研修はフォローが大切

メーリングリストなどで、参加した研修の報告をいただく機会が増えてきました。よくまとめられた記録は、よく理解でき大変参考になります。また、私の講演記録も送っていただくことがあるのですが、これを読むのは結構つらいものがあります。第三者がこれを読んでもよくわからないだろうなと思うことが多いからです。決して書き手が悪いのではありません。私の話が横道にそれたり、論理の展開に隙間があったりしているからです。ライブ感覚を大切にして、その場のノリで話をつくったり変えていることも一貫性がないことの原因かもしれません。
そんな私の講演や研修ですが、先日教えていただいた研修とその後はとても考えさせられるものでした。(三楽の仕事日記「2011年07月15日(金) 派遣指導主事会研修会 」参照)

授業のビデオを見て、参加者に感じたことを意見交換していただき、考えてもらう形をとっています。受け身でなく積極的に参加し、考えてもらうよい方法です。参加者の発言をつないで考えを深めていきます。授業と同じです。私もこういった方法をとることがよくあるのですが、どうしても最後には解説やコメントを多く入れてしまいます。先生方に授業で気をつけるようにお願いしているパターンを自らやってしまっているのです。言い訳になりますが、あまり話をしないと、お金をいただいているのに働いていないと思われてしまうかもしれないと心配になってしまうこともあるのです。
それはさておき、この研修では、講師の方は聴き役に徹していたそうです。その場で参加者が自ら考えたこと、気づいたことを大切にし、自ら学ぶことを期待していたのだと思います。参加者の力を信じているからでしょう。これは授業でも同じです。言うことは簡単ですが、なかなかできることではありません。授業なら何回もチャンスがありますが、研修では1回だけということがほとんどです。よけいにハードルが高いのです。

素晴らしいのは、参加者がより深く学べるために、主催者側がちゃんとフォローしていることです。講師の話に関連して資料を研修後に提供しているのです。(三楽の仕事日記「2011年07月17日(日) 石井順治さんの本」参照)
そして、さらに素晴らしいと思ったのは、10日ほどして、講師の方が参加者あてにコメントを書いて送られたと聞いたことです。適当な時間をおいてからコメントすることで、参加者は落ち着いて振り返ることができますし、その場で聞くより冷静に受け止めることができるはずです。なるほど、こういう方法もあるのですね。

私もたくさんの機会をいただいていますが、まだまだ工夫が足りないと考えさせられました。アドバイザーとして関わっている学校で、先生方が急速に成長していると感じる場合は間違いなく、管理職や研修担当の先生がフォローをしっかりしているところです。逆に、外部の者ができることは限られているのです。研修で何かが変わるのではなく、きっかけにして内部を変える動きが必要なのです。
研修をより効果的にするために、講師としてのあり方、フォローするための仕掛けをよりしっかり考えなければいけないとあらため気づかせていただきました。

学校マネジメントを考える

学校マネジメントという言葉がよく聞かれるようになりました。マネジメントをどうとらえるかは、人によって差があると感じます。学校にはマネジメントはなじまないという方もいれば、これからは積極的にマネジメントを取り入れなければならないという方もたくさんいます。では、今までは学校マネジメントという考えはなかったのでしょうか。

マネジメントとは、目的を達成するために人・物・金・情報をいかに活用するかということですが、これはどの組織でも当然考えなければいけないことです。うまく機能しているかどうかは別にして、学校でもこのことは考えてきたはずです。だれをどの学級の担任にするか、行事の担当をだれにするかなどは、マネジメントという言葉で意識されていなくても、立派なマネジメントの一部なのです。

では、なぜ今までマネジメントが大切なこととして意識されてこなかったのでしょうか。その理由は、大きく2つあるように思います。

一つは学校が達成すべき目的(たとえば子どもたちの心身の健やかな成長?)に対してその達成のための目標がなかなか具体的にできないことです。教育の特性として、目標が抽象的になりやすいのです。結果、目標が達成できたかどうかのチェックも曖昧になってしまいます。そのため、そもそも具体的な目標をきちんと設定しなかったり、設定しても行動計画が立てられない。チェックできないので行動計画が改善されない、責任が明確にならないといった状態になってしまいます。どこに向かっているのか、どこにいるのかわからないようでは、マネジメントどころではありません。

もう一つは、学校では人・物・金・情報に関する自由度が低いことです。人に関しては、一般の教員は学級担任、教科担任、部活動顧問を振り分けるとほとんど余裕がありません。定員を勝手に増やすこともできませんから、どこかに人を厚くしてパワーアップをしたくてもなかなか難しく、教員の負担を増やさずに何かをやることはとても困難なのです。
物とお金に関しては学校が独自に予算を請求したり、自由に裁量して使える範囲は全体の予算の中で非常に限られています。情報に関しても、組織的に情報を集めたり、共有化するということがされにくい体制があります。
マネジメントをおこなうにも道具や材料がとても少ないのです。打てる手が限られているため、マネジメントをしようという意識が薄いのです。

では、なぜ今学校マネジメントという言葉が言われるようになってきたのでしょうか。それは学校を取り巻く状況が少しずつですが変わってきているからです。

一つは学校と地域の連携が進み始めたことです。その結果、地域の方が学校経営に積極的に協力するようになってきました。当然、第三者にもわかりやすい、客観的な目標の設定と評価が必要になってきます。学校評価の導入です。目標とその達成を明確にすることが求められるようになりました。これはマネジメントそのものです。また、人の問題に関しても、地域の方がボランティアとして学校の活動に協力してくれるようになってきました。学校として活用できるリソースが増えてきています。地域の方と一緒になって新しい教育活動に取り組んでいる学校が増えています。

もう一つはICTの活用です。学校評価にしてもそうですが、新しいことを始めればそのための労力はどうしても必要です。しかしICTをうまく活用することで負担を減らすことができます。最近多くの学校で導入されている校務支援システムは、教師の事務作業の効率化をはかることで、多少なりとも余裕を生み出してくれます。うまく活用することで教師間の情報の収集や共有化も促進できます。また、ホームページの活用は学校と地域の情報共有に大きな効果が期待できます。

大きく状況が変わったとはいえないかもしれません。しかし、こういった変化をうまくとらえ、マネジメントを工夫している学校は大きな成果をあげています。また、学校独自で使える予算をつけている市町村も増えてきました。環境は間違いなくよい方向に向かってきています。従来の思い込みを捨てて、あらためてマネジメントを考え直すことで、学校がよりよい方向に向かっていくことと思います。

若い先生はアドバイスを求めている

10月の教師力アップセミナーで、野口芳宏先生に解説・講評いただく国語の授業の撮影に参加しました。

学期末の忙しい時期にもかかわらず、快く公開授業を引き受けていただき、授業者には本当に感謝以外の言葉がありません。
まだ5年目の若い先生ですが、とても意欲的です。グループでの活動ではなかなか自分から話せない子がいるので、今回はペアでの話し合いに挑戦するということでした。ペアでの活動の後にグループでの活動を入れましたが、ペア活動が効いたのか、非常によい話し合いができていました。いくつかのグループでとてもよい意見が出ていましたが、残念ながら全体で話し合い深めることは時間切れで次に持ち越されました。次の時間もぜひ見たいと思わせるものでした。

授業後、参観者と授業者で懇談しました。私以外の参観者は他地区の校長、教頭、プライベートで参加の指導主事とこの学校の研修主任です。子どもたちの様子からどのようにすればもっと活躍させられたか、教材のどこにこだわれば、もっと深い読み取りにつなげられたか。具体的なことがたくさん語られました。私にとってもとてもたくさんのことを学ぶことができました。当日、野口芳宏先生がこの授業に関してどのような話をされるかとても楽しみです。
興味をもたれた方は10月10日(月・祝)の教師力アップセミナーにご参加ください。(申込みはこちら

研修主任から、授業者は管理職の方が具体的に授業について指摘してくださったことをとても喜んでいたと聞きました。参観者の専門教科が全員国語ではなかったと聞いて驚いてもいたようです。授業者は今まで管理職の方に授業を見ていただいても、このような具体的な指摘やアドバイスをもらうことがなかったようです。専門教科が違うからだと納得していたのかもしれません。そのためか、今回の経験が新鮮だったようです。
この学校の管理職の方が授業について具体的な話をしなかったのは、できないからではないと思います。管理職が授業についてあれこれ言うのは、プレッシャーになるので嫌がられると思っているからでしょう。ところが学校現場で感じるのは、多くの若い先生は教えてもらいたい、アドバイスをしてほしいと思っていることです。
管理職の方は、若い先生の授業をどんどん見て、アドバイスをすればいいのです。もし、嫌がられていると感じるのなら、それはアドバイスの内容が相手に納得できるものではなかったからです。こうしろと命令するのではなく、相手に寄り添って一緒に考える姿勢でアドバイスをすればきっと多くの先生は受け入れてくれるはずです。それでもダメなら、別の工夫をすればいいのです。
若い先生がどんどん増えている今、若い先生の授業力を延ばすのは管理職の大切な仕事だと考えて、どんどん行動を起こしてほしいと思います。

教師にとっての基礎基本の定着を考える

最近若い先生方の授業を見ていて気になるのがチョークの持ち方です。鉛筆と同じように持って板書しているのです。黒板に正対して子どもを見ない先生が多いことに疑問を持ち、細かく観察していて気づきました。
子どもたちを見ながら板書しようとすると、体を開いて斜めに書くことになります。鉛筆のように持っていると斜めでは力が入りません。親指と人差し指の2本の指でチョークを持つことが必要になります。

自分のことを振り返ってみると、誰かに教わったという記憶がありません。ある先生は、自分は小学生に授業の中できちんと教えているとおっしゃっていました。私も学校で教わったのかもしれません。
また、子どもの様子をしっかり見ながら板書できるようにと、真正面を向いたまま手を裏返して書けるように練習もしました。いろいろと工夫しているうちに自然に身についたのかもしれません。

いずれにしても、誰かに教わるか、自分で工夫して身につけることが必要なのでしょう。ところが、最近の若い先生のチョークの持ち方がおかしいということは、教わっていないし、板書中に子どもを見ようと工夫していないということです。指導する側、若い先生自身、双方に問題があるということです。

ある校長は、「そんなことは私がきちんと指導している」と力強く話されました。しかし、そのことに気づいていない管理職もいらっしゃいます。
今の時代、基礎基本の定着は子どもたちだけの問題ではなく、教師に対しても必要なことのようです。教師にとっての基礎基本は何か、それをどのようにして定着させるのか。そんなことは教えなくても知っているはずだという思い込みを捨てて、学校経営に携わる方が真剣に考えるべき問題のように思います。
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