学校が新たな一歩を踏み出す胎動を感じる

昨日の日記の続きです。

社会科の授業研究は、1年生のヨーロッパ州の最初の時間でした。授業者は今年この学校に異動したばかりの方です。指示の言葉が短く非常に明確です。子どもたちは素早く反応します。ムダな時間がほとんどないのが印象的です。非常に落ち着いた雰囲気で子どもたちは学習に集中していました。授業者は新しい環境で4月5月は苦しんでいましたが、この学校に合わせた自分のスタイルが見つかったようです。
この日の授業は、ヨーロッパ州を概観する内容です。ヨーロッパを自然環境、人口・民族、農業、工業の4つの視点で調べて、どのような地域であるかまとめるというものです。
今回はジグソー学習の形を取っていました。課題をいくつかに分割してそれぞれで取り組み、後で組み合わせて1つにしてくという、協働学習の手法です。
グループの中で担当を割り振り、授業者が準備した資料とキーワードをもとに個人で調べてまとめます。中には教科書や資料集を見ている子どもがいます。用意された資料と同じような内容を探して、そこに書かれている記述を写しているのです。それならば、最初から教科書や資料集をもとに調べさせればいいでしょう。授業者としては、与えられた資料から読み取ってほしかったのでしょうから、教科書や資料集は使わないという指示を出せばよかったと思います。
グループの隊形での作業ですが、子どもたちは互いに違うことを調べているのでかかわり合うことはありません。集中して取り組んでいるからこそ、かかわり合わないのはもったいないように思いました。授業者は最初10分間と言っていたのですが、ここで時間を使いすぎない方がよいと判断して、早めに切り上げ次の活動に移りました。よい判断です。同じ項目を調べている子ども同士で新たにグループを作り、そこで情報を交換して元のグループで発表するための内容を深めるのです。いつもと違うグループで話をすることは、人間関係をつくるためにもよいことです。子どもたちは、この活動の目的を理解しているので、友だちの言葉をよく聞いているようでした。
次の活動に移ります。授業者はまず、元のグループに戻るように指示をします。こういった移動も実にスムーズに素早く行えます。移動が終わってから次の指示を出します。このように指示を分割していることも、子どもたちの動きのよさにつながっているように思います。自分の担当の内容を説明する時には、どこから言えるかの根拠を必ず話す、聞く側は、発表をそのまま写すのではなく、重要だと思ったことだけを書くようにと指示します。特に聞く側に考えることが必要な条件をつけることで、受け身でなくすことを意識しています。ちょっとしたことですがとても大切なことです。
子どもたちはしっかりと活動していますが、ちょっと空気が重たいように感じました。ところが次第に子どもたちのかかわり合いが増えてきます。聞く側に対する指示が効いているようです。しっかりと聞いてもらえるので、発表した後の子どもの動きがよくなるのです。ただ、発表者の中には「資料から・・・」と具体的に資料のどこからかを言えない子どももいました。時間の関係もあり、子どもたちが根拠を共有していないことが気になりました。
ヨーロッパ州とはどういう地域かをまとめた文章の穴埋めが最後の課題でした。事前に行なった他の学級の授業で、自分たちでまとめさせる時間があまり取れなかったので、このように変更したのだそうです。子どもたちはグループの中で自然に相談しています。気軽に聞き合える関係になっていることがよくわかります。授業者が子どもたちに問いかけながら正解を発表していきます。正解だった子どもはうれしそうに反応します。しかし、最後の活動が穴埋めになっているので、子どもたちは自分たちの活動が教師の求める答を導き出す活動だったと思うかもしれません。このことはちょっと気になる所です。
ここでのまとめは、「高緯度だが温暖」「複数の民族や言語が存在している国がある」「気候によってさまざまな農業が行われている」「資源や工業で国同士が結びついている」という4つの視点からのものですが、これらは結論、結果です。「なぜ高緯度なのに温暖なのか?」「複数の民族や言語が存在している国があるけれど、日本はどう?いろいろあって問題ないの?」「さまざまな農業というけれど、いろいろなものがつくられていることは、いいの?悪いの?」「資源や工業で国同士が結びつく必要がどうしてあるの?」といった質問をしたり、疑問を持たせたりしたいところです。こういった疑問は次の課題のEUにつながっていきます。EUについて学習する前にこのまとめを扱ってもよいかもしれません。

この授業の前に、2年目の先生がいっしょに授業を見たいと言ってくれました。素直に今苦しんでいることを伝えてくれました。自ら助けを求めることができることはとてもよいことです。教科が違うので直接参考にすることはできないかもしれませんが、この授業の課題や子どもたちの動きのよさの理由などをできるだけその先生の授業と比較しながら話をしました。今は苦しいかもしれませんが、学ぶ姿勢があれば必ずそれを糧とすることができます。成長が楽しみです。
また、養護教諭も一緒に授業を見てくれました。この日、11月に研究授業をする他校の養護教諭と打ち合わせをするので、この授業から学んでその先生に伝えたいというのです。この市の養護教諭のチームワークのよさ感じさせられました。どんな授業になるかとても楽しみです。

授業検討会では、授業者としては何をねらいたかったということが話題になりました。一番のねらいに時間をかけることが大切だからです。ヨーロッパ州を概観するといっても、1時間しか配当できないので時間があまりありません。子どもたちの活動で授業を進めるためにジグソー学習を取り入れて効率化したのですが、それでもまとめる時間が足りなくて、最後は穴埋め問題にしたのです。しかし、授業者は、本当は子どもたち自身でまとめさせたいと思っていたようです。ならば、この流れの中でその時間どうつくるかです。できるだけ効率的に、考えるために必要な情報を与えることが求められます。ジグソー学習を活かすのであれば、グループごとに項目を割り振って調べさせます。それを全体で共有するのです。この時、今回のグループでの報告で指示したように根拠を言わせるだけでなく、実際に資料を確認する活動を必ず入れるようにします。社会科として資料を見る力をつけることを意識する必要があるからです。ここを足場にして、子どもたちにヨーロッパ州はどんな地域かをまとめさせるのです。この流れならば考える時間をつくることができると思います。各項目を調べてまとめる時、これまでやってきたアジア州はどうだったか簡単に確認してから進めてもよいでしょう。まとめ方も明確になりますし、自然にヨーロッパとアジアを比較することにもなるので、特徴を見つけやすくなると思います。
この学校の社会科もチームワークがとてもよく、指導案もみんなが意見を出して一緒につくり上げています。そのため、授業検討会も第三者的な批判などはなく、当事者意識を持ってどこが課題か、どうすればいいのかと考えています。互いに学び合い成長できる関係だと思います。

6時間目の学活の時間の1、2年生のようすをざっと見ました。
1年生はとてもよい雰囲気でした。ただ、一部の学級で担任との関係がぎくしゃくしているように感じました。担任は何とかしようと動いているようですが、ちょっと過敏に反応しすぎているように思います。もう少し余裕を持って子どもたちを見守ることも必要だと思います。
2年生は、学級によって雰囲気の差があるように感じました。担任との関係がまだうまくできていない学級があるようです。しかし、それよりも気になるのが学級の中で友だちとかかわれていない子どもが以前よりもはっきりとしてきたように感じることです。体育大会などの行事をきっかけに学級の子ども同士の関係が密になる時期です。しかし、人間関係をうまくつくれていない子どもにとっては、より疎外されやすい状況とも言えます。どうも行事がそのように作用したのではないかと思います。人間関係がうまくつくれない子どもがいる時は、担任は子どもたちと一緒になって行事を盛り上げようとするよりも、ちょっと距離を取って子どもたちの人間関係を見守っている必要があります。こんなことを思い出しました。
また、この学校では、半年間固定の班を基本としていろいろな活動が行われています。教室の座席も班でかたまっているので、授業での人間関係も班にしばられます。人間関係が固定されるので、うまくかかわれない子どもが孤立しやすくなります。生活の班と、授業でのグループは別にした方がよいように思います。

この日も数学科の有志と勉強会を行いました。台風で実施できなかった授業研究の内容について話しました。関数のグラフと方程式のグラフがうまく結びつかない子どもがいて、それをどうしたらいいかを授業研究で話題にしたかったそうです。私なりのアドバイスをして納得はしてもらえましたが、実際に授業を見ていないので、あくまでも子どもの状況を推測しての話です。中止になったことがとても残念でした。

学校内で授業研究に対するエネルギーが少し上がってきたように思います。校長や教務主任が授業を大切にするように働きかけていることの効果が出てきているようです。ここのところ先生の異動が多かったため、現状維持に精一杯だった面もあったのですが、次の一歩を踏み出すような胎動を感じます。この動きを本物にしていかなければと思っています。
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