先生方の成長に立ち会えた3年間

昨日の日記の続きです。

4年生の音楽の授業は強弱を活かして歌う場面でした。
音楽記号にどんなものがあるかを子どもたちに問います。子どもの発言を受けてすぐに板書します。授業者はおそらく気づいていると思うのですが、挙手しない子どもがちょっと目立ちます。ここは復習場面なので、挙手に頼らず、同じ答がかぶってもいいのでテンポよく何人も指名したいところです。板書に残したければ、そのあとで「まとめてみようか?」とでてきたものを全員に言わせながら書けばいいでしょう。
「ドレミの歌」の楽譜から強弱に関する記号を探させます。「隣同士で相談して」と指示しますが、あまり相談する意味のない問題です。見つかった記号に○をつけて、いくつ見つかったか隣同士で聞き合って確認するといった活動がよいでしょう。
実物投影機を使って、指名した子どもに指で記号を指示させます。発表のさせ方、実物投影機の使い方として悪くはないのですが、ここは確認だけの場面です。あまり時間をかけたくないので、「何小節目の○○」と口頭で発表させて、教師が実物投影機で確認してもよかったと思います。
強弱を意識して歌う練習をさせるのですが、変化がよくわかりません。「メゾフォルテで歌って」と言っても比較の対象がないからよくわからないのです。全体を2つに分けて、「はい、フォルテで」「はい、メゾフォルテ」「はい、ピアノ」「はいメゾピアノ」とちょっとゲーム的に指示に合わせて強弱を変えて歌うといった活動をするとよいでしょう。半分が歌っているのを残りの半分が聞いていて、ちゃんとそう聞こえたか確認するのです。
ほとんどの子どもたちは一生懸命に歌うのですが、中には口がしっかり開いていない子どももいます。授業者はピアノを立って弾いて、子どもたちを見ていましたが、何も言いませんでした。気づいていたと思いますが、どう注意してよいかわからなかったのでしょう。注意ではなく「口をしっかり開けよう。全員だよ」といった声かけで口を開けることをうながすとよかったと思います。なかなか指示が聞けないようであれば、半分ずつ向き合ってお互いの口を確認しながら歌わせるといったやり方もあります。人間関係が悪くない学級なので、子ども同士で意識し合うようにするだけで状況は改善すると思います。

1年生の算数は、(何十)−(何十)の計算をする場面でした。
昨年異動して来た先生です。子どもたちを認めて学級規律をつくるこの学校のやり方を高いレベルで実行しています。驚いたのが子どもたちのノートです。1年生と思えないほどきちんとかけています。どの子も同じようにマスの中にしっかりとした字で書いているのです。その秘密は、実物投影機でした。子どもたちと同じノートを使って先生が書いて見せます。それを実物投影機で見せるのです。これならば、どの子どもにもどう書けばよいのか確実に伝わります。とても有効な使い方でした。
70−20で、答が50になることを「どうして?」問いかけます。1年生には答えにくい発問です。「7は何が7つあるの?」「2は何が2つあるの?」といった発問を重ねて、最後に「じゃあ、今までのことをまとめて言えるかな?」として、「70は10が7あって、20は10が2あって、だから7から2を引くと5になるから、10が5で、50」というような言葉を子どもから引き出すのです。その上で、「よく説明できたね」とほめて、説明するとはどういうことかを教えるとよいでしょう。

初任者の授業研究は4年生の分母が同じ分数の計算の仕方でした。
授業者が緊張しているのが伝わってきます。子どもたちもつられて緊張していますが、先生のためにも頑張ろうとしているのがわかります。
3/5は何のいくつ分かを聞いて、板書にしておきます。この後に扱う、4/5+3/5を意識した復習です。小学生であれば、露骨に4/5も確認しておいてもいいかもしれません。
4/5mと3/5mのテープを合わせると何mになるかが問題です。授業者は4/5mのテープをつくるのに「4/5mは1をいくつに分けますか?」と問いました。ちょっとわかりにくい表現です。1ステップ跳んでいるのです。まず、「4/5(m)は何(m)のいくつ分?」と聞いて復習とつなげます。「1/5(m)の3つ分」という答を引き出してから、「1/5(m)はどうやってつくる?」と確認すればいいでしょう。
テープを準備して、数直線の上に並べて問題の把握をさせます。式をノートに書かせて、指名して答えさせました。一人に答えさせてすぐに次へ進みます。せっかくノートに書かせたので、何人か続けて指名するか、隣同士で確認させるかして、子どもたちの活動を評価する場面にしたいところでした。
グループで計算の仕方を考えてホワイトボードに書くことが課題です。グループで1つの答にするのではなく、グループで相談して答を自分のノートに書かせるとよいでしょう。ホワイトボードではなく、ノートを実物投影機で映して発表するという方法もあります。
どのグループもペンを持った子どもが場を仕切っています。ホワイトボードを使うのなら、ペンを複数用意して、みんなの考えを書き足していくというやり方があります。発表は代表者でも、他の子どもが発言を補う場面をつくることも必要です。図を使って説明するといった条件にして、すべてのグループの図を黒板に貼り、似たもの違うものに分けて、説明を聞くというやり方もあります。ただ発表するのではなく、子ども同士のかかわりを意識することが大切です。
黒板の数直線にテープを貼った時点で答はわかっています。「計算の仕方を考える」と言われても、何を書けばいいのかわかりにくい課題です。子どもたちの発表は、計算の仕方が手順になっています。「4/5は1/5が4つ」「3/5は1/5が3つ」という説明は出てくるのですが、その後すぐに7/5がでてきます。授業者は、子どもの書いた言葉から自分に都合のよい言葉を拾って説明していました。この場面では、「4と3は足していいの?」といった揺さぶりがほしいところです。「分母が同じだから」「1/5が4つと3つで同じだから」と同じを押さえることで、これが異分母の足し算での通分の考え方につながっていきます。
図で答がわかっているので、逆に「図を見ないで答が出せる?」と手順を考えさせ、その上で、図を使ってその手順で計算ができることの説明をさせるといった展開もあります。この方が子どもたちも考えやすかったのではないかと思います。

検討会で授業者は、開口一番、1/5の押さえが甘かったことを反省しました。仲間との事前検討できっとここを大切にしようと話し合っていたのだと思います。自分たちでしっかり考えていたのはうれしいことです。初めての大舞台で緊張したのでしょう。
この学校の検討会はとても前向きなものになっています。学級のよいところや授業から学ぶべきところが、グループでたくさん話されます。課題についても、批判ではなく自分たちのものとしてどうしたらよいかを考えるようになってきました。
先生同士で学び合うことができる学校になってきたことをとてもうれしく思います。子どもたちとのかかわり方については、先生方の間にしっかりとコンセンサスができています。年度が替わり学級や担任が変わっても、子どもたちが安心して生活のスタートを切れるようになっています。若手を中心に互いに助け合い学び合う雰囲気ができてきました。自分たちの力で授業改善ができるようになったと思います。
この学校との3年間は私にとってもとても素晴らしい経験でした。若手、ベテランの別なく、多くの先生方の成長を間近で見られてとても幸せでした。先生方との出会合いに感謝です。
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