保護者からの相談への対応

子どもについての相談で保護者と話をすることがあります。ときには、苦情を受けることもあります。ちょっとした言葉の行き違いがトラブルにつながることもあります。保護者とへの対応ではどのようなことに気をつければよいのでしょうか。

次の例を見てください。

「うちの子が、どうも学校がつまらないようなのですが」
「そうですか? 授業中もしっかり手を挙げていますし、友だちとも仲良くしていますが・・・」

「うちの子が、どうも学校がつまらないようなのですが」
「なるほど、学校がつまらないようなのですね。授業中もしっかり手を挙げていますし、友だちとも仲良くしているように感じますが・・・。もう少し詳しく聞かせていただけますか」

保護者から学校がつまらないようだと相談されています。教師から見ると全くそういうことはないので、安心してもらおうと学校での様子を伝えているのですが、最初の例では、「そうですか?」と疑問で受けています。保護者からすると自分の言葉を否定されているようにも感じます。一方後者の例では、「なるほど」と受容してから保護者の言葉をくり返しています。聞いてもらえたと感じます。また、「感じます」とやや曖昧に言うことで、否定のニュアンスを弱めています。
保護者は自分の言葉を教師に聞いてもらえるか不安に思っています。たとえ保護者の意見が受け入れがたいものでも、まずは、きちんと聞いていることを伝え、その上で、こちらの考えを伝えるという手順を踏まなければいけません。

先ほどの続きです。

「実は先日、食事の時に学校はどうと聞いたところ、つまらないと答えたので、詳しく聞こうとしたのですが、答えてくれなかったので気になっていたのですが」
「そうですか。わかりました。友だちとけんかでもしたのかもしれませんね。私の方でも注意して様子を見ておきます」

「実は先日、食事の時に学校はどうと聞いたところ、つまらないと答えたので、詳しく聞こうとしたのですが、答えてくれなかったので気になったのですが」
「なるほど、それでご心配だったのですね。ご相談いただき、ありがとうございます。どうでしょう。2・3日のうちに私の方で一度話を聞いてみて、その上でもう一度お話させていただきたいと思うのですがどうでしょうか」

保護者からの具体的な話に対して、最初の例では、友だちとけんかしたのかもしれないと言っています。保護者の心配を軽くしようとして言っているのでしょうが、聞き様によっては、これも保護者の考えを軽んじているようにもとれます。また、注意して見ておくといっても、フィードバックをどのようにするか伝えていないので、うやむやにされてしまうように感じられるかもしれません。一方後者では、「ありがとう」とお礼を言っています。保護者から相談を受けることを肯定的にとらえていることを伝えると同時に、子どもに関することは自分の問題でもあると伝えていることにもなります。また、時間を切って対応とフィードバックを示したうえで、「どうでしょうか」と保護者の同意を求めています。子どもをはさんで向かい合うのではなく、親と同じ側に立って寄り添っていると感じてもらえます。

時として、保護者と教師が子どもを間に挟んで対立的な立場にあるように感じられることがあります。教師は保護者と一緒に考える姿勢を見せて、子どもを育てる仲間であることを伝える必要があります。まずは、保護者の言葉を受け止めて、その上でこちらの考えを一方的にならないように伝えることが大切です。対応についても保護者の意向をきちんと確認することが必要です。
保護者は教師にとって子どもたちを育てるための大切なパートナーだということを意識して接してほしいと思います。
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