小規模校で共通の課題が見えてくる

先週末は、小規模小学校で授業研究と授業アドバイスをおこなってきました。

1年生は国語の授業でした。授業者は子どもの言葉をしっかり受け止めることができます。子どもたちとの関係もよさそうです。
「歯が抜けたときにどのようにしたか」をノートに書かせる場面でした。1人の子どものノートを見て、ページをとばして使うように指示します。ノートを見て指示の必要性に気づいたようです。そのあと、1人ずつ順番に同じ指示をしました。わずか5人だからできることですが、ここはすぐに作業を止めて全体で行うべきでしょう。似たようなことが続いて起こります。1人の子どもが「ティッシュ」の書き方がわからないとたずねます。授業者は黒板の端に「テ」と書いて次にどう書けばいいかその子に問いかけました。しかし、その子が反応できないので他の子どもに聞きます。突然全体の問題に変わってしまいました。他の子どもたちは一瞬何を聞かれているかわからなかったのですが、すぐに自分の作業を止めて、参加しました。少人数だからすぐに全員が参加できましたが、このようなことが続くと子どもたちの集中力は落ちてしまいます。全体で考えたいと思ったのなら、明確に作業を止めて、「○○さん、何に困ったの」と本人に言わせ、「みんな、助けてくれる」と、明確に全体の課題とするべきです。
作業の進み方に差があります。終わった子どもがいるので、グループで聞き合うようにと次の指示をしました。まだできていない子どもがいるのにグループの形にして、全員できたグループから次の活動に移らせます。3人のグループではまだ書き続けています。一方2人のグループは聞き合うことも終わったので、授業者は次の指示をしました。まだ、その前の活動も終わっていないグループには、指示は通りません。その場になって、何をするんだっけということになります。その様子を見て授業者は個別に再度説明します。子どもたちは、困ったら先生の方から助けてくれると考えるようになってしまいます。授業者は活動の最初に全体を見通した指示ができていません。ゴールもはっきりさせていません。子どもたちは何がゴールのかわからないまま、授業者に言われたことをやっているだけでした。授業者は何かあれば個別に対応するという癖がついています。小規模な学校に起こりやすいことです。個別対応が悪いのではなく、それに頼ってきちんと指示をせず、子どもに見通しを持たせて授業を進めていないことが問題なのです。

2年生は、生活科の時間でした。以前に気になった子どもがこの日は目立ちません。子どもたちが落ち着いて授業に参加できています。どのおもちゃを作るかを全体で相談する場面でした。子どもたちに発表させますが、授業者はしっかり受け止めても意見をつなごうとはしません。少人数なので、全員に発表させることができるからです。子どもたちも、一度発表すると全員が発表し終わるまで出番はないので、しばらく集中を失くします。すべて教師が受け止めるのではなく、他の子どもにどう思ったか、同じ意見か違う意見かとつなぐことが必要です。
「暑い」とか「寒い」とか、何かと教師に訴える、自分のことをかまってほしい子どもについて相談されました。かかわりを求めているので聞いてあげた方がいいのか、それともわがままだと拒否すべきなのか悩んでおられるようでした。他の子どもとかかわれるようになることを意識して、「○○さんが暑いと言っているけど、みんなはどう?」と聞くようすることをお話ししました。他の子どもに承認されることで、かかわりを持とうという気持ちになります。自分の言うことを聞いてくれないこともあるでしょうが、我慢も覚えていくことが必要です。いつも拒否されるようであれば、「○○さんが辛そうだから、みんな少し我慢してくれる」と教師が間に入るようにすればいいでしょう。

4年生は算数の授業でした。1人が意見を言うと「いいと思います」と声が上がります。わかったがどうか確認すると、先ほど「いいと思います」と言ったのに手が挙がらない子どもがいます。「いいと思います」は無責任な承認です。いいと思うだけで、いいという根拠を明らかにする必要はありません。「思った」だけでいいのです。何人も指名して発表させますが、わからない子どもはわからないままです。同じ説明を重ねられても、わかりなさいと脅迫されているようなものです。子どもの発言に対してより詳しい説明を求める切り返しや大切なことを他の子どもに復唱させて全体に広げるといった、つなぐことが求められます。そして、わからない子どもの「困った」に寄り添うことが必要です。発表を途中でとめながらそこまで納得できたかを確認し、わからないところを明らかにする。わからない子どもに、どこで困っているか直接聞く。子どものつまずきを全体で共有し、それを子どもたちの力で解決していくことを目指してほしいと思います。
授業者は子どもの言葉をとても大切にしています。そして、ほとんどの子どもがわかっているからと先に進めるのではなく、全員がわかることを大切にしています。最後にまだ数人わかっていないと判断して、隣同士で確認をさせました。そのあと、先ほどのわかっていなかった子どもは、なんとか説明できるようになりました。よい対応だと思います。
子どもの言葉を大切にすればするほど、教師のかかわり方が難しくなります。今この場面は、切り返すべきか、同じように考えた子どもにつなぐのか、納得していない子どもに確認するのか・・・、どのようなかかわりが必要かを意識することで、この授業者は大きく進歩すると思います。

5年生は、国語の「大造じいさんとがん」で大造じいさんの気持ちを発表する場面でした。黒板に貼られた本文の拡大コピーに、子どもたちがその文から読み取った気持ちが付箋紙で貼り付けられています。一人ずつ自分の考えを前で発表します。4年生と同じく、友だちの発表に対して子どもたちは「いいと思います」と返しますが、「いい」という根拠は問われません。同じ文に付箋を貼った子どもにも発表させて、どこが同じでどこが違うかを全体で考えたり、気持ちと関連する記述を発表させたりすることで、考えを深めることができます。このような活動を組み入れてほしいと思います。
国語の力をつけるという点では、気持ちを読み取るための視点を明確にしておくことが大切です。この教材では、「主人公の言葉や行動」だと思います。読解力をつけることは、こういった視点をたくさん持たせることが必要です。このことを意識してほしいと思います。
また、全員が「いいと思う」と反応したわけではありません。なぜ「いい」と言わなかったのかを聞くことで、同じ文から違う読み取りが出てくるかもしれません。どの子どもからも言葉を引き出すことを大切にしてほしいと思います。

6年生は社会で、身近にある福祉の問題について調べたことをもとに、どう対応していけばいいのかを考えて発表する場面でした。まず圧倒されたのは情報量の多さでした。実際に聞き取ったことや調べたことが教師の壁に貼られています。黒板にも多くのことが書かれています。それをもとに考え、発表します。友だちの意見を参考にした部分を明確にして発表してくれた子どもがいました。授業者は「○○さんが、あなたの・・・という意見を参考にしたと言ってくれたけれど、どう思った」とつなげようとしました。よいかかわらせ方です。しかし、その子どもは反応できませんでした。自分の発表の準備で手いっぱいで、よく聞いていなかったのです。課題が子どもの処理能力を超えているのです。
授業者は教材研究に対して熱心で、いろいろと準備もしています。そのため、どうしても準備したものをすべて与えようとします。この時間で身につけさせたいもの以外は、思い切って捨てる勇気も必要です。子どもたちの状況に合わせて、必要に応じて活用すればいいのです。このことは、この学級のできる子どもたちにも言えることです。調べたこと、考えたことをたくさん発表します。本人以外は1回聞いただけでは理解できません。整理する力をつけるために、「一番大切だと思う1つに絞る」「字数制限をする」といった条件をつけることを考えてもよいでしょう。大切なもの以外を切り捨てる「引き算の発想」を大切にしてほしいと思います。

今回、学校全体で共通の課題が見えてきたように思います。皆さん同じように子どもの言葉を大切にし、しゃべりすぎないことを意識しています。子どもの言葉を活かすということは、ただ子どもに発言させ続けることではありません。子どもの言葉を深め、大切なことを共有していくことが大切です。小規模な学校なので、全員に発言の機会を保障できます。そのため、個々に発表するだけで、発言がつながらないことが多いのです。小規模な学校だからこそ、子ども同士がかかわることを意識する必要があります。
このことは、授業研究でも浮かび上がってきました。授業研究については、明日の日記で。
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