愛される学校づくりフォーラム 2015 in大阪(午後の部)(その2)

愛される学校づくりフォーラム 2015 in大阪(午後の部)(その1)」の続きです。

続いては、新城市立作手小学校の小西祥二校長の算数の模擬授業を、小牧市立岩崎中学校の石川学校長のコーディネートでICTを活用した授業検討ツールを使って検討を行いました。
授業は小学校6年生の最後のまとめでした。
授業の導入は道の両側に柵のある写真を見せて始まりました。これが何の写真かを問いかけます。実はこれは鹿よけの柵だったのです。人よりも鹿や猪の数が多いということを、不等号を使って表わします。ここで、不等号をいつ学習したかを問います。子ども役に、それとなく今日は小学校で6年間学習してきたことを復習するんだなと気づかせる導入でした。
正三角形の3辺の中点を結んだ、正三角形の中に4つの正三角形がある図形を4隅に向きを変えて置いてある図を見せます。ここから「見つけてください」という発問をします。子ども役はわけがわからないのですが、取り敢えず取りかかろうとします。子どもなら、わけがわからなくて、質問するところです。授業者も、質問が出ないので内心困ったのではないでしょうか。子ども役の一人が何を見つけるのかを問いかけます。この問いかけでねらいを明確にする機会をつくり、授業者を助けようという思いがあったのかもしれません。しかし、授業者はそこをあいまいにしたまま進めていきます。おそらく子ども相手の授業ではこのような進め方はしないと思います。子ども役や参加者にストレスをかけ、展開を読ませないためにあえてわかりにくくしたのでしょう。
プリントをもとに、見つけたことを書かせ、隣と確かめ合わせます。しかし、ねらいがわからないので、互いに評価はできません。会場全体にストレスがたまっていきます。続いて全体での発表です。「正三角形が3つ」という言葉から、「ひし形」「台形」「小さな三角形」とつないでいきます。形を見つけるのかと思うと、数にもこだわります。長さに視点が行くこともあります。角度も出てきます。こちらの方向かなと思うと別のところに向かい、はぐらかされます。子ども役の姿勢が悪くなっていきます。方向性が見えずに集中力が切れかかっているのです。授業者は、出てきた言葉を板書します。カテゴリーに分かれているようなのですが、わざとわかりにくく書いているようにも思えます。大きな三角形と三角形の間の何もないところに図形が見えるという発言がありました。「線を引くと新しいものが見える」という言葉が授業者からでてきます。子どもからいろいろな意見が出てきましたが、発散し続けます。最後に授業者がいろいろな見方をすることで「見えないものを見ることができる」とまとめて終わりました。この言葉で、なんとなくゴールはこれだったのかと、会場全体の緊張が弛んだように感じました。

授業検討会は授業検討ツールを活用して行われます。授業中に検討者が押した端末の「いいね」「疑問」の2つのボタンがどの時点で押されたかがグラフとなって示されます。今までこのツールを使って検討会を行ったどの授業とも違って、ボタンを押されたピークが細かく現れます。コーディネーターの石川先生は、かなり戸惑ったようです。石川先生としては、通常みられる、前半はボタンがたくさん押されるが後半はあまり押されないという現象を意識して、その点に触れながらの検討を考えていたようです。一方授業者の小西先生は、授業の流れが見えてしまうとボタンが押されなくなることを嫌って、ボタンがたくさん押され続けるように、先の見えにくいストレスのかかる展開を考えられました。授業検討ツールの活用を互いに意識し合った結果、ずれが生じてしまいました。小西先生の予定通りにボタンは押され続けましたが、授業としては疑問の残るものになってしまいました。
石川先生は、たくさんのピークの中でも一番大きなピークに目をつけました。授業の最後の場面、授業者がこの日のまとめを行ったところです。ビデオを再生して、授業検討者の意見を聞きます。どなたも授業のねらいがわからなくて困惑したことが語られます。この後、ビデオを見ずに、授業全体についての意見やどういう時にボタンを押したのかを問いかけますが、よく覚えていなかったりで、中々議論が明確になりませんでした。コーディネーターとしては、あまりにピークが多すぎて、どこと絞ることができなかったかもしれません。グラフの意味することを考えたり、授業検討ツールやその使い方の解説になったりが続きました。
ボタンが押されたのは、子どもと授業者のやりとりがあったところのように思います。そこで必ずボタンが押されるのは、そのやり取りから授業者のねらいが見えたように思ったからではないでしょうか。授業者が視点を変化させたところでは、「いいね」「疑問」が混在しています。授業検討ツールでは、ビデオを再生すると、自分がボタンを押した場面でそのボタンが光りますので、その時の気持ちを思い出すことができます。この場面を再生して検討をすれば、授業者の意図や課題が明確になり、そこから授業の改善の方向が見えてきたと思います。

フォーラム後、授業者はこの授業を振り返って新しい指導案をつくりました。今度は正三角柱の側面を下にして4つ積み上げ、大きな正三角柱をつくります。底面はフォーラムで使った正三角形の中に正三角形が4つある形になります。最初の課題は、小学校で学習したことをたくさん使って説明をしよう(※1時間で「10個以上」使おう)です。「正三角形」「長方形」「側面」「底面」「高さ」「台形」「ひし形」といった学習用語をたくさん引き出し、例えば、「三角形の底辺がひし形の対角線になっている」といった説明をさせようというのです。この課題を行った後に、フォーラムで使った図形を使い、この図からどのような説明ができるかを問いかけるという展開です。1ステップ入れることで何をすればよいのか明確になり、活動のねらいがはっきりしてきます。授業検討することによって、授業が進化することがよくわかるものでした。

まとめのディスカッションは、「愛される学校づくりフォーラム 2015 in大阪(午後の部)(その3)」で。
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31