指導案について思う

先週末は中学校で授業参観と研究発表当日の指導案のアドバイスを行ってきました。

A4で2枚の指導案なのですが、授業の細部まで伝わってくるものと、なかなか見えないものがあります。その差はどこから来るのでしょうか。
ここでの説明は具体的にこうしよう、わからないようだったらこうしよう、ここでの活動はここを中心に見ようと授業者が具体的な授業イメージ(子どもの姿、それに対する自分の対応)を持っているかいないかの違いが大きいのです。
授業イメージが固まっていない指導案は、流れは書いてあるのですが、具体的な記述が少ないのです。

「説明する」
「指示する」
「できていない子を個別に支援する」

こういう言葉は書かれているのですが、具体的に「・・・」と説明する、指示する、「・・・」ができていない子には「・・・」という支援を行う、といった記述が少ないのです。どのように説明するのか、支援するのかを直接聞いても明確に答えられなかったりします。

指導案は事前に授業を検討するために作るものだと思います(授業を参観する方のためという視点もありますが、それは二義的なものでしょう)。事前に授業のイメージを明確にするための作業の結果と言ってもいいかもしれません。そこがはっきりすれば、どう改善すればよいかを事前に考えることもできます。
指導案を通じて事前に授業を検討することはよいことですが、授業が始まってしまえば、もう指導案にこだわる必要はありません。実際の子ども状況で授業はどんどん変わるものだからです。

授業をよくしていくために必要なのは、事前にどんな子どもの姿を見たいかを明確にし、そのために何をするかを具体的にし、実際の子どもの姿から学ぶことだと思います。指導案という形式にこだわらず、授業のイメージを明確にすることを毎日の授業で心掛けて、子どもの姿から学んでほしいと思います。

若者の成長に思う

先週末に参加した学会の発表後、研究会の仲間と懇親会をおこなった。研究会をサポートしてくれている企業の社員の方もたくさん参加してくれた。中には何年もあっていない方もいて、久しぶりの再会に楽しい時を過ごした。

途中で参加者全員によるちょっとしたスピーチがあった。当時まだ駆け出しでスピーチどころか、「こんにちは」の挨拶さえ大丈夫かと心配していた若者がどんな話をするのだろか。彼らのメインの仕事は、学校に行って先生のサポートをすること。コミュニケーション能力が要求される。だからこそ、彼らの挨拶や話し方が気になっていたのだ。期待半分、不安半分でドキドキしながら聞いていた。ところが、どうだろう。彼らはみな実に見事なスピーチをするではないか。驚くとともに、彼らをこれほどまでに成長させた時間と経験に思いをはせた。

この何年か本当に前向きに仕事取り組んできたのだろう。それに対して私はどうだろう。彼からどう見えたのだろう。成長どころか、下手をすれば退化していたのではないか。

若者の成長の速さをみるにつけ、否応なしに自分が老いていくことを考えさせられる。まだまだそんな歳ではないとは思いつつ、彼らに負けぬよう、日々前向きに生きていかねばと思う。

背中で見る?

テレビ会議でセミナーのリハーサルをおこないました。モニターにはスライドが映っているために、参加者の顔は見えません。これがとってもやりにくいのです。

スライドにしていない実例やポイントなどをいくつか用意していたのですが、反応がわからないので話すタイミング失してしまいます。結局スライドの字面を追うだけになってしまいました。前半は自分でも乗りの悪いものでした。

ところがスライドも半分に近づくころになって、音が聞こえることに気づきました。画面はスライドで埋められていても、音声システムは相手の音を拾ってくれているのです。何の音か何を話しているか細かいところまではわかりません。しかし、なんとなく雰囲気はつかめるのです。カメラの向こうに人の姿が感じられるようになりました。ここからは、いつものペースを取り戻すことができました。自然に体も動き、身振り手振りもついてきます。予定していた実例もかなり入れることができました。

テレビのアナウンサーのように、聞き手が直接見えないところで話をするのはすごいことだと、あらためて思いました。逆に相手を目の前にして話す場合、聞き手の状況を非常に大切にしていることがよくわかりました。

教師時代に、「背中で見えるようになりなさい」と言われたことを思い出します。目だけでなく、話し声やちょっとした音からでもたくさんのことが見えてきます。授業は教師の五感すべてを使って作っていくものだということを改めて思い出す出来事でした。

永遠の課題?

先週末の教師力アップセミナーで國學院大学の滝井章先生に「思考力と表現力の育成を重視した算数の授業づくり 〜新学習指導要領の趣旨を生かした授業づくり〜」という演題でお話しをうかがった。

算数を通じて「物事の本質を見つける力」をつけたいという先生の考えに大いに共感した。また、今回の指導要領の改訂で学年間の重なりが重視されたが(スパイラル)、単に下の学年に降りてきたのではなく、そのつながりを意識してほしいという具体例が非常にわかりやすく、大変勉強になった。

しかし、先生の話される思考力、表現力を育てる授業ということは、今急に言われだしたことではない。特に、思考力は、算数・数学という教科ができた時からではないかと思う。学年間のつながりを意識するということだって、言い方こそ違え多くの方がおっしゃってきた。にもかかわらず、こういったことが言われ続けなければならないのはなぜだろう。永遠の課題と言ってしまえばそれまでだが、そんな言葉で片付けたくない。よい授業にゴールがないのだから、求め続けるのは当然というのもちょっと違う気がする。
現場で授業を見せていただいて、実現の度合いが低いと感じるからだ。

滝井先生のようなすぐれた実践者はたくさんおられる。具体的な実践が広まっていかないことが問題なのだ。セミナーで話を聞いてもせいぜい1つか2つの例しか聞けない。しかも聞いただけで実践できるようになるわけではない。いわんやすべての教科単元を網羅するなど絶対に不可能である。結局、教師自らが書籍などを通じて学び、実践し、同僚と学び合う以外に方法はないのだろうか。それさえも現実には難しい状況がある。
わかっていたとはいえ、あらためてこの問題を考えることになった。今すぐ答えが見つかるわけではないが、自分できることをやりながら、答えに近づきたいと思う。

いい授業ってなんだろう?

研修会の際に、「いい授業」にするための検討のポイントを説明したのですが、そのとき「いい授業ってどういう授業ですか」と質問されました。

たしかに、あたかも「いい授業」という絶対的なものがあるように話をしてしまうことがよくあります。

・子どもが積極的に参加する
・子どもにとってわかりやすい
・授業規律が保たれている
・教師と子どもの信頼関係ができている
・・・

いい授業の要素は思い浮かびますが、全体像はなかなか明確にできません。

その研修会では、「授業者の目指す子どもの姿が実現できる」のがいい授業であるとお答えしました。「いい授業」のイメージは教師の数だけあります。誰もが納得するものをその場で示すのは難しいと考えたのです。
実はこのことが、授業検討でも問題になるのです。意見を言う際に目指す子どもの姿が違っていては、話がかみ合いません。まずは授業者の目指す子どもの姿にそって議論しなければ話は進まないのです。
一方、目指す子どもの姿については、学校の中で共有することが大切です。全員が全く同じである必要はありませんが、少なくとも方向性は一致してほしいのです。そうしなければ、互いに授業を見合っても視点がずれてしまい、うまく学び合えません。

目指す子どもの姿を明確にすることがいい授業を明確にすることにつながります。目指す子どもの姿について教師がふだんから話しあう雰囲気をつくることが、その学校におけるいい授業を具体的にしてくれるのです。

迷惑をかけたくない?!

先日義理の母が出先で転倒して、骨折をしました。タクシーで家まで何とかたどり着いたものの、這いずるような状況。たまたま工事の人が見つけてくれて、玄関まで運んでもらい、民生委員さんにも連絡をしてくれたそうです。
ところが、民生委員さんがどれだけ言っても救急車を呼ぶことを拒否します。それならばタクシーで救急病院へ行くというのはどうかと提案しても、首を縦に振りません。ほとほと困り果てた民生委員さんが電話をかけてきてくれて、初めて事故のことを知りました。

義母の気持ちはわかります。周りに迷惑をかけたくない、心配させたくない。その一念で我慢していたのでしょう。結局、私たちの説得で行きつけの病院にタクシーで向かったのが、転倒から3時間後の6時過ぎ。ところが、病院は休診日。救急病院のお世話になりましたが、今度はベッドが空いていません。あれほど拒否した救急車で別の病院に搬送され、入院の検査と手続きが終わって私たちが家に帰った時には日付が変わっていました。「すぐに救急車を呼んでくれていたら」と思わずにはいられませんでした。

「迷惑をかけたくない、心配させたくない」と思うあまり、余計に周りに迷惑をかけ、多くの人を心配させてしまうという結果になったわけです。
これに似たことは、学校でも起こりがちなことです。学級で問題が起こっていても、「自分で何とかしなければ」と抱え込んでしまい、結局打つ手が遅れてしまい、最終的には子どもたちにマイナスとなってしまう。こんな事例をよく目にします。

トラブルは自分で抱え込まずに、思い切って周りに頼ることが大切であるとあらためて思いました。
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