ベテランと若手のずれ

あるベテランからこんな話を聞きました。今年度その先生の副担任になったのは新卒の常勤講師でした。「朝と帰りのS.T.(短学活)の時間、教室を見に来ていいよ」と伝えたのですが、その先生は学級開き直後のL.T.(学級活動)の時間を1度参観しただけで、その後1度も担任の学級経営を見にこようとはしませんでした。1年間で1番大切な時期の学級経営を見ることは勉強になるのに、盗む気がないのか。出張の時には代わりにS.T.に行ってもらうことになるのに、その時困ると思わないのか。と若手の行動が理解できないようでした。これ以上言っても強制になるし、それも嫌だからもう自分からは積極的にかかわらないと決めたそうです。

若手からは直接話を聞いていないので、想像でしかありえませんが、初めての授業で手いっぱいで、精神的に余裕がなかったのかもしれません。そもそもS.T.は自分の生徒としての経験から単なる連絡であって大切なものとは思っていなかったのかもしれません。いずれにしても、ベテランから学べる貴重なチャンスを失くしてしまったようです。
自分のことを振り返ってみると、新任のとき、副担任をしている学級のS.T.を私から見せていただくようにお願いし、また年度の途中からは半分任せていただけました。後の私の学級経営の基本となることを学ぶことのできた1年間でした。当時は私のように、みな自分から盗みにいっていたように思います。最近の傾向でしょうか、若手が盗もうとしないという話をベテランからよく聞きます(「盗む」という文化がなくなってきている?参照)。また、S.T.が学級経営にとってとても大切であることを知らないのは仕方ないにしても、ベテランがわざわざ水を向けたことには意味があるはずだと思う想像力のなさも、問題かもしれません。

では、若手だけの問題でしょうか。勉強しに来なさいというのおこがましい気がして言いにくいかもしれませんが、ベテランも4月のS.T.はとても大切な時期だから、観にきたらと、誘う理由を明確にしてより強く言えば事態は変わったかもしれません。もっと強く働きかけることが必要になっていると思います。

このようなずれを、個人レベルで修正するのは人間関係のこともあり、なかなか難しいように思います。大切なのは、学年主任や教務主任、管理職が意識して対応することです。今回のようなS.T.の参観に限らず、若手にはベテランから具体的にどのようなことを学ぶとよいかを伝え、ベテランにはあなたのここが素晴らしいから若手に学ぶように言ったと伝え、気持ちよく対応してもらう。学年や職員の打ち合わせの場で、たとえば今回の例であれば、「この時期のS.T.はとても大切です。担任の経験のない方は是非ベテランの学級経営を学ぶようにしてください。ベテランの方も出し惜しみせずに若手に学ぶ機会を与えてください」とベテランと若手の交流を促し、互いに学び合う雰囲気を学校につくる。このようなことが大切になります。

ベテランは「若手が盗みにこない」、若手は「先輩が教えてくれない」。互いにこんな言葉を発しています。このようなずれを少しでも減らすために、管理職やリーダーの方が意識して働きかけ、先生同士が学び合う雰囲気をつくってほしいと思います。
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