栄養教諭の研修会で講演

昨日は、栄養教諭の研修会で「食の授業の進め方を考える−授業づくりのポイントとは−」という演題で講演をおこないました。こちらの県では栄養教諭は大変忙しく、たくさんの数の授業をこなしていらっしゃるようです。参考のために事前にいくつかの指導案をいただいたのですが、会が始まる前にその方々にアドバイスをさせていただく時間を持つことができました。その時お話していて、熱心なだけでなく、非常に理解が早いと感じました。授業経験がある程度ないと、なかなか指摘されたことを理解できません。アドバイスから具体的なイメージをすぐにつかまれていたようでした。

食の授業で大切なことは、学んだことが子どもたちの生活の改善につながらなければならないということです。子どもが「好き嫌いはなくさなければいけない」と口にしても、そのことを実行しなければ意味がないのです。そのためには課題が大切です。子どもたちにとって必然性のある課題である必要があります。必然性ということで、自分の食を考えるという課題が一般的なのですが、逆に他者の食を考えることで自分の食を考えるという発想もあります。「家族のために朝食を作ろう」といった課題で、そのことを考える過程で食にとって大切なことを考えさせるといったものです。家族に喜んでもらおう、家族のためになる食事を考えようとすることは自己有用感につながります。その延長上で自分の食を考えさせようというのです。家族の代わりに、憧れのスポーツ選手でもいいでしょう。子どもたちが考えたいと思う対象にするだけ、子どもたちが入り込みやすい課題となります。

栄養教諭は1学級あたりの授業数が少ないので、子どもとの関係をつくる時間があまり取れません。そのため、できるだけ早く子どもたちをひきつけたいと考え、授業の最初に子どものテンションを上げやすいクイズを取り入れる傾向が強いように思います。しかし、テンションを上げた後なかなか戻らない、本題に入ったら今度はテンションが下がりすぎてしまうといったこともよくあります。根拠なしに答えられるクイズにあまり時間をかけるよりも、子どもの言葉を受容し、ポジティブに評価することの方が、結果的には授業に真剣に参加してくれるはずです。また、少ない機会に対して伝えたいことが多いために、ついついたくさんのことを盛り込みたくなります。伝えたいことを整理してどれだけ絞り込むかも大切なことです。

グループワークとして「栄養のバランスのとれた食事を摂ろう」というテーマで1時間の授業の流れを考えていただきました。みなさん真剣に取り組んでいただけました。資料の活用のポイントとして、比較するとよく見えるという話をしていたのですが、さっそくそのことを取り入れたグループがたくさんありました。柔軟な方たちです。また、みなさん根拠を持って子どもたちが考えることを意識されていました。私が話したことをよく理解しています。「体調の悪い人の食事はどっち」「給食の献立を考える」「朝食をパワーアップする」といった、面白い課題もたくさん発表されました。
あるグループは導入部分までしか検討できていませんでした。授業の流れを考える時に陥りやすいことです。流れを頭から順番に考えていくと、こんな展開もある、あんな展開もいいということになってなかなかその先が決まっていきません。授業では、まずゴールを決めることが大切です。ゴールが明確であれば、どの展開がよりそのゴールに近づきやすいかを基準にして判断することができるからです。

また、日ごろの授業での悩みも聞かせていただくことができました。
朝食の栄養バランスを考えているのに、ワッフルを食べているといった意見がでると、「いいな」とうらやましがったりして、関係のない方向へ子どもの興味が移ってしまうというのです。子どもたちにはよくあることです。こういう時には、「○○さんはワッフルが朝食なんだね」と認め、うらやましがる子どもには「うらやましい、そうだよね。ワッフルおいしいもんね」とこちらの考えも受容した上で、「じゃあ、栄養はどうだろうね」とその授業のねらいに視点をもどせばいいのです。栄養的にはみんなが食べている食パンと変わらないことに気づかせることで、何が大切かを再確認することができます。

私の読みが甘く、グループワークに時間がとられ、後半に話す予定であった「授業スキル」については簡単な紹介しかできませんでした。申し訳ないことをしました。別の機会があればこのことについてもお話したいと思っています。

最後に、とてもおもしろい質問をいただきました。「授業の最後に子どもに振り返りを書かせて終わるのですが、その前にどのようなことをまとめとして話せばいいのか」というものです。教師がコンパクトにまとめようと思うと、意外と難しいものかもしれません。そこで、子どもに言わせるという発想をお伝えしました。「今日の授業でどんなことを考えた?」「どんな意見が出た?」「いろいろな意見があったけど、なるほどと思ったのはどれかな?」と子どもたちにまとめとなることを言わせるのです。教師が伝えたいと思った意見や考えが発表されたら、「そんな意見あったね。誰が言ってくれたんだっけ?」「同じように考えた人いるかな」というように、焦点化したり強調したりすればいいのです。教師が無理にまとめなくてもいいと思います。

日ごろかかわりの少ない県での研修でしたので、いつも以上によい刺激をいただくことができました。積極的な参加者のおかげで、楽しい時間を過ごすことができました。ありがとうございました。
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31