授業規律の次に考えること

小学校で授業アドバイスを行ってきました。市内の全小学校での授業アドバイスの一環です。今年度2回目の訪問で若手を中心に7人の授業を見る予定でしたが、インフルエンザのために6人となりました。
前回訪問時には授業規律が気になる場面がありました。20分の長い休息時間では、遊ぶことに夢中で授業開始に間に合わない子どもが目立っていましたが、この日は、どの学級も開始時間には授業が始められる状態になっていました。学校全体として授業規律を意識してきたことがわかります。授業規律がしっかりしてきたからこそ、次の課題が見えてきました。

4年生の国語は訓を手がかりにして、熟語の意味を考える場面でした。
挙手の場面では、手の挙げ方がいいと上手にほめています。子どもたちを認めて授業規律をつくっていることがよくわかります。ペアで相談する場面などでは子どもたちはしっかりとかかわることができます。ところが、答を求めると手が挙がらないのです。このことが気になりました。子どもが発表すると、「いいです」「賛成」といった言葉が返ってきます。友だちにチェックされているような気持ちになりそうです。「トウブン」という言葉にはどんなものがあるかを問う場面でのことです。「砂糖」という発言に対して「砂糖がどれだけ含まれているか」と授業者が勝手に言葉を足しました。「長い間」に対して、「しばらくの間」を加えます。子どもは自分の答が教師の求める答と違ったのだと感じます。子どもが一つ答えるとそれに対して教師がたくさんの言葉をしゃべります。最初は上がっていた子どもの顔がだんだん下がってきました。また、子どもたちに知識をよく問います。学習したことであればよいのですが、学習していない知識を「考えて」と聞きます。まだ習っていない漢字の読みを聞いても知っている子どもしか答えられません。考えてもわかることではないので「考えて」と問いかけるのも意味がありません。こういった場面を積み重ねていくとだんだん挙手して発言することに消極的なってしまいます。
漢字の読み方に音と訓があることを確認しますが、その説明はありません。この授業では訓が漢字の意味に対応する日本の言葉であることを押さえておくことで、訓を手掛かりに熟語の意味がわかることに気づけます。既に学習したことなので、子どもから訓の説明を引き出したいところです。思い出せない子どもには、ノートや教科書で探させることも必要です。以前の学年での学習内容であれば、ICT機器を活用して教科書の該当箇所を提示するといったやり方もあります。過去の学習とつなげることが大切です。子どもの学習が、漢字の訓を漢字辞典で探す作業になっていました。

1年生の国語は「たぬきの糸車」という教材で、本文からそこに書かれていない登場人物の気持ちを読み取る場面でした。
驚いたのが、子どもたちがとても授業に集中していることでした。私たちが教室に入ってもしばらく誰も気づきませんでした。授業者は子どもたちをとてもよく受容しポジティブに評価しています。子どもたちが安心して授業に参加していることがよくわかりました。遅刻して登校した子どもに対して、そのまわりの子どもが鞄をおろしたりして授業に参加する手助けをしています。とてもよい学級経営ができています。手伝った子どもたちに「ありがとうね」と授業者は声をかけます。こういうところにも学級の雰囲気のよさの秘密があるのでしょう。
ペアでの学習の指示も非常に明確です。列の前に移動しながらこちらの列、こちらの列と具体的に役割を指示します。子どもたちがとてもスムーズに活動に移りました。
子どもたちは先生がよくほめてくれるので活動に前向きです。ペアの一方が本文に書かれているたぬきの動作をし、他方がその時のおかみさんの気持ちを言葉にするという活動に一生懸命に取り組んでいました。交代で何度も繰り返すうちに、次第にテンションが上がっていったことが気になりました。目標が活動することになっていたからです。
何組かを前にでて発表させます。すぐに言葉が出てこない子どもにも寄り添いながら待つことができます。聞いている子どもたちも集中力を切らずに待つことができます。その理由の一つが、授業者が発表者だけでなく、聞いている子どもたちにもしっかり視線を落としていることです。先生が見ていてくれるので、子どもたちは待てるのです。
子どもの発表をほめて板書します。できればここは、「今、○○さんが言ってくれたこと、黒板に書きたいから教えてくれる?」と子どもを活躍させたいところです。板書で確認しながら、どこがよかったかを聞いてつなぐことも視野に入れるとよいでしょう。
この授業のねらいは、どこでおかみさんの気持ちが変わったかです。そのことについては、一通り発表が終わってから、発言内容の板書をもとに考えました。考える時間もほとんどないので、授業者がまとめるような形になりました。ペアでの活動の時に、互いの言葉を聞いてどこで気持ちが変わったかを相談させるとよかったでしょう。全体での発表でも、どこでかわったかを聞いて、自分の考えと比べさせるといった活動をすると、本時のねらいにもっと近づくことができたと思います。

5年生の算数の授業は百分率の導入場面でした。
子どもの答に対して、授業者が「正解ですね」と判断していました。机間指導でほぼ全員ができていたのでしょうが、子どもに説明を求め、その説明に納得したかで判断したいところでした。
デジタル教科書の百分率の説明(定義)を読ませますが、ディスプレイが見にくい子どもは手元の教科書を見てもいいという指示をします。これでは、意味がありません。画面を拡大するなどして顔を上げさせる、それが無理なら使わない方がよいでしょう。デジタル教科書の動画を使って、%記号の書き方を練習します。ワイヤレスマウスもあり手元で操作できるのに授業者はディスプレイをずっと見て指示をしています。動画の再生が始まれば、子どもたちの様子をしっかりと見るべきです。
フラッシュカードで割合を百分率に、百分率を割合に直す練習をします。なぜそうなるかの理由の説明や確認はありません。いきなりです。わからない子どもも全体でやっているのでなんとなくで答えてしまいます。そのあと、すぐに問題練習です。練習を始めてから、19.7%といった問題に☆をつけて練習して来なかったけれど後で説明すると言います。また説明を忘れていたと、いったん練習を止めて、0.3=30%とは書かないことを伝えますが、その理由は説明しません。%は割合にしか使わないけれど、0.3は0.3m、0.3gというように何にでも使えます。30%mという使い方はしないことと関連づけるとよいでしょう。
答え合わせをしますが、結局19.7%が0.197となる説明はせずに、何問できてかを聞きます。あとから説明するからいいと言っておきながら、何問できたかをチェックされては、わからなかった子どもは釈然としないと思います。
この後に、どうやって求めたかの手順をまとめます。百分率にするには100倍、百分率から割合を求めるのには100で割ることを押さえますが、定義との関連は全く説明されません。これでは、算数は解き方の手順を覚える教科になってしまいます。定義を根拠としてやり方を考えることから始める必要があります。
最後に、どうして百分率を使うのかを考えようと言って、どんなところで百分率を使っているかを問いかけます。いろいろなところで使われていることを確認して終わりです。百分率を使う理由は最後までわからないままでした。これでは子どもたちの頭には???しか残りません。グラフの学習で目盛りの大きさを変えて差がはっきり見えるようにしたことなどと関連づけて、変化や違いがわかりやすくなることを子どもたちから出させる必要があったと思います。
算数では根拠がとても大切ですが、そのことを授業者はよくわかっていません。手順は、定義を根拠にして見つけ出さなければなりません。生活の中での使用例を比較してそのよさに気づき、算数が自分たちの生活に役立っていることを実感させる必要があります。こういう算数の基本的な流れをまず理解してほしいと思います。

この続きは、明日の日記で。
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