保護者対応について考える

ある会議で、教師の保護者対応が話題になりました。

保護者とのトラブルは、最初の対応がまずいためそれが尾を引くケースが非常に多いようです。

教師(特に若い)が、上から目線で話をする。
電話応対等、社会人としての基本マナーを知らない。

教師は子どものためにと一生懸命に働いているのに、こんなことが印象を悪くして、話をこじらせているようです。確かに昔は保護者から尊敬される立場でしたが、今は教師だからといって特別ではありません。へりくだる必要はありませんが、相手を尊重した接し方が必要です。保護者が学校に話をすることは、ほとんどが子どものことです。子どもを間に挟んで保護者と学校が対立してもいいことは何もありません。互いに自分の考えを相手に納得させようとするのではなく、「子どものために一緒に考える」というスタンスをまず共有するようにしてほしいと思います。このことを大前提とした上で互いの考えを「聞きあう」ことで、多くのトラブルは避けることができると思います。

一方、電話応対等のマナーについては、きちんと研修する必要があります。最近では、就労経験のある保護者がほとんどです。当然基本的なマナーはよくご存じです。教師にそのつもりはなくてもマナーを知らないために、対応がぞんざいであるとか、軽んじていると感じさせてしまうことがよくあるのです。
例えば、「ご苦労さま」という言葉です。「ご苦労さま」は目上の人が下に対して使う言葉であるとして、外部や目上に対しては「お疲れさま」を使うように教育している企業がほとんどです。学校内ではだれも気にしなくても、保護者にうっかり使ってしまえば、上から目線と取られてしまいます。本当は、「わざわざありがとうございます」という謙虚な気持ちで使っているのに、軽んじられたと気分を害してしまう保護者も出てきます。こんなつまらないことが、トラブルのきっかけになることもあるのです。

また、保護者との対応に関してネガティブな言葉使わないことも大切です。例えば、保護者から「苦情」があった、「苦情」対応をするといった表現です。確かに内容的には「苦情」といっていいことかもしれませんが、「苦情」といった時点で、すでに関係をネガティブにとらえています。詳しく話を聞く前にこういう言葉を使ってしまうと無意識に防衛的な態度をとってしまいます。しかし、最初は、話を聞いてほしい、納得させてほしいというレベルの話であることがほとんどです。教師が防衛的になって、こちらの立場を主張し、相手の話を否定してしまうことで本当に「苦情」になってしまうのです。こうなるといくらその場でこちらの主張を通しても、結局はよそへ「苦情」を持ちこむだけで、余計に深刻なトラブルになるだけです。
ところが、ポジティブな言葉に言い換えるだけで、気持ちはずいぶん変わります。「苦情」を「相談」といいかえるだけで、ニュートラルな気持ちで接することができ、余裕を持って話を聞くことができるようになります。

保護者対応は学校にとって大きな問題となってきましたが、ちょっとした研修や気づかいでほとんどの問題は避けられると思います。この「ちょっとしたこと」を学校としてどう徹底するかが問われているように思います。

公開授業を見学

先日、今年度よりICT活用の研究指定を受けた小学校の公開授業を参観してきました。

ICT活用ということも影響してか、授業者は若手の先生ばかりでした。自ら手を挙げて公開されたそうで、その意欲に感心しました。今回は、ICTをどのように活用しているかということより、授業として何を目指しているのか、子どものどんな姿を見たいと思っているのかに焦点を当てて見させていただきました。

見させていただいた3人に共通していたのは、場面ごとの活動を意識しているのですが、1時間の授業全体で子どもたちのどうなってほしいかが明確でなかったことです。子どもたちは、作業には取り組むのですが、どこへ向かっているのかがよくわからない状態でした。
ICT機器のような道具を意識するとどうしても起こりやすいことです。一旦ICTを横に置いて授業構想を立ててみるとねらいがはっきりしてきます。その上で授業の各場面で子どもたちにどのような活動をさせたいのか、そのポイントは何かを考え、そこにICT機器を活かしていけばよいのです。

当日は、最後に、この研究をサポートされる大学の先生のお話がありました。直接聞くことはできませんでしたが、そのレポートを読ませていただき、さすがと感心させられました。この学校の現在の問題点をわかりやすく指摘し、その改善への方向性もとてもシンプルに語られています。先生方が前向きに研究をとらえられるように、意識されていることがよくわかります。私にとっても大いに勉強になりました。
まだまだ研究は始まったばかりです。熱意のある先生方と素晴らしい研究者のコラボレーションで、きっと大きな成果をあげられることと期待しています。

愛される学校づくり研究会に参加

先週末に愛される学校づくり研究会に参加しました。今回は研究指定校の取り組みの現状と実践例の発表でした。

私も研究指定校のお手伝いを何校か経験していますが、研究の方向性やゴールが見えるまでけっこう右往左往することがあります。立派な結果を残さなければいけないというプレッシャーがどうしてもかかるからかもしれません。そんなとき、私は研究発表会の参加者は何を求めるのだろうと考えます。来てよかったと思うのはどんな内容なのでしょうか。

一つは、発表の内容を自分の学校でもやってみようかと思うえること。もう一つは、その研究の結果そのものではなく、そこに至る過程での組織づくりや仕掛けが学校の活性化に参考になると思えることだと考えています。
特に2つ目の視点は、研究内容にかかわらず役に立つ情報だと思います。私がお手伝いをさせていただくときは、特に2つ目の視点での情報伝達を発表会では意識するようにしています。

結果を求めると、決められた期間でなんとしても結果を出さなくてはいけません。無理やり結果が出たことにする発表会もあります。このような研究発表をすると、そのあと研究はしりすぼみになってしまうことが多いように思います。また、先生方の負担も大きいように感じます。
一方、ゴールはまだ先でも、確実に前へ進んでいると思えれば継続できます。先生方が日常的に無理なく前へ進めるような取り組み方を考えることは、長い目で見れば学校を大きく進歩させます。研究をきっかけに学校がよい方向へ無理なく変わる。研究指定が終わっても進歩し続ける学校を目指してほしいと思います。

研究会で発表された学校は今年度スタートしたばかりで、まだ多くのことが混沌とした状態のように感じました。この学校は、アドバイスをお願いしている大学の先生が来られるときはすべてオープンにするそうです。この状態からどのように変化していくか、できるだけ時間をつくって参加し、その過程から学ばせていただきたいと思います。

石垣則昭先生から学ぶ

教師力アップセミナーで石垣則昭先生(登別市立緑陽中学校長 上級教育カウンセラー・ピアサポートコーディネーター) のお話を伺いました。

ソーシャルスキル、エンカウンター、カウンセリング、ピアサポートなどの幅広い知識をベースにしたワークショップと講演からなる、参加者が自分で理解することを大切にしたプログラムでした。若い先生に感想を聞くと「ロールプレイでネガティブな教師と子ども役を互いに経験することで、子どもたちがどんな気持になるかを実感し、改めて子どもとの接し方を考え直した」と答えてくれました。日ごろ気づかずにそんな態度をしているもしれないと振り返るよい機会なったようです。変化するためには、まず気づくことが大切です。このことを大切にした講演を心がけなくてはとあらためて思いました。

石垣先生の素晴らしさは、多くの知識を持っているにもかかわらず、常に学校現場での現実的な実践の面から考えられていることです。特定の理論や手法にとらわれず、現場の課題を解決するという視点での指導例は大変参考になりました。
今回は子どもたちの心にスポットを当てたコミュニケーションが中心でしたが、いろいろな場面で応用のきくお話でした。

予定している保護者向けの講演にも役立つヒントをたくさんいただくことができました。ありがとうございました。
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