先生方の意識の変化を感じる

先週、小中一貫校の現職教育に参加しました。この日は小学校で全学年の授業を参加しました。特に若手3人の授業はそれぞれ1時間ずつしっかり見せていただきました。

今回驚いたのが、前回訪問時と比べて先生方の意識に変化が見られたことでした。明らかに、子どもを受容しようとする姿勢が強くなっているのを感じました。子どもたちのどんな発言もしっかり受け止めようとしていました。ただ、挙手した子どもしか指名しないので、ノートにちゃんと考えを書けている子どもでも挙手しなければ指名されません。子どもたちは挙手して指名されることに対してリスクを取っているように感じます。先生方は子どもの発言を受容するのですが、評価をしません。正解かどうかではなく、どのようなよい点があったかの価値づけがされないのです。子どもにとっては、発表してもあまりいいことはありません。しかし、間違えたら恥をかきます。リスクしかないのです。子どもの発言を価値づけする。発言がたとえ間違いでも友だちの考えとつなぎ、自分で間違いを修正させる。このようなことを意識し、子どもたちに、発表すれば最後は必ずポジティブな評価で終わると思わせたいのです。
子どもの発言に対して、それを受けて教師がすぐに説明する傾向があります。そのため、子どもたちは、友だちの意見を真剣に聞こうとはしません。友だちの意見を聞く意味がないからです。「今の意見どう?」「○○さんの考え、もう一度説明してくれる」と他の子どもにつなぐことを意識してほしいと思います。

この日はたまたま算数の授業が多かったのですが、板書や図の見せ方などの工夫に対して、発問や、授業の展開に関する教材研究がまだ甘いと思いました。例えば、

九九を使った1桁のかけ算から、1桁×2桁のかけ算へのつなぎであれば、かける数が1増えればかけられる数だけ増えることを押さえておく。九九の表の性質を使うのなら、表の性質を予め復習しておく。このような、子どもが考えるための足場をつくっておく。

真分数と仮分数の性質で、分子と分母の大小関係に注目させるのであれば、真分数と仮分数
が、数直線のどこに現れるかを押さえる。同じ分母であれば分子が大きい方が大きい。1がn/nであることと合わせて、分子と分母の大小関係につなげていく。こういうスモールステップの展開を考えておく。

こんなことが必要だと感じました。

若手以外の授業はすべて算数でした。
1年生の担任の先生の授業は最初しか見ることができませんでしたが、見事な授業規律でした。遅刻してきた子どもに対しても、状況をきちんと聞いて受け止めています。以前は厳しくしつけていると感じたのですが、今は子どものできたことを認めながら規律を作っているようです。温かい雰囲気を感じました。指示に対する子どもの動きがとても速いことが印象的でした。是非皆さんに参考にしてほしいと思う姿でした。
100までの数の数え方を復習します。10とび、5とびと全体で数えていきました。ここで、ちょっと不安な子どもを指名して2とびを言わせます。こういう場面では他の子どもの集中が切れやすいのですが、一つ数えると続いて全員に言わせることで、子どもたちの集中を切らしませんでした。なかなか見事です。ただ1点残念だったのが、98の次がなかなか言えないときの対応でした。「助けてあげて」と他の子どもを指名し、発表させて全体で確認しました。ここは、全体で確認する前に、最初の子どもに「どう?」と聞いて、自分で言わせたかったところです。「助ける」時は、「まわりの人、助けてくれる」として本人が直接教えてもらうようにするとよいでしょう。本人が教えてもらって発言することで、初めて「助けられた」ことになるのです。「助けてくれてありがとう」「助けてもらってよかったね」と評価することも忘れないでほしいところです。
私が以前の現職教育で全体に話したことで、自分が使えそうだと思ったことは積極的に取り入れてくれています。素直で前向きな方なのでしょう。これからもどんどん伸びていかれることと期待します。

2年生の担任の先生は、子どもたちの言葉をていねいに拾っています。課題の提示にも気を配っています。子どもたちとの関係もとてもよさそうに見えました。子どもをしっかりと受容しているように思います。
この授業では、子どもからいろいろな考えを引き出したいと考えていたようでした。このこと自体はとてもよいことですが、まず基本となる考えを全員が見つけられことを優先してほしいと思いました。いろいろな考えが同じレベルででてくると、子どもたちが混乱しやすいからです。そのためには、必要な知識や既習事項を課題に入る前に、しっかりと整理しておいて子どもたち意識させることが大切です。ヒントといった言葉を使わずに、子どもたちが自然と意識できるようにしたいところです。

4年生の担任の先生は、数直線を大きく示して、とてもわかりやすく黒板を使っていました。用語の定義もしっかりと教えていました。用語は考えることではなく教えることです。定着させることを意識していることがよくわかりました。
他の時間にこの学級でおこなった若手の音楽の授業で、ペアでの練習場面がありました。この時子どもたちはとても自然に取り組めていました。日ごろからペア活動を道徳などに取り入れられているそうです。そういった取り組みのせいか、子どもたちのよい表情をたくさん見ることができました。

6年生の担任の先生は、子どもの発言をしっかり受け止めていました。子どもの発言を聞き終ってから、そのまま板書します。これは意外とできないことです。子どもの発言が長くなると、どうしても聞きながら板書してしまうのです。ただ、今回の場面ではせっかく板書した発言を使う場面がありませんでした。結果論かもしれませんが、もしそうであるのなら、板書することにこだわらず、同じようなことに気づいた子どもがいるか、その意見に納得したかといったことを他の子どもにつなぎたいところでした。
この場面は2つのグラフを見て「気づいたこと」を発表するものでした。この「気づいたこと」という問いかけは注意しなければいけません。抽象的で、子どもたちに視点が育っていないとなかなか答えられないものです。単に気づいたことと問うのではなく、事前に視点を整理したりすることが必要です。ここでは、そのようなことをした形跡はありませんでした。ところが、どの子どもも「一方は○○で、他方△△」ときちんと2つのグラフを比較できています。一方から気づいたことで終わりという子どもはいません。これは「比較」という視点が子どもたちにしっかり育っているということです。日ごろどのようなことを大切にしているかよくわかる場面でした。

ベテランや中堅の先生が授業改善に前向きだったことがとても印象的でした。では、若手の授業はどうだったのでしょうか。この続きは明日の日記で。
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28