道徳で大切にしたい問いかけ

新学習指導要領でも道徳の充実が言われています。今まで特別活動の時間などに奪われがちだった道徳の時間が重視されてくることと思います。
道徳の授業で大切にしたいことの一つに自分に引き付けて考えるということがあります。資料の登場人物の行動について、どうしてと理由を聞いたり、その是非をたずねたりする授業に出会うことがあります。しかし、登場人物について離れた立場から考えても、それはあくまでも他人事です。自分と違う考えに出会っても、「そういう風にも考えられる」となってしまいます。そこで、「あなたならどうする」と、自分に置き換えて考えさせることが大切になります。互いに「私」が考える行動を聞き合うことで、違った考えは「私」に対する問いかけになります。同じような考えは「私」に対する承認になります。こうしてより広い視野で、より深く考えるようになります。こうしたことの積み重ねで心が育っていくのです。

そのためには、自分の問題として考える前に、資料の状況等をきちんと理解しておくことが必要になります。国語の授業と違って、教師が資料を読みながら「○○したら・・・、××したら・・・、どうしたらいいか困ってしまったんだね」といった解説を入れるなどして、できるだけ早く正確に状況を理解させるようにします。その上で、「あなたならどうする」と問いかけるのです。

道徳の授業では、正解求めたり、こうしろと強要したりしても意味はありません。極端な例ですが、万引きをする人は、万引きは犯罪であることは知っています。万引きは悪いことだ、万引きをしてはいけないと言ったところで意味はあまりありません。自分がしてはいけない思うことが大切なのです。それは、外部からではなく、自分の内側からしか変われないことです。
ですから、子どもの考えに対して、よい悪いといった視点でのコメントは必要ありません。それぞれの考えに接して、自分の考えをもう一度問い直せばいいのです。

「○○さん、・・・すると言ったけど、それってどういうことかもう少し詳しく聞かせてくれる」
・・・
「なるほど、同じようにするという人いる。じゃあ△△さん」
・・・
「私は違うようにするという人いる。××さん」
・・・
「色々な考えが出てきたね。最後にもう一度、自分の考えを書いてみてくれるかな。最初と変わってもいいよ」
・・・

こうすべきだ、こちらが正しいといった議論ではなく、人の考えを聞き、自分の考えと比べ、もう一度考え直す。このことを繰り返すことで、次第に深く考えて行動できるようになっていきます。子どもたちが色々なことを「私」の問題として考える時間の一つとして道徳を活かしてほしいと思います。
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