教材研究の大切さを改めて考える

昨日の日記の続きです。

1年生の授業は算数で、2桁の数の大小を考える場面でした。
前時の復習で2つの数を提示して、数の大小を問いかけます。子どものたちの手が勢いよく上がりますが、「説明もできる人?」と授業者が言葉を足すと手が下がってしまいます。かなりの子どもが残念そうな顔をします。ここは、何人かに答えさせてから、「理由も説明できる?」と聞いてあげたいところです。指名された子どもは「10の位を比べて・・・」と手順を話し、「いいですか?」と聞きます。子どもたちはすかさず「いいです」と答えます。こういったやり取りには注意をしてほしいと思います。自信がなくて発表できなかった子どもが、すぐに「いいです」と返すのは、「なんとなく」条件反射で答えたり、無責任に発言したりしている可能性があります。すぐに正誤を判断すると、基本最初の一人しか発言のチャンスはありません。発言したい子どもは他の子どもを押しのけて発言しようとしたり、指名されないと悔しがったりします。また、「いいです」というのは見方によれば、上から目線の言葉です。友だちにチェックされている気持ちになることもあります。もし、「違います」とダメ出しされると、友だちに否定されたようにも感じます。「なるほど」と受容し「○○さんは?」と何人も指名したり、「同じように考えた人?」「なるほどと思った人?」とつないだりするとよいでしょう。「いいです」と子どもたちに言わせるのなら、「いいです」と答えた子どもに「もう一度説明してくれる?」と返すといいでしょう。こうすると無責任に「いいです」という声を上げなくなります。
ここで、注意をしてほしいのは「手順」と「根拠」の違いです。説明といった時に「手順」を言わせると、手順を覚えるのが算数だと思ってしまいます。手順を覚えることも必要ですが、なぜその手順でいいのかをきちんと考え理解することが大切です。「最初に10の位から比べるんだね。1の位は見なくていいの?」「それってどういうこと?」というように子どもたちに返しながら、根拠を子どもたちの言葉で説明させるようにすることが大切です。
10の位が同じ数の大小の説明で、「1の位が2違うから」と答えた子どもがいました。次の子どもは「1の位が2大きい」という表現しました。ここでは大小を比較しているので、ただ「違う」ではなく「大きい」というべきです。子どもにそのことを気づかせるために「1の位が2、お、お、き、い、ん、だ」と「大きい」を強調するとよかったと思います。
デジタル教科書を使ってこの日の課題の把握をします。いくつかの2桁の数を降順に並べるのです。教科書の例で並び替えをするのですが、その手順を考える場面がありません。続いて、授業者は2つの班対抗でゲームをして「戦ってもらいます」と宣言します。一部の男の子は興奮します。意欲を上げるのには勝負事はよいのですが、対抗するより絶対的な評価をした方がよいと思います。1人ずつカードを引かせて、カードに書かれた数の降順に並ぶ時間を競います。このゲームであれば、「10秒を切れるかな?」といった目標を与えるとよいでしょう。口頭で説明した後、「やり方はわかった?」と確認します。「ゲーム」のやり方か、「降順に並ぶ」ためのやり方なのか聞いていてちょっと迷いました。明確にするためにも、「ゲーム」という言葉を付け加えた方がよかったかもしれません。口頭だけの説明なので子どもたちは今一つ理解していないようです。そこで最初の班が前でゲームをやる時にゆっくり確認しながら行いました。しかし、本番なので子どものテンションは上がっています。カードを一人ひとりに引かせて、スタートまで見ないように指示しますが見たくてたまりません。子どもに引かせることは悪いことではないのですが、考えさせたい時には意味なくテンションは上げない方がよいと思います。教師がカードをシャッフルしてさっと配ってすぐに始めた方がよいでしょう。ゲームのやり方を説明するのであれば、練習として数人でやってもいいでしょう。
子どもたちは、互いのカードを見合いながら並びます。大きい数を引いた子どもは先頭に並んでじっとしています。これを全体で3回行いました。問題はこの活動の目的です。教科書の次の問題は、22、□、24、25、□、・・・と1つずつ増やした数を考えたり、同様に1つずつ減らした数を考えたりするものです。序数と数の大小の関係を意識するものです。ここにつなげるのですから、そういう活動にする必要があります。大人から見るとなんということのない問題ですが、ゲームの後やってみると、戸惑っている子どもがいました。先ほどのゲームとつながっていないのです。ゲームを1回やった後、作戦会議をさせてから次の挑戦をするといったことが必要だったと思います。
人数が少ないと互いに比べることで簡単に並べ替えることができます。工夫の余地はありません。そこで、全員にカードを配って並べ替えさせてもいいかもしれません。個々に比べていては並べ替えるのはとても大変なので、工夫をする必然性があるからです。教科書には1から100までのカードを使っていることがヒントとして書いてあります。「1番大きい数は?」「100」「100の人いる?」「次に大きい数は?」「99」・・・として、順番に並ばせることで、数の並び方と大小の関係を意識できるようになると思います。
算数の授業は、簡単に見える問題を扱う場面でも、その概念を形成するためにはスモールステップを意識して組み立てる必要があります。教材研究は欠かせません。授業者は子どもたちを楽しく活動させることを意識していたのですが、算数として何を大切にしなければいけないかの研究が少し不足していたようです。
教材研究の大切さをお伝えしました。

4年生の国語はウナギの産卵場所を調べる説明文の授業でした。
この日の学習範囲をペアで音読します。教科書の上手く読めなかったところ、間違えたところに線が引いてあります。聞き手はその教科書を預かって、上手く読めたら消しゴムでその線を消すというものです。なかなあ面白いのですが、ペアで上手くかかわれていないところがありました。読み終わった後に、よかったところを伝えるといったことが必要です。また、全体で「ペアの人の読みが前よりよくなった人教えてくれる?」とペアの人をポジティブに評価する場面をつくることで、人間関係をつくったりするとよいでしょう。
全体で音読した後、どのように調査が進んだか子どもたちにたずねます。一連の音読の目的がよくわかりません。音読しながら読み取るのはそれほど簡単ではありません。通常、音読は声をしっかり出して、間違えずに滑らかに読むことが目標になります。少なくともペアの音読のやり方からするとそうです。読み取ることは、意識されていません。読み取ったことを問いかけるのであれば、考え、整理する時間を与えることが必要です。
授業者は子どもたちの発言をつないでいこうと切り返しの発問をすぐにします。しかし、発言者の考えを全体で共有する時間がありません。まだきちんと理解できていないのにその意見に関する発問がされるので、ついていけません。戸惑っているうちに、すぐに反応できる子どもが挙手して指名され、次へ進んでいきます。せっかく自分の考えを発表しようとしていても、発言の機会が失われます。一見すると意見がつながっているように見えるのですが、発言する子どもはどんどん絞られていきます。ほとんどの子どもはお客様状態で、参加できなくなってしまいました。
まずは、発言に対して「どこでそう考えた?」「どこに書いてある?」と根拠となる本文を確認します。その上で、「同じように考えた人」「なるほどと思った人」と返し、何人かを指名し、全体で共有します。ここで、初めて切り返していくのです。こうすることで多くの子どもが話し合いに参加できます。また、いきなり切り返していくのではなく、子どもたちの意見を一通り聞いて、発表したい気持ちを満足させてから、深めていくという方法もあります。
授業者は、課題に対する答を子どもたちから出させることにこだわっていました。しかし、全員ではなく、誰かが求める答を言ってくれればいいと考えているように見えます。少しでも早くゴールにたどり着くよう誘導するために切り返しをしているのです。質問の答えを知ることが国語の授業の目指すところではありません。質問の答えを見つけることを通じて、読み取る力をつけることです。読み取る力はどうすればつくのかを明確になっていないので、答探しの授業になっているのです。
授業者は、自分で見つけさせたいのでワークシートは使わないようにしているのだが、全員が参加してできるようにするためにはワークシートが必要なのかと質問してくれました。ワークシートはスモールステップで答を見つけるための一問一答になりがちです。質問に答えることで整理できるのですが、読み取るために何を考えればよいのかを自分で見つけ出す力が必要です。その視点を育てることを意識したものでなければ、ただの穴埋め問題です。もし利用するのならワークシートを構造化し、次第に質問や作業自体も空欄に、最後は白紙となるようにステップアップしていくといった発想が必要だと思います。読み取るために何をすればよいかを子どもたちがわかるようになることが大切なのです。ワークシートを使うかどうかによらず、やはり読み取る力とは何かをまず授業者が明確にすることが必要なのです。その上で、この教材をつかってどのような活動をするとよいのかを考え、授業を組み立てていくのです。
授業者は国語の授業で悩んでいたようです。これ以外にもたくさんのことを質問してくれました。それらすべてに明確な答えを与えることができたかどうかはわかりませんが、新たな一歩を踏み出すきっかけになってくれればと思います。

前回訪問時にアドバイスした方の授業も見せていただきました。その時のアドバイスを意識してくれていることがよくわかります。子どもたちのつぶやきもよく拾います。学校全体に子どもたちを受容する雰囲気ができているように思いました。しかし、そのことが、子どもが先生とのかかわりばかりを求め、子ども同士のかかわり合いが上手くいっていないことにもつながっています。友だちの発言を聞くことで参加できる場面や子ども同士で評価し合う場面をつくり、つながることのよさを感じられる授業を目指すことが求められます。このような指摘を四役の方はしっかりと受け止めてくれました。謙虚に課題として改善する方向で考えてくださいました。四役が課題意識を共有することができれば、間違いなく学校はよい方向に変わっていきます。この学校の今後の変化が楽しみです。
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