子どもの関係がよいからこそ、考えを深めたい

前回の日記の続きです。

4年生の授業は社会科の愛知県についての学習で、住みたいところランキングを行う場面でした。授業者は明るいキャラクターで、楽しい雰囲気で授業を進めていきます。
黒板に愛知県の白地図を貼って、前時までにどんなことを学習したか子どもたちに問いかけます。初めのうちはあまり手が挙がりませんが、「知多半島」といった単語だけでの答も受容するので、最後はほぼ全員の手が挙がりました。最後まで手の挙がらなかった子どももいましたが、授業者に確認したところ、発表するのが苦手な子どものようです。こういった子どもの活躍の場面をどう確保するかも意識したいところです。
思い出すことが目的なので、時間を使いたくないのはわかるのですが、「交通」といった発言に対して、「それってどういうこと?」「交通って何?」といった切り返しも必要でしょう。
教科書やノートで確認しようとしている子どもに対して、「カンニングなし」と制しました。しかし、思い出せない時にはノートを確認するのは悪いことではありません。過去の学習とつなげることは大切なことです。ここは、「いいね」とほめて、他の子どもにも広げたいところでした。

ワークシートを使って、これまで学習した4つの地域から住みたいところの1位と2位決めて、その理由を書きだします。ワークシートの説明が不足していたので、作業を止めて注目させてから補足しました。作業を続けている状態で指示をしないことは大切ですが、これは意外とできないものです。若い先生ですが基本ができています。
机間指導しながら、子どもたちをよくほめます。明るいキャラクターと相まって、学級の雰囲気をよくすることにつながっています。

グループで友だちの考えを聞き合う場面では、子どもたちは素早くグループをつくります。グループ活動に積極的です。友だちの発表を、賛成○、反対×、ちょっと疑問△の記号で評価するのですが、淡々と進んでいきます。ほとんどの子どもは○しかつけません。ある意味これは当然です。個人の嗜好ですから、基本納得するしかありません。これに対して疑問や反対を言うようであれば、人間関係が悪くなります。子どもたちはただ発表するだけで、聞き合う意味はあまりありませんでした。

全体での発表場面は、発表者にきちんと視線が集まります。人間関係のよさを感じます。子どもの発表する選んだ理由を、あらかじめ用意したカードの中から貼ります。こういうことが続くと、子どもたちは教師のねらいを読もうとします。用意したものと違う理由を言ってくれたことを「予想していなかった」と評価していましたが、このことを子どもたちがポジティブにとらえたかどうかは、よくわかりませんでした。「都会だから」といった簡単な言葉でもそれ以上は問いかけません。拍手をして終わります。発表することが目的となっています。「それってどういうことかもう少し聞かせて?」と詳しく聞きたいところでした。発表することで深まる場面がありませんでした。
発表を聞いている子どもたちの役割がありません。発表が続くうちに子どもたちの視線が下がっていきました。住みたいというのは個人的なことですから、「そうなんだ」としか反応できないからです。友だちの発表を聞いて、ランキングを再度付け直すのですが、あまり意味のある活動とは思えませんでした。

最後に、子どもたち一人ひとりに磁石を持たせ、ランキング1位にした地域の地図の上に置かせます。思った以上に偏りがありました。実際の人口分布と比較しながらまとめるつもりだったようですが、時間が足りないために次の時間に残しました。
実際の人口分布と比較するのであれば、自分が住みたいところではなく、世代ごとに住みたい地域とするとよいと思います。子育て世代であれば、「職場と少し離れていて、交通の便がよいところ」に住む、お年寄りであれば、「気候のよいところ」「便利な都会」といった根拠に基づいて話し合えます。最後に、実際の地域ごとの世代別人口と比べることで、自分たちの考えを検証することができます。
「自分が住みたいところ」という課題を活かすのであれば、単元の最初の課題として、自分たちで資料を調べさせてもよいでしょう。調べることに必然性がでてきます。子どもたちが調べたことの視点を整理したあとで、最後に世代別に住みたいところとしてまとめにつなげるとすっきりすると思います。

この学級も子どもたちの関係がよく、発表で失敗しても笑い飛ばせていました。くどいですが、だからこそ子どもの発言を受容するだけでなく、切り返し、つなげることで考えを深めることを目指す必要があります。そのためにも、より深い教材研究が求められるのです。

最後の授業と全体へのお話しは、明日の日記で。
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