活動に対する評価の大切さを感じた授業

中学校で3つの授業研究へのアドバイスと全体に対して学校の課題についておお話をさせていただきました。

3年生の美術は、ピカソの絵の鑑賞でした。
ピカソについてのビデオを子どもたちに見せます。どの子どもも集中して見ています。3年生のこの時期は受験の合間で、精神的に苦しい子どもが目立つのですが、そのような様子は見えません。子どもたちの表情が明るいことが印象的です。子ども同士が支え合っているように見えました。
青の時代とバラ色の時代の絵の変化の理由を子どもたちに問います。答えづらい発問です。ピカソに限定せず、一般論として「表現が変化するのはどんな時?」と気持ちや、生活、社会情勢などに視点を向け、じゃあ「ピカソにはどんなことがあったのだろうね?想像してみようか?」と問いかけ、「こういうことを考えるのも面白いね」といったつなぎをして、鑑賞の面白さに迫ってもよかったと思います。
子どもたちは頑張って意見を言ってくれます。聞いている子どもたちも聞こうとしていますし、反応もします。しかし、授業者はつなぐことをしませんでした。
鑑賞の中心は「ゲルニカ」です。資料集からその大きさを調べさせますが、巨大さは実感できません。授業者はこのくらいだねと、教室の壁のこのあたりからこのあたりと説明するのですが、今一つピンときません。ちょっと手間かもしれませんが、ビニールテープのようなものを使って美術教室の壁に枠をつくって見せると巨大さがわかったと思います。巨大さと制作期間の短さも大切な視点です。
「ゲルニカ」を描くきっかけになったゲルニカへの空爆の話をビデオで確認してから、「ゲルニカ」に何が描いてあるかを問います。子どもたちには、この発問が鑑賞にどうつながるかがわかりません。3年生ですので、今までの鑑賞の経験とつなげたいところです。絵のどんなところに着目したかを復習するのです。「好きなもの、伝えたいものが大きい」「注目させたいところが明るい、コントラストをはっきりさせる」「その時(代)に何があった」「誰に見せる」といった過去の鑑賞での視点を確認してから、「ピカソはこの絵で何を伝えたいのだろう?」「何に着目してそう思ったか聞かせて?」といった課題にするとわかりやすかったと思います。色に着目した子どもがいれば、「色に着目した人、他にもいる?」「あなたは、色の何に着目した?」「○○さんはここに着目したそうだけれど、そこに着目しなかった人、そこから今どんなことを思った?」というようにつなげていくのです。また、子どもたちは社会科でスペインの内戦やフランコ政権のことは学習していません。ゲルニカを理解するには、この知識も必要だったように思います。
子どもが気づいたものを発表します。黒板に「ゲルニカ」の絵を貼っていますが、子どもたちは手元の資料集で確認します。顔を上げさせたければ資料集をいったん閉じさせて黒板の絵を使って進める必要があります。資料集を使うのであれば、共有できているかどうかまわりと確認するとよいでしょう。
ピカソが何を言いたかったのかを問います。子どもたちは色々と意見を言いますが、それがつながりません。どこでそう思ったかの根拠を共有しないからです。
授業者は、人間がたくさん描かれているが、その口がみんな開いていることに注目させます。何を表わしているのか子どもの考えを聞いたところ「叫んでいる」という答が出ました。授業者は「それもいい」と返しました。否定する気持ちはなかったのでしょうが、子どもからすれば明らかに他に教師が求める答があると感じられる言葉です。「なるほど、いいね。ドンドン聞いていこう」と指名していけばよかったのです。
子どもたちは授業者の指示に従って、いろいろと活動しましたが、その活動を評価される場面がほとんどありませんでした。子どもたちは一生懸命参加していたので、子ども同士をつなぎながらお互いの考えを共有し評価し合いたいところでした。

2年生の体育は、女子の剣道でした。外部講師とのTTでした。
防具をつけるのを競争させます。早くできた子どもから1番、2番と声をかけますが、10番くらいまで終わったあとは、遅い子どもへの対応に追われてうやむやになりました。早くできた子どもはただ待っているだけです。こういう場合は、何秒でできたかを記録していくとよいでしょう。最小は何秒だったが、次は何秒になったという進歩を評価できます。全体のスピードアップを意識して、早くできた子どもが手伝ってもよいでしょう。進歩を評価できるような取り組みにすることが大切です。
これまでやってきた、踏み込み面、踏み込み胴の復習から始めます。それぞれのポイントを授業者がしゃべって説明します。復習なので子どもたちで確認させたいところです。ペアでの練習は、これまではできいたのかもしれませんが、足の構え、さばき、踏み込みなどがきちんとできていない子どもが目立ちました。ポイントができているか評価して伝え合わなければ、修正されません。悪い形で練習を続けるので、間違った形が定着していきます。打ち込む相手が人間である意味がありません。これならば、先生か人形を相手にして、順番に並んで打ち込んでいった方がよいでしょう。見ている時に、どこがいいか、どこを直せばいいのかを指摘し合えます。
ぬき胴の見本を見せるために、集合させます。子どもたちがまわりに集まりますが、場所によってはよく見えません。どこから見せるのかを意識する必要があります。子どもたちが見る準備ができていないのに見本が始まりました。ぬき胴の足さばきを何度か説明しますが、なんとなく見ていても足の動きはわかりません。足の向きや動きが見やすい場所に移動させるか、互いの位置を少しずつ変えて、どの子どもも一度ははっきりと確認できるようにしなければいけません。「わかった?」と問いかけますが、返事がありません。漫然と数回見ただけではわからないのです。見ている子どもに前でやらせて、そこで修正して見せるとわかりやすかったと思います。
ペアで練習を始めましたが、やはり子どもたちの足の運びがばらばらです。授業者も外部講師も個別に指導していますが、とても回り切れません。体育では、子どもたち自身で修正できるような仕組みを作る必要があるのです。
最後に地稽古(対等に攻め合う)に挑戦しますが、恐いのか竹刀を立てた手打ちになっています。打った後に後ろに下がって、打ち抜くことができていません。これまでの練習が活かされていませんでした。地稽古に入る前に、係り稽古や打ち込み稽古(共に攻守の役割がはっきり決まっている)で、連続的に攻める練習をする必要があったと思いました。少なくとも、早い段階で一度止めて、実際にいくつかのペアに前でやらせて、どこがいいか、どこが課題かを共有する必要がありました。
最後にもう一度踏み込み面、踏み込み胴の練習をしましたが、地稽古で悪い癖がついてしまって、かえって悪くなっていました。
この授業も活動の中に評価をどう組み込むかが課題の授業でした。

この続きは次回の日記で。
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