中堅のチャレンジをベテランが受け止める

昨日は中学校の授業研究に参加しました。

前回訪問時に2年生の様子が少し気になっていたのですが、朝礼や授業の様子を見る限り落ち着いてきたように感じました。大型連休明けから、学年として子どもたちへの指導を意識しておこなってきたようです。学級差を、学年の先生方が互いにカバーし合っているように感じました。チームとして機能しているようです。
また、廊下ですれ違う子どもたちから挨拶されることが増えました。特に印象に残ったことが、挨拶する子どもたちの表情がとても明るくにこやかなことでした。単に先生の指導が行き届いているということではなく、先生と子どもの人間関係がよい証拠です。学校がよい方向に向かっているのを実感できました。

授業研究は特別支援の国語と理科の実験の2つでした。
特別支援の授業は、子どもたちに自信を持たせたいという授業者の思いを強く感じるものでした。子どもたちにできる実感を与える課題と挑戦する課題を意識的に組み合わせていました。通常学級の授業と共通の要素を組み込むことで、特別支援にかかわっていない先生方にも参考になるように意図されていました。
印象に残ったのは、今は「見る」ときなのか、「聞く」ときなのかといった指示を書いたプレートを黒板に張ることで明確にしていたことでした。多くの授業で、板書を写すときなのか、板書を見るときなのか、教師の話を聞くときなのか不明確なまま進んでいる場面を目にします。特別支援だからでなく、子どもに求める姿を明確にすることはとても大切であるとあらため思いました。

理科の授業は、子どもたちがグループごとに実験計画を立て、実験をし、実験終了後別の場所で考察をするという一連の流れの、実験と考察の場面でした。授業者は検討会の冒頭で、「以前の学校では教師主導の説明型授業だったが、この学校ではグループを使って子どもが主体となって考える授業に挑戦している。グループの活用についてもわからないことがたくさんあるので、授業の様子から多くの意見をもらって勉強したい」と参加者に授業への思いを伝えていました。
グループで一つの実験をすると、一部の子がしきって他の子は傍観者になったしまうことがよくあります。実際にいくつかのグループではそうなっていました。授業者は発想を変えて、そういうグループに対しては考察後、傍観者だった子どもだけで再度確認のために実験をする時間を確保する計画を立てていました。とてもおもしろいチャレンジだと思いました。
ベテランの先生が、「失敗してもいい。子どもが自分たちで考えて活動している姿に本当の学びがあるのだと思った。自分もこういった授業に挑戦したい」と全体の場で語られました。子ども引き付ける授業をする先生です。困ったりはしていないはずです。その先生がこのような発言をされたことをとてもうれしく思いました。

授業で見せた子どもの姿がベテランを動かしました。中堅のチャレンジに込めた思いをしっかり受け止めるベテラン。学校の中でこのような化学反応が起こり始めたことは、この学校の研究が大きく進む兆しだと思います。次回の授業研究では、それに先だって模擬授業を有志の参加でおこなうようです。授業について教師がかかわり合う場面が増えてきています。学校がよい方向へ変化していく場面に立ち会える喜びを感じさせていただきました。

学級経営について講演

昨日は中学校で学級経営についての講演をさせていただきました。この中学校の先生方全員にお話しするのは数年ぶりです。以前と比べて若い先生がずいぶん増えています。学校が若返っていることをあらためて実感しました。

今回は学級経営の基本ということで、子どもとの関係づくりを中心にお話をしました。基本的な話にもかかわらず、若い先生だけでなく、ベテランの先生方にも熱心に聞いていただけました。この機会に自分の学級経営を整理しようとする姿勢を感じました。学校の中に外部からも学ぼうという雰囲気が育ってきています。質疑応答では、若い先生方から具体的な質問をいくつか受けることができました。子どもへの連絡事項の伝え方、座席決めをどうするか、男女のグループ間の関係改善など、質問の内容から、前向きに、一生懸命学級経営に取り組んでいる姿が想像できます。これが正解というものはありませんので、一つの例として私の考えをお話しさせていただきました。時間があればこの学校のベテランの先生のお答えを聞きたかったところです。

終了後、校長先生お話をする時間をいただけましたが、先生同士での学び合いと外部からの指導をバランスよく組み合わせることを大切にしておられました。学校としていかにして先生を育てるかを真剣に考えて、具体的なプランを作っています。若い先生が多いということは、その育成にエネルギーが必要となりますが、しっかり育てば大きな戦力増強になるということです。また、ベテランも刺激を受けるはずです。今回の若い先生の質問に答えてあげようという先生もたくさんいると思います。これをきっかけに、職員室で学級経営や授業のことが今まで以上に話題となってくれるのではと期待しています。この学校のように、若い先生の増加を学校活性化のチャンスととらえ、今一度、学校全体で基本から学びなおそうとすることはとても大切だと思いました。次に訪問するときがとても楽しみです。

学校の情報化と導入について対談

昨日は教育系の新聞の取材で、自治体単位での学校情報化と導入に関して対談をおこないました。10年以上前から先進的に取り組んでいる市の推進役の先生といろいろとお話しをさせていただきました。この市の情報化のコンセプトづくりにかかわった当時のことを懐かしく思い出しました。

導入後の現場での活用の最終的な姿を明確にした上で、導入する側の都合ではなく、まずは、現場の先生方がこれはいい、便利だ、楽になったと思ってくれることから一つずつ市全体に広げていくというのが、導入時の方針でした。モデル校を作る発想ではなく、時間はかかっても全員が間違いなく取り組めることから底上げを図っていきました。今では、先生方にとって教育ネットワークはなくてはならないものになっています。また、地道に実践を積み重ねた結果、先生方の情報モラルも全体として非常に高いものになっています。

このことに関連して、セキュリティポリシーについて触れることがありました。最近挿入される市町村では、学校ネットワークのセキュリティポリシーはどんどん厳しくなる傾向にあるようです。私の目からは、行政側がこのルールを守っていない現場が悪いと言うための「いいわけ」づくりに見えます。実際に使う側からすれば、どうしようもなく使いにくいルールを押し付け、わかっていても破らざるを得ない状況に追い込んでいるように感じます。少々セキュリティポリシーを厳しくしても、守られなければかえって大きなトラブルになります。トラブルが起こっている自治体は、先生方の状況を無視した、建前を押し付けるセキュリティポリシーを採用しているところが多いように思います。
この市では、必要最低限のルールさえ守っていれば、大丈夫。何かあっても先生個人が責められる事はないという、先生方を「守る」ためのセキュリティポリシーになっています。時間をかけて先生方の情報モラルを高め、先生方が使いやすい環境を構築し、普通に活用するのであれば、特に意識をしなくても自然にセキュリティが確保されるようなシステムになっています。

学校の情報化が先生方の仕事の質を高め、それが子どもたちに還元されるようなものであってほしい。その思いがこの市では確かな形になっていると思います。

フォーラム打合せ

来年に開催予定の愛される学校づくり研究会フォーラムに関する打合せを昨晩おこないました。名人と呼ばれる先生方の授業を、ICTを活用して追試しようという企画です。中心となる先生方で今後の進め方を相談しました。

実際の授業は若手の先生にお願いします。授業技術は名人におよぶべくもありません。だからこそ、ICTを活用することで授業技術や経験の少なさをカバーできることを示せるのではないかと思っています。私は、名人に「それはズルだろう」と言わせることを目標に授業づくりのお手伝いをしたいと考えています。

これからどんどん若い先生が増えてきます。経験の少なさを補い、ベテランの授業技術に近づくための有効な道具の一つとしてICTがあると思います。フォーラムではICTの活用も含め、誰にでもできる授業づくりの新しい視点を提案できればと思っています。

教員研修に関する講演

教員研修のあり方について講演をおこないました。
小中高の先生方が100名あまり参加してくださいました。小中高の先生が一緒に参加する会というのは珍しく、焦点をどこに当てるか悩みながらの講演でした。

教員研修で大切なのは、学校全体として何を目指すのかできるだけ具体的にした上で、そのためにどうすればよいのか具体的な方策をもつこと。
教員を伸ばすということは、一人ひとりのよさを引き出すこと。
教員に要求することは、すぐ具体的にできること、その効果を実感できること。
教員の変容を肯定的に評価すること。
そして、学校の評価は最終的には子どもの姿で語られるべきこと。

このようなことを思いつくまま話させていただきました。私の思いがどれほど参加者に伝わったかわかりませんが、何人かの方が感想や報告を発信してくださいました。ありがたいことです。また、思いがけず古い友人にも会うことができました。私も大変勉強になるとともに楽しい時間を過ごすことができました。このような機会をくださった方々に感謝です。

授業観察

昨日は中学校で授業観察をおこなってきました。転任、新任の先生方と一緒に校内をまわり授業の様子を観察しました。この学校での取り組みの目指す方向を知っていただくためには、口頭で目指す子どもたちの姿伝えるよりは、実際に見ていただいた方がよくわかると思ったからです。
当り前のことですが、すべての学級で目指す姿が見られるわけではありませんが、比べてみることで明確になる部分もたくさんあります。教室には入らず、廊下から子どもたちの姿だけを見て、今どういうが面で子どもたちは、どんな状態なのか考えてもらいました。教師を見ないことで、子どもを見ることに専念できます。
全員が同じ状態であれば、まず間違いなくそれはその教師が見たい子どもの姿です。それに対して、ばらばらの状態であるときはまず間違いなく、その場面で見たい子どもの姿を明確にして授業をしていないときです。
このこと意識して見てもらうことで、自然に先生方が目指している子どもの姿が伝わったと思います。
授業場面ごとに見たい子どもたちの姿を明確にして授業をしていただくようにお願いしました。

授業を見ていておもしろい場面が二つありました。
一つは先生が机間指導をしている場面です。一人ひとりのノートをしっかり見ながら、声をかけています。ところが、しばらくすると一部の子どもたちの集中力が落ちてきました。そのことに気づいたのでしょう。移動の間に顔を挙げて教室全体を見回してから次の子どもの指導に移り始めました。すると集中力を失っていた子どもたちがふたたび課題に取り組み出しました。教師がつねに学級全体を見ていることの大切さを参観者に伝えることができました。

もう一つは、社会科の時間で、先生が説明している場面です。授業者は比較的小さな声で話しているのですが、生徒全員が顔を食い入るように見ています。すごい集中力でした。ところがしばらくすると一人の生徒が集中力をなくしてきました。学級全体としてはまだ集中していますが、このままだと全体の集中力が落ちていくかもしれません。また、集中力をなくしている生徒のことも気になります。そう思って見ていると、授業者は子どもたちに資料集を見て、話に関連したことを探すように指示しました。もちろん子どもたちはすぐに資料集を見始めます。先ほどの子どももまわりが動きだすと、少し遅れて資料集を手にとりました。そのあと、授業者は彼のそばに行き、見つけたことを発表させました。集中力をなくしていた生徒を注意するのではなく、授業の流れの中で自然に参加させました。素晴らしい授業力に感心しました。

一緒に授業を見た先生方は子どもたちの姿からどんなことを学んでくれたでしょうか。ある先生は、この日気づいたことを早速自分の授業に取り入れようとしていました。次回訪問時に一緒に回った先生方がどのように変化しているかとても楽しみです。

学校が大きく動き出す

昨日は、中学校で授業アドバイスをしてきました。連休の谷間に訪問した学校です。連休明けの子どもたちの変化が気になっての訪問です。

3年生は、相変わらずよく集中できていましたが、ちょっと気になることにも気づきました。例えば、指名された生徒が解答を板書しているときに、解き終わった生徒がまわりと雑談して騒がしくなる。教師が板書で黒板を向いているとき、ごそごそする。このようにすることがない時間に緩みが見え始めています。教師が話し始めるとすぐに集中するので、今のところそれほど心配することではありませんが、早めに手を打っておいた方がよさそうです。問題が解けたら次に何をするのかといった、指示を明確にするようにお願いしてきました。
また、全員がよく集中しているということは、昨年あまりやる気を見せなかった生徒が頑張っているということです。教師から見るとみんな頑張っているという評価になりやすいのですが、そういった生徒をきちんと評価することもお願いしました。みんなが頑張っているため、急にやる気を出しても試験の相対的な結果に反映されないこともよくあります。結果が出なくてやる気をすぐになくすかもしれません。そのことも念頭に置いてのお願いです。

2年生は、一番心配していたのですが、前回訪問時よりも学習においては落ち着く傾向を見せていました。担任の学級経営が実を結びだしているようでした。しかし、どの学級も苦労していると感じた前回と比べて、うまくいってきている学級とそうでないところの差が見え始めたようでもあります。簡単なことでいいので、学年全体で指導することを明確にして取り組むようにお願いしました。

1年生は、連休明けで緊張も解け、さすがに緩む場面が増えてきました。受け身の時間が続くとごそごそしたりして集中力をなくします。一方的に教師の説明が続く授業、教師が子どもを見ていない授業では、その傾向が顕著です。今は子どたちが集中している時間が長いので気づいてない方もいるようです。このことを意識するようにお願いしました。

授業を見ていて、とてもよい場面が2つありました。
一つは国語の時間です。子どもが作業をしているときに、なかなか手をつけない生徒が後ろに一人いました。ぼつぼつ何か働きかけないといけないと思ったとき、授業者が教室をぐるりと回りながら、自然にその子に近づきました。絶妙のタイミングです。ところが指導をし始めてしばらくすると、作業が終わった生徒がざわざわし始めました。教師が見えなくなったためでしょうか。このまま指導をしていると学級全体が集中力をなくすと思ったとき、「できた人は、まわりの人と確認して」と指示を出しました。個別指導をしていても、きちんと学級全体を把握していたのです。まだ若い先生ですが、とても感心しました。

もう一つは、理科の時間です。顕微鏡の使い方を板書して、説明をしている場面です。子どもたちは驚くほど集中して聞いています。だれも、鉛筆を持って写したりしません。授業者もしっかりと子ども一人ひとりを見ています。話し終わると、「写していいよ」と指示を出しました。その指示を待って、子どもたちは一斉にノートに写し始めました。1月の間に、きちんと授業のルールが浸透しています。もう一つ感心したのが、「写していいよ」だけでなく、「自分が大切だと思ったところ、ポイントだと思ったところに線を引いてね」という指示を同時に出したことです。ただ箇条書きにしているだけで、ポイントがはっきりしない板書だと思っていたのですが、このための伏線だったわけです。
この先生も若手です。

若手の先生が育っていることがとてもうれしく思いました。
それだけではありません、お話しをした転任者の複数の方が、この学校は教師の人間関係がいいので楽しいと言ってくれました。昨年度は、どちらかといえばそのことで苦労したので、本当にうれしく思いました。今年度に向けてやって取り組んできたことが実を結びだしたのでしょう。学校力アップに向けて大きく動き出したことを感じた1日でした。

研修の打ち合わせ

中学校で今年度の研修の打ち合わせを行いました。

子どもたちのかかわり合いを大切にし、相談したりグループで活動したりすることを積極的に取り入れている学校です。昨年度研究発表をおこないましたが、その後も続けて授業改善に取り組んでいます。

話題になったことの一つが新たにこの学校に赴任してきた方への対応です。すべての学校や先生が実際にペアやグループでの活動を積極的に取り入れているわけではありません。また話に聞くだけではどのようにしていけばよいかわかりません。ベテランほど自分のやり方が確立しているので、今までの自分の方向性と異なるとどうしていいかわからなくなってしまいます。公立の学校では人事の移動に伴い多かれ少なかれ起こる問題です。結論としては、早い時期に彼らに他の先生方の授業を見ていただき、この学校での取り組みがどのようなものか理解してもらうことになりました。具体的には、私と一緒に校内をまわりながら、授業中の子どもたちの様子を観察し、意見を交換するというものです。子どもたちの活動と教師の働きかけ、その意味を考えてもらうことでこの学校の取り組みを理解してもらおうというわけです。

また、若い先生のことも話題になりました。この学校の若手はずいぶん伸びてきました。しかし、研究発表も終わり、自分たちはこれでいいと思ってしまうと成長は止まります。彼らに、よりよい授業を目指し続けてもらうには、今できていること、まだできていないことを自覚してもらうことが大切です。次回訪問時、今の彼らの課題をしっかり見つけたいと思っています。

早い時期に研修担当者と学校の現状と課題について話し合う機会を持てたことは大変有意義でした。この1年もこの学校の先生方と一緒にたくさんのことを学べそうな予感がしています。

よいスタートを切った学校

連休の谷間に、中学校の授業研究に参加しました。

新学年のスタートはどうのようであるか気になっていましたが、特に新3年生が集中して授業に参加していました。2年生のときと比べて、ずいぶんよい状態です。4月は子どもたちも気持ちを切り替えるときです。そこを先生方がうまくつかんでよいスタートを切ったのだと思います。学年内の横のつながりがよいのでしょう。学級による差が少なかったのも印象に残りました。
1年生もうまく人間関係をつくることができたようです。学級の一体感が育ちつつあるようでした。友だちの発言をしっかり聞こうという雰囲気を感じました。
新2年生は、まだ子どもたちがまとまっていないようでした。1年生のとき、学級によって雰囲気がかなり異なっていました。子どもたちが昨年度の学級の状況を引きずっているため、学級としてまとまりなく感じるのかもしれません。ここからが各担任の頑張りどころです。担任個人の問題ではなく学年の問題として協力しあってくれることを期待しています。

授業研究は、生徒に焦点をあてて検討会を開きました。ともすれば、教師の指導面に目が向きやすくなるのですが、司会者の上手な進行で、子どもたちの活動を中心にしっかりと意見交換ができました。新しく赴任された先生も、グループでの協議にすぐに溶け込み、とてもよい雰囲気で進みました。昨年から始めたグループ討議も1年間でしっかり定着したようです。

3月の時点で心配な面もいくつかあったのですが、全体としてとてもよいスタートを切れているようでした。先生も子どもも4月は気持ちを切り替えるときです。うまく波をつかめたようです。また前年度にやってきたこと、学んだことを一からトライできるときでもあります。うまくスタートを切れたのは、昨年度に先生方が地道に努力し学び続けたことがその根底にあると思います。

学校がよい方向に向かう手ごたえをしっかり感じた1日でした。次回の訪問がとても楽しみです。
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31