発問、子どもの言葉への切り返し(盛山先生は問い返しとおっしゃっていました)、板書、どれをとってもまずはここが一番の基本で大切だということを伝えてくださいました。筑波大学附属小学校で日々研鑽されている先生です。参加者が「あっ」というようなネタもたくさんお持ちだと思います。しかし、若い参加者を意識してオーソドックスな日々の授業に役立つことに絞って話をされました。

自分に振り返ってみると、どうしても参加者受けをねらった、「あっ」と言わせるようなネタを少しは入れたくなります。しかし、「あっ」と言ってもらえたから、参加者の学びが深くなるわけではありません。基本的なことを一つひとつ丁寧に伝えていくことが「あっ」と言わせることよりももっと大切なのです。盛山先生の柔らかい語り口で伝えられる内容をゆっくりと咀嚼しながら、このことに気づくことができました。この日もとてもよい学びをさせていただきました。ありがとうございました。

教科書の子どもの発言を読みこむ

仕事の関係で小学校の教科書を読む機会が増えました。読みこむことで、最近の教科書はよくできている感心させられることがたくさんあります。何がポイントかとても分かりやすく、指導書は必要ないのではと思うほどです。また、子どもたちにどのような活動をさせたいのか、どのような発言を期待しているのか、教科書作成者の思いがとてもよく伝わります。

このような思いが一番よく表れているのが、教科書に書かれている子どもの発言やつぶやきです。

「・・・じゃないかしら」
「・・・だろう」
「・・・と考えました」
・・・

この部分に非常に重要なポイントが隠されています。ここをしっかり読んで理解すれば教材研究がほぼ終わるとも言えます。しかし、教科書に書かれてはいますが、この発言やつぶやきは授業中に教室の子どもたちから出てほしい言葉でもあります。教科書を読んで気づくのではなく、自分たちで気づいてほしいのです。ですから、教科書は授業の大切なツールではありますが、場合によっては開かない方がよいこともあるのです。教科書を見せないで子どもたちから期待する発言を引き出す。ここに教師の大切な役割があります。

子どもが教科書にあるような疑問を持つにはどのような問いかけが必要か。
子どもが自分の考えを持つためにはどのような活動が必要か。
子どもが自分の考えを発言できるために持つためにはどのような働きかけが必要か。

教科書は教師がどのような役割を果たさなければいけないのかを常に問いかけています。
一見すると、教科書を使わないで独自のやり方で進んでいるようでも、よく練られていると感じる授業は間違いなく教科書をしっかり読みこんだ上でつくられています。

よい授業をつくるには、何よりもまず教科書を読みこみ理解することが第一歩だという思いをますます強くしています。

うれしいハガキ

先日おこなった現職教育の講演(小学校の現職教育)の礼状が教務主任から昨日届きました。ハガキ1枚にびっしりと手がきです。私自身がメールやワープロを多用する方なのでそれだけで感激してしまいます。

翌日の出校日に授業した先生が、「困っていることはないか」と子どもに聞いたところ「立式に困っている」など、具体的に困っていることをよく話してくれた。若手の先生が授業を見てもらいたい、私と一緒に子どもの様子を見てみたいと言ってくれたといったその後の報告が書かれていました。講演後すぐに届くお礼のメールもうれしいのですが、日をおいて実際の授業にどのような変化が起こったのかを教えていただけることは本当にうれしいものです。

実はこの数年、学校からの講演依頼はできるだけ条件をつけるようにしています。別の日でもよいので実際の授業を見せていただくことや授業研究に参加すること、また個別に授業を見てアドバイスさせていただくことです。
全体で話をして、「いい話でした」「勉強になりました」と評価いただいても、実際の授業がよくなったという話はあまり聞けないからです。同じ授業を見て互いに気づいたことを話し合う、私の気づきやアドバイスを伝える。こういうスタイルの方が経験的に授業がよい方向に変わることが多いのです。

私の一方的な話だけで授業に変化が起きたということは、素直な先生が多い学校だと思います。短い期間で授業がいい方向に変わる可能性が高い学校です。今学期に授業アドバイスを予定しているのですが、ますます楽しみになりました。
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