介護研修で賠償責任と過失について考える

先月に介護関係者向けに研修を行いました。今回から介護の仕事における法的なリスクのお話しです。

利用者が転倒したといった事故に対して、素早く正しい対応をすることはとても大切なことです。必要な技術や対応について十分身につけておく必要があります。特に訪問介護のヘルパーさんたちは、原則一人での訪問です。自分で的確に判断しなければなりません。プレッシャーのかかる仕事です。この日参加された方は意識の高い方ばかりで、事故の対応についての質問に対して的確なお答をいただけました。
しかし、事故に対して正しく対応できたからといって、法的な責任がないわけではありません。賠償責任を問われるケースもあります。具体的な例をもとに、どのような場合に賠償責任が発生するのか、説明させていただきました。
今回は主に不法行為に関連して、過失について詳しくお話ししました。過失に対しては、特に規定されていなければ刑事は問われませんが、民事上の賠償責任は問われる可能性があります。過失とは、「ある事実を認識・予見することができた(予見可能性)にもかかわらず、注意を怠って認識・予見しなかった心理状態、あるいは結果の回避が可能(結果回避可能性)だったにもかかわらず、回避するための行為を怠ったこと」をいいます。ここで、注意しなければならないのは、介護の専門職ではあれば予見可能性を厳しく問われることです。例え利用者が「大丈夫、介助はいらない」と言ったとしても、危険性を予見して説得して介助するか、しっかりと見守ることが必要になります。予見するために、利用者の既往症やその日の健康状態などの情報をきちんと把握しておくことも必要です。こういったことが厳しく問われるのです。
参加された皆さんは、漠然とは知っているのですが改めて問われるとあやふやな点もあったようです。この機会にしっかり学ぼうとする意欲を強く感じました。

賠償責任や過失についていえば、学校でも無縁のことではありません。事故を予見できたかどうか、結果を回避することができなかったのかが厳しく問われる事例を目にします。教師にとって、基本的な法知識も重要なものであることを改めて意識させられました。
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