人間関係のよい学級

昨日の日記の続きです。
5年生の国語は、係になって連絡をメモと口頭の説明をもとに書いて伝えるというものでした。
教師と子どもたち、子ども同士の関係のよさを随所に感じる授業でした。指示に対して素早く動いた子どもを固有名詞でほめます。教室全体の雰囲気のよさが印象に残ります。
学級の半分ずつを集めてメモを渡し、口頭で補足説明をします。それぞれ違う内容で、情報を知らない相手に伝達するという設定です(実は同じ内容だったのですが)。
伝えるのにどういう方法があるかを子ども同士で相談させたあと発表させます。「会話」「動作」といった子どもたちの発言を素早く認めていきます。「紙に書いて」という発言に対して「ああ」という声が上がります。こういった反応が出ることはよいことです。その言葉の意味するところを聞いてみたいところでした。今日は書いて伝えることを説明しますが、なぜ書くことなのかがはっきりしません。書いて伝えることのよさをわかるためにも、条件やゴールが必要になります。素早く伝える、確実に伝える、全員に伝えるといった条件によっても、選ぶべき方法は変わります。余談ですが、LINEは先ほどの条件をほぼすべて(参加している者という限定がある)を満たしています。中高校生が伝言手段としてLINEを使う理由がよくわかります。
伝えるということは、誰に対していうことがとても大切です。ワークシートの記入欄は黒板の絵になっています。教室の黒板で学級の全員に伝えることを意識しています。しかし、そのことを子どもたちに確認はしませんでした。誰に伝えるのかをはっきりとさせておいた方がよかったでしょう。

子どもたちは、いろいろと工夫をしています。机間指導をしながら、「○で囲んでいるね」というようによいところをまわりの子どもに聞こえるようにほめています。オープンカンニングです。ただ、ちょっと多すぎるように思いました。次々と聞こえてくるので、集中を乱す可能性があります。
書き終ると、ペアで相手のよいところを見つけて交互に伝え合います。「いいところしりとり」というようです。意見が言えなく時は2回までパスができます。続かなくなったら終わりです。終わったあと、出てきた意見をワークシートにまとめます。子どもたちはとてもよい表情を見せてくれます。よいところをたくさん見つけさせるにはよい方法だと思いました。
よいところを言い合うのはよいのですが、「大切なところがすぐにわかる」といったその理由を明確にする場面がほしいように思います。こういったことを意識することが、他の場面でもその工夫を活かせるという再現性につながります。

全体での発表は、たくさん言い合っているので次々手が挙がります。時々授業者が子どもの言葉を言い換えているのが気になります。「いつまで」を「期限」、「短くまとまっている」を「省略」という具合です。こういう言葉を使うことはとてもよいことですが、「短い言葉で言えない?」「熟語で言うと?」と言った問いかけをして子どもに言わせたいところです。もし、今まで学習していない言葉であれば、「このことを○○と言います」と明確に知識として示すとよいでしょう。
子どもの意見を板書していきますが、その意見をもとにつなぐことはしません。つながないのであれば。子どもの発言意欲を削がないためにも、どんどん指名していった方がよいように思います。出尽くしたところで、「いろいろの意見が出てきたね、まとめようか」と子どもたちまとめさせます。この場面であれば、子どもたちに言わせて板書すればいいでしょう。その時、「似たような工夫はどんなものがあった?」というようにつなげて、「これらの工夫をするとどんなよいことがある?」というようにして、ラベルをつけてまとめていくとよいでしょう。このような進め方をすると、これまでの意見のうちあまり意味のないものをそぎ落とすこともできます。

書くことのよさを考えますが、最初に出てきた他の伝え方と比較するとよかったでしょう。以前の手紙の学習で「○○さんが言ってくれたこと覚えている?」とつなぐことしました。固有名詞で取り上げることはとてもよいことです。よくあることですが、本人はよく覚えていません。友だちが言ってくれて思い出しました。自分が忘れていることを友だちが覚えていたのでとてもうれしそうでした。ノートを見ている子どもに対して「前のノートを見るのもいいね」とほめて広げます。
子ども同士相談させたあと、話し合ったことを発表させます。ほとんどの子どもが挙手します。逆に挙手していない子どもが気になりました。理由はわかりませんが、もし発言できそうな子どもであれば指名して発表させたいところです。挙手を求めずに何人か発表させた後、「○○さんはどんなことを聞きあった?」と指名してもよいでしょう。

最後のまとめとして教科書の解説を読みます。「みんなが見つけたことが教科書にも書いてあるね。教科書に書いていないことも自分たちで見つけられたね。すごい!」と自分たちで考え見つけることを評価することが大切です。教科書が正解と思うと、教科書に書いてある答探しをするようになります。このことに注意をする必要があります。
つまずいたり間違えたりすると次の人に交代する「リレー読み」で教科書を読ませました。緊張するのか、意外と間違えてしまいます。失敗しても互いに笑い飛ばしているのが印象的でした。間違えてもばかにされない、安心な学級をつくることが大切ですが、もっと素晴らしいのが、間違えても笑い飛ばせる学級です。子どもたちの関係がよい、とても素晴らしい学級でした。

「相手にわかるような書き方の工夫」と「書いて伝えることのよさ」と2つのねらいがある授業でした、2つあるために活動がとねらいがうまくかみ合っていないように思いました。「相手にわかるような書き方」であれば、どんなことが大切かを出し合い、そのことを意識して書かせることで、より工夫が明確になったと思います。「書いて伝えることのよさ」を意識するのであれば、話すことなどの他の方法も実際にやってみて、その違いを明確にして考えることが必要です。ちょっと欲張りすぎたようです。

よい行動を広げるという発想が徹底していました。机間指導での声かけも多く、子どもたちは認められているという気持ちになります。子どもたちのつぶやきもよく拾いますが、そのため子どもが挙手せずに発言することも多いように感じました。どんな言葉も同じように拾うのではなく、「授業で活かせる言葉は全体に対して再度発言させる」「個別の問題であればあとで対応する」「授業に関係のないものであればそっと制して取り上げない」といった区別が必要です。
学級づくり、授業規律はきちんとできているので、授業の中身が勝負です。目標と評価を明確にして、目標を達成するためには何が必要か、どのような活動をさせるとよいかを意識して教材研究をしてほしいと思います。力のある方なので、今後の成長が大いに期待できそうです。

この続きは、次回の日記で。
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