「コミュニケーションを意識した授業づくり」について講演

一昨日は小学校の現職教育で講演をしてきました。「コミュニケーションを意識した授業づくり」と題して、授業を進めるポイントをできるだけ具体的に話をさせていただきました。

教師と子どものコミュニケーションについては、教師が受容することを第一にするようお願いしました。間違った答でもちゃんと受け止めて聞いてもらえる、先生がいつも見守ってくれている。こういった安心感を持たせることで、初めてコミュニケーションが成り立ちます。言葉を交わさなくても、一人ひとりの子どもを笑顔で見るだけでもコミュニケーションの基本となる人間関係をつくることができます。コミュニケーションを意識した時、子どもに外化を求めることが重要になりますが、こういった関係をまずつくることが求められます。発言をすることに対するハードルの高い子どもはたくさんいます。学年が上がれば自信がないとなかなか発言できません。うなずく、首をかしげる、そんなちょっとした動作をとらえてポジティブに評価することが大切になります。教師が子どもたちをどれだけ見ているかが勝負です。

子ども同士のコミュニケーションを考える時に基本となることは、友だちの発言を聞くことに価値を与えることです。友だちの発言に対してどう思ったか、どう考えるかといったことを常に問いかける必要があります。また、教師の話を聞いて理解することが学習ではなく、自分で考える、自分たちで話し合って答を見つけることが学習であるという価値観を持たせる必要もあります。「わからなければ聞けばいい」とわからないことを聞ける子どもに育てることが大切です。
よくできる子どもは、自分はできたからいいと友だちの発言を聞かないこともよくあります。自分の考えを発表させるのではなく、友だちの考えを代わり説明することを求めることでかかわりを持てるようになります。他者の考えを理解することを評価することで、コミュニケーションが活性化するのです。

子どもたちの活動量を増やすためにも、ペア活動やグループ活動は有効です。ペア活動では聞く側に役割を持たせることが大切です。自分が他者とかかわって役に立ったという自己有用感を持つことで、コミュニケーションを取ろうとする子どもに育っていきます。
グループ活動では、話すことよりも聞くことを大切にしてほしいと思います。自分の考えを持てていなくても、友だちの考えを聞いて自分のものとすることができれば充分です。友だちの考えの中から、自分でこれがいいと選ぶことができればそれも立派な自分の考えを持つことです。こういった評価をしてほしいのです。グループで答を一つにまとめるのではなく、友だちの意見を聞くことで自分の考えをまとめることを大切にしてほしいとお願いしました。

最初のうち少しかたい先生もいらっしゃいましたが、次第によく反応してくださるようになりました。子どもへの指導の具体例を問いかけた時、Iメッセージでほめるやり方を答えてくださる方もいました。素敵な先生がたくさんいそうな学校でした。

若い先生から子どもたちに自由に聞きに行かせるやり方について質問が出ました。聞きやすい友だちに教えてもらうことで、動きが活発になるからでしょう。よい質問だと思いました。このやり方だと一見活性化しますが、テンションが上がってムダ話になる危険性もあります。何より問題なのは、授業での人間関係ではなく、日頃の生活での人間関係で活動が決まることです。生活の場だけでなく授業中でも居場所のない子どもが出てくることが予想されます。固定化された人間でなく、誰にでも聞ける、誰とでもかかわれることが大切です。生活の場で仲のよい子と話をすることは自然なことですが、授業の場にそれを持ち込んではいけないのです。子どもたちの聞き合う活動が活性化しないのであれば、そのための手立てをする必要があります。子ども同士の人間関係に問題があるのであれば、ソーシャルスキルやエンカウンターの時間を取ることもその一つでしょう。教師が子ども同士をつなぐように働きかけることも大切です。授業の中で人間関係をつくることをお願いしました。

研修終了後も個別に相談に来て下さる先生が何人かいらっしゃいました。通級指導教室の担当の方は、非常に具体的な場面での対応についていくつか質問してくださいました。その対応を一緒に考えることで私もとてもよい勉強をさせていただきました。
自分の感情を上手く表現できない子どもが、何を聞いても「ふつう」としか答えないので、こちらから「うれしかった?」と聞いて、言葉を出させようとしたそうです。こちらから強要しているようで引っかかっているといった質問から、子どもたちと真剣に向き合っていることがよく伝わってきます。私にも何が正解かはわかりませんが、「今、うれしそうに見えたよ」と、相手に聞くのではなくこちらか伝えるという視点で接することを提案しました。先生も、表情豊かに自身の感情を表現することを心がけることでこの子どもに変化が出てくるのではないかと思いました。この後どのようになったか聞くのがとても楽しみです。

次回は、実際に授業を見せていただいてお話をすることになります。素直な先生方が多いように感じる学校ですので、きっとよい方向に変わっていくと思います。今からとても楽しみです。

中学校で新年度のスタートを見る

昨日は中学校の授業アドバイスをおこなってきました。昨年度に続き多くの方が異動されました。この学校で今まで取り組んできたことを共有することが課題です。今年度の研修の進め方も工夫しなければなりません。この日は、まずは各学年のスタートの状態を学年主任と共に観察しました。

3年生はとてもよい状態でした。どの学級もわかりたい、できるようになりたいという意欲を感じます。子どもたちの視線が教師に集中しています。どの子もあきらめずに授業に参加しているのが印象的でした。学年主任も子どもたちのよい点をたくさん伝えてくれます。子どもたちの関係が良好で、男女を問わずよく話し合ってくれるとうれしそうに話してくれました。
初めて担当する先生に対しては、その先生のやり方を理解して慣れるのに時間がかかるものですが、以前からその先生の授業を受けているような雰囲気に既になっているのが印象的でした。全く初めて担当する先生も、とても素直に反応してくれると言っていました。1年生からずっと担当している先生は、今まで受け持っていなかった子どもも、経験のある友だちに教えてもらったり、助けてもらったりしてすぐに慣れてくれたと、子ども同士の関係のよさを実感していました。子どもたちは、指示待ちの受け身の態度ではなく、次に何をすべきかを意識しています。問題を解き終ってもぼっとしていません。日ごろから何をすればいいのかを指導されているのでしょう。教科書を読んだり、問題集を解いたりしています。指示に対しての反応もとても素早いものでした。話をうかがったどの先生も授業がとてもやりやすいと言っていました。3年生の姿は、この学校の目指す子どもの姿を体現してくれていると思います。これまでの2年間の先生方のかかわりが素晴らしかったのでしょう。とてもよいスタートを切れていると思います。
3年生になるとみんなが頑張るので、努力しても思うように相対的な成績(順位)が上がらず、落ち込む子どもが出てきます。全体がよいスタート切れているので、先生方には少し余裕ができると思います。個を見ることにエネルギーを使ってくださいとお願いしました。

2年生は、集中を見せる時はとてもよい状態でした。作業や課題にも真剣に取り組みます。昨年度末に少し目立ち始めた授業に参加できない生徒があまり気になりません。その一方で、受け身になると直ぐに集中力が切れるという特徴はあまり変わっていませんでした。先生が一方的に話していると、みるみる集中力を失くします。逆に言えば、子どもたちに活動させることを意識すればよい状態で授業が進むということです。担任の先生もかなりの数が入れ替わっているので、子どもたちの気持ちもリフレッシュされているはずです。今がチャンスだと思います。子どもたちの活動量の確保を学年全体で意識すれば、よい状態になっていくはずです。このことを学年主任にお願いしました。
また、若手の先生が時間を見て教育相談(個人面談)を始めていました。学年全体で取り組んでいるのかはわかりませんが、とてもよいことです。この時期は子どもがやる気を出すと同時に環境の変化で不安定になりやすい時でもあります。子どもとの人間関係をつくるためにも個別に話を聞くとよいと思います。忙しい時期ですが、必要な動きができていると思いました。

1年生の第一印象は小学生、それも中学年のような姿だということです。授業規律がまだきちんとできていません。授業を受けている子どもたちの姿を見るとバラバラです。出身小学校での様子をそのまま引きずっているようにも思います。例えば友だちの発言をその子の方をきちんと向いて聞く子どもがどの学級にも1/4から1/3くらいはいます。しかし、他の子どもは前を向いたままなのです。このこと自体は大した問題ではありません。この時、授業者が友だちを見ている子どもを評価しないのが問題です。また、友だちの発言をつなぐこともしません。せっかくよい文化を持ってきてくれている子どもたちがいるのに、これではすぐに消えていってしまいます。
これに限らず、先生方が子どもたちへの指示が通るまで待てていません。子どもたちの行動が遅いため待ちきれないのです。このような時は、指示に対する評価をスモールステップで行うとよいでしょう。「教科書の○○ページを開いて」という指示であれば、「教科書を出す」「開く」「目的のページを見つける」それぞれの段階をほめるのです。「○○さん、もう教科書を出しているね。素早い行動だね。うれしいね」「おっ教科書を開こうとしているね。早い、早い」「△△さん、もう○○ページを開いているね」というようにすれば、動きの遅い子どもたちでもほめることができます。教師が子どもたちの素早い行動を望んでいることをほめることで伝えるようにすることが大切です。全体に、挙手や発言、課題に取り組む様子などの子どもたちの外化を評価していません。そのためよい行動があっても、広げることができていないのです。固有名詞でほめることが大切です。
1年生の先生方に対して総じて感じたのが、余裕がないということです。異動したばかり、初めて担任をもった、そういう方が多いので仕方がないと思いますが、この時期に押さえるべきことは少し時間がかかってもしっかりとしておく必要があります。学年主任にはこのことをお願いしました。

今年度新しく研修主任になった方と打ち合わせをおこないました。異動したばかりで学校のことがよくわからない中での担当で、戸惑いもあるようでした。3年生の担当で、子どもたちのよさに気づいています。単に子どもたちがよいのではなく、このように育てるにはこれまでにやってきたことがあるはずだとわかっておられます。これはとてもよいチャンスだと思いました。以前からいる方にとっては当たり前のこととして意識されていない子どもたちへのよいかかわりを明確にすることができるからです。新しく来られた方の視線でこの学校の取り組みを見直すことで、どのようなかかわりが子どもたちを育てているのかを具体的にすることができるはずです。1年間の研修を通じて、この先生の視点でこの学校のスタンダードというべきものをまとめて提案していただくことをお願いしました。経験も豊富で授業に対する感覚もとても素晴らしい方なので期待できそうです。

今年初めて担任を持った先生に少し時間を取ってもらい話をしました。余裕のない状態であることはわかっていますが、「笑顔を忘れずに授業規律、学級規律を確立することを大切にしてほしいこと」「わからないことはあって当たり前だから、臆せずに先輩に聞くこと」、そして、忙しいことはわかるが、「朝少し早く来て教室で登校してくる子どもたちを見ること、雑談をすること」「帰りの会が終わったあと教室に少し残って子どもたちがすぐに部活動に向かうかを確認すること、机の中などの個人スペースの様子を見ること」。こういったことをお願いしました。何をすればよいか、どこから始めたらよいかわからない状態だとは思いますが、優先順位を子どもたちと接することにおいて行動してほしいと思います。

予定していなかった若い先生が2人相談に来られました。「よいスタートを切れていると感じているが、これでよいのか」と確認を求める方。6年目という次は原則異動の年なので、恥ずかしくないだけの教科力を身につけたいと、授業に関して悩んでいることを質問してくれた方。私にとっても刺激となるよい話をたくさん聞くことができました。彼らの成長を感じることができるとても幸せな時間でした。
また、数学科に関してはベテランがほとんどいなくなったので、彼らの教科力をアップするために勉強会を開くことを提案しました。玉置崇先生編著の「中学校数学授業のネタ100(1年〜3年)」(明治図書)(数学の授業アドバイスを助けてくれる本参照)の読書会です。次に指導する単元を有志で勉強するのです。うれしいことにすぐに前向きな答が返ってきました。この学校に訪問する楽しみがまた一つ増えました。

今年度転任されてきた校長からたくさんのお話を聞くことができました。異動したばかりにかかわらず、子どもたちの様子をとてもよく把握されています。時間をつくっては教室を見回っていることがよくわかります。授業をとても大切にされている方です。前任校での取り組みなど、参考になるお話をたくさん聞くことができました。とても楽しい時間を過ごすことができました。よい出会いに感謝です。

この学校のよい点を再確認するとともに、新たな課題も見つかりました。この1年で子どもたちと先生方がどのように成長していくかとても楽しみです。先生方と共に私も成長できるように頑張りたいと思います。

専門学校の登校指導

先日東京に出張した時に面白い光景を見ました。朝、白衣のような制服を着た方が何人も立って道行く若者に笑顔で挨拶しているのです。一体どういうことだと思いましたが、どうやら近くにある専門学校の先生方が学生に登校指導をしているようです。そこは狭い道路で車がすれ違うのがやっとです。登校する学生がわがもの顔で歩いていると交通のじゃまになるのです。小中学校ならまだしも、専門学校でも朝の交通指導が必要な時代になってしまったようです。

感心したのが、先生方がとても素敵な笑顔で挨拶することです。学生への配慮もあるでしょうが、一般の通行人も気持ちがよくなるような笑顔です。おそらく接客をともなう仕事の専門学校なのでしょう。プロの笑顔のすごさを感じました。一方の学生は明るく挨拶はするのですが、先に挨拶するのは先生です。中には友だちとの話に夢中になって、声だけの学生もいます。私がその学校の教師ならつい指導したくなるような状況でも、先生方は決して表情を荒げたりしません。とにかく笑顔で挨拶をし続けるのでした。登校指導には苦情に対して指導していることをアピールするという要素もあるかもしれません。しかし、先生方の姿は指導ではなく気持ちのよい挨拶で学生を迎えようという思いを感じさせられるものでした。見ている私もよい気持ちになりました。

一般の小中学校でも登校指導をしているところは多いと思います。地域の方から苦情をいただくこともあると思います。その時に子どもたちを指導することばかりに意識がいってはいないでしょうか。中には、登校指導は指導をしていることを地域にアピールするパフォーマンスだと言ってはばからない人もいます。地域の方は、先生方がどのように子どもたちと接しているか、どのように指導しているかとてもよく見ています。そして、もっとも敏感に感じているのが、ほかならぬ自分たち地域の人間に先生方がどのような気持ちで接しているかです。登校「指導」ではなく、子どもたちや地域の方と気持ちのよい挨拶をすることを第一の目的にしてほしいと思います。気持ちよい挨拶ができるようになれば、自然とまわりを気遣った安全な登校となるはずです。専門学校の先生の姿からこんなことを思いました。

研究会で学ぶ

昨日は今年度最初の愛される学校づくり研究会でした。新しいメンバーも増え、今年度も充実した会になりそうです。

自己紹介の後、前回のフォーラムの振り返りと来年度のフォーラムを意識しての今年度の研究の方向性について話し合いました。
午前の部は「劇で語る! 校務の情報化 パート2」でした。これに関しては、校務支援システムのよさは広く認知されてきたが、いかにして各学校に応じた形で運用できるようにするかが課題となってきたという話になりました。次回に向けて校務支援システムをよい形で導入し、定着させるための工夫を話題にするというアイデアが出てきました。また、学校ホームページに関して、毎日更新することが目標ではなく、対象を意識して何が伝わったかが問われる時代になってきました。この視点から、具体的にどのような工夫をしているかがその場でたくさん話されました。カテゴリーとキーワードをうまく組み合わせることで教育目標や目指す子どもの姿が伝わる例や、教職員を意識した発信の仕方、伝え方の工夫についても面白い話をたくさん聞くことができました。この内容だけでも十分に外部に発信する価値があると思いました。

午後の部は、「楽しく授業研究をしよう」でした。3つの模擬授業をもとに授業検討法の提案を行いましたが、授業検討法もさることながら、素晴らしい授業を見ることができてよかったという感想が多く寄せられました。先生方にとってよい授業を見るということはとても価値のあることです。来年もぜひ授業を公開したいと考えています。今年度は年に数回の授業検討だけでなく、日常的に授業改善に取り組むことをテーマにしていくことになりました。日常的であるためには、手軽に、気軽におこなえることが大切です。先生方からは若手の授業改善についてどのような工夫をしているかを聞くことができました。授業について第三者に語り、聞き手はそれをまとめるといったことを職員全員に課すという取り組みなど、なるほどと思わされるものがたくさんありました。このことについては、愛される学校づくり研究会のコラムを通じてお伝えしたいと思います(来週より連載開始)。

研究会の後半は、文部科学省に出向されている会員からの最近のトピックと新年度の学校の取り組みなどの発表でした。
地方の教育行政改革の法案の流れや、教育行政や地域と学校のかかわり方の話題、土曜授業・学習についてなど最新の情報をお聞きすることができました。学校の現場の人間にとって心外な言葉ですが、議員からは「教育村」という言葉がよくでてくるようです。教育現場に対する不信感が現れています。対決姿勢ではなく、協力して進めるというスタンスで改革が進んでいってほしいと思うのは私だけでしょうか。

新年度の取り組みの中で、いかにして人を活かすかについて参考になる話がありました。バランスのよい人ばかりではありません。授業力があっても職員同士の軋轢を引き起こす方もいます。その人のよいところを活かすポジションをどうつくるかに腐心されたことが伝わるお話でした。欠点を指摘して矯正しようとするより、そのよさを活かして活躍させることが組織を活性化させます。簡単ではありませんが、その視点が大切だとあらためて確認することができました。
また、皆さんの話に共通していたのは、校長が学校の課題や目標を明確にし、職員だけでなく、子どもや保護者とも共有しようとしていることでした。ポイントの1つは、課題や目標を簡潔な言葉で言い表すことです。その言葉をいろいろな具体例と共に繰り返し伝えるのです。特に保護者には直接伝える機会は限られているので、学校ホームページの記事などで、子どもの姿だけでなく、その姿が課題や目標とどのように関連しているかを伝えようとすることが大切です。こういったことにも気づかせていただきました。

この日もたくさんの学びがある、充実した時間を過ごすことができました。学び合える場を持てることに感謝です。

私学で授業見学

昨日は私立の中高等学校で授業を見学してきました。お昼を挟んで2時間ずつ子どもたちのようすを見せていただきました。全体的な印象は子どもの声がほとんど聞こえないことです。先生から答えが出ることを待っています。子どもとのやり取りも基本一問一答です。教師の都合で授業が進んでいます。子どもたちが考えている場面がないのです。子どもたちはおしゃべりもせずに静かにしていますが、集中はしていませんでした。午後になると、受け身に疲れたのか倒れている生徒も目立っていました。このことを誰よりも校長がよく理解しています。どのようにして授業を改善していくかが課題です。

教科指導部の主任の先生と多くの時間一緒に回らせていただきました。子どもたちとのコミュニケーションを大切にしたい、知的な喜びを感じさせたいという強い思いを持っている方です。自身の授業に対する改善意欲もとても旺盛です。客観的に子どもたちの様子をもとにその原因や対応について話をしていても、自分の授業に引き寄せて反省をされたり、どうすればよいか具体的に質問をしたりしていただけました。最初にこのような前向きな先生に出会えたことはとても幸運でした。こういった先生方がいらっしゃるのであれば、きっと学校がよい方向に変わっていくと思います。副主任の先生や若手の先生とも一緒に回りましたが、共通しているのはとても素直なことです。若手の先生は、子どもたちの様子を外から見ることで、初めて教壇に立ったころは子どもが聞く態勢を取ってから話すことを意識していたのに、今はその基本をおざなりしていることを素直に認めてくれました。私の話もしっかりとメモして活かそうとしていました。きっと成長されることと思います。

また、自主的に公開授業をおこなっている先生もいました。グループを活用した授業に挑戦されています。授業で目指す子どもの姿が明確になれば、とても素晴らしいものになっていくと感じました。自主的なものにもかかわらず、何人もの先生が参観していました。この雰囲気を学校全体に広げることができれば大きな力になっていくと思います。

一緒に授業を見た先生方と話をさせていただいて感じた課題は、この学校の目指す子ども像、授業像が全員で共有されていないことです。もっと言うと多くの先生方が子どもたちの力、可能性を信じていないことです。そのため、考えさせることよりもやらせることに力点がいっています。子どもが笑顔で自ら学ぼうとすることよりも、静かに聞いていれば十分だと思っているのです。子どもを認める場面もありません。そもそも子どもに出力することを求めていないのですから当然です。具体的な方策はいくつもありますが、先生方の意識を変えてもらうことが先決です。まずは、教科指導部の先生方全員で課題を共有し目指す姿を明確にすることから始めたいと校長に提案しました。ゴールデンウィーク中になりますが、次回はできるだけ多くの教科指導部の先生と一緒に授業を見て、その上で部会を開いていただき、話を聞かせていただきたいと考えています。

この学校の子どもたちが持っている可能性はとても高いと感じました。特に1年生は、中学生も高校生もその様子から、学びたい、わかりたいという意欲が伝わってきます。まだまだこの学校での取り組みは始まったばかりですが、今後の展開がとても楽しみになっています。子どもたちの可能性を引き出せるようできる限り先生方のお手伝いをしたいと思います。

介護技術研修で授業から学んだことが活きる

先週末は、介護技術の研修をおこなってきました。今回は「感染予防」がテーマです。私は介護技術に関しては素人ですので、実務に携わっている専門家の助けを借りながらです。

今までのコミュニケーション研修ではこれが唯一つの正解というものはありませんでしたが、今回の「感染予防」の知識に関しては正解があります。知っていれば答えられますが、知らない、忘れていては答えられません。こういった知識は問うばかりでは、定着はしていきません。知識を使って課題を解決することが定着につながります。また、知識面はほとんどの方が一度は学習したはずの内容でした。一方的に説明しても聞いていただけない可能性があります。

そこで、研修の流れは、基本となる知識をグループで確認することから始めました。自分の中で知識が曖昧になっていることに気づいてもらい、仲間から教わって自分の中に答を持った上で全体での説明を聞くことで、参加意欲が高まり知識の定着度も高まります。その上で、知識と関連して、現場で起こりそうな事例についてどう対処する、考えるかを問いかけます。知識を活用する課題、答えるのに必要な知識を確認するような課題です。基本的な知識、一般的な知識は私でも解説できますが、現場に即した問題は専門家に助けてもらいます。学校でのゲストティーチャーを活用した授業での経験がここで活きました。この場面では、参加者から言葉を引き出し、専門家の回答とつなぐことに徹します。

実技の場面は互いに見せ合い、代表者に全体の場で説明してもらうなど、参加者が活躍できる場面をつくることを意識しました。よく知っている方はそのことをただ確認するだけでは、興味を無くします。そういう人が他者に見本を示すなど活躍することが大切です。
最後の課題は、具体的な場面でどのように対処するか、今回の研修での知識を使って考えるものです。この課題にきちんと答えることができるようになることが今回の研修の目標です。皆さんしっかりと必要な対応を考えてくれました。ポイントを確認して終了です。
2時間近い研修ですが、皆さんよく集中してくださいました。

この研修のように参加者に知識があることが前提になっていても、完璧ではないような場合はその進め方に工夫が要ります。学校での復習場面や受験対策の授業と共通するものがあります。知識の確認で、忘れていることを自覚させるとともに、恥をかかさずに前向きに知識を再取得させようとさせることが必要です。グループなどで確認し合うことが、大人でも有効でした。また、授業と同じくこの課題をクリアできればOKという、目標を明確にしておくと進め方がシャープになります。何を扱うか、切り捨てるかといった判断が楽になります。
今回の研修で、日ごろ先生方の授業から学んでいることがとても役に立ちました。教える内容に対する知識も大切ですが、進め方、構成がより大切であると改めて感じました。

企業での新人研修(2日目)

昨日は企業の新人研修の2日目でした。
午前は学校ホームページで「何を変えられるか」という課題を考えてもらいました。学校ホームページは誰を対象としたものか、その対象にどのようになってほしいのかという視点で整理してみます。その上で、学校ホームページからその具体例となる記事を探すというものです。みなさん、まず母校のホームページを検索します。中には昨年の体育大会の記事が最新という学校もあります。ここからどのようにして記事を探すかが問題です。やみくもに探す人、J−KIDS大賞のようなサイトの上位校から探す人、個人が運営しているサイトのランキングから探す人、いろいろです。途中で探し方を共有し、グループで情報交換をしてもらいました。

参加者は、デザインや利便性といったところに目がいきます。保護者が見たくなるという視点です。しかし、最初はそこでひかれても、中身がなければ継続して見てはもらえません。「記事を見ることで、どう変わってほしい」という中身の持つ意味まで考えることができていません。また、「地域」の方を対象にした記事を探したものの、ボランティア募集の記事を見つけるにとどまった人もいます。
自分の中に、「学校ホームページで誰をどのように変えることができるか」の解答の明確なイメージがないため、取り敢えずホームページを見て探すというアプローチです。限られた時間では表面的にしか見ることができなかったのもいたしかたないことです。質の高いものは、単にネットを検索していてもなかなか見つかるものではありません。
実は、この新人たちは「愛される学校づくりフォーラム2014 in京都」に全員参加していたのです。ここで得た情報を活用してほしかったのです。学校ホームページに関する話題を思い出せばヒントになりますし、登壇された先生方の学校を調べて記事のカテゴリーや内容を吟味すれば、よい記事は見つかったはずです。細かいことを思い出せなくても、それこそインターネットで調べればすぐに情報は手に入ります。フォーラムのようなものに参加することの意味がわかってくれればと思います。

午後の課題は顧客とのコミュニケーションのロールプレイです。顧客と出会う前に何をするかをまず考えてもらいます。パンフレットを準備する、顧客の情報を集めるといったことが出てきます。ここで、「先輩にアドバイスを求める」という考えは出てきませんでした。自分でまず考えることが大切です。しかし、わからないことは聞くことが必要です。経験の少ない新人だからこそ、先輩にアドバイスを求めることが重要なのです。

グループで顧客の人物像を作ってロールプレイです。やり取りの様子を見ているとよい表情を作ろうとしたり、相手の目をしっかり見てうなずいたりしています。基本的なスキルはあるようです。互いの気づきをグループで共有してもらいましたが、非常に集中して話を聞き合っていたのが印象的でした。「相手の言葉をオウム返しで言うと、共感が得られる」といったとてもよい気づきが参加者から出てきました。仲間のよいところをしっかりと見つけることができていました。

代表の1組にロールプレイを再現してもらいました。代表も他の参加者もとてもよく集中していました。ロールプレイ終了後、参観していた社長にコメントを求めたところ、すぐさま全員の頭がそちらを向きます。社長は細かいことではなく、その集中する姿勢を評価してくれました。彼らがこれから伸びるために大切なことを評価するところはさすがです。ポイントをおさえたコメントでした。

最後に、私が顧客役になって代表者とロールプレイをしました。自ら手を挙げてくれる人がいたのはとてもうれしいことです。苦戦をしたのですが、簡単に引き下がらず粘りを見せてくれました。やった者しか学べないこともあったとは思いますが、見ていた側も第三者の視点だからこそ学べることにたくさん気づいたようです。顧客の願うものとこちらが提示するものがずれていたが、自分がその立場だったらどうだったどうろかと真剣に考えていたことがよくわかります。長時間にわたる研修でしたが、最後まで、いや終わりが近づくほどに高い集中度でした。

彼らが生徒だったら楽しい学級を作れるだろうなと思うような参加者でした。講師ではなく教師としての楽しさを感じさせていただいた研修でした。参加者の皆さんとこのような機会を与えていただいた企業に感謝です。

企業での新人研修(1日目)

昨日は企業の新人研修の講師をおこなってきました。ほとんどが新卒の方です。

今回の研修では、課題を通じて知識を得ることだけでなく、整理することを通じて「視点によって見え方が変わる」「視点を変えることによって見えなかったものが見える」といった視点の大切さについて気づいてもらうことを意識しました。また、グループで考えることは、他者の異なった視点に触れることになるので、考えを深めるのに有効です。グループワークを通じてこのことにも気づいてもらえたと思います。
最近の若者の特徴でしょうか、みなさんとても素直な反応をしてくれます。与えられた課題も真剣にこなそうとします。しかし、課題に対してはその答をストレートに求めようとします。ネットの利用でも周辺情報を集めることはあまりしません。課題の背景や、課題解決のための方法を考えることはあまり意識されていないように感じます。本日の研修では、そのことについても考えてもらう予定です。

今回の一連の研修で、「小中連携」「教科担任制」といった学校に関連する事柄について互いにレクチャーする課題があったようです。その課題の一環として全員の前でそれぞれがプレゼンテーションをしたそうです。その時互いに評価し合った結果を受けて、今回もう一度全員にプレゼンテーションをおこなってもらうことになりました。
今の大学ではプレゼンテーションは必須のものかと思ったのですが、学校や学部によってまちまちのようです。堂々と動きも加えて全体を見ながら話す方(試食販売のアルバイトをしていたそうです)もいましたが、思いのほか慣れていない人が目立ちました。しかし、受講者に聞いてみると、みなさん指摘されたことを何らかの形で改善しているようでした。前回は原稿を見ながらたどたどしかった方が多かったようですが、かなりの人が原稿を見ずに話せるように事前に練習していました。互いの成長を見あうことはよい刺激になります。同世代の集団で学ぶよさでしょう。
「・・・である」「・・・だそうだ」と結果や結論を述べるだけで、その根拠やその結果が意味するものについてはあまり説明できていませんでした。資料をまとめるだけで、自分が何を伝えたいのか整理できていないものも目立ちました。なぜその話題を取り上げたのか、そこから何を考えたのかといったものが伝わってきません。真剣取り組んでいたのでしょうが、姿勢が受け身だったのかもしれません。

「目的」という言葉がプレゼンテーションで使われていたので、全体に対して「目的」と「目標」の違いを確認してみました。驚いたことに、一人を除いて全員逆にとらえていました。彼らが受けた学校教育ではこのことを意識することがなかったということです。先生相手に同様の質問をしてもかなりの数が間違えます。総合的な学習の時間などで「目的」と「目標」を正しく意識して活動することの必要性を感じました。

本日の研修では、昨日の研修内容が消化できていないと苦労するように考えています。彼らがどのような姿を見せてくれるか楽しみでもあり、不安でもあります。彼らの姿が、私の昨日の研修の評価になるからです。私も彼らの姿からしっかり学びたいと思います。

新入生の成長が楽しみな入学式

先週末は学校評議員をしている学校の入学式でした。最近は生徒数が減少傾向で、今年度の入学者数は100人を切っていました。かつてのたくさんの生徒がいたころを知っている方にとっては、さびしく感じられたかもしれません。

式での子どもたちの様子ですが、さすがに2、3年生は上級生らしくとてもよい姿勢で集中していました。特に2年生のよさが印象的でした。
面白かったのは新入生の様子です。校長式辞のときに、顔が上がっていない子ども、頭が動く子どもがかなり目立ちました。ところが、生徒会長の歓迎の言葉では、先ほど集中していない子どもも顔を上げます。全体の集中度が上がっているのが伝わってきます。これはどういうことなのか興味がわくところです。新入生は教師との関係があまりよくなかったのかもしれません。先輩への興味関心が強かったからかもしれません。
この学年団はベテランの主任と異動者が中心です。新しい個性が加わって、今までにない学年になるかもしれません。子どもたちが1年後、2年後とどのように変わっていくのかとても楽しみです。

今年度、この中学校の地域コーディネーターの方が1名増えて2名となりました。来賓控室では積極的に地域の方に挨拶と協力のお願いをされていました。11月に開催される「地域ふれ合い学びフェスティバル」では、たくさんの地域の方の協力が必要です。その陰には、こういった地域コーディネーターの方の、地道な協力要請や根回しがあるのです。昨年度は、子どもたちを前面に押し出し、大人たちは陰で子どもたちを支えることに徹していました。大人たちのそういった動きも、地域コーディネーターの方の働きによることが多いと感じています。地域に支えられている学校ですが、こういう方の存在があってのことだと改めて思いました。

入学式は毎年どんな子どもたちに出会えるか楽しみです。同じ地域の子どもたちですが、何かしらの違いがあるものです。その原因がどこにあるのかはわかりませんが、これまでに出会った先生方の影響が多いように思います。「子どもたちが成長した」の一言で片づけられないほど中学校の3年間で大きく変化することからも、先生の影響は大きいのだと思います。教師という仕事のやりがいと責任の重さを感じさせられます。
新しい1年が始まります。また1年、学校評議員として子どもたちの成長を見守る機会をいただけたことに感謝します。

私学で打合せ

昨日は今年度から研修を引き受けた私立の中学・高等学校で打ち合わせをおこないました。どのような進め方をするか、まず校長とイメージ合わせでした。

学力層は平均的な学校ということで、教師の対応によってももっとも大きく変わる子どもたちです。授業の質を上げることが子どもたちの成長に直結するという校長の認識に同感です。子どもたちが受け身でなく参加する授業、自己有用感を持たせるような活動を意識すれば大きく変わるはずです。授業改善を学校改革の大きな柱と位置付けることに大賛成です。
中学校、それ以上に高等学校は教科意識が強いので、授業に関して他教科と壁を作りやすい傾向にあります。確かに教科の内容に直結する教材研究も大切なのですが、それ以前の基本的な授業技術、子どもとのコミュニケーションスキルをきちんと身につけることが大前提です。まずこのことを先生方に伝えていくことが必要でしょう。

とはいえ、外部である私が主導で研修を進めることは避けたいと思います。公立の学校の先生は指導主事の学校訪問など、外部から授業を評価されることにある程度慣れていますが、私学の先生方はそのような経験がありません。そのため、外部の目で評価されることに臆病になる傾向があります。自分の授業に自信を持てていないと言ってもいいかもしれません。そういう状況で私から、一方的に「こういうことが必要だからこの方向で行きましょう」とアドバイスしても先生方が委縮するだけだと思います。目指す子どもの姿を先生方と共有するところから始め、こうしたい、こんなことを学びたいという気持ちになってもらうことが必要だと思います。この点について、校長も同じ考えでした。
研修を中心となって進める教科指導部の先生方とまず学校の課題を共有して、彼らを中心にして研修を企画して進めていきたいと思います。そのために、まず子どもたちの授業の様子を教科指導部の先生方と一緒に観察して、どういう状況であるかを共有することから始めます。この状態からどのような状態に変えたいのか、まず先生方に思い描いてもらうのです。先生方から目指す子どもの姿が出てくれば、それに向かって何が必要かを一緒に考えていくことになります。ここまでの状態に何とか4月中にもっていきたいと思います。授業が開始されたらすぐにおじゃますることにしました。

主任と一緒に研修の企画をつくることはよくあるのですが、先生方のチームと作っていくというのは、初めての試みです。どんなことが起きるのか、そこからどんなことが学べるのか、今からとても楽しみです。ワクワクする1年間になりそうです。
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