正論しか言えない学級にしない

子どもたちは、ルールを破ったり、人の気持ちを傷つけたり、よくない行動をとることがあります。学級の中でそのような行為がおきたとき、教師はよい方向に向かうような対応を求められます。そのとき注意してほしいことがあります。それは、正論しか言えない学級にしないことです。

子どもがよくない行動をとったとき、自分ですぐにその間違いに気づいてそのことを認められれば問題はありません。しかし、間違っているにせよ、子どもなりの理屈を言ったり、本音の部分で話したりすることがあります。そのときに、教師が正論で子どもの発言を頭から否定しないようにすることが大切です。

「ゲームカードを学校に持ってくるのは禁止だったはずなのになぜ持ってきたのかな」
「ぼくはカード使って遊んではいません。レアカードを持っていると言ったら、本当かどうか疑われたので、証拠に持ってきただけです」
「みんなどう思う」
「ちょっと見せただけで、遊んでいるわけでもないから、いいと思います」
「でも、ルールは持ってきていけないとなっているから、ルール違反だね。見せるだけから、ちょっとくらい遊んでもいいだろうとなってしまうこともあるよ。みんなはどう思う」
「私は、持ってきてはいけないのがルールだから、やはりいけないことだと思います」
「そうだね、持ってきてはいけないルールを破ったから、いけないね。カードは先生が預かります。帰るとき返すからね」

子どもの考えに対して、教師が正論で反論しています。「持ってくるくらいならいい」と思っている子どもも、これでは自分の意見を言えません。教師の考えに近い子どもの意見だけを認めていると、教室の中に自分の考えは先生に認められそうもないから言わないでおこう、先生はきっとこう言ってほしいのだろうと教師の顔色をうかがう雰囲気ができてしまいます。教師が確固たる姿勢で臨むことは大切ですが、頭から否定するのではなく、子ども自身が本当にいけなかった思うことで間違いを正す必要があります。

「なるほど、遊んでなければいいという意見だね。同じような考えの人はいるかな」
「何人かいるね。もう少し聞いてみようか」
・・・
「それでは、他の考えはないかな。みんな、同じ考えかな。じゃあ、持ってくるのを禁止じゃなくて、遊ぶのを禁止にすればいいのかな。どう思う。ルールを変えたらどうなるかな」
「カードを持ってきたら、つい遊んじゃうと思います。遊ばない自信はないです」
「なるほど、遊んじゃいそうか。同じよう思う人はいるかな。あっ、結構いるね。どうすればいいのかな」
・・・

できるだけ、子どもが自由に意見を言えるように、たとえ認めがたい意見でもまず認めて、子ども同士で考える中で修正されるようにします。
間違った意見を教師がすぐに否定すると、正論しか言えない雰囲気が教室に広がります。子どもたちの本音の部分は陰に隠れて、見えないところでよくない行動をとるようになってしまうこともあります。そうではなく、本音の部分を出しあったうえで、本当にどうあるべきか判断できるような子どもを育てることが大切です。教師は権力者です。教師の考えに反対できる子どもはなかなかいません。教師が正論を押し付けて、正論しか言えない学級にしないことが大切です。
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