「出たとこ勝負」とは

グループなどを活用した時に「子どもから出てきたことをもとに進める」とよく言われます。誤解を招くかもしれませんが、「出たとこ勝負」と言ってもいいと思います。子どもたちからどんな考えが出てくるかわからないので、あらかじめ細かいことは決めておかずに、子どもの考えを活かし、子どもの考えに沿ってその場で判断して進めていくということです。しかし、「出たとこ勝負」といっても何も準備しないということではありません。何を準備し、どんなことを大切にすればいいのでしょうか。

授業の準備で大切なことは、教師がどのような説明をするかではなく、この課題や問いかけに対して子どもはどのような活動や反応をするだろうと考えることです。若手とベテランの経験の差が最も顕著に出るところです。

・多くの子が戸惑うかもしれない。そのときどう働きかけようか。
・はやばやと解き方に気づく子がいるかもしれない。その子にはどんな指示をしようか。
・グループで動きに差ができるかもしれない。その時はいったん活動を止めるのか続けるのか。
・すぐにほかの子が理解できない意見が出るかもしれない。どう切り返そうか。
・・・

予想される子どもの様子に対して、どのように対処するかいくつもシミュレーションをするのです。「出たとこ勝負」でその場で判断すると言っても、子どもから出てきたものへの対応をあらかじめしっかり考えていなければうまく対応できません。この準備が不十分であれば、子どもの考えを活かすことなどできないのです。実際に予想したことすべてが起こるわけではありません。ときには、事前に考えておいたことがほとんど無駄になるかもしれません。しかし、それだけの準備が必要なのです。
とはいえ、子どもの活動や反応が事前に予想した範囲にすべて収まるということもあり得ません。思いもよらない考えが出てきて、とっさにどう対応していいかわからないことがあります。このとき、頼りになるのが他の子どもたちです。

「今の考え、わかる人いる」
「代わりに説明してくれる人いる」

と教師が無理して処理しようとせずに子どもにつなぎます。その考えがうまく他の考えとつながって想定内におさまってくれればそこから進めていけばいいのです。うまくつながっていかなければ、そこで教師も他の子ども一緒に考えればいいのです。場合によっては、「今のことについて、グループで(まわりの子と)相談して」と子どもたちの戻すのも1つの方法です。

いい加減に聞こえる「出たとこ勝負」ですが、あらかじめ進め方を決めるよりもはるかに多くのことを準備しているのです。

2日後に迫った、「愛される学校づくりフォーラム2012 in 東京」ですが、ライブ感を大切にするため、基本的には「出たとこ勝負」です。発表者の中には細かい進め方がわからない、何を質問されるかわからないと不安に思っている方もいると思います。しかし、「出たとこ勝負」だからこそ、互いにどんな質問や意見が出るだろう、どう切り返そうかとシミュレーションしていることと思います。そのことが、メーリングリストに流れる情報からよくわかります。特に午前のパネルディスカッションの司会者は、必死に作戦を練っていることと思います。だれとだれをどう絡ませるか。うまく絡まなかったらどう挑発するか。「出たとこ勝負」だからこその緊張感、ライブ感を楽しんでいただけたらと思います。

活動から活躍へ

子どもたちを受け身にさせない。学習内容を定着させたい。そのためには子どもたちの活動量を増やす必要があります。友だちの意見を聞くことも立派な活動ですし、問題を解くことも、グループでの話し合いもすべて活動です。ここで意識してほしいことは、子どもが活躍することです。

友だちの意見をしっかり聞いていても、発表の後「いいですか?」「いいです」では、聞いたことが活かされとは感じません。
頑張って問題を解いたあと、挙手をしたが指名されない、指名された子が答えて、「いいですか?」「いいです」「はい、○をつけて」で終わってばかりでは、だんだんやる気をなくします。
グループの話し合いが終わった後、各グループで一人ずつ発表して終わる。発表しなかった子は自分の考えや意見を評価されたと感じるでしょうか。

子どもが活発に活動しても、ただ活動して終わりでは、子どもの学習意欲は高まっていきません。子どもが「活動する」ことから、「活躍する」に視点を変えていくことが求められます。活躍するとは、他者に認められると言い換えてもいいでしょう。

友だちの意見を聞く場面なら、「今の意見を聞いてどう思った」「なるほどと思った人いる」など聞いたことが活かされる場面や評価される場面をつくることが大切です。時間がなければ、同じ考えの人に挙手させるだけでもよいでしょう。
問題を解いたり、作業したのであれば発表者をできるだけ増やすとよいでしょう。正解が出ても「正解」と言わなければ何人でも指名できます。言葉が足されたり、考えがつけ加えられればそのことを大いに評価するようにすることで、発言意欲も増します。また、机間指導の際に、声をかけながら全員に○をつけることも効果的です。
グループ活動であれば、友だちの意見を互いにポジティブに評価するように指導しておくことが大切です。また、発表の時には、結論を聞くだけでなく、「どんなこと話した」「誰の意見が参考になった」など発表者以外も評価できるような問いかけも必要です。

子どもの活動量を増やすことはとても大切です。その上で、全員が活躍する授業、活躍したと感じられる授業を目指してほしいと思います。
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